ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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偽物、もやる

キュアスカイが、マントと長い髪を翻らせて。

プリズムとベリィベリーを庇って立つ。

 

「スカイ!」

「お待たせしました!」

 

名前を呼ばれたスカイは、振り返って笑いかけてくる。

これ以上ない援軍に、プリズムは全身の力が抜けて。

ベリィベリーも、安堵のため息をついた。

 

「二人とも、立てますか?」

「ウィング!」

「遅くなってごめんなさい。あとは任せて、休んでください!」

「すまない・・・・!」

 

ウィングも駆けつけて、倒れたままのベリィベリーを抱える。

そのままプリズムを伴って、後ろに下がっていった。

 

「ああ、悲しいね。弱いって、一人で立つことすらままらないなんて」

「黙れ」

 

バッタモンダーを見上げて、スカイは剣を突き付ける。

 

「プリズムもベリィベリーさんも弱くない。二人が耐えたから、私が間に合った」

「はは、そうやっておしいとこをかっさらっていく算段なんだろ?抜け目ないなぁ」

 

なおも笑うバッタモンダーを、スカイは据わった目で睨んで。

 

「そういう発想しか出来ない時点で、底が知れるな」

「・・・・あ"?」

 

一瞬。

バッタモンダーの顔が歪み、口元で音が鳴る。

しかし、即座に涼やかな顔に戻して紳士的に笑う。

 

「ふふ、いいだろう。正々堂々戦おうじゃないか!ランボーグッ!」

「ランボーグッ!!」

 

号令にランボーグが動く。

再三稲妻を放ち、スカイに襲い掛かるが。

 

「霞の呼吸・参ノ型」

 

対するスカイは、努めて冷静に構えて。

 

霞散の飛沫(かさんのしぶき)

 

広範囲にわたって迫っていた、稲妻を切り裂いた。

 

「ランボオオオオオオオオオグッ!!」

 

『これで終わらんぞ』と、両手を組んで叩きつけようとするランボーグ。

スカイは大きく飛びのいて避けると、呼吸を整えて。

 

「――――漆ノ型 朧」

「ラッラッラッ!!」

 

亀の様に遅い動きで現れたスカイを、ランボーグは嘲笑って攻撃を加えようとする。

だが、確かに当たったはずの雷撃は、気付けば空振りしていた。

 

「ラッ!?」

 

周囲を見ると、再び遅い動きで現れたスカイ。

今度こそ、と拳を振り下ろすが。

またもや当たらない。

 

「ランッ!?ラッ!?ラァンッ!?」

「まったく・・・・何をやっているんだ!!ほらソコォッ!!たらたらしてんなよ!!」

 

何度攻撃を放っても、何度当たったと思っても。

スカイを捉えることが出来ないランボーグ。

そんな状況に苛立ちを隠さなくなったバッタモンダーは、声を荒げて指示を出すも。

やはり、スカイを捉えることは出来なかった。

まるで霧に巻かれているような感覚に、バッタモンダーもランボーグもすっかり翻弄されている。

 

「――――ひろがる、スカイソード」

「ら、ランボーグ!!後ろ後ろ!!」

 

やっと現れたスカイは、すでに技を放つ体勢。

慌てたバッタモンダーが、振り向くように指示を出すも。

もう、間に合わない。

 

「――――ミラージュ!!」

 

蒼穹の刃が、ランボーグを捉えて。

 

「スミキッター・・・・!!」

 

浄化してしまったのだった。

 

「ああ!?ふざけんなよ!!クソッ!!」

 

ベリィベリーのグローブを残し、キラキラと散っていくランボーグを目の当たりにして。

今度こそ本性を現したバッタモンダー。

だが、またすぐに冷静さを取り戻して。

 

「お互いいい戦いだったよね!また会おう!バッタモンモン!!」

 

黒い煙を残して、撤退していったのだった。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「ベリィベリー」

「た、隊長」

 

ベリィベリーさんのグローブを回収して、みんながいるところに戻ると。

ましろさん共々手当が終わっているのを見つけた。

話しかけようとすると、シャララ隊長に先を越された。

 

「・・・・あの」

 

やっぱり怒られるんだろうかと、ドキドキしながら成り行きを見ていると。

 

「・・・・ヨヨ殿の孫の護衛、ご苦労」

「えっ?」

 

・・・・なるほど。

そういう話にするのね。

 

「あとで始末書と反省文だ」

「は、はい!」

 

敬礼するベリィベリーさんを背に、シャララ隊長は他の隊員に呼ばれた。

 

「ベリィベリーさん」

「ソラ」

 

改めて見てみると、分かり易く疲労困憊な様子だ。

無理もないか。

隊を飛び出した先で、こんなことに巻き込まれちゃったんだから。

 

「お疲れ様です、ひとまずこれだけ」

「待って・・・・!!」

 

なので、グローブだけ返してとっとと退散しようと思ったんだけど。

呼び止められたので、振り向いた。

 

「・・・・ごめんなさい、それから・・・・ありがとう」

 

グローブを握りしめたベリィベリーさんは、目を滲ませながら頭を下げて来る。

 

「・・・・いいえ、お気になさらず」

 

首を横に振って、それだけを伝えてから。

次に、ましろさんのところへ向かった。

 

「ましろさん」

「ソラさん」

 

座り込んでいたましろさんも、やっぱり疲れた様子。

 

「具合はどうですか?」

「ちょっと疲れてますけど、それくらいです」

 

にこっと笑うましろさんだけど、すぐにしょんぼりしてしまう。

 

「・・・・また、助けられちゃいましたね」

「まさか、あなたのお陰で間に合ったんです」

 

はっきり言い切ると、びっくりした顔で見上げてくるましろさん。

・・・・もしかして、あのひょろいのに何か言われたか?

 

「・・・・バッタモンダーとかいうやつに、何を言われたのかはわかりませんが」

 

しゃがんで目を合わせながら。

安心で出来たらと、手を握る。

 

「貴女を足手纏いと思ったことは、一度もありませんよ」

「・・・・ッ」

「むしろ、いつも助けられているとすら思っています」

 

息を呑むましろさんを前に、なおも目を合わせ続けて。

言葉を続ける。

 

「他人の言葉に、傷つくことがあるかもしれません。でも、貴女の輝きをどうか見失わないで」

「・・・・はい!」

 

うんうん、やっぱり笑ってる方がいいよましろさん。

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(一件落着!)

 

 

 

 

 

 

翌日。

ハヤテ先輩と一緒に街をパトロールしていると、ましろさんの姿を見かけた。

スカイジュエルをリュックいっぱいに購入している。

そういえば、ヨヨさんに頼まれているのを見かけたな。

・・・・それはそうと、めちゃくちゃ重たそうだ。

ちょっと手伝った方がよさそうだな・・・・。

 

「いってくるか?」

「ぁ、はい。すみません、すぐに戻ります!」

 

ハヤテ先輩にもお許しをもらえたので。

早速向かおうとすると、

 

「あ、ベリィベリー」

 

先んじて、ベリィベリーさんがましろさんの背中を支える形でヘルプに入っていた。

ひょいとリュックを取ると、連れ立って歩き始める。

 

「おおー、やるなぁ」

「・・・・そう、ですね」

 

楽しそうに会話しながら歩き去っていく、ましろさんとベリィベリーさん。

知り合いに会えて嬉しいのか、ましろさんは安心した顔をしている。

昨日のことがあったからか、何だか仲良さげなんだよなぁ。

 

「・・・・ッ」

 

ニコニコと笑う横顔を見て、なんだかもやっとしたものを感じた。

――――待っっっっっっっっって????

なんで今もやっとした?

 

「どしたー?」

「あ、今行きます!!」

 

かぶりを振って、ハヤテ先輩についていく。

・・・・妹分取られて、悔しかったんかな?

うん、ひとまずそう思うことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「――――おや!これはこれは!ようこそいらっしゃいました!」

 

何でもないように、話しかけて来た。

 

「申し訳ない、私は何も聞いていないのですが、査察か何かでしょうか?」

「・・・・いいや、そうではない」

 

声色も、本当に通常の人間そっくりだ。

 

「時に、何か異常はないかね?」

「異常、ですか?」

 

虚を突かれたような返事、その後振り向く動作をして。

 

「はい!何もございません!」

「・・・・そうか」

 

明るく、なんでもない様に返事した。

――――ハエが飛び、ウジが行き交う惨状を見たにも関わらずだ。

 

「今までご苦労」

「わ、若君!?」

 

剣を抜く。

今まで会話していた『肉塊』に近づいて。

 

「世界の平和に尽くし続けてくれたこと、心より感謝を述べる」

「何を・・・・!?」

 

両断した。

 

「――――ジークフリート様」

「遺体は全て、丁重に弔え。『スカイランドの悪夢』を監視し、閉じ込め続けた平和の立役者たちだ」

「はっ!!」

「それから、スカイランド王家に早鳥(はやどり)を!!『悪夢』の復活を一刻も早く伝えろ!!」

「直ちに!!」

 

――――数日前のことだ。

この禁足地からの通信に異常が確認された。

ここにはある存在が封印されており、人員の配置や交代などには厳しい取り決めが細かく決められていたのだが。

それらが行われていなかったのだ。

事が事だ。

信頼できる部下を連れて急遽来てみれば、この惨状。

 

「誰が、奴を起こした・・・・!!」

 

怒りと殺意を滾らせて、拳を握りしめた。




やっっっっっっっっっとだよ!!!!!!!!!
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