ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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今回の更新から、R15タグをつけています。

2023年度最後の更新です。
今年度も大変お世話になりました。
来年も、ご愛顧下さると幸いです。
読者の皆様、良いお年を。

追記∶いろいろ読みにくいな?と思った箇所を修正。
これで大丈夫、な、はず……!!


偽物、復活の悪夢

――――500年前。

吸血人(ヴァンピール)吸血鬼(ヴァンパイア)と呼ばれ、怪物扱いされていた頃。

一匹の怪物が産声を上げてしまった。

スカイランドに住む人々は、恐怖と、絶望と、諦観を以て。

彼女を『悪夢』と呼び恐れていた。

根っからの外道、生粋の邪悪。

その行動基準は快か不快のみ。

己の癪に障れば、人も吸血鬼も徹底的に蹂躙していった。

人も、吸血鬼も。

『悪夢』の前ではみな平等に多くの血と涙を流し、塵芥と散っていった。

それが皮肉にも、両種族に団結を決断させたのだ。

人は知恵を、吸血鬼は力を持ち寄った。

同じ『悪夢』への怒りと恨みを抱き、立ち向かった。

だが、完全に殺すことは出来なかった。

吸血鬼を殺せるはずの日の光が、『悪夢』には通じなかったのだ。

だから、封印するしかなかった。

人間と吸血鬼、双方が抱く『悪夢』への恨み、辛み、憎しみ、怨念。

それらを込めて鍛造した魔剣を突き刺すことで、封じ込めに成功した。

以来、500年。

人と吸血人が協力して封印を見張り続けることで、平和は保たれていた。

保たれていた、はずだったんだ。

 

「――――いい夜ね」

 

ゴシックロリータ調のドレスに、靡く銀色の髪。

月光を優雅に背負い、街灯の上に座るそいつ。

世界そのものが重たくなったような感覚に、体が上手く動かなくて。

声もなく震えているましろさんを、後ろにかばうだけで精いっぱいだ。

 

「本当はまだ出番じゃないけれど・・・・我慢できなくて、来ちゃった」

 

指先が動く度に、つま先が揺れる度。

声が出る度に。

気温がどんどん低くなって、身動きが取れなくなる。

完全に動けなくなる前に、動かないといけないのに。

体は、指の一本すら動かせない。

 

「ふふふっ、まあいいわ。オーソドックスに自己紹介でもしましょうか」

 

そんなこちらの様子を、愉快そうに見下ろした奴は。

たおやかに笑みを浮かべる。

 

「私はキルミラ。最も、スカイランド人ならご存じでしょうけど」

 

――――嗚呼、なんで。

嫌な予感ばかり当たるんだ・・・・!!

 

「さあ、早速見せて頂戴。あれから熟成を重ねて、どんなお味になったのか!!」

 

『悪夢』の、キルミラの指が。

タクトを振る様に踊る。

そこに宿るは、もうすっかり見慣れたもの。

 

「おいで!!アンダーグエナジー!!」

 

宿ったのは、キルミラが座っていた塔の装飾。

 

「ランボーグ!!」

 

夜空を汚す様に、大きな翼をごりごり鳴らしながら広げて。

鳥の彫刻型のランボーグが、咆哮を轟かせた。

 

「うーん・・・・」

 

キルミラは、自分が生み出したランボーグをしげしげ眺めると。

ため息と共に肩をすくめて、

 

「やっぱり好きじゃないわねぇ、ブサイク」

「ラァンッ!?」

「まあ、いいわ。今は選り好み出来ない不自由を楽しみましょ」

 

『エッ!?』とショックを受けるランボーグを気にすることなく。

キルミラは髪をかき分けると、私達を見下ろして。

にやりと笑った。

 

「ここはいいから、あっちで暴れなさい」

「ランボォーグッ!!!」

 

命令を受けるなり、街中へ一目散に飛んで行くランボーグ。

 

「まずい・・・・!!」

 

止めないと、民間に被害が!!

そう考えて、飛び出そうとして。

 

「どこに行くの?」

「――――ぇ」

 

ましろさんに向けられた攻撃を、紙一重で弾いた。

 

「ふふっ、こーんな美女を置いていくなんて、つれないじゃない」

「・・・・ッ」

 

こいつ・・・・!!

 

「ランボーグのところへ、行かせない気・・・・!?」

 

愕然で声の出ない私に代わる様に、ましろさんが呟く。

こんの、悪趣味女ァッ・・・・!!

どうしたもんかと歯を食いしばっていると、キルミラの顔が上を向いて。

 

「ッ天魔・飛翔閃!!」

 

ほぼ、無意識だった。

 

「うわあああああッ!!」

 

自分が何をしたのか気付いたのは、ウィングが落ちて来たから。

どうしてもランボーグのところへ行かせない気かよ、クソが!!

 

「うぅん、いい反応ぉ♡」

 

目の前に降りて来たキルミラは、手元から硝煙のようにエネルギーの残滓を吹かせながら。

満足そうに艶っぽく褒め言葉を伝えて来た。

嬉しくねぇ・・・・!!

 

「ッ、ソラさん!?一体何が!?新しい敵ですか!?」

「キルミラです!!どっかのバカ、っていうか、十中八九アンダーグ帝国が起こしやがった!!」

「き、キルミラ!?伝説の悪夢が、そんな!?」

 

同じスカイランドの住人なだけあって、名前を言えばどれだけの事態が起こっているのかすぐに理解してくれた。

ましろさんは置いてけぼりにしてしまったままだけど・・・・今は、説明の時間すら惜しい・・・・!!

 

「か、怪物だああああッ!!」

「助けて!!助けて!!」

「ダメだ、普通の兵隊じゃ歯が立たない!!青の護衛隊を呼んでくれ!!」

 

――――街からの悲鳴が風に乗って届いてくる。

・・・・早く、早く。

プリキュアが、ヒーローが。

駆けつけないといけないのに・・・・!!

目の前のこいつがいる限り、ランボーグの対処は出来ないままだ。

どうする、どうする・・・・!?

神経を最大にまでとがらせて、必死に思考を巡らせていた。

その時だった。

 

「――――シャイニングストライク!!」

「――――ドラゴンジャッジメント!!」

 

一閃と刺突。

二つの斬撃が、キルミラを急襲した。

我に返って前を見ると、敵とこちらを隔てる様に並び立つ。

二つの背中。

 

「シャララ隊長!!ジークフリート王子!!」

「すまない!遅くなった!」

 

名前を呼ぶと、シャララ隊長が振り向いた。

今は夜だからか、ジークフリート王子はフードを脱いでいて。

吸血人の特徴である、銀色の髪を靡かせていた。

 

「ここは我々で引き受ける!!君たちがランボーグを!!」

「ッはい、分かりました!」

 

向きを変えるだけで襲い掛かって来たキルミラを、シャララ隊長が迎え撃って。

なお放たれる攻撃を、ジークフリート王子が食い止めてくれる。

 

「詳しい話はあとで!二人とも、行きますよ!」

「はいッ!!」

「ぁ、あの、わたし・・・・!」

 

ウィングが力強く返事する一方、ましろさんはがくりと体を傾ける。

無理もないか、さっきまでとんでもない化け物に威圧されていたんだから。

 

「ご、ごめんなさい・・・・!!」

「構いませんよ、抱えていきます!!」

 

変身出来ようが出来まいが、ここに置いていく方が危険だ。

ひょいとましろさんを抱えてから、改めて飛び出していく。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

「やってくれたわね」

 

不機嫌を隠そうともしないまま、目の前の邪魔者を睨みつけるキルミラ。

 

「しかも、その顔。お前、ヴラドの血縁?」

「いかにも、500年経ったが寝ぼけていないらしいな」

「寝ぼけてても分かるわよ、私をぶち抜いた忌々しい顔」

 

切っ先をキルミラから逸らさないまま、ジークフリートが答えると。

キルミラも吐き捨てる様に返す。

 

「よくもまあ晒せたものね、死にたいの?」

「まさか、お前が死ね」

「は、抜かせ!!」

 

轟音を立てて踏み込んできたキルミラ。

ジークフリートの喉元目掛けて一直線に手を突き刺そうとするが。

そこへシャララが割り込んで斬撃を浴びせた。

舌打ちするところへ、更に一閃繰り出して。

キルミラを引きはがす。

 

「人間風情が・・・・!」

「ああ、人間だよ」

 

忌々し気な言葉へ、余裕をもってシャララは返す。

 

「肩を並べるなど、何年ぶりか」

「師匠に免許皆伝をもらった時だから・・・・二十年か、もう老いるだけだな」

「バカ言え、これからだろう」

「ふ・・・・無論だ!!」

 

歯を向いて険しい顔をするキルミラへ、

 

「――――晴天流ッ!!」

 

二人同時に飛び出していく。

 

列殲真空(れっせんしんくう)!!」

霧我霧中(むがむちゅう)!!」

 

シャララが切り込み、ジークフリートが攪乱すれば。

 

「電光石火!!」

黄昏雷響(たそがれらいきょう)!!」

 

逆にシャララのサポートを受け、ジークフリートが突撃する。

アタッカーとサポートを的確に交代しながら、キルミラへ絶え間ない攻撃を加えていく。

彼らにかまければかまけるほど、ソラ達が遠く離れていくことを察して。

キルミラはいよいよ苛立ちを募らせていく。

 

「あーっ!もーっ!本当に忌々しいわね!!」

「誉め言葉だ!!」

 

一層強い一撃同士が、火花を散らして爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

「――――お待たせしました!」

 

道中で変身を終えて、現場に駆け付ける。

だいぶ長い間暴れさせてしまったこともあって、街は滅茶苦茶になっていた。

キルミラのプレッシャーからまだ立ち直れていないプリズムには、避難誘導をお願いして。

私とウィングで立ち向かう。

 

「ランボォーグッ!!」

 

ランボーグは咆哮を上げると、先に対処していた青の護衛隊を吹き飛ばして。

こちらへ突っ込んできた。

 

「ッひろがる!!ウィングアターック!!」

 

ウィングが真っ向からぶつかって、ランボーグを迎え撃つ。

頭にぶち当てられて怯んだランボーグへ、私がすかさず懐へ潜り込んで。

 

「破魔・竜王刃ッ!!」

 

胴体へ、斬撃を叩き込んだ。

 

「ラアァン・・・・!!」

 

ぐら、とふらつくランボーグ。

倒れそうになったけど、たたらを踏んで立ち直り。

両翼を広げて、石の羽を乱射してきた。

クソ、範囲が広すぎる。

手持ちの剣や、味方の技じゃ対応しきれない!!

何かないかと視線を巡らせると、荷造り用のロープが目に入って。

 

「ッ恋の呼吸!!伍ノ型!!」

 

遮二無二引っ掴む。

 

「揺らめく恋情・乱れ爪ッッ!!」

 

広範囲に斬撃を飛ばす。

プリズムやウィングの協力もあって、被害は最小限にとどめることが出来た。

 

「ランボーグ!!」

「ッさせないぞ!!」

 

再び同じ攻撃をしようとするランボーグ。

するとウィングが敵の目の前に躍り出て、挑発する。

ランボーグのような巨体にとって、小柄な彼はコバエの類に見えたのだろう。

明らかに苛立ったランボーグは、ウィングを標的にして弾幕を放った。

 

「こっちだぁーっ!!」

 

そのままぐーんと上空へ飛び上がって攻撃を引き付けるウィング。

見た目はまんま、ロボットアニメでよく見る某サーカス。

かっこいいぞー!!

 

「っと・・・・!!」

 

ランボーグの意識は、完全にウィングへ向いている。

見逃がしてやる義理はない!!

 

「覇真ッ・・・・!!」

 

先ほど以上に、気を練り上げる。

普段使っている技を、さらに自分なりに昇華させた・・・・!

 

「龍王陣ッッ!!!!」

 

はっきり龍の形を取った闘気が、ランボーグへ襲い掛かった!!

 

「ラァンボオオオオオオオ!!?」

 

ウィングを撃ち落とすことに夢中になっていたばっかりに、完全な不意打ちを受けたランボーグは。

悲鳴を上げながら、とうとう巨体を横たえた。

 

「プリズムッ!!」

「ッはい!!」

 

隣に並んだスカイミラージュを一緒に構えて、ランボーグへ向ける。

さあ、いい加減に最悪の夜を終わらせよう!!

 

「「――――プリキュア!!」」

「「――――アップドラフト・シャイニング!!」」

 

手加減す理由も義理もない。

油断なく躊躇いなく、暴れられる前にアップドラフト・シャイニングを叩き込んだ。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「あ~あ、壊されちゃった」

 

心底がっかりした様子で、キルミラは街の方を見ていた。

横に向けていた顔を前に戻せば、

 

「は・・・・は・・・・は・・・・!」

「はぁ・・・・っぐ・・・・!」

 

しっかり足で立ちながらも、肩を揺らして息をするシャララとジークフリートの二人。

それでも剣を降ろさず構えている辺り、まだまだ戦意は衰えていない。

 

「はああああ・・・・!!」

 

『面倒くさい』とばかりにため息をついて切り替えると、キルミラはにっこり笑って。

 

「まあ、いいわ。つまみ食いの甲斐はあったし、今日はこれくらいにしておきましょう」

 

艶やかに、風になびく銀糸の様な髪を、手櫛で整えて。

 

「ソラ、だったかしら。あの子に伝えて頂戴」

「何・・・・!?」

「『出来上がりを待っている』・・・・じゃ、そういうわけで!」

「待て、何故ソラを!?」

 

引き止めようとするシャララの前で、これ見よがしに額の宝石が光を放ち。

 

「キルミラミラ♪」

 

黒い靄とともに、撤退していったのだった。

それからしばらくの間、シャララとジークフリートは神経を尖らせていたが。

やがて本当に撤退したと判断して、ど、と息を吐いた。

 

「――――何とか、退けたか」

「ああ・・・・アンダーグ帝国め、厄介なものを起こしおって」

 

悪態をつきながら、それぞれ剣を収める二人。

ジークフリートは今後について頭を悩ませていたが、シャララはそれ以上に浮かない顔をしていた。

 

「・・・・キルミラは、何故ソラを狙っているのだろうな」

「・・・・分からん、ただ、きっかけがあったとするなら」

「あちらであったという、不可思議な襲撃か」

 

――――隊長室に呼び出し、キルミラについて話したあの時。

ソラは懸念事項の一つとして、異世界で起こった不可思議な襲撃について語っていた。

大切にされている生き物を素体に生み出し、いたずらに人も生き物も傷つけたという。

伝説の通りか、それ以上の暴れっぷりを見せつけて行ったキルミラ。

その怪物に目をつけられてしまった、ソラ。

『これから』を考えて頭を抱えるシャララに、ジークフリートも同じく険しい顔をする。

 

「・・・・上手く、退けられると良いのだが」

「・・・・キルミラ相手に、それは望み薄だろうな」

 

駆けつけてくるそれぞれの副官の姿を見つめながら、ため息をついた。




キルミラ
拙作オリジナルキャラ。
R15と残虐な描写タグの元凶。
大体の概要は本文の通り。
要素としては『両面宿儺(呪術廻戦)』、『真人(呪術廻戦)』、『DIO(ジョジョ)』、『断頭台のアウラ(葬送のフリーレン)』をレッツラまぜまぜした。
正直やり過ぎた感はあるけど、面白いからいいかなって・・・・。



ジークフリート・ラキュラ・クシザス
前回紹介しそびれた拙作オリジナルキャラ。
クシザス王国の王子にして次期国王、吸血人。
既婚で二児の父でもある。
シャララとは同じ師匠の下で修業した兄妹弟子。
恋愛感情はなく、正真正銘のマブダチ。
お酒が入ったら肩組んで揺れるくらい仲良し、なんなら奥さんも『私も入れて―!』と突撃していく。
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