今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
「――――バッタモンダーによる十回もの襲撃、そして、復活を遂げたスカイランドの悪夢『キルミラ』」
翌朝、謁見の間。
昨夜のうちに報告を受けていた国王は、青の護衛隊とプリキュア達を呼び出していた。
「青の護衛隊、ならびにプリキュアの諸君。よくぞ脅威を打ち払ってくれた」
「っは!」
「恐れ入ります!」
青の護衛隊はもちろんシャララが、プリキュアは年長であるソラが代表して。
それぞれ背筋を伸ばして、労いの言葉を受け取る。
「それから、クシザス王国のジークフリート王子にも。深く感謝いたす」
「元はと言えば我が国が、封印が破られたことに気付けなかったのが原因。如何にバケモノと言えど、同族の始末をつけるのは当然であれば」
「そうおっしゃるな、奴の狡猾ぶりはこちらも知るところ。あなた方が報せてくれたからこそ、我々も備えることが出来るのだ」
深々と頭を下げるジークフリートには、慰めの言葉をかけると。
「ヒーロー達よ。これからも苦難は続くであろう、民の不安を拭えるのはそなた達だけだ」
改めてそれぞれと目を合わせて。
力強く語り掛ける。
「だが、あえて言おう、どうか己の命も大切にしてほしい。私にとっては、そなた達もまた、変わりなく息災でいてほしい民なのだ」
――――人を守るという使命がある以上、時には己を犠牲にすることも強いられる者達。
しかし、そんな彼らにも待っている家族がいる。
身を案じて、無事を祈る友が、恋人がいる。
だからこそ、国王はあえてそのことに触れて。
『簡単に命を投げ出すな』と、彼らへ改めて伝えたのだった。
◆ ◆ ◆
謁見を終えて。
私達青の護衛隊は、被害地域のパトロールに出ていた。
浄化後のキラキラで、破壊された箇所は元通りになったと言えど。
人々の心には不安がくすぶったままだからね。
しっかり見守っているところを見せることで、安心させようってことだ。
「あ!護衛隊のにーちゃん!」
「おっ、お前達!」
ハヤテ先輩に、ベリィベリーを加えた
何か異変はないか、街中へ視線を巡らせていると。
先輩が声を上げたので、そちらを見る。
すると、子どもが三人くらいこちらへ駆け寄ってきていた。
「ハヤテ先輩が、昨日助けた子達だ」
「なるほど」
「昨日はありがとう!怪我も大したことなかったよ!」
「ははは!そりゃよかった!」
元気に無事を報告する子ども達へ、嬉しそうに笑い声を上げたハヤテ先輩は。
真ん中にいた子の頭をわしゃわしゃ撫でまわした。
「そっちのおねえさんは?見たことない人!」
「おー、このねーちゃんか?この人はなー・・・・」
と、女の子の視線が私に向けられた。
見ない顔への至極当然の疑問を聞いたハヤテ先輩は、いたずらを思いついたような顔をして。
あ、これ見たことある。
実家の弟も、いたずら決行しようとするときこんな顔する!!
「聞いて驚け、このねーちゃんなんと、今話題沸騰のプリキュアなんだぜ!」
「へーっ!?」
「さらわれたプリンセスを連れ帰ったっていう、あの!?」
「昨日もバケモノ倒してくれたよな!」
「「「すげー!!」」」
えっ、と思った時には、あっという間に子ども達に囲まれてしまっていた。
私の周りをちょろちょろするちいこき者達。
こ、これが、『か弱いものを潰さないようにする巨人』の気持ち・・・・!
ちなみにベリィベリーさんはしれっと避難してた。
う、裏切者・・・・!
「昨日とは格好が違うね?」
「い、いつもあの格好という訳じゃないんですよ」
「「「へー」」」
グワーッ!!キラッキラした目が・・・・キラッキラした目が!!
ま、眩しい・・・・眩しいよ・・・・・!
わたしゃそんな目を向けられるような人間じゃねぇよォ!!
昨日だって、邪魔があったとはいえ駆けつけるの遅くなっちゃったのに・・・・!
「青の護衛隊期待の新人だぜ?なんせ、剣の腕だけでもうちの隊長と互角だ!」
「えーっ!?」
「シャララ隊長って世界最強の剣士だろ!?じゃあ、ねーちゃんも最強なのか!?」
「さ、さすがに隊長には敵いませんよ!先輩!デタラメ言っちゃダメでしょ!」
「ありゃ、怒られた」
「「「怒られたー!」」」
おどけるハヤテ先輩が面白かったのか、声を上げてきゃらきゃら笑い声が上がる。
すると、先輩は私とベリィベリーさんの間に入って、肩を組んで。
「ま、そういうわけだから。ランボーグもキルミラも、俺達でやっつけてやる!だからどーんと安心しな!」
そう、先輩が宣言すると。
子ども達が目に見えてほっとしたのが分かった。
・・・・なるほど。
先輩はこの子達が不安がっているのを見抜いて、心のケアをしていたのか。
「・・・・もちろん、私だけではありませんよ」
そうと決まれば、と、私も口を開く。
「このベリィベリーさんだって、私の仲間と肩を並べて戦えるくらいにすごい人なんです」
「え、いや、その・・・・ああ、そうだな」
ベリィベリーさんもハヤテ先輩の思惑には気づいていたらしく。
話を振られて驚いていたけれど、照れつつもしっかり頷いた。
「だから、大丈夫。ランボーグも、キルミラも、必ず追い払いますから」
「・・・・うん!」
ハヤテ先輩に見守られる中、子ども達に笑いかけてみると。
彼らもまた、にっこりと笑顔を返してくれたのだった。
「――――敵を倒して終わりじゃねぇ、不安がる人々を気にかけてやるのもヒーローの仕事だ」
家族に呼ばれて去っていく子ども達を見送りながら、先輩がおもむろに口を開いた。
「ソラはもちろんだが、ベリィベリーも忘れないようにな」
「「はいっ!」」
『命だけじゃなく、心を守るのもヒーロー』、ということか。
あとで手帳に書いておこうと思いながら、パトロールを再開する。
◆ ◆ ◆
「――――あれ?」
一方のましろは、エルの様子が気になって部屋を訪ねていた。
ドアをノックしてから開けると、ツバサの他に
「もしかして、ツバサくんのパパとママ?」
「ツバサ、こちらのお嬢さんは?」
「・・・・虹ヶ丘ましろさん、向こうの世界で一緒に暮らしてた」
「「え?」」
よく似た羽の色と頭の羽から、予想をつけて話しかけると。
どうやら本当だったらしい。
父親らしいプニバードが話しかけると、照れくさいのかややぶっきらぼうにツバサが答えると。
「ツバサ、お前しばらく見ない内に結婚したのか!?」
「違うから!」
「お母さん、恋人はツバサちゃんにはまだ早いと思うわ」
「だから違うってば!」
あっという間にツバサに詰め寄りながら、賑やかに会話をしていたのだった。
そんなツバサの様子を見て、大丈夫そうだと笑みを一つ零すましろ。
「あーぅ!」
「あはは、エルちゃん!久しぶりだね!」
そこへ、エルがふわりと浮かんで胸に飛び込んできた。
「昨日は大丈夫だった?」
「えう!あいあい!」
「そっかぁ」
元気に手を振り回す姿を見て、顔を綻ばせたましろが頬ずりすると。
エルは嬉しそうに声を上げたのだった。
一段落したところで、改めてツバサの両親と向き合った。
「挨拶が遅くなってごめんなさい、虹ヶ丘ましろです」
「これはこれはご丁寧に」
ましろが頭を下げると、ツバサの両親はぽんっと音を立てて。
わざわざ人間体に変わってくれる。
「ツバサの父のカケルです」
「母のプワです、ツバサちゃんがお世話になっています」
「こちらこそ、ツバサくんにはいつも助けられています!」
両者が礼を交わし合うと、まだ照れが抜けないらしいツバサが間に入り込んだ。
「もういいいでしょう!とにかく僕はもう大丈夫だから!」
「あらあら~」
「つ、ツバサ!気を付けるんだぞ!」
「プリンセスの子守り役も、しっかりね~」
「だから、ナイトだってばー!!」
追い払われながらも、微笑まし気に手を振る両親へ。
年相応に手を振り回して抗議するツバサ。
「まったくもー、いつまでも子供扱いなんだから・・・・」
「・・・・ふふふっ」
「ましろさん?」
年相応にぶすくれる彼を目の当たりにして、ましろは小さく笑みを零す。
まるでたった今緊張がほぐれたような様に、ツバサが首を傾げた。
「あ、ごめんね。バカにしたんじゃないんだよ?」
「いえ、それは分かっていますけど・・・・何か、あったんですか?」
「何か・・・・」
一度目を伏せたましろ。
そうやって何かを思い出したらしい彼女は、やや落ち込んだ様子で何度も頷いて。
「うん、そうだね・・・・あったよ」
正直に、肯定したのだった。
「・・・・昨日の夜、キルミラだなんてとんでもない相手が現れた時。わたし、何も出来なかった」
「それは出来なくて当たり前ですよ!」
自戒するましろへ、ツバサが即擁護の声を上げる。
「変身も出来ていない状態で、伝説の怪物と遭遇してしまったんです!僕だって、ソラさんに庇ってもらえなかったらどうなっていたか・・・・!」
「うん、ありがとうツバサくん・・・・でも、やっぱり悔しかったな」
今でも思い出せる。
指の一本でも勝手に動かそうものなら、すぐに命を刈り取られるのではと恐怖した。
あの、重圧。
途中からやってきたツバサはともかく、ソラはよく動けたと思う。
それでも、考えてしまうのだ。
ソラやツバサの様に行動出来たら、せめて、その場から離脱出来るだけの勇気があったなら。
昨夜のキルミラは、ましろがあの場で一番弱いことも、狙えばソラが庇うことも理解していた。
だから、ましろやツバサと言った仲間を標的にすることで、一番頼りになるソラを縛り付けていた。
まんまと足かせに利用されてしまったのだ。
「シャララ隊長や、ジークフリート王子が来てくれなかったら、ランボーグはもっと暴れて、取り返しのつかないことになっていたのかも・・・・・せめて、わたしだけでも邪魔にならないように出来たらって、考えちゃうんだ」
「ましろさん・・・・」
分かっている。
本当に邪魔になっていたとしても、ソラはそんなこと微塵も思わないと分かっている。
だからこそ、なおのこと悔しいのだ。
あんな卑怯者に、いい様に弄ばれてしまったあの状況が。
好きな人を、ソラを。
不要な危険にさらしてしまった、己自身が。
「えうぅ・・・・!」
「・・・・っあ」
そんなましろの不安を感じ取ってしまったのか、エルがきゅっと顔をつぼめた。
「ご、ごめんね。エルちゃんだって昨日は怖かったのにね」
「えうう・・・・」
すぐにあやせば、幾分かは落ち着いたようだったが。
それでも、表情は晴れない。
どうしたものかと悩んでいると。
その小さな手が、伸びて来て。
「あいあい、えー!あいあい、えー!」
「え、エルちゃん?」
ぺちぺち、ましろの頬を叩き始めた。
ましろは困惑しながらも、しばらくされるがままになっていたが。
「・・・・プリンセス?」
彼女達の様子を見ていたツバサが、何かひらいめいて。
「もしかして、慰めているんですか?」
「え?」
「えーう!」
ツバサの言葉に『そうそう!』と声を上げるエル。
ましろが驚いて目を合わせると、また頬をぺちぺちし始める。
「ッエルちゃん・・・・」
「あーい!」
屈託のない笑顔を向けられて、目頭が熱くなったましろは。
想いのままに、ぎゅ、とエルを抱きしめたのだった。