ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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異聞バッタモンダー編
偽物、戻ってきた


ソラシド市、虹ヶ丘家。

スカイランドのトンネルの前で、あげははヨヨと共に待機していた。

今日はましろがスカイランドから帰ってくる日だ。

ソラ達との別れに落ち込んでいようがいまいが、大きな節目を終えて帰ってくるだろう。

だから、いつも通りの態度で出迎えようと、身構えていると。

トンネルの向こうから、人影がやってきたので。

 

「まっしろーん!おかえりー!お土産はー!?」

 

予定通りのテンションで、とびっきりの笑顔を向ける。

――――果たして。

そこにいたのは。

 

「・・・・あげはちゃん」

 

右手に包帯を巻いて。

呆れているような、ほっとしたようなましろと。

 

「えう・・・・」

「・・・・」

 

明らかに落ち込んでいるツバサとエル。

 

「・・・・ッ」

 

どこか張りつめた気配を纏うソラに。

 

「・・・・」

 

『なんだこいつ』とばかりの目を向けてくる、ベリィベリーだった。

 

「・・・・ごめん」

 

――――聖あげは、痛恨のミスである。

 

 

 

 

 

 

閑話休題(間が悪すぎた)

 

 

 

 

 

 

「ほんっとうにごめん!まさかスカイランドでそんなことが起きてたなんて・・・・!!」

 

気を取り直して。

リビングで一通りの事情を聴いたあげはが、意の一番にやったことは。

全力の謝罪だった。

 

「ベリィベリーちゃんも、ごめんなさい。ものすごく不謹慎な態度とっちゃった」

「ああ、いや。こちらこそ・・・・睨んで、すまなかった」

 

誠心誠意頭を下げるあげはを目の当たりにして、ベリィベリーも悪い人ではなさそうだと胸をなでおろす。

 

「っていうか、その、きるみら?っていうのも大概だけど、バッタモンダーってのも本当に腹立つ!エルちゃんのパパとママを呪うなんて!!」

 

続けて、スカイランドで起こったことについて、自分のことのようにぷりぷり怒りを表すあげは。

対面では、ツバサは唇をかみしめて、ソラは握っていたペンダントを静かに見つめた。

 

「――――さあさ、まずは召しあがれ」

 

そこへ、人数分の紅茶が差し出される。

揃って目を向けると、変わらぬ笑顔のヨヨが。

しかしてどこか気づかわしげに見守っていた。

 

「・・・・おばあちゃん、アンダーグ帝国って何者なの?」

 

膝の上の、不安そうなエルを見て。

ましろが口を開く。

 

「街を壊して、人を傷つけて、心まで・・・・どうしてこんなひどいことが出来るの?」

「そうねぇ」

 

至極当然の疑問に、ヨヨはミラーパッドを操作しながら答える。

 

「私もあれから色々と調べてみたの」

 

――――それによると。

スカイランドとアンダーグ帝国は、言わば光と影の様な関係なのだそうだ。

大昔に戦って以来、お互いに不干渉を貫いていたのだが。

何故、今になってスカイランドを襲うのか、エルを付け狙うのか。

様々な書物を紐解いたが、ヒントになるような事柄は分からなかったそうだ。

 

「・・・・そう」

「でも、一つだけ」

 

しょんぼりする孫とその友人たちを元気づける様に。

ヨヨは声を弾ませる。

 

「王様と王妃様の呪いを解く方法が、分かったの」

「・・・・ッ!?」

「それは、本当ですか!?」

 

報告に、ソラとベリィベリーが思わず立ち上がる。

 

「ランボーグを浄化した時に現れる、『キラキラエナジー』。それをこのミラーパッドに集めれば、呪いを解く薬を作ることが出来るわ」

 

見えた希望に、一同の顔が初めて晴れやかになる。

 

「よかったですね、プリンセス!」

「パパとママが、起きるかもしれないって!」

 

高揚のまま、ましろの膝に乗るエルに話しかけるが。

一方のエルは、やはり赤子だからかよく分かっていない様子だ。

ただ、『パパとママ』の単語だけは理解出来たようで。

 

「・・・・ぅう」

 

みるみる、その目を潤ませると。

 

「ぅわあああああん!!ぱぁぱあああああ!!まぁまああああ!!」

「あわわ、エルちゃん!」

「ごめんね、エルちゃんにはまだ分からなかったね・・・・!」

「エルちゃん、よしよーし。大丈夫だよー」

 

不安のまま、大声で泣き出してしまった。

打って変わって慌てだす中、あげはが慣れた手つきでエルを抱き上げてあやしだす。

 

「・・・・手慣れているな」

「こちらの、子どもを預かるお仕事に就くために勉強しているんです」

「なるほど・・・・」

 

感心するベリィベリーへ、解説を入れたソラは。

あげはの腕に抱かれた、エルの頭を撫でて。

 

「まずは、エルちゃんを元気付けないといけませんね」

「そうですね、プリンセスの笑顔を取り戻さねば!」

 

ソラの提案に、ツバサが意気込むと。

 

「だったら、子どもが喜ぶとっておきがあるよ~?」

 

にっと笑ったあげはが、得意げに言ったのだった。

 

「子供が喜ぶ、とっておき」

「そそそ!でも、その前にまずはお買い物かな?」

 

次に、おうむ返しするベリィベリーを観察したあげは。

ちなみに今の格好は、青の護衛隊の制服である。

 

「ベリィベリーちゃんの格好だと、こっちじゃ目立っちゃうし」

「そ、そうなのか」

「ソラちゃんも、もうちょっとこっちにいるなら、そろそろ夏服買っとかないと」

「・・・・確かに」

 

数日のうちに近づいてきた夏の気配を感じたソラは、己を服装を見下ろして。

あげはの提案に頷いた。

 

「大荷物になるだろうから、車は私が出すよ。取りに行きたいものもあるしね」

「ありがとうございます」

「くるま・・・・?」

 

運転のジェスチャーをしてやる気満々なあげはに、ソラは礼を述べるが。

ベリィベリーは聞きなれない言葉に首を傾げる。

 

「スカイランドでいう鳥車(馬車)みたいなものです、鳥がいなくても動くんですよ」

「鳥がいなくても!?一体どうやって!?」

「あはは!それは見てのお楽しみ~!」

 

素っ頓狂な声を上げるベリィベリーを、微笑まし気に見ながら。

あげははエルに頬ずりしたのだった。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

バッタモンダーはもちろんだけど、キルミラも解き放たれてエルちゃんを狙い始めたということで。

スカイランドからベリィベリーさんが応援にやってきてくれた。

・・・・いや。キルミラの方はなぜか私をロックオンしてるらしいんだけどさ。

何にせよ、心強い援軍だ。

そんな彼女は今、何をしているのかと言えば。

 

「は、速い!鳥以上じゃないか!」

 

初体験の車にびっくり仰天しているところだった。

ちなみに今は護衛隊の制服から、ましろさんが貸してくれたジャージに着替えている。

 

「うーん!期待を裏切らない反応~!」

 

微笑まし気にハンドルを握るあげはさんの隣で、私も思わず笑みを零してしまった。

と、

 

「・・・・ちょっとはほぐれたみたいだね」

「え?」

「さっきのソラちゃん、だいぶピリピリしてたからさ」

「ああ・・・・はは、面目ない」

 

た、確かに。

これからのことを考えて、ちょっと張りつめてたかも。

 

「子どもって結構敏感だから。私達が緊張してると、エルちゃんも不安になっちゃうよ」

「はい、肝に銘じておきます」

 

話している間に、目的地のソラシドモールについた。

 

「さ、ついたよ!行こう行こう!」

「あ、ああ」

 

促されるままに、車を降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、この建物全部が市場なのか!?」

 

 

 

 

「本当に階段が動いている!?」

 

 

 

 

「これがしゃべる人形か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――いいリアクションだったね!」

「オブラートって時に人を傷つけるんですよ」

「辛辣!!」

 

自分でも予想以上に騒いでしまって、やや反省気味のベリィベリーさんへ。

あげはさんがとどめの様な言葉を口走ってしまうものだから。

思わず切れ味高めの言葉が出てしまった。

 

「いや、その・・・・騒ぎ過ぎたのは事実だ、お金まで出してもらって・・・・すまない」

「お気になさらず。お互い無事に目当てのものが手に入って、よかったです」

 

そろってベンチに座り、オレンジの缶ジュースを差し出す。

目の前で自分の分を開けて見せれば、ベリィベリーさんもややたどたどしく開けた。

 

「それにしても、本当にスカイランドとは違うんだな」

「ええ、私も数か月過ごしましたが、未だに驚かされることでいっぱいです」

 

行き交う人々は、数も格好も、スカイランドと大違いだ。

 

「でも大丈夫だよ!なんだかんだソラちゃんも馴染んでるし、ベリィベリーちゃんもきっと慣れるって!」

「そうだといいんだが・・・・」

 

ちなみに今のベリィベリーさんは。

黄色いラインが十字に走る、赤い七分袖のシャツに。

雷のワンポイントが入ったベスト。

藍色のホットパンツにスパッツ、スニーカーと。

とってもスポーティなコーディネイトだ(あげはさん監修)。

 

「世界は違うが・・・・彼らもまた、守らねばならない人々だな」

「ええ、アンダーグ帝国に奪われてはいけないものです」

「その為にも!」

 

ジュースを口にしながら、しみじみ決意するベリィベリーさんに同意すると。

あげはさんがひょっこり身を乗り出して。

 

「まずはエルちゃんの笑顔を取り戻そう!」

「はい!」

「それには同意だが・・・・」

 

私は普通に返事をしたけれど、ベリィベリーさんはおずおず手を挙げて質問を投げた。

 

「結局何をするんだ?」

「んふふー、それはねー?」

 

 

 

 

 

◆    ◆   ◆

 

 

 

 

 

「――――絵本?」

 

買い物を終えた後、自宅に立ち寄ったあげはは。

虹ヶ丘家のテーブルに、ありったけの絵本を並べたのだった。

 

「絵本なら、スカイランドからもいくつか持ってきたんですが・・・・」

「ただ読むんじゃなくて、人形劇にするの!」

 

聞けば、保育士の学校の演習でやっているらしい。

あげははかばんをまさぐり、自分そっくりのお姫様の人形を取り出した。

 

「可愛い、なんだかあげはちゃんみたい!」

「あげは姫って感じでしょ?」

「人形でお芝居・・・楽しそう!」

「確かに・・・・これならプリンセスにも喜んで頂けるか?」

 

今まで緊張していたツバサの顔が、明るくなったのを目の当たりにして。

ベリィベリーも興味深そうに人形を見ていた。

 

「エルちゃんは、どのお話がすきかな~?」

 

不思議そうに首を傾げるエルに、『赤ずきん』や『シンデレラ』など。

有名どころの本を見せていく。

他のメンバーもどれがいいかと吟味している中。

ベリィベリーの目に、一冊の本が入って。

 

「ソラ、これは一体・・・・?」

「それは・・・・確か、『ももたろう』でしたか。こちらの世界のヒーローの話です」

「ベリィベリーちゃんはそれが気になったの?」

「あ、いや、これというか、どれも見慣れない話だから、気になっていて」

 

すると、ももたろうを見たエルの顔に、みるみる笑顔が浮かんで。

 

「えぁーい!!えうえう!!」

「うぉっ、プリンセス!?」

「エルちゃん、このお話がいいの?」

「える!!」

 

はしゃぎだしたエルにベリィベリーが驚く横、ましろが問いかけると元気に返事をするエル。

 

「どういうお話なんだ?」

「ええと、確か・・・・ある日おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れて来て、持って帰って食べようとしたら、『桃太郎』が産まれるんです」

「もも・・・・?」

「スカイランドのトトに似た、こちらの果物ですね。甘い上に瑞々しくて、固形の飲み物を飲んでいる気分になるんです」

 

こてんと首を傾げるベリィベリーは、ソラの説明を受けると。

顔をぎょっとさせて。

 

「こ、こちらの世界の人間は、トトから生まれるのか!?」

「そっち!?お、お話だからね!?普通に人間は人間から生まれてくるからね!?」

 

賑やかにツッコミを受けながらも、あらすじの説明を受けたベリィベリーは。

 

「――――なるほど、こちらの犬と猿と雉は相当強いのだな・・・・」

 

そう、感心しながら何度も頷いていた。

 

「いや、これもお話だからか?」

「いえ、犬は訓練次第でいけると思いますよ」

「すごいな!」

「鬼の相手は犬さんもきついよー!!」

 

ましろのツッコミで説明が絞められたのを見たあげは。

一同の意識を切り替えるため、両手を打ち鳴らして。

 

「オッケー!それじゃあ、早速人形を作ろう!」

「「「おー!」」」

「お、おー・・・・!」

 

元気いっぱいに音頭を取ったのだった。

 

「あ、ましろんは怪我してるから、あんまり無理しないでね」

「うん、ありがとう。でも、出来るだけ手伝いたいかな」

「分かった!その時はちゃんと言うよ!」




というわけで、こちらではベリィベリーさんがレギュラー入りです。
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