「なっ・・・・!?」
「ウソ、あれましろんと少年の時の!?」
「うん、プリキュアの輝き・・・・!」
一度はミラージュペンの形を取った光。
だが、今回は変化があった。
ベリィベリーの胸元から、もう一つ飛び出したものがあったのだ。
「えっ、あれは!?」
「ゎ、わかんな・・・・あ、待って、思い出した!」
困惑するあげはに、一度は知らないと答えかけたましろだったが。
土壇場で思い出した。
確かソラシド市へ帰る直前に、ジークフリートが託してくれたものだったはず。
『――――月十字?』
『ああ、我らの月への信仰心を表していると同時に、吸血人以外の種族に力を分け与えるときにも使う』
かつては、吸血行為で強制的な従僕関係を結んでいた吸血鬼。
だが、人と共にキルミラに立ち向かうにあたって、彼ら伝統のお守り『月十字』に魔力を宿して譲渡する形に変えた。
独裁的な支配から、健全な絆の証に変化させたのである。
スカイランドで、ジークフリートが一時帰国していた理由でもあった。
『本来は、シャララに渡す予定だったが・・・・此度は、お前に託すことにしよう』
『しかし、良いのでしょうか』
『ああ、構わん。青の護衛隊も、お前ならと信じてプリキュアへの援軍に選んだ。ならば、私も信じるだけだ』
『・・・・はっ、謹んでお受けいたします!!』
その月十字が、ミラージュペンを呑み込んで。
更にグローブに憑りついてしまう。
「え、は、はあっ!?」
黒と赤のシックなデザインに生まれ変わった、愛用のグローブを目の当たりにして。
思いっきり狼狽えるベリィベリー。
「エエーッ!?」
「ハアッ!?なんだそれ!?何だよソレェッ!!?」
敵も味方も、予想外の事態に大混乱だ。
「えええーッ!?」
「あ、あれはどうなの!?どうなるの!?いけるのエルちゃん!?」
「・・・・おー?」
パニックのままに問いかけられたエルは、始めこそぽかんとしていたものの。
やがて、気合十分とばかりに鼻を鳴らして。
「ふううう・・・・ぷいきゅあーッ!!!」
「いけるのねーッ!?」
あげはのシャウトをバックに、纏った光を衝動のままに解き放った。
「ッ・・・・!」
反射的に放たれた光を、スカイストーンを受け取るベリィベリー。
その胸に浮かんだのは、力を得られる歓喜ではなく。
これを使う資格があるのかという困惑だった。
「ッ使わない方がいいよ!!」
チャンスとばかりに口を開いたのは、バッタモンダーだ。
「君はスカイランドで、どんな思いをした?何もできないどころか、あの巨大ランボーグを生み出す手助けすらしていたじゃないか!」
「・・・・ッ」
思惑通りに、フラッシュバックしてしまったのだろう。
俯いたベリィベリーへ、バッタモンダーはさらに捲し立てる。
「強くなる必要はどこにある!?苦しみが増すだけだ!痛みが増すだけだ!!だったら弱いままでも、無力なままでもいいじゃないか!!」
未だ俯いたままのベリィベリーに、歪んだ笑みを浮かべたバッタモンダーだったが。
「――――それを決めるのは」
その勢いは、見開かれた瞳にそぎ落とされた。
「お前じゃない!!」
決意を胸に、スカイストーンを握りしめる。
「――――ルナ・グローブ!!」
「トーンコネクト!!」
「ひろがるチェンジ!エクリプスッッ!!」
グローブの甲部分に、銀色のスカイストーンがはめ込まれて。
輝き出す。
――――二つ結びの赤毛が伸びて、銀色に染まる。
そしてスカイとは対照的の、低い位置のツインテールに結ばれた。
足元は、黒に銀色のラインが走ったロングブーツ。
靴底の模様は、十字架を彷彿とさせた。
「きらめきHOP!!」
赤い三日月のワンポイントが映える、ヘルムにも見えるカチューシャが付いて。
耳元に、同じく赤い十字架のピアスがつく。
「さわやかSTEP!!」
纏った衣装は、袖が無かったり、丈が短かったり。
そもそも色が違ったりと差異はあるものの。
青の護衛隊の制服を彷彿とさせるデザインだ。
「はればれJUMP!!」
左手にも、シンプルなグローブが備わる。
最後に、月十字の紋章を背負った上着を纏えば。
牧師にも見えるシルエットになった。
「――――月下にひろがる、裁きの雷鳴!!」
降り立った戦士は、高らかに名乗りを上げる。
「――――キュアエクリプスッ!!」
◆ ◆ ◆
「私が、プリキュアに・・・・!?」
――――ベリィベリーさんが、かっこいいとこ見せてくれたと思ったら。
新しいぷいきゅあになった件・・・・!!
「はあああああ!?」
あまりの出来事に言葉を失っていると、バッタモンダーが頭を掻き毟った。
「新しいプリキュアだと!?ふざけんじゃねぇよ!!」
ああ、うん。
そっちからすりゃ、たまったもんじゃないよね。
でも、今は・・・・!
「エクリプス!!」
「ッ、ああ、そうだな・・・・!」
声をかけると、ベリィベリーさん、もとい。
エクリプスの表情が引き締まる。
「行くぞ!!」
「もちろん!!」
「反撃です!!」
立ち上がったウィングも一緒に並んで、反撃に出る。
「クソッ!クソッ!クソッ!ぶっ潰せ、ランボーグ!!」
「ランボーグッ!!」
余裕を失ったバッタモンダーの指示を受け、再び腹から弾幕を放つランボーグ。
それぞれ回避したり迎撃したりして対処する中。
エクリプスは両手に雷を迸らせて。
「でやああああ!!」
――――一振りで、薙ぎ払ってしまった。
いや、すごっ!?
「負けてられませんね!!」
「はいッ!!」
剣に闘気を滾らせて。
「天魔・飛翔閃ッッ!!!」
前に来た背中へ、思いっきり風をぶち当てれば。
暴風に乗ったウィングが、あっという間にランボーグへ肉薄する。
「ひろがる!ウィングアターック!!」
「ラァンッ!!!」
顔面へのクリーンヒット。
ランボーグの体が、後ろへ大きく傾いた。
「エクリプス!!」
「今ッ!!」
「――――ああッ!!」
私達の視線を受けたエクリプスは、やる気いっぱいに両手を打ち合わせた。
「――――プリキュアッ!!」
右手を高く掲げると、稲妻が激しく迸る。
「ヒィーロォーガァールゥー!!!」
バチバチと派手な音を立てながら、引き絞って。
「エクリプス・ジャッジメントオオオオオオオオオオオッ!!!!」
全力で、殴り抜いた!!!
一拍置いて、閃光、轟音!
とにかくド派手にぶっ飛ばされたランボーグ!!
「スミキッター・・・・!」
ぶすぶすとしっかり焦げながら、いつもの台詞を吐いて浄化されてしまったのだった。
おっと!いかんいかん!
「ミラーパッド!」
ヨヨさんから預かっていたミラーパッドを掲げると、発生したキラキラエナジーが吸い込まれていく。
画面を確認すると、ボトル型のゲージが上昇したのが見えた。
「オッケー!」
味方にも分かる様に宣言すると、みんなほっとしたのが分かる。
「・・・・ふ、ふざけんな!!!」
一方で、激しく地団太を踏んだバッタモンダー。
「ぜってぇ俺の前に跪かせてやるからなああああ!!!」
『バッタモンモン!!』と、こちらもお決まりの台詞と共に。
撤退していったのだった。
「・・・・ゃ、たのか」
戦闘が終わったからか。
気が抜けて一気に崩れ落ちるベリィベリーさん。
その右手には、変化したままのグローブが付いている。
「はい、貴女のお陰です!」
「すごかったですよ、ベリィベリーさん!」
私とツバサくんで手を貸して立たせたところへ。
「すっっっごいよー!!!ベリィベリーちゃーん!!!」
「えーるっ!!」
「うわぁっ!?」
エルちゃん諸共、あげはさんが突撃してきた。
「キュアエクリプスだっけ!?すっごくかっこよかったー!!」
「あいあい!えるー!」
「あはは、エルちゃんもかっこよかったってー!」
「わ、分かったから!やめてくれー!!」
完全に不意を打たれたベリィベリーさんは、悲鳴を上げながらもみくちゃにされてしまう。
でも、何だか楽しそうだ。
「まさか、月十字があんな風になるなんて・・・・」
「ええ、私もびっくりです」
一方で、ツバサくんは月十字の変化に驚いている様だった。
これまでは、身体強化くらいしか効果がないと思われていたんだもんね。
やっぱり、キルミラが復活したことと関係があるんだろうか?
「何にせよ、頼もしいのに違いありません」
「はい!」
ツバサくんと、笑いあっている時だった。
「うん?・・・・あっ!」
「ましろさん?」
後ろでそんな声が聞こえたものだから、振り向くと。
ましろさんが、包帯を解いているのが見えて。
・・・・エッ!?何してんの!?
「まっ、ましろさん!?何してるんですか!?なんで解いちゃってるんですか!?」
「え、あの、その」
思わず詰め寄ると、気圧されてしまうましろさん。
ご、ごめんなさい。
で、でも!!
「本当に大丈夫なんですか!?」
「だ、大丈夫です!痛くなくなって、わたしもびっくりしてるんですけど・・・・治ったみたいで」
苦笑いしながら、右手を握ったり開いたりしてみせる。
・・・・確かに、動きに問題はなさそうだけども!
「ダメです!!ちゃんとヨヨさんに診てもらってください!!」
「は、はいっ!」
強く、強く念押しすると。
ましろさんは、赤べこみたいに何度も頷いたのだった。
――――恋慕を抱こうが、そうでなかろうが。
怪我をした子どもを心配するのは、当然のことだ。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか!」
あげはさんの音頭に、みんなが頷いた。
◆ ◆ ◆
様々な変化があった帰り道。
一同は夕焼けの河川敷で帰路についていた。
「今日はエルちゃんに助けられちゃったね」
「あと、ベリィベリーさんにも!」
「あ、ああ」
話を振られて、ベリィベリーは照れくさそうに頬をかく。
「――――スカイランドは、弱くない」
その横でおもむろに口を開いたソラ。
前を見据える横顔は、とても晴れやかだ。
「躓いても立ち上がって、前に進んでいく」
「・・・・ああ、そうだな」
「アンダーグ帝国に負けないよう、頑張りましょう!」
――――オーッ!!
拳を突き上げて、笑い合うと。
「えう、あーう!」
あげはに抱えられていたエルが、もぞもぞ動き出した。
「んー?・・・・歩きたいの?」
「えう!」
エルの視線から推察して問いかけると、『その通り!』とリアクションする。
「よぉーっし!じゃあ、降ろすよー?」
だっこ紐から、転んでしまわないように気遣いつつ地面に降ろしてやると。
たどたどしく歩き出す。
と、
「えーややややい♪えややややい♪」
エルが歌い出す。
「あはは、えるたろうの歌だ!」
「これはもう、歌って帰りましょうか?」
「いいですね!」
一同、エルを先頭にして。
歌いながら、歩き出す。
「えーるたろさん♪えるたろさん♪」
「かーごにいーれたくーもぱんを~♪」
「ひとつーわたしにくださいな~♪」
少し子どもっぽい帰り道は、楽しい声と笑顔に溢れて。
とても賑やかに過ぎていくのだった。
◆ ◆ ◆
「あー、ひまぁ~」
――――アンダーグ帝国。
とあるアンダーグエナジーの池に浸かったキルミラは、気怠く吐き出した。
「不完全な状態で好き勝手するからだろう、自業自得だ」
「うっさい、肉達磨」
「にくっ・・・・!?」
同僚の小言へ悪態を返しながら、仰向けになって足を組み替えた。
「でも、まあ。お陰で仕上がり具合も見れたし、上々ね」
一糸まとわぬ肢体を、黒い液体が艶めかしく流れていくのを観察しながら。
今度は上機嫌に微笑むキルミラ。
「楽しみだわ。衣装はどうしようかしら?アクセサリーも考えなきゃ!」
「チャラチャラ着飾ることの、何がいいんだか」
「あら、おしゃれは女の子の武装よ?知らないの?」
呆れる同僚を小馬鹿にして、キルミラはアンダーグエナジーを浴びる。
「女の子はね、見た目を着飾ることで変身するの。綺麗な服を着て、お化粧して、そうやって自分を最大のコンディションに持っていくのよ」
ふと、おもむろに立ち上がったキルミラ。
中ほどまで進んで、指を振ると。
池の中央から、一振りの剣が現れた。
「ぬう・・・・!」
「・・・・うふふふふっ!」
シンプルな見た目と裏腹に、見ているだけで呪われそうな重圧。
同僚が気圧されるのを、キルミラは面白く思いながら見上げる。
「この、忌々しい『鉄棒』にも、役に立ってもらわないとねぇ?」
――――500年。
キルミラを蝕み続けるに飽き足らず。
「ふふふふっ、ねえ、貴女はどんな風に楽しませてくれるかしら?どんな顔で絶望してくれるのかしら?」
まるで、恋する乙女の様に。
キルミラは恍惚と、自らの頬を両手で包む。
「期待してるんだから、ちゃぁんと答えて頂戴ね?ソォ♡ラァ♡」
鈴の様な、しかして狂気を孕んだ笑い声が。
そこら中に響き渡った。
『月十字』
吸血人にとって、身を蝕まずに照らしてくれる月は、人族でいう太陽と同じくらい神聖なもの。
月十字は、そんな信仰心から生まれたお守りである。
人族とともにキルミラを討伐してからは、それに魔力を込めて分け与える触媒として使われるようになった。
王族の力ともなれば、格式ばった手続きが必要になるので。
ジークフリートはこの為に一時帰国していた。
対キルミラを見据えて、本来はシャララに渡すつもりだったが。
彼女が不在となった今は、ベリィベリーに譲渡されている。
『キュアエクリプス』
プリキュアと吸血人、二つの力を持って生まれたプリキュア。
全体的なシルエットは牧師っぽいが、見ようによっては色違いの青の護衛隊にも、シスターにも見える。
必殺技は『エクリプス・ジャッジメント』、稲妻迸る拳を全力で叩きつける。