誠にありがとうございます。
「―――ランボーグッ!!」
今日も今日とて元気なランボーグである。
強い日差しに、夏の始まりを感じ始めた頃。
川辺に出来た水遊びスペースにでも行ってみるかと足を運ぶと。
例の如く現れたバッタモンダーが、MCもそこそこにランボーグを召喚。
哀れな釣り人の釣り竿が、大暴れをしている次第だ。
河川敷には、まだ逃げられていない人達がいる。
機動力のあるウィングと、遠距離攻撃があるプリズムに避難を任せて。
私とエクリプスの二人でランボーグを足止めしていた。
「肆ノ型 打ち潮ッ!」
「はあああああッ!」
プリズムの、避難誘導の片手間に放ってくれる援護を受けながら。
エクリプスと並んでランボーグに突撃。
胴体に攻撃を叩き込んだ。
足元へエクリプスがさらに潜り込んで、足払い。
巨体が大きく傾く。
「ウウウゥゥゥランボーグッ!!!」
しかし、相手もタダでやられない。
ランボーグは釣り糸を振り回すと、釣り針部分を叩きつけてくる。
派手に飛び散った瓦礫は、私はもちろん、エクリプスやプリズムも一緒に処理してくれるけど。
やはり、取りこぼしが出てしまった。
「ウィング!」
振り向いて叫ぶと、ウィングはとっくに動いてくれていた。
あわや、男の子にぶつかるところだった瓦礫を見事キック。
無事に守っていた。
よかった・・・・!
「ッ今ので最後です!」
「分かった!!」
ウィングの報告を聞くや否や、右手をバチバチさせるエクリプス。
「プリキュア!ヒィーロォーガァールウウウウウウゥー!!!」
私もミラーパッドをスタンバイする横で、拳を引き絞って。
「エクリプス・ジャッジメントオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
轟雷を、ぶつけたのだった。
「スミキッター・・・・!」
「ミラーパッド!オッケー!」
発生したキラキラエナジーも、すかさず回収して。
無事、勝利を収めることが出来た。
「――――おい!そこの外野!言っとくけど、まだ僕はぜーんぜん本気を出してなんだからね!」
エルちゃんを引き受けてくれている、あげはさんのところへ向かっていると。
バッタモンダーが絡んでいるのが聞こえた。
「・・・・負け惜しみって、かっこ悪いよ」
「うがー!戦ってもいない外野の癖に!!次は覚悟しとけよ!!」
すぐに言い返されて、そそくさと退散してってたけども。
ざまみろ!
「まあ、確かに私は外野なんだけどね」
「外野じゃないですよ」
なんて考えていると、あげはさんがそんなことを零しているのが聞こえて。
思わず食い気気味に否定を入れた。
「貴女のサポートに、どれほど助けられたことか」
「そうだな。戦闘中、プリンセスを任せられるのは本当にありがたい」
「あげはちゃんだって、大切な仲間だもん!いつも応援ありがとうだよ!」
「それに、プリンセスも大好きですからね」
「だいしゅき!」
みんなも一緒になってフォローすると、エルちゃんも『だいすき!』とあげはさんにぎゅっとした。
かわいい(確信)
「あはは!ありがと!」
エルちゃんをぎゅっとし返しながら、浮かない顔を弾けさせたあげはさん。
うんうん、辛気臭い顔してるよりも、笑ってる方がね。
いいよね。
「――――よぉーっし!私も頑張らないと!」
「何か、あるんですか?」
『ちょっとその辺でお茶でも』と、みんなで河川敷をあるいていると。
さきほどの喜びをそのままに、気合を入れるあげはさん。
「実は、ついに保育園での実習が始まるんだー!」
「おおー!」
「もー!今から楽しみ過ぎるー!」
『最強の保育士』という夢に向かって、ひたむきに頑張っているあげはさんだ。
いよいよ始まる実習に、気持ちも高揚しているらしい。
「わぁー!あげはちゃん、頑張って!」
「「うんうん!!」」
ましろさんや、ベリィベリーさん達にも激励をもらったあげはさんは。
今日一番の笑顔を見せて。
「もっちろん!アゲアゲで、いっちゃうよー!!」
青空に両手を突き上げて、高らかに宣言したのだった。
「あっ、実習中はましろん家にお邪魔させてもらうよ!ヨヨさんには了解もらってるから!」
「わぁい!」
「あげは!いっしょ!」
「うん!一緒一緒!」
私達も楽しくなりそうな予感に、胸を躍らせていると。
ふと、ベリィベリーさんが難しい顔をしているのに気付いた。
「どうしました?」
「ああ、いや・・・・その・・・・ついうっかりプリキュアのことをしゃべってしまわないかと、思ってな」
なるほど。
確かに気になるところではあるけど・・・・。
「大丈夫だと思いますよ?あげはさん、なんだかんだしっかりしてますから」
「そ、そうだな・・・・」
仲間を信じられなかったと責任を感じたのか、小さく『未熟だ』と呟いているのが聞こえた。
確かにテンション高いし、見ようによっては軽薄に見えるかもしれないけど。
締めるところはきちっと締められる大人だしね。
まさか、そんなことはないでしょう。
・・・・多分、きっと、メイビー。
◆ ◆ ◆
ソラシド市保育園。
ついに実習が始まったあげはは、年長さんのクラスで挨拶を済ませる。
その中で、『最強の保育士を目指している』と話すと。
園児の一人、『たけるくん』が。
最強はプリキュアだと主張した。
「プリキュア知ってるの?」
「うん!悪い怪獣をやっつけてくれる、強いヒーローなんだよ!」
それを皮切りに、『あたしも知ってる!』『僕も僕も!』と盛り上がり出す園児達。
「僕、川原でキュアウィングに助けてもらったんだ!だから僕も、キュアウィングみたく強くなりたいんだ!」
たけるが無邪気にそんなことを言うものだから。
プリキュアと知己であるあげはは、嬉しくなって。
つい、口を滑らせたのだ。
「へぇー!ウィング喜ぶよ!」
「えっ」
「へ?・・・・あっ!」
気付いた時には、もう遅く。
「プリキュアと知り合いなの!?」
「ええーっ!?あげは先生ってプリキュアなの!?」
「だって最強なんでしょ!?」
「あ、っばばばば・・・・!」
失言に気付いたあげはは、ひとしきり慌てふためいた後で。
「先生はプリキュアじゃないよ!どっちかっていうと、こう、仲間的な感じ?」
どうにかそれ以上喋らない様には出来たものの、園児達は大興奮。
担任の先生が『おてがみを書こう』と収めるまで、騒ぎは続いたのだった。
「と、いうわけで!」
夕方の虹ヶ丘家。
あげははキラキラとした顔で、お手紙でいっぱいになった箱を持って。
「保育園のみんなから、ファンレター貰って来たよー!」
「「「わぁーっ!!」」」
ましろ、ツバサ、エルは。
同じく目を輝かせたが。
始めこそ破顔していたベリィベリーは、ふと。
ソラへじとっとした目を向けて。
「・・・・『あげははしっかりしているから大丈夫だろう』と言ったのは、誰だったかな?」
「さて、誰だったか・・・・」
乾いた笑顔を浮かべて、気まずそうに目を逸らしたソラを見て。
ツバサも我に返る。
「ごっほん!・・・・あんまり、僕らのことを話さないでくださいよ?もしも正体がバレたりしたら・・・・」
と、最もな意見を努めて冷静に言うが。
「ごめんごめん!でも、見て見て!」
平謝りしたあげはが見せた文面には、拙い文字で『きゅあうぃんぐ、だいすき』と書かれていて。
「ずきゅーん!!」
やはり、年相応に照れるのであった。
そんなツバサを微笑ましく思いながら、ソラも手紙へ目を通す。
『すかいだいすき』『かっこいい!』といった、シンプルなものもあれば。
「あ、ソラさん見て見て!これ!」
「すごい、力作!」
中には、クレヨンを使ってダイナミックに戦っているところを書いたものもあって。
「あ、こっちにはエクリプスもいますよ」
「本当だ・・・・む、こっちはプリズムが一緒だな、ほら」
「わぁー!こんなに可愛く描いてくれてるー!」
「この子は『箱推し』というやつですね、全員描いてくれてます」
「すごいすごい!」
「よく描けているな」
無垢で、純粋で、まっすぐな応援の言葉に。
ソラだけでなく、他の面々の胸にも。
温かいものが溢れるのを感じた。
「へ、返事はいつまでに書けば・・・・?」
「わぁー!ありがとう!助かるよー!!」
もらったお手紙に、すっかりメロメロになったらしいツバサは。
なお照れ隠ししながらも、恐る恐る問いかける。
するとテンションが上がったあげはが、衝動のままにホールドしようとしたので。
器用に回避して、人間態に変身してから。
「へ、返事を書かないのは、ナイトとしての礼儀に反しますから!ね!プリンセス?」
「あーう!」
そう、誤魔化したのだった。
「ましろん達も、お返事書いてくれる?」
「もちろんだよ!」
「まあ、ここまで書いてもらったのなら、な」
「ありがとー!!」
『そうと決まれば!』と、あげはは小躍りしながら。
翌日の準備をするために、あてがわれた部屋へ向かうのだった。
「あげはさん、楽しそうですね」
「夢への一歩を確実に踏めているのが、嬉しいんでしょうね」
「ああ、私も・・・・青の護衛隊に入れた時のことを思い出したよ」
その背中を見送ったソラ達は、自分のことの様に笑い合ったのだった。