声に出して読みたい日本語・・・・。
「たけるくん!!」
あわや、ランボーグの餌食になるところを。
済んでのところで間に合ったあげはがすくい取った。
「やめろォッ!!」
地面を転がって、姿勢を立て直していると。
なんとか復帰したエクリプスが、果敢にランボーグに殴りかかる。
拳はクリーンヒットし、一時をしのぐことは出来たが。
それだけだった。
「あー、はいはい。君も捕らわれてな」
ランボーグが放ったアンダーグエナジーを避けきれず、プリズムやウィングと同様に捕らえられてしまう。
「ックソ!」
諦めないエクリプスは、何度か殴りつけてみたものの。
やはり、脱出は叶わなかった。
「たけるくん、つかまってて!」
「う、うん・・・・!」
ランボーグが次々水を放ってくる。
あげははたけるをおんぶして、あちこちを全力疾走する。
「あはははははっ!いいぞ外野!」
「あげはちゃん!」
逃げ回る二人が滑稽でたまらないとばかりに、大笑いするバッタモンダー。
あげはは、嘲笑されながらもなお走り続けていると。
二人を追い回すのに夢中になっていたランボーグが、やがて体をふらつかせて。
「ラァンッ!?」
素っ転んでしまったのだった。
「はぁっ・・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・・!」
子ども一人を抱えて、命がけの全力疾走。
立ち止まったあげはは、どう見ても疲労困憊だった。
「たけるくん・・・・大丈夫?」
「う、うん」
「そっか、よかったぁ・・・・!」
それでもたけるを気遣い、微笑みを浮かべるあげは。
「・・・・すごい」
辛そうに息をしているあげはと、ひっくり返ったランボーグとを見比べたたけるは。
そう零すのが精いっぱいだった。
「へ、へぇー?外野のわりにはやるじゃないか」
「――――その外野っていうの、やめてくれる?」
息が上がり切ってへとへとのくせして、生意気にも言い返してくるあげはに。
バッタモンダーは、静かに青筋を浮かべる。
「プリキュアも、保育園のみんなも、私の大切な人達なの・・・・!」
呼吸を整えて立ち上がり、まっすぐ見上げてくるあげは。
「だから、私は外野なんかじゃない!」
その瞳に宿った強い光に、バッタモンダーは気圧されると同時に。
強い不快感を覚えた。
「ッ、外野じゃなければ、なんだというんだ!?」
「保育士!」
問いかけに、即答したあげはは。
一歩一歩踏みしめながら、途中たけるを安心させるように頭を撫でて。
「最強の保育士も、最強のヒーローも、目指すところは同じ」
再びランボーグの前に立つ。
「――――それは、大切な人達を守ること!」
その言葉に、たけるははっとなった。
脳裏に過ぎるのは、川原で助けてくれたキュアウィングと。
怪物から守ってくれたあげは。
二人とも、たけるが無事だったことに安堵していた。
キュアウィングは戦えても、あげはは戦えない。
なのに。
どっちもお揃いだと、そう感じたのだ。
「だ、だぁかぁら!それがどうした!?プリキュアでもない君に、何が出来る!?」
取るに足らない『外野』の気迫に、呑まれそうになっているのを。
どうしても認めたくなくて。
声を震わせながらも、バッタモンダーが問いかけると。
「だったら・・・・!」
あげはは、髪を解く。
「だったら、私はッ!!」
『最強の保育士』から『最高のヒーロー』へ切り替えた彼女の胸元に。
輝きが、宿った。
「たけるくん、これで先生も最強になるよ」
「あげは先生は、もう最強だよ!」
現れたミラージュペンを、ためらいなく取ったあげはへ。
たけるは、ありったけの声で伝える。
「・・・・うん、ありがとう」
『最強』とは、何か。
伝えたかったことが、届いたのが分かって。
あげはは穏やかに微笑んだ。
「エルちゃん!」
「えうっ!?」
「アゲアゲでいこう!」
「・・・・あげ!!」
続けて、エルへにかっと笑いかけたあげは。
その想いを受け取ったエルは。
いつもの様に息を吸い込んで。
「ぷいきゅあーっ!!」
スカイストーンを、あげはへ。
「――――最強の保育士の力!見せてあげる!」
受け取ったあげはは、快活に宣言したのだった。
「――――スカイミラージュッ!」
「トーンコネクトッ!」
「ひろがるチェンジ!バタフライ!」
ロングヘアが更に伸びて、
足元には、ショートブーツ。
「きらめきHOP!」
頭に大きな蝶々の髪飾り。
耳元にも同じくちょうちょモチーフのピアス。
「さわやかSTEP!」
へそ出しタイプの衣装に、パレオがなびく。
「はればれJUMP!」
両手にのスケート選手の様なロング手袋。
目元にアイメイクが施されて。
「アゲてひろがるワンダホー!!キュアバタフライッ!!」
新たな戦士が、降り立ったのだった。
◆ ◆ ◆
「キュア・・・・!」
「バタフライ!」
「あげは先生が、プリキュア・・・・!」
不調が収まって来た視界で前を見ると、あげはさんが新たなプリキュアになっていた。
キュアバタフライ・・・・めっちゃイケイケなファッションですね。
「わぁ!キュアバタフライ!がんばれー!」
「りょーかい!」
たけるくんの声援も受けて、やる気十分なあげはさん改めバタフライ。
「ッケ!お前も閉じ込めてやるだけだ!」
ランボーグが、あのアンダーグエナジーを放ってくるけど。
バタフライが両手を前に突き出すと、ちょうちょ型のバリアが現れて難なく防いでしまう。
なるほど、タンク職!!
「アゲアゲな私には効かないよ!」
しっかりバッタモンダーをからかってから、ランボーグに立ち向かう。
「ランボーグ!」
拘束出来ないならと考えたのだろう。
水の砲弾をとにかく打ちまくってくるランボーグ。
だけど、バタフライも簡単にはやられない。
迫りくる文字通りの『鉄砲水』を、華麗な動きで次々避けていく。
まるで花から花へ飛び移るちょうちょの様。
うーん!ビューリホー!!
「お遊戯の時間はおしまいッ!」
「ランボーグッ!?」
投げキッスで攻撃して相手をひっくり返したバタフライは、ふと。
バッタモンダーが立っている、改装中の建物に近づいて。
「ちょっと、これ借りまーす!」
建設用の足場に張られた、防音シートを取ると。
「そのままゴロンしててね!」
おむつ交換の要領で、あっというまにランボーグを拘束してしまった。
「はーい!すっきりしたねー!」
後は煮るなり焼くなり、好きに出来るという訳だ。
「――――ひろがるッ!!」
もちろん、今のバタフライに『容赦』の選択肢はない。
上空に飛び上がると、これまたちょうちょ型の障壁を展開して。
「バタフライプレスッ!!!」
『プレス』の名前の通り、ランボーグを押しつぶしてしまったのだった。
「スミキッター・・・・!」
・・・・身動き封じてからの、ドギツい一撃。
いや、マジで容赦ないっすね・・・・。
「ッ、ミラーパッド!」
みんなの拘束が解けたことにほっとしつつ、私もキラキラエナジーの回収を忘れずにやる。
「ぃ、ぃいい気になるなよ!僕が更に本気を出せば・・・・!」
「いつでも相手になるよ」
狼狽え、また負け惜しみを吐こうとするバッタモンダー。
対するバタフライは、拳を強く握りしめて。
「でも、また私の大切な人たちを傷つけようとしたら、許さない」
「いいいい・・・・!」
静かに、強く。
宣言したのだった。
「ばった、もんもん・・・・!」
バッタモンダーはすっかり気圧されて。
いつもの文言を呟いて撤退していったのだった。
「わあぁー!キュアバタフライかっこいい!!」
「ふふ、先生のことは、みんなに秘密ね?」
「うん!僕、大切な人を守る最強になるよ!」
悪い奴がいなくなって、ほっとしたんだろう。
たけるくんははしゃぎながら、バタフライとハグしてる。
ううん、とっても微笑ましい光景なんだけども・・・・!
「たけるくん、お話があります」
「スカイ?」
「応援の気持ちはとても嬉しいです。お手紙、ウィングもすごく喜んでいました」
きょとんと見上げてくるたけるくんへ、しゃがんで視線を合わせてから。
肩に手を置いて、
「でも、戦っているところへ近づいたらダメでしょう」
「う・・・・」
「今日はあげはさんがバタフライになったからよかったものの、一歩間違えたら怪我どころじゃなかったんですよ?」
「ご、ごめんなさい」
怒鳴らないように、それでいて、悪いことを二度とやらないように諭す。
うう、叱るってこんなに難しかったっけか・・・・。
弟には割と遠慮なくいけたんだけどな・・・・。
「まあまあ!たけるくんは最強だもんね、もうやらないもんね?」
「うん」
「・・・・分かればいいんです」
結局バタフライにフォローをもらってしまったけれど、何とか伝えられたようだ。
頭を撫でてあげると、嬉しそうにはにかんだのだった。
それはそうと、
「バタフライ!これからは!」
「一緒に戦えるんですね!」
「ぁ、ああ!頼もしい限りだ!」
話が一段落したからか、新しい仲間を歓迎するプリズム達。
・・・・どういうわけだが、三人ともアゲアゲなポーズをとっている。
いや、エクリプスは他二人がやってるからって感じか。
ちょっと照れが見え隠れしてるな。
「あげ!」
まあ、エルちゃんが可愛いからいっか!(脳死)
「ありがとー!これからは、保育士とプリキュア!両方頑張っちゃうから!よろしくねー!」
何はともあれ、心強い仲間が出来て。
嬉しい限りである。
「たけるくん、バタフライも大好きになったみたいですね」
数日後の、虹ヶ丘家。
たけるくんから、バタフライも含めた私達のイラストが送られてきた。
ファンレターは相変わらず嬉しい限りだけども・・・・。
「・・・・あげはちゃん、また泊まりに来てほしいなぁ」
ましろさんの言葉に、内心『それなー!』となる。
いや、あの人がいるとほんとうに賑やかで楽しいから。
いざいなくなると寂しいものがある・・・・。
でも、そもそも遠いとこから車で通学してるんだし。
あんまり無理させるのもなぁ・・・・と考えていると。
玄関のチャイムが鳴った。
「誰か来たな?」
「私、見てきます」
来客の予定あったかな?あるいは宅配便?
考えながら、玄関を開けると。
「サプラーイズ!!」
「デジャブ!!」
がばちょ!!と、あげはさんにハグされた。
「あげはちゃん!?」
「その荷物は・・・・?」
せ、成人女性+でっけぇトランク×無理な反り方した姿勢とか・・・・!
腰が、腰が身罷られる・・・・!!
「どっせい!」
「ありがとう!」
必死に姿勢を戻して降ろすと、あげはさんはてへぺろとばかりに頭を叩いて。
「引っ越してきちゃった☆」
『きちゃった☆』って、あんた。
ひ、引っ越しってそんな気軽にやるもんですっけ・・・・!?
「私もプリキュアになったことだし、一緒に住んでた方がいいでしょ?」
な、なんてサプライズ・・・・!!
いや、普通に嬉しい。
嬉しいんだけど・・・・!!
「わぁーい!よろしくね!あげはちゃーん!」
「イエーイ!アゲアゲー!」
・・・・ましろさんが嬉しそうなら、いっか(脳死)
なにはともあれ。
また賑やかになりそうである。