ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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49話、最高でした・・・・(遺言)


偽物、案じる

「――――あれ、あげはさん?」

「何をしているんだ?」

「あ、ソラちゃん。ベリィベリーちゃんもおかえり!」

 

その日、ベリィベリーさんとランニングから帰ると。

あげはさんがもう起きていた。

『おっはよ!』と、ひかえめながらも元気な声であいさつしてくるあげはさん。

ちなみに今は朝の六時。

部活の朝練などがないなら、もうちょっとくらい寝てても許される時間である。

 

「こんな早くに何を・・・・?」

 

問いながら、視線を動かすと。

ダイニングの上に、見事な朝食が並べられていて。

 

「うわぁっ!?バエーッ!!」

「ばえ・・・・?虫がどうしたんだ?こんなにすごいのに」

「そっっっちじゃなくてですね・・・・!!」

 

いや、ホントに。

見た目はもちろん、栄養もばっちり考えられているだろう食事達。

 

「あはは!ナイスリアクション!頑張った甲斐があったよ!」

「いや、でもこれ大変だったんじゃ・・・・!?」

 

果物、野菜、食パンに至るまで。

丁寧な飾り切りが施されていて・・・・!

絶対とんでもない手間かけてるでしょ!?

ありがたいのはもちろんあるんだけど、それ以上に戦慄が勝る・・・・!!

 

「いいんだよこれくらい!」

 

そんなこちらの心境を察してか、快活に笑ってくるあげはさん。

 

「でも・・・・!」

「おはよー・・・・あれっ!?今日の朝ごはんすごいね!?」

 

そうこうしているうちに、ましろさんが起きてきてしまった。

 

「これ、あげはちゃんが作ったの!?」

「そうだよー!おいしい朝ごはん食べて、気分アゲてこ!!」

「あらあら、とってもご機嫌な朝食ね」

「でしょー!?」

 

最終的に、あれよあれよと家人達が集まって来たので。

それ以上追及することは出来なくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(働き過ぎでは?)

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、あげはさんって器用なんだな」

 

鋳頭鋳造、休憩時間。

鉄郎くんの秘密基地だという、敷地の隅っこのスペースで。

一緒に缶ジュースを飲みながら、話を聞いてもらっている。

『ヒーローも吐き出したいことあるだろうから』と、たまにお邪魔させてもらっているのだ。

・・・・本当に。

本当にッ!

ありがとうございます・・・・!

プリキュアは、皆さまのサポートで成り立っております・・・・!(平伏)

 

「ええ、でも張り切り過ぎてて心配で・・・・」

「そうなの?」

「鉄郎くんだって、一日中全力疾走するのを毎日続けてたら、疲れちゃうでしょう?」

「ああ、なるほどー」

 

あれから数日。

めちゃくちゃ手の込んだ食事はもちろんのこと、掃除、洗濯、炊事に。

エルちゃんのお世話まで。

私、ましろさん、ベリィベリーさんのお弁当も作っちゃうし・・・・。

めっちゃ可愛かったし、おいしかったけど!!

おいしかったけど!!

 

「でも、ソラさんは大人だろ?」

「ええ、だから出来る範囲で手伝ってはいるんですけど、あげはさんがそれ以上で・・・・」

 

サボってるわけじゃないんよ・・・・サボってるわけじゃないんよ・・・・!!

戦国武将で例えるなら。

島津豊久の援軍に駆け付けたけど、豊久本人が強すぎて自分の出番はほとんどない。

みたいな状態・・・・。

 

「強敵だなぁ」

「強敵なんです・・・・」

 

同じプリキュアになって、とっても張り切っているのは明確だ。

私達の世話をとことん焼いてて・・・・。

特に一番年少であるツバサくんを気にかけている様だ。

『鳥なら野菜多い方がいいでしょー?』って、サラダを多く取り分けたり。

寝床をかわいくデコったり・・・・。

昨日なんかダイニングで寝落ちして、ツバサくんに怒られていた。

疲れが出ているのは明らかだ。

あげはさん・・・・どうしてそんなに働くの、あげはさん・・・・!

 

「ちなみに、ソラさん料理の腕は?」

「食べ物から食べ物は作れます、ビジュアルは期待しないでください」

(とーちゃんの料理みたいなもんかな)

 

メシマズ、では、ない、はず・・・・!

チシュー(シチュー)とか、バンハーグ(ハンバーグ)とか。

こちらの学校でも習いそうなメニューは作れるんよ。

でも、ましろさんやあげはさんのを見ちゃうと、ね?

ね!?

 

「私も、本腰を入れて家事をやるべきでしょうか・・・・」

「でも、それだと今度はソラさんが大変になるんじゃない?ソラさんが心配されちゃうよ」

「ううん・・・・」

 

あちらを立てればこちらが立たぬ・・・・!

 

「もうしばらく様子見してみたら?ツバサってやつも気に懸けてるなら、ソラさんが無理になにかやらなくてもよさそうだけど・・・・」

「・・・・悔しいですけど、そうする他はなさそうですね」

 

んー・・・・。

適材適所といえど、友人の助けに、即戦力になれないっていうのは。

もどかしいにもほどがあるよなぁ・・・・。

しょんぼりしながらジュースを一口した。

その時だった。

 

「・・・・ん?」

「なんだ?鳥?」

 

可愛くの騒がしい声に気付いて見上げると、小鳥さん達が慌ただし気に鳴いている。

・・・・この子達確か。

 

「ツバサくんの鳥友達ですか?」

 

問いかけると、『そうそう!』とばかりに一層賑やかになる鳥さん達。

その内の何羽かは、まるでついてこいとばかりに距離を取ったり戻ってきたりして・・・・。

 

「もしかして、どっかでランボーグが出たんじゃないのか?」

「ええ、だと思います!」

 

この前も鳥さん達が報せてくれたし、可能性は高い・・・・!

 

「鉄郎くん、すみませんが・・・・!」

「うん!みんなには『ソラさんとこの赤ちゃんが、熱だした』って言っときゃ大丈夫だろ」

「ありがとうございます、すぐに戻りますから!」

「気をつけてなー!」

 

鉄郎くんに見送られながら、塀を飛び越えて敷地から出る。

 

「案内、よろしくお願いします!!」

「チチチ!!」

「ピィーッ!!」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

――――時間を少し遡る。

とある広場を訪れていた、あげは、ツバサ、エルの三人。

今日は、あげはの実習先であるソラシド保育園の壁画アートの一画に、お言葉に甘えて絵を描きに来ていた。

 

「保育園の先生が、『実習の記念に描いて』って言ってくれたんだ。でも引っ越しでバタバタして、時間がなくて」

「時間がなかったのに、僕達のお世話までしていたんですか?」

 

事情を話すあげはに、筆を執っていたツバサが問いかけると。

彼女はバツが悪そうに笑ってごかましたのだった。

 

「あ、上手じゃん少年!」

 

それから畳みかける様に、ツバサの絵心について触れる。

 

「父さんが絵描きなので、これくらいは・・・・」

「へえー・・・・ねえ、スカイランドのご両親ってどんな人なの?」

(そういえばあげはさんは、会ったことがなかったな)

 

問いかけに、低い位置を描くために座り込んだツバサは。

筆を洗いながら、ややすねた様子で応える。

 

「・・・・二人とも、いつまでたっても僕を子供扱いですよ?何かと構ってくるから、鬱陶しくて」

 

そこまで答えてから、思い当たることがあって。

ツバサは短く笑った。

 

「どうしたの?」

「いえ、あげはさんの世話焼きな感じ、誰かに似てるって思ったら、父さん母さんに似てるんだ」

 

突然笑い声を上げたツバサに、疑問の目を向けていたあげは。

彼の、年相応の表情に、何か納得したような顔になって。

 

「あげはさん?」

「ああ、いや・・・・ツバサくんはさ、家族と離れて暮らしてるじゃん?」

 

気を取り直して、壁画に向き直って。

 

「エルちゃんやソラちゃん、ベリィベリーちゃんにましろんもそうだし・・・・・だからかな、構ってあげたくなるんだよね」

 

とつとつ、心情を零していく。

 

「みんながいーっぱい頑張ってるの、知ってるし」

「あげはさん・・・・」

 

ツバサから見れば、あげはだってとても頑張っている。

しかし、それは自分達を想ってのとこで。

何と言えばいいのかと、言葉を迷わせた時だった。

 

「あーい!」

 

エルの歓声が聞こえて、揃って振り向くと。

 

「あっ!」

「プリンセス!?」

 

いつの間にやったのか。

絵具を両手に塗りたくったエルが、壁画にペタペタと手形を残してしまっている。

 

「もう、めっですよ」

「・・・・いや」

 

ツバサは、普通にエルをたしなめたが。

あげはは違う考えの様で。

 

「これはこれでいいんじゃない?」

「えっ?」

「ほら、これはこうしたらチューリップ、こっちはこれで、少年!ね?」

 

ピンクの手形には葉と茎をつけてチューリップに、黄色い手形には羽と足を書き込んでひよこにしてしまう。

彼女の発想に、感心するツバサと、歓声を上げるエル。

 

「ほら、エルちゃん!もっとペタペタしよ!」

「あーい!ぺたぺた!」

 

差し出されたパレットに、遠慮なく手をつけたエルは。

心のままに手形をつけ始めた。

 

「そうだ!少年も自由に描いてみてよ!」

「ええっ?」

「その方が三人の合作って感じがするじゃん?」

 

三人で、一緒に。

これまで頼ってくれなかったあげはからの頼み事。

 

「まあ、あげはさんがいいなら、いいですけど」

 

年相応のおませな態度ながらも、内心の嬉しさを隠せないツバサは。

確かに了承したのだった。

――――それから三人は、自由に筆を走らせた。

手形をアレンジしたり、気球を描き込んでみたり、大きな虹を横切らせたり。

始めに描いていた大空に、思い思いの絵を描いていく。

 

「かんせーい!」

 

そうして出来上がった壁画は、三人とも満足できる出来になった。

 

「二人ともありがとう!お陰で最高の壁画になったよ!」

「でも、よかったんですか?僕とプリンセスが混ざっちゃって」

 

元はあげはに許された一画だったのに、部外者の自分が手を加えてよかったのか。

そんなツバサに、あげはかからからと笑って。

 

「だからいいんじゃん!相乗効果ってやつ?私一人で描くよりも、ずっといい絵になったよ!」

 

とっても賑やかな壁画を見るあげはの横顔。

キラキラと輝く瞳が、なんとなく眩しく思えて。

ツバサはやや逃げる様に、同じく壁画に目をやる。

・・・・確かに。

自分と、エルと、あげはで描き上げた壁画は。

なんだか、光って見えるのだった。

 

「――――ああ、なんて可哀そうなんだ」

 

そんな雰囲気に水を差すのは、やはりこの男。

 

「せっかく一人増えたのに、ここにいるのは二人だけだなんてね」

「「バッタモンダー!」」

 

警戒する彼らを意に介さず、バッタモンダーはいつもの様に手を足元に打ち付けて。

 

「カモン!アンダーグエナジー!」

「――――ランボーグ!」

 

ゴミ箱を素体にした、ランボーグを呼び出したのだった。

 

「ツバサくん!」

「はい!」

「「スカイミラージュッ!!」」

 

ツバサとあげはもまた、ミラージュペンを取り出して変身する。

 

「あとの三人が来る前に、決着をつけさせてもらうよ」

 

現れたプリキュア達へ、気障ったらしく余裕を持って宣言するバッタモンダー。

むっとなったバタフライは、毅然と反論を口にする。

 

「なんかかっこつけてるけどさ!ようするに、五人相手に勝てる自信がないってことじゃん!」

「ですね!」

「自信がどうとかじゃねぇし!こういうのは、頭を使った作戦っていうんだよぉー!!」

 

ウィングにも突っ込まれて、苛立つ様子をみせたバッタモンダー。

作戦があるにしても、少なからず図星であろうことは。

明確なのであった。

 

「ランボォーグ!!」

「ごみはポイ捨てしちゃダメだろぉー!?」

「ごみはゴミ箱へ!!」

 

ランボーグが、ペットボトル型のミサイルを放つ。

ウィングもバタフライも、難なく攻撃を対処。

なんなら打ち返して、ランボーグの体を大きく傾けた。

 

「っち、たった二人にいいようにされてんなよ!」

「ランボーグ!!」

 

バッタモンダーに叱咤されながら、なお攻撃し続けるランボーグ。

 

「・・・・ッ!」

 

その攻防の最中。

流れ弾が、保育園の壁画に迫って。

 

「っく!」

 

バタフライが、咄嗟に障壁を張って守ったが。

 

「ほーう?・・・・ランボーグ!」

 

悪辣なバッタモンダーは目ざとく気が付き、指示。

ランボーグは、壁画諸共攻撃しようと、攻撃を乱射した。

 

「はあああああ!!」

 

ウィングがぐるんと身を翻し、起こした竜巻で攻撃を散らすが。

いくつかは壁画へ向かってしまった。

 

「あっ・・・・!!」

 

目を向けた先には、バタフライが立ちはだかっていて。

 

「――――させない!!」

 

障壁を大量に展開して、全て防ぎ切ったのだった。

 

「ふうーん・・・・その壁画、よっぽど大事なものなんだね?」

 

黒煙が晴れた先、バタフライとウィングは険しい顔で睨む。

そこには、大量のペットボトルミサイルを携えたランボーグがいた。




小鳥のところ、「ピピー!」と言わせたら別の奴に見えたのでボツッたんですよ・・・・。
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