「やああ!!」
「はあああ―――ッ!!」
ウィングは殴打で、バタフライは障壁をブーメランの様に飛ばして。
放たれたミサイルを潰していく。
と、取りこぼしが一つ。
壁画に向かった。
「ッこのあいだは保育園で、今度は子ども達の壁画!?」
なんとか障壁を間に合わせたバタフライは、不快感をあらわにバッタモンダーを睨む。
「あんたみたいな卑怯者、マジで嫌いなんだけど!!」
「かなしいねぇー?僕は僕なりに最善を尽くしているだけなのに」
『でも、そこまでいうなら』と、意地の悪い微笑みを浮かべて。
「正々堂々力比べと行こうじゃないか、僕のランボーグと、君のバリア。どっちが強いかな?」
「ランボーグ!!」
背中にペットボトルのジェットを積んで、ランボーグが飛び出す。
上等だとばかりに、バタフライは三枚重ねの障壁で挑むが。
一瞬で二枚割られて、最後の一枚も早々にひびが入り始めた。
「バタフライ!」
「大丈夫!任せて!」
ウィングが案じて駆けつけるも、『大丈夫』としか返さないバタフライ。
「えう・・・・!」
赤子の身でも理解できる、明らかな危難。
始めこそ不安げに見守っていたエルだったが。
その幼い脳裏に、さきほどの楽しい時間が想起される。
大好きなツバサやあげはとやったお絵描きは、とても楽しかった。
だけど、いじわるなやつが二人諸共に壊そうとしている。
「・・・・っ」
小さな両手を、きゅっと握りしめて。
「めえええッ!!!」
バッタモンダーへ、叫んだ。
「な、なんだよ?」
「めっ!!めええええ!!」
喃語で叫べるだけ叫んで、わんわんと泣き出してしまったエル。
「そうだよね、エルちゃんも守りたいよね・・・・!」
戸惑うウィングやバッタモンダーとは対照的に、バタフライは機敏にエルの想いをくみ取る。
「正直、バリアはこれ以上持ちそうにない!私が隙を作るから、なんとか・・・・!」
「大丈夫!僕を頼ってください!」
言葉を遮られるとは思わなかったのか、驚くバタフライへウィングが宣言する。
思わず振り向くと、力強い眼差しに見つめられていて。
「ふふ、それじゃあ、頼っちゃおうかな!」
安堵を覚えたバタフライは、はにかんで頷いたのだった。
「力比べの続きは、僕が引き受ける!!」
飛び出したウィングは、障壁へ拳を叩き込んで。
バタフライと一緒に押し返していく。
先ほどとは打って変わって、みるみる後退していくランボーグ。
そして、ついに。
「「はあああああああッ!!」」
「ランボーグッ!?」
障壁ごと、吹っ飛ばしてしまった。
逆転したプリキュアを、キラキラとした目で見つめるエルに。
二人が振り向く。
「一緒に守りましょう!プリンセス!」
「泣くのはもうおしまい!ここからアゲてくよ!エルちゃん!」
「・・・・あげ!!」
頼もしい笑顔を向けられて、笑顔を取り戻したエルは。
「ふうううう・・・・!!」
光を纏って、息を吸い込み。
「ぷりきゅあああああああッ!!」
二つのスカイストーンを、ウィングとバタフライに授けたのだった。
「これって、僕達もスカイとプリズムみたいに・・・・」
「うん!やっちゃおう!」
『アップドラフト・シャイニング』の前例を知っているので、二人も倣ってスカイストーンをセット。
「「アップドラフト・シャイニング!!」」
同じように手を繋いで、同じ技を唱えると。
出てきたのは、ド派手な浄化技ではなく。
なんだか不思議なアイテムだった。
「これは、なんでしょう?」
「うーん・・・・」
束の間頭をひねったウィングとバタフライだったが。
間もなくバタフライが、『あ』と声を上げて。
「これ絵具のパレットじゃない?・・・・ってことは、お絵かき?」
『何に使うんだろう』と、戦闘中にも関わらず悩みだしたプリキュア達を見て。
好機ととらえたバッタモンダー。
「今のうちにやれ!ランボーグ!!」
「ランボーグ!」
すかさず指令を出し、ランボーグに攻撃させる。
「はああッ!!」
こちらも即座にウィングが応戦するも、いかんせんパワーはあちらが上だ。
苦い顔で、それでも必死に対抗するウィングを見て。
「ええい!なんとかなるッ!!」
まさしく『ええいままよ!』とばかりに、バタフライはスカイストーンをパレットに装着した。
「二つの色を一つに!レッド!ホワイト!はあああああ!!」
心のままに、操作すれば。
「ん?あれ?」
ウィングの苦悶の表情が消えた。
かと思うと、その場でランボーグを軽々持ち上げてしまう。
「はああああ!?なんだそりゃ!?」
「え、なんなんですかこれ!?どうすればいいんですか!?」
「みっくちゅぱれっと!」
「ああ、そういう名前なんだぁ・・・・じゃなくて!!」
敵も味方も混乱する中、バタフライは何かに気付く。
「そうか!これ、みんなをパワーアップ出来るんだよ!」
「・・・そういうことか!」
それなら、いきなり発揮できた怪力にも納得がいく。
ウィングが雄叫びを上げながらランボーグを投げ飛ばすと。
哀れ、ランボーグは地面に叩きつけられてダウンしてしまった。
「ぱ、パワーアップだと!?それならこっちもだ!ランボーグッ!!」
「ランボオオォーグッ!!」
やけっぱちとばかりのバッタモンダーに応えて、ランボーグは背中のペットボトルを二列に増やす。
そのまま猛然とウィングに特攻を仕掛けるが。
「はああああ!!」
パワーアップした彼の敵ではなかった。
容易く殴り飛ばされ、再びダウン。
今度はペットボトルも潰れてしまう。
「今です!!」
ウィングの声に、バタフライは再びミックスパレットと向き合った。
「すべての色を一つに!ミックスパレット!」
赤、黄色、青、白。
備わった四色すべてが活性化して。
「まぜまぜカラーチャージ!!」
産まれた虹色が、ウィングを巨大な不死鳥へ変化させる。
その上に飛び乗ったバタフライは、共にランボーグへ突撃して。
「プリキュア!!タイタニックレインボー!」
勇ましい不死鳥を、かわいらしいプニバードへ変化させて。
「――――アタックッ!!!」
容赦ない圧し掛かりを、喰らわせたのだった。
◆ ◆ ◆
――――あれから。
張り切り過ぎを認めたあげはさんは、私達も頼ってくれるようになった。
よかった・・・・。
ご飯も家事も、みんなで分担してやるようになったし。
うん、これが一番私達らしいよ。
「それじゃあ」
「「かんぱーい!」」
現時刻は夜十時。
ましろさん達は眠っている時間だ。
ダイニングで集まった私とあげはさんは、グラスを鳴らしてまずは一口。
――――私にも何か出来ることはないかと考えた結果。
鉄郎くんに見習って、あげはさんと一対一で話す時間を設けることにした。
抱えている悩みを話せなくても、誰かと話すことで落ち着くことってあるからね・・・・。
「いやぁ、ご心配おかけしたねぇ」
「いえいえ、お陰であげはさんがどんな人が分かった気がします」
「おっ?それってどんな?」
「目を離すと無理するところです」
「おまいうー!」
あげはさんは学校の課題をこなしながら、ジュースやお菓子をつまんでいくスタイル。
こっちの方が作業が捗るらしい。
「――――しかし、ミックスパレットでしたか。パワーアップは普通にありがたいですね」
「ねー、組み合わせで色んなことが出来るみたいだし、これからもジャンジャン頼ってよね!」
「あげはさんこそ、私だけじゃなくて、ましろさんやベリィベリーさんもいるんですから」
「あっはは、ありがとー」
学校のこと、職場でのこと。
たわいもない話で盛り上がっていると、夜も更けて来て。
「そろそろ寝ようかな・・・・あ、そうだ!」
そろそろ解散かな?というところで、あげはさんが思い出したように声を上げる。
こちらを見る目は、なぜか爛々と光っていて。
「ソラちゃん、ましろんとはこの頃どうなの?もう告白されたりした?」
「――――」
――――無駄に声を潜めて、投げられた質問に。
血の気が引いていくのを感じた。
Q.告白されましたか?
A.されました。
Q.いつされました?
A.スカイランドに帰る直前なので、もう半月前ですね。
Q.お返事は?
A.まだです。
Q.あげはさんになんて言われましたっけ?
A.『ましろさんを蔑ろにしたら、絶対に許さない』
「――――あげはさん」
「うん?」
「俳句を詠むので、介錯してください・・・・」
「よぉーっし、話を聞こうじゃないの」
たぁん、と。
ビールのノリで注がれたコーラが、目の前に置かれたのだった。