「何時なんですか?締め切り」
「五時までに、市役所に出さなきゃで・・・・!」
信号待ちの間、ツバサくんと話しているのを聞きながら。
電光掲示板をちらっと見る。
「三時半・・・・」
「まだ時間余裕あるじゃん」
「ええ」
なんとか間に合いそうだと、ほっとしていた時だった。
トラックが通り過ぎて、向こう側が見えるようになる。
バッタモンダーが、気障ったらしい笑みを浮かべていた。
「・・・・ッ!」
「バッタモンダー!」
身構えると、バッタモンダーは愉しそうにましろさんを見て。
「その封筒、随分大事なものなんだね?」
「あんたには関係ないし!」
思わず前に出て庇っていると、バッタモンダーはわざとらしく嘆きながら。
「僕は心配しているのさ!何かのアクシデントで、それを失くしてしまわないかってね!」
そんなことを宣いやがった。
・・・・こいっつッ!
マジで、大っっっ嫌いッ!!!
「カモン!アンダーグエナジー!!」
その『アクシデント』張本人は、ランボーグを召喚。
歩行者用信号機を、怪物に変えてしまった。
「もー!こんな時に!ほんとヤな奴!」
「ええ、全く以てその通り!!」
――――ひろがるチェンジッ!!
対処しないわけにはいかない。
みんなでミラージュペンとグローブを構えて、即座に変身。
――――レディ、ゴーッ!!
――――ひろがるスカイ!プリキュアッ!!
ましろさんの大事な原稿は、エルちゃんに任せて。
ランボーグと対峙する。
「やれっ!ランボーグ!!」
まずは一番槍として私とエクリプスが突っ込む。
「人を守るための信号に乱暴を働かせるとはッ!!」
「許されると思わないことですッ!!」
「「は あ ぁ っ !!」」
打ち上げたところへ、ウィングが回って。
思いっきり叩き落とす。
「やぁっ!」
落ちて来たランボーグをプリズムが蹴り飛ばせば、ダウンを取れた。
動けない相手の上を、バタフライが陣取って。
「ひろがるッ!バタフライプレスッ!!」
必殺技を放つけれど。
「ランボーグッ!!」
ランボーグが、赤い光を放ったと思ったら。
バタフライの動きが止まってしまった。
っていうか、私達も動けない!?
「ハアッ!?なにこれ!?体、動かせないんだけど!!」
「僕達もです!!」
「なんだこれは、何が起こっている!?」
なんとか動いてみようとしたけれど・・・・ダメだ。
筋どころか、骨を折る覚悟でやらないと出来ない!
今ここでそんなんやったら、プリズムやエルちゃんに心配をかけてしまう・・・・!
「って、ランボーグも止まってる!?」
そういえば。
ものすごいチャンスなのに、ランボーグはぴくりとも動いていない・・・・!?
すると、体の拘束がふっと解けて。
ランボーグは機敏な動きで、バタフライプレスをかわしていった。
「ッヒィーロォーガァールゥー!!」
吹っ飛ばされたバタフライを、エクリプスが受け止めているのを確認しながら。
「スカイソォーッド!!」
様子見の必殺技を放ってみると。
目の前で、ランボーグの信号部分が赤になって。
またしても止められてしまった。
「信号、そういうことか!」
「赤になると動きが止まる!」
「青信号になると動けるけど、そのタイミングが分からない・・・・!」
クソッ、こっちは時間が押してるって言うのに・・・・!
「厄介な・・・・!」
案の定避けられた先で着地しながら、ランボーグを睨む。
再びの赤、動きを止められた。
「どうしたらいいの!?」
「このままじゃ、絵本の締め切りに間に合いません・・・・!」
バタフライもウィングも苦い顔をする中。
「それはいいの、まずはランボーグを・・・・!」
一番気を揉んでいるはずのプリズムが、そんなことをいうものだから。
「よくありませんッ!!」
思わず、声を張った。
「プリズム!次に青に変わったら、構わず行ってください!」
「そうですよ、あんなに頑張ったんだから!」
「で、でも・・・・!」
こんな大ピンチの中、自分一人だけ離脱なんて出来ないんだろう。
その優しさは、本当に尊いものだけど。
だからこそ・・・・!
「私達、いつもプリズムの優しさに支えてもらっている!だから今日くらい思いっきり応援させてよ!!」
「その通りだ!こんなところで、あんな奴に!邪魔などさせるものかッ!!」
それでも迷うプリズムの前で、私は気を巡らせる。
・・・・そういえば剣振らずとも出来る技があった!
「――――
「ラァンッ!?」
剣型のエネルギーを放って、ランボーグを攻撃すると。
信号が青に変わる。
「行ってください!!私達の為に、何より貴女の為に!!行ってください!!」
――――思い出す。
体育祭で、頑張ったのに上手くいかなかったと涙する。
あの、悔しさと悲しさでいっぱいの、顔。
あれは、まだいいんだ。
純粋なアクシデントだったから、まだ許容出来たんだ。
だけど、今は・・・・!!
「貴女の努力!こんなところで断たせはしないッ!!
仲間達と並んで、ランボーグと対峙すれば。
「・・・・分かりました!」
プリズムは、しっかり頷いてくれた。
エルちゃんから原稿の入った封筒を受け取って、一緒に走り出すプリズム。
「ああ、何て美しい友情だ・・・・でも大丈夫、不毛な譲り合いはもうしなくていい様にしてあげるよ!!」
だけど、再び赤になる。
プリズム諸共、動きが止められてしまう。
クソッ、
これじゃジリ貧か・・・・!
「スカイ!次動けるようになったら、思いっきり突撃して!考えがある!」
「ッ了解しました!」
と、バタフライが何かを思いついたらしい。
私はその言葉を信じて、再び
もう一度強制的に青へ変える。
「ミックスパレット!レッド!イエロー!」
その隙にバタフライは、ミックスパレットを使って。
「守りの力、アゲてこ!」
私にバフをかけてくれた。
「行っちゃえ、スカイ!」
「止めろ、ランボーグッ!」
飛び出す。
ランボーグの前に躍り出る。
相手はまた赤に変えて来たけど、守りの力がある今は。
もはや恐れるものではなかった。
「水の呼吸!壱ノ型 水面斬りッッ!!」
遠慮なく一閃を叩き込んで、赤信号を物理的に破壊する。
ヨッシャ!ちょっとズルいのは否めないけれど、何はともあれ。
これで赤信号は使えない!!
「プリズム!!」
「はいっ!行ってきます!!」
もう不安要素はない。
プリズムは一目散に駆け出して、市役所へ急いでいったのだった。
「さぁーって、どう料理してやろっか?」
「動きが止められないのなら、もう恐れるものはないな」
「もう好き勝手させないぞ!」
再び仲間達と並んで、剣を構えなおす。
「――――覚悟」
――――後のことは、もう語るまでもないだろう
◆ ◆ ◆
――――結果として。
ましろはなんとか締め切りに間に合った。
『応募できたよ』の報告を受けた面々が、どっと安堵したのは記憶に新しい。
そして、後日郵送されてきた結果は、『落選』だった。
これが最初なので、無理もない結果だが。
それでも、ましろの頑張りを見て来た面々は、ともすれば本人以上に肩を落としたものだ。
「――――わぁ!」
コンクールの、展示会場。
大賞や入選はもちろん、落選してしまった作品も展示されるとのことで。
足を運んでいた。
「綺麗・・・・!」
ましろは大賞を取っていた菜摘の人魚姫に、感嘆の声を上げていると。
「ありがとう」
後ろから、菜摘が話しかけてくれた。
「ましろんさんの絵本も、すっごく素敵だった。私もいつか、あんなふうに優しい世界を描きたいわ」
「菜摘さん・・・・!」
心からの賞賛の言葉が、なんだかくすぐったくて。
ましろははにかみながら、頷いたのだった。
「あ、これじゃないか?」
「本当だ」
一方、落選した絵本のコーナー。
ましろの絵本を見つけたソラとベリィベリーは、早速表紙をめくった。
――――森の中で、ブランコをこいでいた女の子。
やってきたもう一人や、森の動物たちも一緒になって漕いでいくと。
やがて、遠くに美しい虹が見えて。
『綺麗だね』と笑い合う、そんな世界。
「あーい!なかよちー!」
エルも、嬉しそうにぱちぱちと拍手をしていて。
好感触だった。
「エルちゃん・・・・!」
「ましろさんは、やっぱりすごいですね」
途中から合流したましろ達。
ニコニコ顔のエルを見て、ほっとするましろを見ながら。
ソラは、そんな感想を口にした。
ただ可愛いだけではない。
譲り合ったり、分け合ったりする大切さ。
その先には、素敵なものがあるのだと、優しく語り掛ける物語。
己には到底できない、素晴らしいことなのだという思いを。
言葉に込めた。
「・・・・コンテストには、落選しちゃったけど」
エルを見守りながら、ましろはとつとつ口にする。
「わたし、これからもどんどん描いてみたいです。エルちゃんや、誰かの心に届くような、そんな絵本を・・・・!」
「・・・・はい、楽しみにしていますね」
やりたことを見つけたましろへ、ソラは柔く微笑みかけたのだった。
◆ ◆ ◆
――――ましろさんのコンテストチャレンジも無事に終わり、新たにやりたいことを見つけた彼女にほっとした。
その夜。
「ソーラちゃん」
「あげはさん?」
寝るために自室へ向かおうとすると、あげはさんに手招きされた。
導かれるがままに部屋に入って、促されるがままに座る。
「どうしたんですか?」
「ふっふーん、実はねー」
要件を聞くと、得意げに机から一枚のチラシを持ってくるあげはさん。
これは、プリティホリックの・・・・?
「今度、ましろんの誕生日じゃん?」
「ええ、そうですね」
「それ、今度別の支店で販売される限定品なんだけど、よかったらましろんと二人で行ってきたらどうかなって」
「え?」
た、確かに来週はましろさんの誕生日。
プレゼントをどうしたものかと悩んではいたものの・・・・。
「いいんでしょうか、皆さんを差し置いて」
「っていうか、ソラちゃんと一緒の方がましろん喜ぶと思うな。ほら、前に出かけた時は邪魔が入っちゃったし」
「ああ・・・・」
前、つまり水族館の出来事。
苦い思い出がよみがえって、自分の目からハイライトが外出するのが分かった。
「それにほら、色々それどころじゃないイベントの所為で先伸ばしちゃってる返事を伝える、またとないチャンスだと思うんだけど」
「んっぎゅ・・・・!」
そうだった。
私、ましろさんにいい加減返事しないといけないんだった。
――――告白されたことを打ち明けたあの夜。
キルミラやバッタモンダー等、それどころじゃない案件が続いたこともあって。
あげはさんには一度見逃してもらえているのだった。
「で、どうよ?」
「・・・・そうですね」
もう一度、チラシに目を落とす。
ド派手な『限定品』の下に、色とりどりのアクセサリーやコスメが並んでいる。
「ついでに言うと、その支店がある町。思い出作りにもぴったりなんだよね」
『だから、万が一ましろんの好みに合わなくても大丈夫』。
言外にそこまで伝えられてしまっては、断る方が失礼に思えた。
「・・・・分かりました、ひとまずやれるだけやってみます」
「うん!あっ、さすがに今度は出羽亀ひかえるから、安心してね!」
「アッ、ハイ」
喜んでいいのか微妙に分からない捕捉を受けながら、もう一度チラシに目を落とした。
「おいしーなタウン、か・・・・」
・・・・さてさて。
今度こそ無事に終わると良いけれど。
次回、オリジナルストーリー入ります。