ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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1月29日、日刊ランキング22位にお邪魔させてもらいました!!
急にアクセス伸びたから、何事かとびっくりしました(笑)
日頃のご愛読、誠にありがとうございます!





やっっっっっっっとです!!!!


偽物、観念する

『――――そっか、じゃあランボーグは何とかなったんだね』

「うん、心配かけてごめんだよ。あげはちゃん」

 

――――あの後。

気を失ったソラに一同が狼狽えていたところ、デリシャスパーティチームの仲間である『ブラックペッパー』こと、『品田拓海』が合流。

負傷したソラを見て、自宅でもあるペンション『福あん』に運び込むことを提案。

現在母の『品田あん』付き添いの下、治療に当たってくれているのだった。

 

『ううん、こっちこそ駆けつけられなくてごめん・・・・言い訳になるけど、夜の準備に夢中だったんだ』

「それこそいいんだよ。ありがとう、あげはちゃん」

 

聞けば、夜のバースデーパーティに向けて準備を進めていて。

途中休憩がてらテレビをつけたところで、おいしーなタウンの騒動を知ったということだった。

元々スマホを持たないソラはもちろん、ましろにすら連絡が繋がらない始末。

もう少しで、『タイタニック・レインボーで変身したウィングに、みんなで乗っていく』という強硬手段を取ろうとしていたところだったらしい。

 

『それで、ソラちゃんは今どうなの?』

「ええっと・・・・」

 

電話の向こうのあげはに、ソラについて聞かれたましろ。

肝心の彼女は運び込まれたきりだ。

どう答えたものかと周囲を見渡したタイミングで。

 

「はあー・・・・終わったぞ、ゆい」

 

件の拓海が、ラウンジまで降りて来たのだった。

 

「拓海ー!ソラさんはどう?治ったー!?」

「え?・・・・ああ」

 

ゆいが電話口まで聞こえる様に声を張る。

対する拓海は、思ったよりも大きな声で話しかけられて、一度戸惑う様子を見せたが。

スマホを持っているましろに気が付いて、

 

「傷は全部塞いだ。けど、目が覚めるまでは時間がかかるだろう」

 

そちらに歩み寄りながら、同じくらいの声を出す。

 

「治療したのが父さんだったら、もっと早く起きたと思うんだが、・・・・悪いな」

「あ、いいえ!そんな!・・・・ありがとう、ございます」

 

拓海に頭を下げつつ、『あげはちゃん聞こえた?』とましろが聞くと。

『聞こえたよー』と返事がした。

 

『ましろん、ビデオ通話出来る?』

「あ、うん!ちょっと待ってて」

 

指示通りにスマホをビデオ通話にし、あげはとゆい、拓海が対面する形に。

 

『初めまして!アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライこと、聖あげはです!』

「わぁー!初めまして!あつあつごはんでみなぎるパワー!キュアプレシャスこと、和美ゆいです!」

「え、あ、えっと、ブラックペッパーの品田拓海っす。プリキュアじゃないけど、仲間です」

『よろしくー!』

 

まずは挨拶を済ませてから、あげはは改めて頭を下げて。

 

『今回は本当にありがとう、うちのましろんとソラちゃんが、大変お世話になりました』

「いえいえ!こちらこそ、コメコメ達がすごくお世話になりました!」

「コメー!」

「おいしーなタウンの為に戦ってくれたし、これくらいは・・・・」

 

ゆいとコメコメは元気よく、拓海はやや照れながら。

あげはのお礼に、返事をしていた。

 

「拓海の母の、あんです。ちょっといいかしら」

 

そこへ、あんがひょっこり顔を出して微笑む。

 

「今日はもう遅いし、泊っていくといいわ」

『帰るにしても、ましろん一人だしね。お言葉に甘えておきな』

「うん、ありがとうございます!」

 

頭を下げるましろへ、あんはウィンクして。

 

「お代も結構よ、おいしーなタウンを守ってくれたヒーローだもの」

「いいんですか!?」

『何から何まで、ありがとうございます』

 

ソラの治療だけでなく、宿まで提供してもらい。

あげはもましろも、ただただ頭が下がる思いであるし。

実際に下げてもいた。

そんな二人を、あんは微笑まし気に見つめている。

 

「今日は大変だったでしょう、ゆっくり休んで頂戴ね」

「はい!」

 

プリキュアの事情を知っているとはいえ、太っ腹な対応に。

ひたすら感謝しているところへ。

 

「――――ただいま」

「戻りました」

「ましろーん!あったよー!」

 

あまねとらん、ここねが合流する。

 

「あ、みんな!今、ましろちゃんのお友達と繋がってるよー!」

「本当!?こんにちはー!華満らんでーす!」

「これは、挨拶が遅れて申し訳ありません。菓彩あまねといいます」

「芙羽ここねです、よろしくお願いします」

『はーい!聖あげは、よろしくー!』

 

それぞれ挨拶を交わす中、ましろはあまねが持っていた袋に気が付く。

 

「あまねさん、それ・・・・」

 

見間違えようが無い。

そのかわいらしいラッピングは。

 

「プリティホリックの、限定品・・・・!」

「ああ、レシピッピが教えてくれてな」

 

ソラが気を失う直前に言っていたことが気になり、探してくれていたらしい。

お料理の妖精である『レシピッピ』が案内してくれた先。

アイスクリーム屋台脇の、ベンチに置かれていたとのことだった。

 

「おそらく、イヤーカフスを失くしたというのは嘘だったんだろう」

「本当は、これを買いに行ってくれていたのね」

 

砂ぼこりでやや汚れた紙袋を、震える指先で受け取ったましろ。

 

「ソラさん・・・・!」

 

喜びや悲しみや、とにかく様々な感情を募らせて。

静かに瞳を閉じた。

 

『・・・・あれ、もう一個は?』

 

そんなましろを、気遣わし気に見つめたあげはは。

ふと、らんが持っているもう一つの箱に気付いて指摘する。

 

「ああ、これはねー?」

 

らんが得意げに開けた箱から、出てきたのは。

 

『ホールケーキ!』

「ただのホールケーキじゃないよー!」

「バースデーケーキよ、途中のお店で買ってきたの」

「あの、これ・・・・!?」

 

驚いたましろが目を向けると、あまねは柔らかく笑って。

 

「せっかくの誕生日が、沈んだ気持ちで終わるのは忍びない。ここであったのも何かの縁、どうか祝わせてほしい」

「うんうん!町も守ってくれたしね!」

「思いっきりお祝いしちゃうよー!!」

『うわーっ!ワンダホー!』

 

大騒ぎするあげはとは対照的に、呆然と言葉を失っていたましろ。

束の間沈黙を保ったと思ったら。

見開いた目から、ぽろぽろと涙を零し始めた。

 

「マッ!?ままままままましろちゃん!?」

「どうした!?何かアレルギーがあったのか!?」

「はにゃーっ!!大丈夫!?大丈夫!?」

「はわわわわわ・・・・!」

「お、おい、あんまり大騒ぎするな!もっと泣くだろ!」

 

ぎょっとしたのは、ゆい達おいしーなタウンの面々だ。

静かに涙し始めたましろを案じ、あれやこれやと慌てふためく。

 

『ましろん!?ましろん、どうしたの!?大丈夫!?』

『あげはさん?ましろさんに何かあったんですか!?』

『どうした?何か問題が!?』

『まちろー!』

 

スマホの向こうも大騒ぎだ。

 

「だ、いじょぶ・・・・だいじょうぶです・・・・」

 

一通り泣いて、周囲の状況に気付いたましろは。

涙を拭いながら首を横に振って。

 

「あの、その・・・・うれしくて・・・・ごめんなさい・・・・!」

 

何度も涙を拭いながら、静かに嗚咽を漏らすましろ。

そんな彼女を前に、ゆい達は一度互いを見合う。

交わした視線から、同じ気持ちであることを再確認して、笑いあってから。

代表して、ゆいがましろに歩み寄った。

 

「すみません・・・・」

「ううん、全然いいんだよ!」

 

涙を拭ってやりながら、バースデーケーキを差し出して。

 

「ハッピーバースデー!ましろさん!」

『ッハッピーバースデー!ましろん!!』

 

とびっきりの笑顔に、ましろもまた笑顔を見せたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んでくれ

 

 

 

頼むから死んでくれ

 

 

 

なんでお前がここにいる

 

 

 

どうしてお前がそこにいる

 

 

 

帰せ

 

 

 

返せ

 

 

 

還せ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かえして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――」

 

目を開けると、知らない天井だった。

少し身じろぎすると、あるはずの痛みがない。

怪我が治っている・・・・。

あげはさんが来てくれたのか・・・・?

 

「・・・・ッ」

 

ゆっくり身を起こすと、気怠さで体が重たい。

時計の針は・・・・夜の九時か。

だいぶ寝てしまっていたんだな・・・・。

 

「・・・・ましろさんは?」

 

ましろさんはどうなったんだろうか。

流石にあげはさん辺りが迎えに来たかな・・・・。

何にせよ、自分の状況が知りたい。

寝かされていたベッドから降りようとすると、部屋のドアが開いた。

 

「ましろさん」

「ッソラさん!?」

「ぐえっ」

 

ぎょっとしたましろさんは、手に持っていたものを半ば取り落としながら机に置くと。

私に飛びついてきた。

な、ナイスボディブロー・・・・!

 

「よかった・・・・よかったぁ・・・・!」

 

・・・・その痛みも、ぐすぐすと聞こえて来た声に引っ込んだけども。

 

「・・・・すみませんでした、せっかくの誕生日なのに」

「本当ですよ!」

 

謝ると、予想通りの泣き顔でこちらを見上げて来て。

ぽかぽか叩きまくって来た。

 

「せっかくの誕生日なのに!ソラさん一人で戦って大怪我するし!休んでてって言っても無茶するし!」

 

ぶ、物理的には大してダメージないんだけど。

心にはグサグサ容赦なく突き刺さってくる・・・・!

 

「あ、限定品は受け取れました!ありがとうございます!」

「アッ、ハイ」

 

しっかり限定品のお礼は伝えてくれた。

よかった、受け取れたんだ。

 

「でも・・・・ソラさんが怪我しちゃ、意味ないじゃないですか・・・・!」

「・・・・はい、ごめんなさい」

 

私の体に、顔をうずめて。

再びすんすん泣き出してしまうましろさんを。

そっと抱きしめて、頭を撫でる。

――――嗚呼、本当にかっこ悪いな。

己の身どころか、大切な人の心すら守れないなんて。

 

「戦うのは仕方ないとしても・・・・自分を大事にしてほしいです・・・・」

「・・・・はい」

「言いましたよね。あなたが心配だって、助けたいって・・・・大好き、だって・・・・」

「・・・・はい」

 

文句として漏れてくるのは、こちらを気遣う言葉ばかり。

 

「お願いだから・・・・傷つかないでください・・・・!」

「・・・・はい」

 

人間は、基本的に自分のことで精いっぱいで。

かくいう私もその一人で。

だから、誰かを気遣うっていうのは、本当に尊いことで。

それが出来る人というのは、本人が思っている以上にすごいことなんだ。

 

(・・・・なんだ、そうだったのか)

 

私は、最初からずっと。

ましろさんの優しさに、救われていたんだ。

日々の思いやりに、守られていたんだ。

ずっと、ずっと、ずっと。

気が付かなかっただけで。

ずっと前から、私は。

この子が、ましろさんが。

 

「――――好きです」

「――――へ」

 

――――失言に、気付いたのは。

ましろさんの呆けた声を聞いてからだった。

我に返ると、ぽかんとした顔が見上げてきていて。

ああ、まずい。

まずい。

まずい・・・・!!

 

「ぃ、今の」

「なしにしませんからね!?」

「そんな殺生な!!」

 

情けない声が出たけど、それどころじゃない。

 

「観念してください!!」

「勘弁してください!!」

 

なんで、なんで、どうしよう。

知られちゃいけないのに、口にしちゃいけないのに。

 

「だ、ダメです。ダメなんです」

「何がダメなんですか!?」

「だって!!」

 

気付けば、壁際に追いやられる形になっていたけれど。

この場を乗り切る事だけを考えているので、気にする余裕はない。

 

「だって、貴女に相応しくないです。本当は自分のことでいっぱいいっぱいで、綺麗ごとを並べて必死に踏ん張っているだけで・・・・!」

 

そうだ。

その通りだ。

本当はここにいちゃいけなくて、優しさを受け取る権利なんて無くて。

だけど、それを失うのが怖くて。

だから必死に『ヒーロー』を演じているだけで。

何より今は、キルミラに知られてしまっている。

いつ壊れるか分からない、壊されてしまうか分からない。

一番、恐ろしいのは。

今が、崩れた時に。

みんなが、ましろさんが。

巻き込まれて、諸共に壊れてしまうことが。

何よりも、恐ろしい!!

 

「だから、私は、私は・・・・!」

「――――綺麗ごとの、何がいけないんですか!?」

 

そうやって、駄々をこねていると。

ましろさんに、一喝されてしまった。

 

「ソラさんに、何度助けられたと思っているんですか。何度、元気づけられたと思っているんですか・・・・!?」

 

顔の横で、ましろさんのか弱い手が握りしめられて。

ぎゅうという音が、耳のすぐ横で聞こえる。

 

「綺麗ごとですよ、でも、本当に綺麗だから!口だけじゃなくて、ちゃんと行動しているから・・・・確かに誰かを助けているから・・・・!」

 

・・・・嗚呼。

それでも。

 

「だからわたし、ソラさんが好きなんです!」

「ましろ、さ・・・・!」

 

それでも、やっぱりダメだ、

この優しい子を、ましろさんを。

私なんかで、汚しちゃダメだ。

 

「まし――――!」

 

なんとか、状況を打破しようとした唇が。

ましろさんのそれに、『黙れ』とばかりに塞がれた。

 

「――――ソラさん、言ってくれましたよね」

 

真っ白になった頭に、彼女の声が聞こえる。

 

「わたしがどんな答えを出そうと、わたしの味方だって」

 

言葉が出ない。

出せない。

情けなくはくはくさせることしか出来ない口が、また塞がれる。

 

「・・・・これが、わたしの答えです。わたしが考えた、わたしの答えです」

 

手が、握られる。

若草色の、まっすぐな目が。

私を見つめていて。

 

「――――は」

 

――――敵わないと、悟った。

正直、舐めていた。

恋する乙女って、本当に強いんやな・・・・。

 

「――――参り、ました」

 

視線から逃げたくなって、せめてもの抵抗に顔を覆う。

しばらく静寂が続いたけど。

ふと、ましろさんが震えていることに気が付いて。

そっと、顔から手をどかしてみると。

耳まで真っ赤にしたましろさんが、私の胸に顔をうずめていた。

 

「・・・・あの」

「待ってください」

 

声をかけると、先ほどの勢いは何だったのかとびっくりするほどか細い声。

 

「す、みません・・・・わたし、今、ものすごくものすごいことをしてしまって・・・・!」

 

ああ、正気に戻ってしまったのね・・・・。

生まれたての小鹿の様にぷるぷるしているましろさんを、見下ろして。

いたずら心が、湧きあがって。

 

「ましろさん」

「はい?」

 

上がった顔へ、仕返しに唇を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、ヒーローが好き」

 

たんたか、くるくる。

 

「強いヒーローが好き」

 

ぱたぱた、くるくる。

 

「不撓の信念や覚悟を持っていると、なおのこといいわね」

 

ぴょんぴょこ、たかたん。

 

「だって、その後絶望させた時の落差が大きいじゃない?」

 

すたすた、たかたか。

 

「自分の大切な人、守りたいものを、自分の手で壊させるとね?」

 

ひゅるひゅる、しゃなり。

 

「みーんな軒並みぽっきり行くの」

 

くるり、くるくる。

 

「その時飲む血はまさしく甘露、あんなにおいしいものを他に知らないわ」

 

くるん、くるん、くるん。

 

「だから」

 

くるん、くるん、ぴたっ。

 

「500年ぶりの食事は、徹底的にこだわりたいわ」

 

くすり、くすくす。

 

「あの子は絶対に逃がさないんだから」

 

くすくす、くすくす。

ケラケラケラケラケラケラケラケラケラ。




さて、ここからが本番です。
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