し終えたのに、未だに虹ヶ丘ましろに脳を焼かれている・・・・。
『好きなところは?』って聞かれても『・・・・・・・・・顔?』としか答えらんねぇ・・・・!
違うやろ、もっと他に、なんかこう。
答えるやろ・・・・!
「――――無限にひろがる青い空!キュアスカイ!!」
即座に変身したスカイは、剣を抜き放ってランボーグと向き合う。
「かましてやるのねん!ランボーグ!」
「ランボォーッグ!!」
号令を受けて、ランボーグは取り出し口だったところからペットボトル型のミサイルを撃つ。
「せっ!はっ!・・・・・ふっ!」
「あ、わっ!」
スカイは容易く切り捨てると、一度踵を返して空いた片手にましろを抱えた。
そのまま一気に跳躍。
「ここにいて下さい」
「は、はいっ」
ましろを手近なビルの上に降ろすと、ランボーグの前にとんぼ返りする。
「数で押せ!!」
「ランボーグ!!」
再び取り出し口が開いて、今度は大量のミサイルが飛び出してくる。
「――――
接近していては間に合わないと判断したスカイは、剣を地面に突き立てる。
カァン!と心地よい音を合図に、スカイの周囲を付き従うように光の剣が現れた。
「――――
鋭くさした指を合図に、宙を自在に飛び交う光の剣。
それらは、建物などに被害をもたらす前にミサイルを貫いて処理していく。
「そんなのアリなのねん!?」
「出来るので仕方がないでしょう」
「ぬあー!!」
頭を掻き毟るカバトンを他所に、スカイは剣を手にしてランボーグへ接近。
呼吸を整え、気を練り上げて。
「
「ラララララララッ!?」
足元へ強烈な一撃を叩き込んでやれば、ランボーグはあたふたしながら大きく傾いた。
それでもなおミサイルを放ってきたので、スカイはバックステップで回避していく。
「こうなったらとっておきなのねん!ランボーグ!!」
「ランボオオオオ・・・・!」
ばたばた起き上がったランボーグは、体をぎゅっと縮めて力をため込むと。
「ランボオォーグッッ!!!」
今までよりも大きなミサイルを撃ってきた。
(受けるのは論外、避けても迎撃しても被害が大きい、ならば・・・・・!)
迫る攻撃を前に努めて冷静に判断したスカイは、剣を握りなおして飛び出す。
こん、と、ミサイルに上手く剣先を当てると。
そのままするりと滑らせて、弾頭を反転させてしまった。
「ハアッ!?」
「はあっ!!」
あんぐり口を開けるカバトンの前で、ダメ押しとばかりに蹴りを叩き込めば。
まんまとUターンしたミサイルが、ランボーグに直撃してしまった。
「あばばばばば!早く起きるのねん、ランボーグ!」
「ランボーグッ!!?」
悲鳴を上げてひっくり返ったランボーグへ、立て直しをせかすカバトンだったが。
「させませんッ!」
ここは街中。
これ以上暴れさせるものかと、スカイは居合の形を取って。
「プリキュアッ!!ヒィーロォーガァールウウウゥー!!」
「ヒィッ!ランボーグ、避けるのねん!」
カバトンの指示に対し、逃がさないとばかりに踏み込んで。
「スカイッ!ソオオオオオオオオオオオオオオオドッ!!」
一閃を、叩き込んだ。
「わ・・・・!」
ビルの上から戦いを見守っていたましろからは。
スカイが青い残像を残して消えたと認識した時には、もうランボーグの後ろに着地したようにしか見えなかった。
一見瞬間移動の様にも思えるが、振り抜かれた剣が斬撃の名残を表している。
「スウゥッ・・・・!」
「ラアアアアアアアアンッ!?」
そのまま静かに納刀すれば、蒼穹に切り裂かれるランボーグ。
「スミキッター・・・・!」
たまらず浄化され、元の自販機に戻るのだった。
「まだやりますか?」
「っか!カバトントン!!」
じ、と視線を向けられたカバトンは、明らかに狼狽えると。
額の宝玉を光らせて、逃げるのだった。
敵の撤退を確認したスカイは一息つくと、ひとっ飛びでましろの下へ駆けつける。
「ましろさん、お怪我は?」
「無いです!ありがとうございます!」
「それは何よりです」
『降りましょう』と、再びましろを抱えて跳躍。
今度は建物の陰に降りると、ついでに変身も解いたのだった。
「まったく、まだあの子を狙っているなんて・・・・」
「これで終わってくれたらいいんですけど・・・・」
「無理でしょうね、残念ながら」
参ったとばかりに肩を落としたソラは、周囲の様子をうかがってから。
置きっぱなしだった買い物袋を回収した。
「さて、改めてヨヨさんのおつかいを済ませましょうか?」
「・・・・そ、その前に!」
仕切りなおして、移動しようとしたソラを手を掴んだましろ。
「ちょっと、こっち!」
「え?あの、ましろさん?」
首を傾げる彼女を連れて、走り出す。
――――辿り着いたのは、『プリティ・ホリック』。
女の子が喜びそうな、かわいらしいアイテムがたくさん取り揃えられた店だ。
「ましろさーん?」
ソラが、経験のないキラキラしい店内に慄いていると。
「お待たせしました!」
ましろが、一冊の手帳を差し出してきた。
「あの、これ。ヒーロー手帳の代わりになりませんか?」
「え?」
「この手帳、発売前からチェックしてて、おこづかいも溜めてたんですけど」
手帳とを見比べて戸惑うソラへ、ましろはにこにこ笑ってまくしたてる。
「今、これが必要なのは、ソラさんかなぁって」
「・・・・だったら、なおさら受け取れません。ましろさんだって楽しみにしていたんでしょう?」
貯金してまで欲しかったものなら、なおのこと受け取るわけにはいかない。
ソラは首を横に振って、ましろへ返そうとするも。
彼女は笑みを絶やさないまま、同じく首を横に振って差し出し返してきた。
「・・・・・どうして?」
問いかけに対し、ましろは照れくさそうに笑って。
「本物のヒーローを見ちゃったから、かなぁ」
そんな風に、嬉しそうに言ってくるのだから。
ソラは目を見開いて、息を呑む。
「昨日、わたしの『たすけて』に駆け付けてくれた時、『ああ、もう大丈夫』って心から安心出来たんです」
ソラの手に手帳を握らせながら、昨日のことを想起するましろ。
逃げて、逃げて、もうダメだと諦めそうになって。
不安にモノクロになりかけていた世界が、目の前の彼女が来ただけで一気に色づいた。
あの、安心感。
「だからこれは、応援の気持ち。ソラさんが、自分でも納得できるヒーローになれますようにって、わたしからのエールです!」
十代特有の、キラキラとしたまなざしを受けて。
もう少しだけ逡巡したソラは。
やがて、観念したように笑って肩を落として。
「参ったなぁ、それじゃあ断れないですねぇ」
「やっと観念しましたね?」
「しちゃいました」
手帳を受け取って、大事に胸に抱えたソラ。
一度遠慮したとはいえ、それはそうとプレゼントはうれしいので。
嬉しそうにはにかんだ。
「ありがとうございます、大切にしますね」
「はい!」
思惑が上手く言って、ましろも一層にこにこ顔だ。
だが、次第に揃って照れくさくなって。
なんとなく、いたたまれなくなってきた。
「ぁ、あの!そろそろおばあちゃんのおつかいにっ!」
「いけない、忘れるところでした!」
上ずった声を聞かなかったことにして、揃って店を後にする。
◆ ◆ ◆
――――夕方。
自室に戻った私は、ましろさんに貰ったかわいらしい手帳を取り出す。
それから、懐に入れていた紙切れ三つを。
昨日何とか拾えていた、ヒーロー手帳の無事だったページを挟み込む。
「・・・・はあ」
・・・・この世界での、唯一の道しるべを。
無惨に破り捨てられて、何も思わなかったわけじゃない。
結局夜中に起きちゃって、フラッシュバックに悩まされたんだよねぇ・・・・。
あれくらい守れないんじゃ、ヒーローになれないんじゃないかって・・・・。
(・・・・でも)
手帳をくれた時のましろさんを思い出す。
『駆けつけてくれて、安心出来た』と言ってくれた、あの笑顔。
(あの笑顔のためなら、もう少しだけ踏ん張れるかも)
――――何よりも。
私の目指しているヒーローは、こんな些末なことでくよくよしない。
(ヒーローになって、悪者と戦うんだ。大切なものを失うなんて、覚悟して当然でしょ)
目を、閉じて。
改めて、覚悟する。
(大丈夫、諦めない。こんなことで立ち止まらない)
――――ソラ。
あなたの夢を形にするその日まで。
例え足をもがれようとも、私は進み続けるから。
・・・・何はともあれ、まずは。
「んん~・・・・えるぅ?」
「ああ、エルちゃん。おはようございます」
ゆりかごの中、目を覚ましたエルちゃんを抱き上げて。
頭を撫でる。
「・・・・必ず、おうちへ帰しますからね」
「えるぅ!」
無垢な笑顔に、こちらも癒されながら。
その小さな手を握った。
今回ソラさんが使った技の元ネタが分かった方。
握手してください・・・・!