流石ジブリ・・・・。
「ベリィベリーさん、準備は?」
「ああ、こちらは出来ている」
「いきますよー?」
「「せーの!」」
掛け声と共に力を入れると、リビングの戸棚が動いて隙間が出来る。
人が入るにはだいぶ狭いが、掃除用具が入れば十分だ。
「ありがとー!ささっと履いちゃうから、待ってて!」
すかさずあげはさんがク〇ック〇ワ〇パーを差し込んで、たまった埃をさっと掻き出す。
「はい、オッケー!」
「お疲れ様です、では」
もう一度ベリィベリーさんと息を合わせて、戸棚を元に戻した。
「あとは私達でやっておくから、二人は自分の部屋を掃除しておいでよ」
「はい、そうさせてもらいます」
「分かった、何かあったら遠慮なく言ってくれ」
「はーい♪」
―――今日はみんなで大掃除。
元々広いだけあって、毎日こまめにやっているとはいえ。
やっぱり汚れは溜まっちゃうので。
こうやって月一で大掃除をしているのだった。
「掃除の基本は、上から下、奥から手前、と・・・・」
普段からお世話になっている身として、割ときれいに保っている方だとは思うんだけど。
お掃除するに越したことはないからね。
普段はやらない箇所とか出てくるもんだし、頑張るぞー!
箒や雑巾など、お道具を駆使してふきふき、履き履き・・・・。
「えーびーばでぃそっ!ふーんふふふふふ♪」
鼻歌と同時に小躍りなんてしちゃいながら、粛々と進めていると。
「――――んふふっ」
そんな笑い声が聞こえて、思わず振り向く。
すると、扉の前でましろさんが崩れ落ちていて・・・・って。
「もしかして、今の聞きました?」
「ふふふっ、はい」
思ったよりも大きな声で歌ってしまっただろうか。
そう考えながら聞くと。
ましろさんはにっこり頷く。
・・・・う、うわぁー!!
これはちょっと恥ずかしいぞ!!
「す、すみません!遊んでるわけじゃないんですけど・・・・!」
「分かっていますよ」
ぐぬぬ・・・・微笑まし気な態度が一層恥ずかしさを引き立てる・・・・!
不覚・・・・!!
「んっんっ!ところで、何か御用でも?」
「お茶が入ったので、休憩にしませんかって」
「いいですね、頂きます!」
咳払いで誤魔化しつつ切り替えて、誘われたお茶に行くことにした。
「――――あ、ソラちゃん!ましろん!」
リビングに降りると、何だかテンション高めなあげはさんが。
両手をぱっと広げて。
「今度、お出かけするよー!」
◆ ◆ ◆
「晴れてよかったな」
「はい、絶好のお出かけ日和です!」
――――とある日曜日。
あげはの愛車に、ソラを除いたメンバーが乗っていた。
「私、夏野菜の収穫なんて初めてなんですけど!」
「僕もです!」
「私もよ」
声を弾ませるあげはに、鳥姿のツバサがヨヨの膝の上で同意すると。
同じくらい楽しそうな声で、ヨヨが話しかける。
「ハーブは前からやっていたけれど、野菜は今年が初めてなの」
「へぇー!」
ツバサが感嘆の声を上げると、今度はましろが身を乗り出した。
「お昼ご飯は、とれたて野菜を食べようと思って、特別なお弁当にしたんだよ」
「それは楽しみだな、大いに働かねば」
「ベリィベリーちゃん、張り切ってるー!」
ひとしきり笑い声で満たされる車が、赤信号で止まると。
一台のバイクが隣に止まった。
「しょらー!」
「ああ、ベリィベリーさん、そこ押して」
「えっと、これか」
手をパタパタさせるエルの為に、ベリィベリー側の窓を開けると。
「そら!」
「はーい!エルちゃん!」
青いラインが走った、白いヘルメットの下で。
ソラが、笑顔で手を振ったのだった。
◆ ◆ ◆
――――この世界で、もうちょっと過ごすことになったので。
あげはさんの様な、単独での移動手段がないと不便だよなということになって。
自分のお財布と相談した結果。
この度、バイクの免許を取りましたー!いえーい!
肝心のバイクは、バイト先の職人さんが乗らなくなったものを格安で譲ってもらえた。
ありがたいことです・・・・!
ちなみに今はライダースーツスタイルだぜ!
黒地に青いラインが入った上下セットのやつだ!
中身はいつものタンクトップだけどな!
・・・・気を取り直して。
今日はそんなバイクの慣らし運転も兼ねた、おでかけである。
なんでも、ヨヨさんが今年から始めた野菜畑が、そろそろ収穫できそうとのことだったので。
みんなで行こうぜとなったのだ。
・・・・某お隣さんの映画で、おいしそうにきゅうりをかじっているシーンを見て。
憧れない人っている?
いねぇよな!?
「――――わぁー!」
まあ、そんなこんなで。
あげはさんのピヨちゃんと一緒に走る事、少しばかり。
辿り着いた高原には、思ったよりも大きな菜園が広がっていた。
す、すごー!
「ヨヨさん、今年から始めてこれってすごすぎ!」
「ふふふ・・・・」
いや、本当にあげはさんの言う通りよ!
スカイランドの実家の近所に、農家さんがいたのもあって。
結構苦労して育ててるのが、素人目にも分かるくらいだったのに。
それに比べればまだ小さい規模何だろうけど、初めてでこれだけをって・・・・。
ヨヨさん、スゲー!
「とぃさん!」
と、ヨヨさんにだっこされたエルちゃんが指さす先。
竿に吊るされた、鳥の模型が揺れていた。
「あの鳥さんはね、他の鳥さんが野菜を食べてしまわないように、畑を見守ってくれているのよ」
なるほど、案山子か。
「こちらの鳥達は、言葉が通じないからな。諍いの本は作らないに限る」
ベリィベリーさんの言葉に、うんうんと頷いていると。
ツバサくんがぽかんとしているのに気が付いた。
どうしたんだろう・・・・?
「どうしたんですか?」
「あ、その・・・・あれ、僕が作った模型なんです」
思った通りの疑問を問いかけると、そんな返事が。
なんでも、航空力学の研究の過程で、少し作り過ぎてしまったものらしい。
どうしたもんかとヨヨさんに相談したところ、『じゃあそれ、頂けないかしら』と言われたので渡したものだという。
「畑に使うって言ってくれたら、もっとちゃんと作ったのに・・・・!」
「十分すごいわよ、お陰でちゃんと野菜が育ってくれたわ」
照れくさそうに、恥ずかしそうに俯くツバサくん。
そんな彼へ、ヨヨさんは穏やかに笑いかけた。
「それでは、ツバサくんの鳥さんが見守ってくれたお野菜を、収穫しましょうか?」
――――おー!
かくして、第一回虹ヶ丘邸の収穫祭が幕を開けたのである。
・・・・なんちゃって!
「タモタ・・・・いえ、こちらではトマトでしたか」
「ええ、お尻に星の様な模様があると、甘くておいしいのよ」
「確か、水を与えすぎるとよくないんでしたよね?」
「ええ、そうすると酸っぱいトマトになってしまうの」
「とうもろこしのひげは、実の一つ一つから出ているの。実の数とひげの数は、一緒なのよ」
「「へぇー!」」
「私、醤油を塗って焼くと最高!くらいしか知らなかった!」
「確かに。おいしいですよね、焼きとうもろこし」
「あははっ!ねー!」
「ぴーま!まっか!」
「本当だ、日焼けでしょうか?」
「ふふ、それは熟しているんだよ。トマトが熟すと赤くなるように、ピーマンも熟すと赤くなるの」
「へぇー」
「ましろさんも野菜に詳しいんですね」
「えへへ、おばあちゃんの受け売りだけど」
「ヨヨさん、ここでいいですか?」
「ええ、ありがとう」
エルちゃんを、あげはさんとベリィベリーさんに任せて。
私とましろさん、ヨヨさんは。
新しい種を撒く準備を進めている。
ちなみに撒くのはにんじんの種らしい。
カレーにシチューに、にんじんしりしり。
金平に入れてもうまいよなぁ・・・・。
「これは、新しい土?」
へへへ、と思いを馳せていると、私の手元を覗き込んだツバサくんが首を傾げていた。
「これは肥料だよ、おばあちゃんが作ったの」
「えっ?肥料も自分で?」
「ええ、生ごみと土を混ぜて、しばらく置いておくの。それを繰り返すと、自然の力で栄養満点の土になるのよ」
所謂『腐葉土』よりも『たい肥』が近いのかな?
スカイランドの地元は、こちらでいう羊毛の一大産地だったんだけど。
羊たちの『落とし物』を、野菜農家さんが引き取りに来てたんだよな・・・・。
いつだったか、わりとごつめの嵐が来た日。
その農家さんは、肝心の畑は何とか無事だったけど。
育てに育てて来たたい肥が全部流されたとかで。
『これから数年の収穫に影響が・・・・!』って、下手したら畑がやられた時と同じくらいにへこんでたっけ・・・・。
「ヨヨさんってすごい・・・どうしてそんなに物知りなんですか?」
地元に思いを馳せていると、ツバサくんがそんな質問をしているのが聞こえた。
対するヨヨさんは、にっこり笑って。
「気になることを調べ始めると、また新しく気になることが見つかるの」
ヨヨさんに曰く。
例えば今回の場合だと、ハーブについて調べていると、それを使った料理のことが気になってレシピを調べる。
レシピを調べたら、実際に作ってみたくなる。
でも料理をしていると、どうしても生ごみが出てしまう。
どうにかならないかとまた調べたら、肥料の作り方を知って。
そこから、畑をやってみることを思いついたらしい。
すごい、好奇心が連鎖してる・・・・!
「全部、繋がってるんですね」
「ええ、『知りたい』という気持ちは、繋がって広がっていくものだと、私は思うわ」
頷いたヨヨさんは、畑を見渡しながら。
そんなことを教えてくれるのだった。
『知りたいという気持ちは、繋がってひろがっていく』、か・・・・。
思えば、覚えがある感覚かもしれない。
例えば、ましろさんに付き添ってプリティホリックに行く時。
『ブルべ冬』とか、『イエベ夏』みたいな単語を聞いていると。
日常の中で、その単語が出てきた時に『おっ?』と反応する様になったりとか。
よく考えてみると、あれが『世界が広がる』という感覚なんだろうなぁ・・・・。
「繋がって、ひろがる・・・・」
・・・・何か思うところがあるんだろうか。
広大な畑を前に、ツバサくんが呟いたのが聞こえた。
と、『ぐう』と音がする。
「あはは・・・・腹のケダモノが大変失礼を・・・・」
「うふふ、そろそろご飯にしましょうか?」
「はい!」
気付けば太陽も真上に上って来ていて、ちょうどいい時間だというのが分かる。
他のみんなの同意も得られたので、お弁当を食べることになったのだった。
作者はバイクを運転したことないので、ツッコミどころがあるかもしれませんが。
何卒・・・・何卒ご容赦を・・・・!
一つ上の先輩世代に、異世界人で免許取った人がいるから、いけると思ったんです・・・・!