ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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2/16から本日までの日刊ランキングにて、拙作がお邪魔させていただきました。
最高7位!!嬉しいです!!
これからもどうぞ、拙作『ヒーローガールは異物入り』をどうぞよろしくお願いいたします!!


惨劇、開幕

「――――わたしのせいだ」

 

そのか細い声は、やけにはっきり聞こえた。

一同揃って振り向くと、顔を青ざめさせたましろがいた。

脳裏にフラッシュバックするのは、スカイの攻撃に割り込んでしまった時のこと。

 

「わたしの、せいだ・・・・あの時、余計なことをしたから・・・・!!」

 

頭を抱えて、全身を震わせながら。

後悔を絞り出す。

 

「ッ違う!!それは絶ッ対に違う!!」

 

もちろん、そんなましろを放っておくわけがない。

あげはがほぼ掴みかかる様にして肩に手を掛けると。

顔を包み込んで、目を合わせた。

 

「ましろんは、ソラちゃんの大事なものを守ろうとしただけでしょ!?こんなこと、ちっとも望んでなかったでしょ!?」

「でもっ・・・・だって・・・・じゃあどうして・・・・なんでよぉっ・・・・!!」

 

あげはの手を掴み返し、いやいやと首を横に振りながら駄々をこねるましろ。

・・・・無理もない。

自分の軽率な行動の所為で、凄惨な事態を招いたのだ。

その重責に圧し潰されるなという方が無理だろう。

 

「わたしのっ・・・・!わたしがっ!!」

 

瞳孔は開ききり、呼吸も浅く速い。

ましろが錯乱しているのは明らかだ。

あげはが何とか落ち着かせようと、口を動かそうとしたところで。

突如、電源が切れたように意識を失った。

倒れ込んだ彼女をあげはが受け止めて、顔を上げると。

ベリィベリーが手刀を降ろしていた。

 

「・・・・すまない、意識を刈り取った」

「・・・・ううん、ありがとう。ごめんね」

 

あげはが、ぐったりと眠り続けるましろを抱えなおしたところで。

シャララは顔を伏せてから、まずはヨヨと目を合わせる。

 

「ヨヨ殿は、まず国王達を起こしてください」

「分かりました」

「念のため、娘を護衛に付けますわ」

 

『ヒルダ』と一声かけると、後ろにいた少女が前に出た。

見た目はツバサと同年代に見えるが。

吸血人故か、王族故か。

纏うオーラは年相応のそれではなかった。

 

「お初にお目にかかります、クシザス王国王太子、ジークフリートの子。ブリュンヒルデ・ラキュラ・クシザスです」

「あらあら、お願いしますね」

 

一礼した彼女へ、ヨヨは微笑まし気に礼を返した。

 

「ルティ、キルミラ対策を話し合おう。警備の配置と戦力の詳細を教えてほしい」

「ええ」

「あげはさん達も出席してくれると助かる。ベリィベリーもだ」

「っは!」

「分かりました!」

「僕達に出来ることなら、なんでもやります!」

 

やる気を見せるツバサに、『よろしい』と微笑んでから、ツムジにも視線を向けて。

 

「ツムジはアリリを呼んでくれ、作戦会議に参加してもらいたい」

「っは!直ちに!!」

 

素早く指示を出すと、マントを翻して。

 

「もうこれ以上奴の好きにはさせん!!反撃するぞ!!」

――――はい!!!

 

力強い宣言に、誰もが希望を以て頷いた。

 

 

 

 

 

 

閑話休題(さあ反撃だ)

 

 

 

 

 

 

「――――なんと、私が眠っている間にそのようなことが」

 

キラキラポーションで目覚めたスカイランド国王は。

エルに出会えた喜びもそこそこに、報告された現状に頭を抱えた。

 

「・・・・クシザス王国には、心からのお詫びとお見舞いを申し上げる。よもや、我が国民がこのような事態を招くとは」

「顔をお上げください、スカイランド国王」

 

玉座から立ち、深く頭を下げるスカイランド国王へ。

クリームヒルトは手を出して制する。

 

「この惨劇を招いたのは、他でもないキルミラ。これは王族と国民、双方の共通見解です」

「しかし、これ以上ソラが暴れてしまえば、理屈では抑えきれなくなる。ここで止めねばなりません」

「うむ」

 

シャララも加わった進言に、国王は重々しく頷くと。

改めてクリームヒルトに目を向けた。

 

「では、改めて報告をお願いいたす」

「かしこまりました」

 

恭しく一礼したクリームヒルトは、よく通る声で話し出す。

 

「我がクシザスは、首都は壊滅状態。オーディン国王は討たれ、王太子たるジークフリート様も重傷です」

 

そこは誰もが把握しているので、それぞれが頷いたのを確認。

言葉を続ける。

 

「昨日夜中、首都スータロスに戦闘下僕(マリオネット)『ソラ・ハレワタール』が侵入。侵入地点周辺を警備していた王国騎士団を全滅させたのち、民間人を虐殺しております」

 

『虐殺』。

その言葉に、誰もが悲痛な顔になる。

 

「ソラちゃんって、そんなに強かったんだ・・・・って、すみません」

 

ぽつっと零れたあげはの呟き。

思った以上に大きく聞こえてしまい、あげはは慌てて頭を下げるが。

 

「彼女の実力も多少はあるでしょう・・・・ですが、陛下とジーク様が敗北した原因は他にあります」

「ということは、やはり持たせていたか」

「ええ」

 

クリームヒルトは咎めることなく、何か知っている様子のシャララに頷いて。

その名前を、口にする。

 

「――――魔剣『デインリアル』」

 

途端に沈んだ空気に、ついていけないあげはが左右を見ると。

ツバサが服の裾をひっぱって、注目させた。

 

「キルミラが、魔剣によって封印されていた話はしましたよね」

「う、うん。まさかそれ?」

「はい」

 

と、ツバサが伺うような視線を国王達に向けると。

彼らは静かに頷いて許可を出す。

 

「デインリアルとは、どうやっても倒せないキルミラを倒すために作られた、最強にして最凶の魔剣です」

 

異世界出身のあげはにも分かり易くなるよう、ツバサは落ち着いて話し出した。

 

「クシザス王国の始祖『ヴラド・ラキュラ・クシザス』は、キルミラを封印するにあたって特別な魔剣を作ることにしました」

 

キルミラに弄ばれたヒーロー本人、あるいはその遺族たちから希望者を募ったヴラド。

魔剣鍛造の為に用意した炉に、燃料と共に生贄を捧げることで。

刀身の隅々まで呪いと怨念が染みこんだ災厄(さいあく)の魔剣を生み出した。

まさしく『毒を以て毒を制す』、その効力は、

 

「命を吸い取ること」

「・・・・ッ!」

「これは、斬られた者はもちろん、剣の使用者も例外ではありません」

 

作られた経緯に絶句するあげはの耳に、その言葉はやけに大きく聞こえた。

 

「・・・・でも、そうまでしないと封印できなかったのか」

「はい」

 

両腕を抱いて慄くあげはは、『っていうか』と身を乗り出して。

 

「それじゃあ、今ソラちゃん自身もだいぶまずいってこと!?」

「そうなります・・・・操られていようがいまいが、あの剣を手にしているだけでも、命を脅かされているんです」

「・・・・なるほど、よく分かったよ」

 

ソラが、如何に窮地に立たされているのか。

あげはが理解出来たのを確認したところで、ツバサは説明を終えた。

 

「・・・・スカイランド経由で、ヨヨ様より忠告を受けておりましたので。陛下も、ジークフリート様も、もちろん騎士団も、十分すぎるくらいに備えてはおりましたが・・・・」

 

再びクリームヒルトは話し出し。

『結果は御覧の通りですわ』と、一区切り。

 

「現在こちらで動ける戦力は、王国騎士団の生き残り数百人と、民間人による義勇兵。それから、(わたくし)ですわ」

 

胸に手を当てて、己も指しつつ。

現状を伝えて締めくくったのであった。

 

「幸いにして、地方都市は無事が確認されております。故に、民は希望を捨てずにいられておりますが・・・・」

「それもどれほど持つか分からない、ということか」

 

最後の補捉を受け、クリームヒルトと共に難しい顔で考え込んだ国王は。

険しい顔で、シャララを見る。

 

「こちらの戦力はどうなっている?」

「はっ、青の護衛隊並びに王国兵団は、緊急事態に付き厳戒態勢を敷いております。プリキュア達も協力を表明してくれている・・・・十分に対応できるかと」

 

だが、同じく警戒していたクシザスですら甚大な被害を受けている。

このスカイランドも、同じくまんまとしてやられる可能性があるのだ。

その緊張感と共に、国王は深く頷いた。

と、彼はしばし沈黙を保つと。

重々しく問いかける。

 

「・・・・勝てるか?」

「勝ちます」

 

即答したシャララ。

愛刀に手をかけて、力強く宣言する。

 

「これ以上キルミラの思い通りになってしまえば、ソラは戻れなくなる。その前に必ず止めます」

「・・・・頼んだぞ」

 

話がひと段落したところで、『はい!!』とあげはが元気よく挙手。

一同の視線を一気に集め、一瞬気圧されたあげはは。

 

「私達プリキュアは、ソラちゃんを生きて取り戻すことを第一目標にします!」

 

しかし、めげずに一歩出る。

 

「ソラちゃんがめちゃくちゃ暴れちゃった以上、皆さん的にはそうもいかないかもしれませんけど・・・・私達にとって、ソラちゃんは大事な仲間です!失いたくありません!」

 

果敢に宣言するあげはに対し、しばらく沈黙を保った面々は。

 

「・・・・相分かった」

 

やがて、表情から緊張を解いて。

 

「私も、本当のところは失いたくないのだ・・・・娘の、恩人を」

 

代表して、スカイランド国王が頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「――――」

 

ましろは、城の客室で目を覚ました。

ゆるゆると身を起こして、ベッドから出る。

と、

 

「あ、ましろん起きてる」

「あげはちゃん」

 

ちょうどあげはが部屋に入って来た。

 

「体調はどう?」

「うん、大丈夫・・・・ごめんね、迷惑かけて」

「ううん、全然迷惑じゃないよ」

 

申し訳なさそうにするましろに、あげはは快活に笑いながら歩み寄って頭を撫でた。

 

「・・・・今は、どうなってるの?」

「さっき作戦会議が終わって・・・・もうそろそろ、スカイランドの王様が演説するよ」

 

現状について質問するましろへ答えたあげはは、『あ』と声を上げて。

 

「キラキラポーションちゃんと効いて、エルちゃんのパパとママは起きたよー!」

「そっかぁ、よかった・・・・」

 

目下の目標であった、国王と王妃の解呪が上手く言ったことに安堵するましろ。

まだまだ立ち向かわないといけないことは多いが、エルが両親と出会えたことを心から喜んだ。

そんな妹分を微笑まし気に見たあげはは、表情を引き締めて。

 

「青の護衛隊と、クシザス王国の人達は、キルミラやソラちゃんと戦う準備を整えてる・・・・多分、万が一の場合は・・・・」

「・・・・ッ」

「でも!」

 

不安げになるましろの肩を叩いて、あげははにこっと笑ってから。

 

「その分私達プリキュアは、ソラちゃん奪還の為に全力を尽くしていいってお墨付きをもらったからね!なんなら、シャララ隊長たちよりも早く何とかしちゃおう!」

「・・・・うん!」

 

励ましに、ましろは笑顔を浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(嫌な予感)

 

 

 

 

 

 

 

「――――スカイランドに、危機が迫っている!!」

 

眠りから覚めて、国民が安心したのもつかの間。

キルミラの脅威が迫る中、民へ激励の言葉をかけているのであった。

 

「――――キルミラはすでに、クシザス王国に大打撃を加えている!!手に入れた戦闘下僕(マリオネット)で、卑怯にも己の手を一切汚さずに、だ!!」

 

群衆が集まる中で仕掛けてくる可能性もあるため、青の護衛隊やクシザス王国の騎士団。

そして、ましろ達プリキュアは。

王城前の広場で警戒に当たっているのだった。

 

「守らねばならぬそなた達に、武器を取ることを命じてしまう力不足を恥じるばかりだ!!しかし!!この暴挙を、放置するわけにはいかん!!」

 

集まった国民を力強く鼓舞する国王の声を聞きながら、ましろは注意深く周囲を見渡している。

 

「500年前、我らの先祖は見事キルミラを封じ込めた!!先祖の勇敢さを受け継いだ我らも、必ずや守り抜こうぞ!!」

 

見渡していて、息を呑んだ。

見覚えのある横顔が、歩き去っていく姿。

 

(――――ソラさん!!)

 

思わず、駆け出していた。

 

「まって・・・・」

 

いつものサイドテールではなく、降ろした髪を靡かせているが。

間違いない、ソラだ。

 

「待って・・・・!!」

 

時々人にぶつかりながらも、人影を見失わないように必死に追いかけていく。

 

「待って!!」

 

――――人気のないところに、誘い込まれていると気付けないまま。

無我夢中で伸ばした手が、空を切る。

 

「は・・・・は・・・・は・・・・は・・・・!!」

 

何かしら、倉庫だと分かる建物の裏手。

ソラは背を向けて立ち止まっている。

 

「そら、さん・・・・!」

 

息を整えながら名前を呼んでも、返事はない。

 

「ッ、ソラさん!」

 

声を張り上げても、無反応だ。

ましろの呼吸だけが響き渡る。

 

「・・・・ソラさん、帰りましょう!」

 

やっと肩の上下が収まって、もう一度声を張り上げる。

 

「エルちゃんのパパとママ、起きたんですよ。キラキラポーションが出来て、呪いが解けたんです!」

 

エルのことを話しても、やはり反応はない。

 

「あとは・・・・あとはソラさんだけなんです!だから・・・・!」

 

それでもなんとか、と。

背中に話しかけ続けているところへ。

 

「――――健気ねぇ、そして滑稽だわ」

 

後ろから、肩に手を置くもの。

 

「届きもしない言葉を垂れ流して、ほんと笑える」

「ッ、キルミラ!!」

 

振り向くましろをあざ笑いながら、これみよがしにソラの隣に立つ。

 

「自分で言うのもなんだけど、私の術はそうそう解けることはないわ。それこそ、小娘程度の言葉なんて、とてもとても・・・・」

「~~~~ッ」

「あははははっ!怖いお顔ね」

 

ミラージュペンを握りしめて睨むましろが、よっぽど面白かったのだろう。

再び笑い声を上げたキルミラは、おもむろに顔を変えた。

ましろの顔だ。

そして、見せつける様に背を向け続けるソラの耳元へ口を寄せて。

 

「ねえ、ソラさん。怖い人がいるの」

 

甘ったるい声を、囁く。

 

「――――助けてください♡」

 

怒り、悲しみ、嫉妬。

感情が爆発的にこみ上げて、涙をぼろぼろ流すましろの目の前。

 

「――――」

 

ソラは、無言を貫いたまま。

ゆっくり振り返る。

 

「――――ッ」

 

心臓を直接つかまれたような、威圧感。

冷たい瞳には、一切の感情が、熱がない。

そして、その顔の右半分は。

明らかによくないものに侵食されていると分かる、赤黒い罅割れが走っていた。

 

「――――おいで、アンダーグエナジー♪」

 

抱きしめる様に背中に回された手から、アンダーグエナジーが迸って。

ソラに入り込んでいく。

キルミラがご機嫌にステップを踏んで離れていく横で、完全にましろの方を向き直ったソラは。

手を掲げた。

 

「――――ぁぁ」

 

闇の中から現れたのは、一振りの剣。

下手すれば、キルミラ以上に恐怖を与えてくるオーラを放つそれを。

ソラは握りしめる。

――――変わる、変わってしまう。

みんなのヒーローが。

・・・・ましろのヒーローが。

最も恐ろしい脅威に、変貌してしまう。

 

「ソラ、さん・・・・!」

 

闇の中、相変わらず温度のない瞳を爛々と輝かせて。

『敵』が、ましろを睨みつけた。

――――のちに。

『スカイランド史上最大の惨劇』と呼ばれる事件が。

幕を開ける。




クリームヒルト・ラキュラ・クシザス
拙作オリジナルキャラ。
ジークフリートの妻で、吸血人。
二児の母でもある。
夫と同じくシャララとはマブダチで、若い頃は予定が合えば女子会もする仲だった。
今も肩組んで揺れるくらいに仲良し。
クシザス王国の中でも屈指の槍の使い手であり、競技会で引き分けたことがジークフリートとの出会いである。
親しい者からは『ルティ』の愛称で呼ばれている。


ブリュンヒルデ・ラキュラ・クシザス
拙作オリジナルキャラ。
ジークフリートとクリームヒルトの娘、12歳。
母の槍の才能を強く受け継ぎ、また類稀なる魔法の才も見せている麒麟児。
しかし一方で、両親の後ろをついていきたがる幼さもまだ残している。
両親の親友であるシャララは、憧れの人。
親しい者からは、『ヒルダ』の愛称で可愛がられている。
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