ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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まかり間違ってこのひろプリが放送されてる時空では、プリズムが闇ソラさんにドエラい()目に遭わされてる薄い本が出てるだろうなぁ。


そう現実逃避しながら書いてました()



守護者、激闘

――――死んでいく。

 

死んでいく。

 

死んでいく。

 

私の手で。

 

私の剣で。

 

私の所為で。

 

死ななくていい命が、死んでいく。

 

生きていてはいけない私の所為で。

 

死ななくていい人達が、死んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どおん、と。

轟音が響いて。

ましろの意識は、一瞬暗転する。

 

「しっかりしろ!ましろ!」

 

暗闇に閉ざされかけたましろの意識を、仲間の声が引き戻す。

なんとか目を開くと、こちらを見降ろすエクリプスが必死に声をかけて来ていた。

 

「えくり、ぷす」

「ああ」

「っ、そうだ、ソラさん・・・・!」

 

抱えられた腕の中で、意識を取り戻したましろは。

顔を上げた。

エクリプスと一緒に見上げた先。

『黒』が、舞い降りる。

 

「あれが、ソラか・・・・」

 

いつもサイドテールに結わえられた髪は解かれ、風に靡いている。

キルミラに着せられたのか、ゴシック調の服を身にまとっていた。

得物が剣であることを考慮してか、スカートではなくパンツスタイルだ。

右半分を赤黒い罅割れに覆われた顔は、とても痛々しい。

その手に握られているのは、怨念滾らせる魔剣『デインリアル』。

実際に目の当たりにした今、まさに伝説級の威圧感をひしひしと感じた。

 

「――――ッ」

 

悠然とこちらを見降ろすソラの視線は、ひたすらに冷たい。

絶対零度の瞳に射貫かれて、ましろもエクリプスも委縮しかける。

 

「ぼさっとしてんな!!ベリィベリー!!」

 

そこへ、ハヤテが大声で一喝を入れた。

気付けばソラが目の前にいる。

間に合わない防御を間に合わせたのは、大盾を構えた大男。

 

「死ぬ気で防げ!!アラシィッ!!」

「応ヨォッ!!!」

 

アリリにも負けない体躯の護衛隊員、『アラシ』はソラの一閃を真正面から受け止める。

自慢の大盾が火花を散らし、デインリアルの凶刃からましろとエクリプスを守り抜くが。

やはり、伝説に語られる魔剣は伊達ではないようだ。

 

「ぐうう・・・・!!」

 

徐々に徐々に、盾に刃が食い込んでいく。

アラシは脂汗を額に浮かべて、それでもなお対抗し続けていると。

 

「そのまま抑えてて!!」

 

ツムジが駆けつけて来た。

 

「ハアァッ!!」

 

レイピアのスカイジュエルをきらめかせ、渾身の突きを放てば。

暴風となってソラに襲い掛かり、盾から引き離す。

飛びのき、着地したソラの目の前。

ハヤテ、ツムジ、アラシの三人が立ちはだかった。

 

「ベリィベリーとましろちゃんは、避難誘導を頼む!こいつは俺達で食い止める!!」

「ッはい!!」

 

先輩たちの頼もしい言葉に頷いたエクリプスは。

まともに動けないましろを抱えて、離脱しようとするが。

やはりソラのフィジカルは驚異的だ。

背を向けた瞬間、あっという間にハヤテ達の包囲網を抜けて肉薄してきた。

柄を握る者、斬られた者。

双方の命を蝕む刃が、当たりそうになって。

 

「――――バタフライプレスッッ!!」

 

バタフライが、割り込んできた。

続く斬撃も、ちょうちょ型のバリアでなんとかいなす。

 

「ぁ、あげはちゃん・・・・!」

「バタフライ!」

「ここはお姉さんも頑張っちゃうから、とにかく避難誘導をお願いね!」

 

にっと笑ったバタフライに、エクリプスは頷きを返して。

今度こそましろと共に撤退していった。

 

「・・・・随分イメチェンしたじゃん、ソラちゃん」

 

その背中を見送ったバタフライは、すぐに顔を引き締めてソラと向き合う。

――――想起するのは、いつかの会話。

アンダーグ帝国についての話題で上がった、『自分があちら側だったらどうするか』。

ソラは、こう回答したのだ。

 

 

『私だったらバタフライを真っ先に狙いますね』

 

『パワーアップも回復も出来る、これほど敵に回して厄介な相手はいないと思います』

 

 

――――今現在。

目の前のソラは、ターゲットにしていたエクリプスが去ったにも関わらず。

その場から動かない。

・・・・バタフライを凝視して、動かない。

 

(あの時言ってたこと、こんな形で実感したくなかったな)

 

難しい顔をしながら、駆けつけてくれたハヤテ達と並んだ。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

「やはり来たか・・・・!」

 

国王の傍に控えていたシャララは、ハヤテ達と対峙するソラを目視で確認。

苦い顔もそこそこに、後ろに控えていたアリリへ振り向いた。

 

「ソラの相手は、ハヤテ達に任せる!民間人の避難を急げ!」

「っは!!」

 

あっという間に戦場となった広場を見渡しながら、素早く指示を出していた視界に。

そいつは、映る。

 

「――――ッ」

 

吸血鬼特有の銀髪に、ゴシック調の衣装。

阿鼻叫喚に逃げまどう民衆の中を、まるで食後の散歩でもするように悠然と進む姿。

 

「・・・・アリリ、以後の指揮権は全てお前に託す」

「っは・・・・はっ?」

 

呆けるアリリを置いてけぼりにしながら、剣を抜き放つ。

 

「キルミラを見つけた、行ってくる」

「はあっ!?た、隊長!?」

 

返事を待たずに、全力で跳躍。

 

「はあああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」

 

こちらに気付いて笑みを浮かべるキルミラへ。

全力の一閃を叩き込む。

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

束の間、何かを考えるように沈黙を保ったソラは。

やがてふらつくように踏み出して、消える。

バタフライが悪寒の示すままにバリアを張れば、障子の様に切り裂かれてしまった。

 

「・・・・っ!」

 

デインリアルの切っ先を、死に物狂いで避けると。

返す刃を蹴り飛ばして防ぐ。

 

「はあっ!」

 

入れ替わる様に飛び出したのは、ハヤテだ。

両手に大ぶりのナイフを構え、手数を駆使してソラと斬り結ぶ。

デインリアルは、命を吸い取る魔剣。

掠り傷すら負ってはいけない緊張感に、強張りそうになる体を諫めながら。

神速と言うべき剣技に立ち向かう。

 

「・・・・!」

「っしま・・・・!?」

 

しかし、やはりナイフと剣では相手に軍配が上がってしまう。

ソラはハヤテのナイフを左右共に絡めとると、頭上に跳ね上げて。

胴体に蹴りを刺して、吹っ飛ばした。

 

「ハヤテ!っこの!」

 

アラシの護衛の下、バタフライが治療しているのを見てから。

ツムジが飛び出した。

バタフライへ飛び掛かろうとしたソラの前に躍り出て、一閃。

レイピアから鎌鼬を放って、引きはがす。

 

「風よッ!!」

 

ダメ押しとばかりに、風をため込んで。

 

「ぶっ飛べ!!」

 

まさに、空気の砲撃を解き放った。

 

「・・・・ッ」

 

対するソラは、やはり顔色一つ変えないまま。

剣を握ったままの右手を突き出す。

すると、明らかに怨念が宿っていると分かる炎が灯って。

またたく間に巨大化。

迫る風の砲撃へ、放った。

 

「くぅっ・・・・!!」

「・・・・」

 

激突し、拮抗する両者。

束の間互角に競り合っていたが、このままでは埒が明かないと判断したらしい。

 

「・・・・ッ」

 

ソラが右手を握りしめると、目に見えて炎の威力が上がった。

顔の罅割れが濃く深くなるのも構わず上げられた火力に、ツムジの風がみるみる押されていって。

 

「っわあああああああ!!」

 

避けることもままならないまま、ツムジは炎に包まれてしまった。

風を操り、何とか火だるまになるのを防いだが。

すぐ起き上がれない彼女へ、ソラは容赦なく肉薄して。

 

「おおおおおおおおおおおッ!!!」

 

駆けつけたアラシが、ソラの脳天目掛けて大盾を振り下ろす。

努めて冷静に片手で受け止めるソラだったが、そこへさらにハヤテも突撃してきた。

空いた左手で拳を振るい、胴体に穴をあけようとしたが。

ぽん、と気の抜けた音と共に空ぶる。

 

「・・・・!?」

 

驚いて目を向ければ、灰色の毛並みを持ったプニバードがそこにいた。

そいつは着地と同時にハヤテ(人間態)に戻ると、容赦ない足払いを放ってくる。

防御も回避もままならず、ソラは体を大きく傾けた。

 

「うぉらぁっ!!!!」

 

無防備なところへ、アラシは全力の叩きつけを振り下ろして。

ソラの胴体をぶち抜いた。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「あら、意外とやるわね」

 

シャララの一閃を避けながら、キルミラは呑気にコメントする。

視線が逸れている間に、シャララは剣を構えなおして。

再び斬撃を繰り出した。

なおもひらひら避けるキルミラの横合いから、赤い魔力の刃が襲う。

そちらに目を向ければ、クリームヒルトが槍を携えていた。

ひゅるりと一回しすると、同じ魔力の刃が現れて。

再び発射される。

キルミラは下敷きサイズの障壁で防ぎながら、周囲を伺うと。

 

(頃合いね)

 

にやっと嫌な笑みを浮かべる。

 

「それっ!」

 

シャララの剣と、クリームヒルトの槍を捌きながら。

優雅に一回転して。

 

「出番よ、ランボーグ!」

――――ランボーグッッ!!!

「な、ランボーグ!?」

 

城壁の向こう、広場の外。

まだ避難途中の真っただ中に、三体も現れた。

 

「ッ護衛隊!!」

「騎士団!!」

 

いつの間に生み出していたのか、今までどこに潜ませていたのか。

考えるよりも先に、鋭く指示を出すシャララとクリームヒルト。

キルミラはそんな彼女達へ、更に見せつける様に手を掲げて。

フィンガースナップを鳴らす。

すると、キルミラの魔力が迸って周囲に満ちた。

 

「・・・・ッ!」

「なんだ・・・・!?」

 

警戒で思わず足を止める二人。

――――その間を、何かが駆け抜ける。

ソラだ。

 

「ッ 止 ま れ ェ !!!!!!!」

 

どこに向かっているのか、何をしようとしているのか。

察したからこそ、シャララは腹の底から怒号を上げて。

引き止めようと伸ばした手の目の前。

民間人を切り裂こうとした刃に、飛び込んだ青の護衛隊とクシザス騎士団が両断された。

 

「――――特殊な結界を張ったわ。といっても、閉じ込めも防ぎもしない張りぼてだけどね」

 

恐慌状態になった民衆の、阿鼻叫喚をBGMに。

キルミラは得意げに笑う。

 

「ただ、私の許しなく出入りすると、アラームがソラに行くの。受け取ったソラは、一目散に『違反者』を片付けてくれるのよ」

 

ランボーグを放置すれば、民間人が犠牲になる。

だが対処しようとすれば、ソラが一目散に駆けつけてくる。

作戦会議で聞いていた、クシザスの詳細な戦況と同じ。

 

「クシザスと、同じ手段か・・・・!」

「ご明察~♪いやぁ、みぃんなバカの一つ覚えみたいにかかってくれるわよねぇ、面白ー!!」

「貴様・・・・!」

 

シャララの顔が険しくなって、クリームヒルトの顔も殺意に満ちる。

 

「さあ、あなた達は使命を果たせるかしらー?」

 

ケラケラと、耳に障る笑い声を上げるキルミラを前に。

シャララは油断なく構えながら思考する。

民間人を守るだけなら出来る、城壁の外にも護衛隊と騎士団が配置されている。

証拠に、彼らが対応してくれているのが聞こえる。

だが、相手はランボーグだ。

プリキュアによって浄化されなければ、アンダーグエナジーが残留してしまう。

以前はそれを利用して、手痛い目に遭わされたのだ。

スカイランドはもちろん、クシザスとも情報は共有している。

だからこそ苦戦するのが目に見えて、苦い顔を押さえられない。

しかし、結界のこちら側にいるプリキュア達に向こうに行ってもらおうにも。

今度はソラが立ちはだかる。

実力的にも、精神的にも。

彼女達に相手させるのは厳しいだろう。

だが、それはそれとしてソラは実力者だ。

洗脳でタガが外れている今、その剣技はまさに暴威。

まともに相手できる人間は限られている。

シャララと、クリームヒルト、それからジークフリート。

一人は負傷で意識不明、残り二人はキルミラを放置できない。

 

(どうする、どうする・・・・!?)

 

攻防を繰り広げながら、なんとか打開策を探していた。

その時だった。

 

「止まれっ!!ソラァッ!!」

 

騎士団と護衛隊を次々切り捨て、今度こそ民間人へ向かおうとしたソラの前に。

エクリプスが躍り出る。

雷で両手をコーティングし、デインリアルに直接触れないよう工夫して。

何度も撃ち合いながら、エクリプスは声を張り上げた。

 

「何に刃を向けている!?何を斬ろうとしている!?お前はこんなことをやるために、鍛えて来たんじゃないだろうッッ!!」

「・・・・ッ」

「は あ あ っ !!」

 

エクリプスの言葉に反応を示した隙に、強打。

がら空きになった胴体に、雷を叩き込む。

吹っ飛んでいきかけたソラだったが、すぐに踏ん張った。

 

(わざとか・・・・!?)

 

己を捉えるギラつく目に、罠だったと気付いたエクリプス。

体を守る雷がない状態の所に、デインリアルの刃が迫って。

 

「――――ハァッ!!」

 

プリズムショットが、それを阻む。

ぐらつきかけた体を立て直し、踏み込みなおしたソラ。

剣を掲げて、エネルギーを溜めて。

 

「――――魔神剣」

 

どう、と、放たれた斬撃。

プリズムとエクリプスの二人に、当たりそうになったが。

 

「ぅおああっ!!」

 

アラシが間に合い、盾で防いだ。

ほっとするのもつかの間、ソラはアラシの側面に接近。

大盾諸共に切り裂こうとすると。

 

「ミックスパレット!守りの力、アゲてこ!!」

 

さらに駆けつけたバタフライが、守りの力を付与。

エクリプスが飛び出して、躊躇なく刀身を殴り飛ばした。

その様子を見て、今なら命を吸われることもなさそうだと察する青の護衛隊の面々。

 

「感謝する」

「いいえ、むしろ遅くなってごめんなさい」

 

己に宿った光を見て、アラシが礼を述べると。

申し訳なさそうに眉を潜めるバタフライ。

 

「何、気にするな。今までそんな暇なかったのは分かる」

 

油断なく構えながらも、にっと笑ってくれるアラシに。

バタフライは少しだけ表情を和らげたのだった。

 

「ホオオォォ・・・・」

 

とはいえ、相変わらず大ピンチだ。

どうしたもんかと悩むこちらなぞお構いなしに、ソラは呼吸を整えて。

 

「――――全集中・月の呼吸」

 

剣を、構える。

 

「伍ノ型 月魄災禍(げっぱくさいか)

 

次の瞬間、ソラが剣を振るっていないにも関わらず。

斬撃が四方八方に飛ぶ。

バタフライ達はもちろん、未だ逃げ惑う民衆にも襲い掛かる攻撃。

 

「ッこのままじゃ被害は増える一方です!せめてランボーグだけでも何とかしないと!」

 

民衆に向かうものを弾きながら、合流してきたウィング。

彼の意見には皆賛成していたが、しかし障害があまりにも強大過ぎる。

そうこうしている間にも、ソラは再び呼吸を整えて接近。

 

「捌ノ型 月龍輪尾(げつりゅうりんび)

 

抉り取る様な斬撃を繰り出してきた。

 

「わあああああ!!」

「きゃああああ!!」

「ぅあああああ!!」

「ぐぅっ・・・・!!」

「ぬうううう!!」

 

それぞれに悲鳴を上げながら、散り散りになってしまう仲間達。

 

「弐ノ型 珠華ノ弄月(しゅかのろうげつ)

「うわあっ!!」

「があっ!!」

 

ウィングとアラシに向けて、連続攻撃。

続けてエクリプスに目を向けた。

 

「陸ノ型 常夜孤月(とこよこげつ)無間(むけん)

「っく!!」

 

エクリプスは果敢に立ち向かうが、物量に押し切られてしまい。

 

「ぐああ!!」

 

横っ面を蹴り飛ばされてしまった。

 

「エクリプス!っこの!」

 

バタフライが、ミックスパレットで回復しようとするが。

そんなこと見逃されるはずもなく。

 

「玖ノ型 降り月(くだりづき)連面(れんめん)

「あああッ!!」

 

防御が間に合わず、バタフライはもろに斬撃を喰らってしまった。

 

「バタフラッ・・・・!」

「壱ノ型」

 

案じて声を上げたプリズムの目の前、一瞬でソラが現れて。

 

「闇月・宵の宮」

 

一閃、繰り出そうとした。

 

「・・・・ッ」

 

――――一瞬だけ、だけど素人目にも分かるくらいに。

動きが、鈍って。

それでも、無常に攻撃は放たれる。

 

「~~~ッ!!」

 

プリズムは無我夢中で光弾を放ち、剣を弾き飛ばす。

 

「ハァッ!!」

 

そこへすかさずツムジが駆けつけて、暴風を叩き込んだ。

直撃を受けて、あっけなく吹っ飛ばされるソラ。

 

「ミックスパレット!!」

 

プリズムと距離が離れたのを見て、バタフライがリベンジとばかりにミックスパレットを行使。

 

「空気の力、サガれぇッッ!!!」

 

絶対零度の冷気を放って、容赦なく氷漬けにしてしまった。

 

「回復、するよ!みんなこっちに!」

 

ミックスパレットをなおも構えて、声をかけるバタフライ。

守りの力で呪いを受けないと言っても、ダメージをゼロに出来るわけではない。

バタフライも、自らの傷を辛そうに抑えていた。

 

「どうにもジリ貧だな」

「ええ、隊長も動けないし、このままじゃ埒が明かないわ」

 

ビシビシという音。

早くも氷漬けから脱しようとするソラを苦い顔で見つめながら。

アラシとツムジはにらみを利かせる。

 

「・・・・一番現実的なのは、誰かが囮になること、か」

 

『実に不本意です』とばかりの顔で、そう結論付けるアラシに。

同じ表情をしたツムジが、こっくり頷いた。

そうなると、誰が残るかということになる。

プリキュア達はやめておいた方がいいだろう、ランボーグを浄化してもらわなければならない。

しかし、アラシやツムジ、今は避難誘導に回っているハヤテで。

果たしてソラを抑え込めるかどうか。

難しい顔で悩む間にも、ソラは拘束から逃れようとしている。

時間はない。

――――迷いに、終止符を打ったのは。

 

「――――わたしが」

 

プリズムだった。

 

「わたしが、残ります」

「プリズム!!」

 

食って掛かったのは、バタフライだ。

上手く言葉が出ないらしい。

首を横に振りながら、口をパクパクとさせるバタフライ。

しかし、彼女の言わんとしている心配や気遣いが、手に取る様に分かって。

 

「ありがとう、あげはちゃん。でも、やっぱりわたしが適任だと思うの」

 

プリズムは、微笑みを浮かべる。

 

「見たでしょう?ソラさん、わたしへの攻撃だけ明らかに遅くなってた」

 

『ほんのちょっぴりだけど』と苦笑いしながらも。

 

「だから、ほんの少しだけでも可能性があるなら、やりたい・・・・わたしが、やりたい」

 

プリズムの決意を聞いて、泣き出しそうになるバタフライは。

握りしめた彼女の手へ、祈る様に額を寄せた。

・・・・本当は、分かっていた。

ソラの足止めには、プリズムが、ましろが一番効果的なのは分かっていた。

だけど、それは。

ましろを、大好きな人と戦わせることで。

それは、それだけは。

やってはいけないと思って、言い出さなかった。

言い出せなかった。

 

「・・・・ごめん」

 

謝罪を絞り出しながら、微笑むプリズムを抱きしめる。

 

「ごめん・・・・!!必ず戻る、絶対に戻るから・・・・!!」

「・・・・うん」

 

バタフライを抱きしめ返しながら、プリズムはこっくり頷いた。

 

「君一人に戦わせない」

「ええ、この子は私達に任せて」

 

アラシとツムジの宣言に、涙を拭いながらバタフライは頷いた。

 

「行こう、ウィング、エクリプス!!」

「分かった」

「プリズム、どうか無事で!!」

 

バタフライ達が飛び出していくのと、ソラが拘束を解いたのは。

同時だった。

 

「プリズムショット!!」

「・・・・!!」

 

当然攻撃しようとしたソラへ、思いっきりプリズムショットを放つ。

直撃を受けたソラは着地して、じろっとプリズムを視界に収めた。

 

「いくぞ」

「・・・・はい」

 

口元を、噛み締めて。

プリズムは、前を見る。




アラシ
拙作オリジナルキャラ。
ハヤテ、ツムジと同じ次期隊長候補の一人。
アリリ以上にマッシブな体形。
『スカイランド大盾術』という、大盾でぶん殴る戦法で戦う。
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