今回はお返事サボってしまいましたが、皆さんの悲鳴・・・・もとい、ご反応嬉しいです(笑)
ソラが動く。
プリズムを脅威とみなしていないのか、それとも別の理由か。
足が向いたのはアラシの方だった。
「っく!」
一瞬で距離を詰めたソラは、大盾に一閃を叩きつけ。
破壊する勢いで攻撃を加える。
「舐めるな!!」
「・・・・・ッ!!」
攻防を繰り返せば、相手の攻撃に慣れてくるというもの。
今度は防ぎ切ったアラシは、ソラごと思いっきり弾き飛ばした。
身を翻して降り立ったソラは、デインリアルから魔力をひもの様に伸ばす。
それを手ごろな瓦礫につなげると、即席のモーニングスターを作り上げてしまった。
「――――全集中・岩の呼吸」
ごうごうん、と。
変わった呼吸をしながら、繋げた瓦礫をアラシの上に投げて。
「弐ノ型 天面砕き」
「ぐううっ!!」
紐を踏みつけて、落下させて来た。
アラシは咄嗟に防ぐが、胴体ががら空きになる。
完全に無防備だったのは一瞬。
歴戦の戦士らしく、すぐにカバーに入るが。
ソラにとってはその一瞬で十分だった。
「壱ノ型
紐の部分を握り、剣と瓦礫を錐揉み回転させて二方向から攻撃を仕掛ける。
「させない!」
ツムジが飛び込んで、暴風の薙ぎ払いを放つ。
「やんちゃはここまでよ!新入り!!」
レイピアに風を纏わせて、ロングソードサイズにすると。
一閃。
魔力の紐を断ち切った。
重みが無くなり、バランスを崩しかけるソラ。
「はああああ!!」
倒れかけたところへ、プリズムが必殺技を放つが。
「・・・・ッ!」
倒れかけた不安定な姿勢から斬撃が放たれて、プリズムショットが両断されてしまった。
「ああっ・・・・!」
「――――伍ノ型」
当たると思った攻撃が無効化されたことに、声を上げるプリズムの目の前で。
再び魔力の紐が繋がれて。
「
瞬く間に跳躍したソラが、広範囲に攻撃を放った。
地上四か所、重みと反動を存分に活かした連撃が。
衝撃波を産み出だして、プリズム達三人を襲う。
「ぐあああああ!!」
「ああああああ!!」
「きゃああああ!!」
全身をもろに揺さぶられて、吹き飛ばされるプリズム達。
「――――
体勢を大きく崩し、安易に立て直せなくなったところへ。
ソラは容赦なく技を放つ。
「――――
練り上げられた気功と、怨念が。
実体を持った暴威となって、襲い掛かって。
三人を、直撃したのだった。
「――――アラシ、ツムジィッ!!」
駆け寄るハヤテが、彼らを案じて叫ぶ目の前。
土煙が晴れると、倒れ伏した面々がいた。
プリズムに至っては、変身が解けて戻ってしまっている。
「ぅう・・・・っは」
なんとか身を起こそうとするましろの目の前。
ソラが立っていた。
慣れた手つきで、剣を逆手に持つと。
切っ先を思い切り振り上げる。
「――――ぁぁ」
バタフライの、守りの力はもうない。
ましろに避ける力は、ない。
「・・・・ッ!」
もうダメだと、ましろは目を強くつむった。
「――――?」
だが。
想定よりも痛みが来るのが遅い。
何があったのだろうかと、ましろはゆっくり目を開ける。
――――ソラが、剣を握る己の手を。
死に物狂いで、止めていた。
その瞳は、温もりが、感情が。
戻ってきている。
「そ、ソラさ――――!」
「――――ころして」
ましろが声をかけるよりも早く。
見えた一抹の希望が、摘み取られる。
「おねがい、ころして・・・・!」
それを伝えるだけで、精いっぱいなのだろう。
何かを言わなければと、ましろが口をぱくぱくさせてもたついている間に。
せっかく戻った感情が、みるみる消えて行ってしまった。
「――――ソラさん」
なんとか言葉を絞り出せた頃には、もう操り人形に戻ってしまっていた。
ソラは押さえていた腕を放すと、もう一度振り上げなおして。
今度こそ、振り下ろす。
「――――黄昏雷響!」
甲高い金属音。
ましろの体が、持ちあがる。
意識を取り戻した目の前で、ソラが拘束される。
困惑のままに視線を巡らせると。
「すまん、寝過ごした!」
「ジークフリート王子!?」
ジークフリートが、不敵に笑ったのだった。
「あれっ、そういえば腕!なんで!?」
昏睡していたはずの彼が戦場に来たのも驚きだが、失ったはずの右腕が復活しているのも仰天だ。
どういうことだという困惑を、口に出さずとも察してくれたジークフリートは。
ましろを降ろしながら説明してくれた。
「スカイランドの両陛下が、血を下さってな。お陰で腕一本再生できるだけの魔力を得られた」
「王様と、王妃様が・・・・!」
それでも急いで駆けつけてくれたのだろう。
解けかけた包帯を靡かせた彼は、辛うじてローブを纏っただけのラフな格好だ。
「ましろさん、もう一度変身は出来そうか?」
「は、はい!でも・・・・いいんですか?」
「何がだ?」
不思議そうに目だけを向けてくるジークフリートへ、ましろはおずおずと問いかける。
「だって、ソラさんはクシザスで大暴れしちゃって、たくさん・・・・たくさん、死なせちゃって・・・・だから・・・・!」
「ああ、そのことか」
操られているとはいえ、仇ともいうべきソラを手助けしてしまっていいのか。
そんなましろの不安を感じ取ったのだろう。
「――――知らん!」
「え」
これが漫画だったなら、『ドバーン!!』だなんてオノマトペが出ていただろう。
あまりにも堂々とした宣言に、ましろの目が点になる。
「俺は作戦会議に出とらん!だからどんな決定が出たかなんて知らん!」
「え、ええええ――――!?」
ましろが素っ頓狂な声をあげようが、彼の決断は変わらない様だ。
「俺にとってのソラ・ハレワタールは、キュアスカイは!十分信用に足る人物だ!助ける理由はそれで事足りる!!」
『だから』と、ジークフリートはましろをまっすぐに見つめて。
「俺は、君の味方をする」
「――――!」
――――本当、は。
本当は、無理ではないかと思っていた。
だって、失われたものは、あまりにも多くて、大きくて。
何より、さっき懇願されてしまったから。
わずかに取り戻した意識で、『ころして』と願われてしまったから。
だから、助けたところで意味はないんじゃないかと。
自分はまた、余計なことをしようとしているのではないかと思っていた。
だけど、今。
味方になってくれると言ってもらえて、肯定してもらえて。
少しだけ自分を信じていいのかもしれないと。
ましろは口元を結ぶ。
「・・・・助けたいです」
だから、願いを口にする。
「ソラさんを、助けたいです・・・・!」
ジークフリートを、同じくまっすぐ見上げて。
プリズムに変身しなおしながら。
やりたいことを、はっきり告げたのだった。
「うむ、良し!」
頼れる大人は、子どもの願いを否定せず。
にっかり笑って、肩を叩いてくれる。
「では、一泡吹かせてやろうではないか!!」
「はい!」
拘束を破ったソラを見据えて、構えた。
◆ ◆ ◆
「ランボーグッ!!」
「くっ・・・・!」
一撃を飛びのいて回避する。
鎧を素体に生み出されたランボーグ。
合計三体いた奴らは今、一つの個体になっていた。
シャララが危惧していた通り。
青の護衛隊とクシザス騎士団によって倒された個体の、アンダーグエナジーを吸収して。
巨大化かつ狂暴化していたのである。
そんなランボーグに苦戦していたバタフライ、ウィング、エクリプスの三人は。
揃って苦い顔をしていた。
「早くましろんの所に戻らないといけないのに・・・・!」
プリズムは今、ソラと対峙している。
護衛隊のエースが二人もついてくれているとはいえ、やはり大好きな人と戦うのはつらいはずだ。
だから、早く戻りたいのに。
目の前のランボーグは、簡単に思い通りになってくれない。
――――プリキュアは全員、ソラの生還を目標にしているが。
正直そんな悠長なことを言ってられないくらい、ソラが強すぎるのも事実だ。
プリズムに、ましろに。
大好きな人を、手に掛けさせるなんて。
(そんなこと、させるわけにはいかないのに・・・・!!)
苛立ちに、バタフライは舌を打ちそうになっていると。
横合いからの攻撃に、反応が遅れて。
「ッバタフライ!!」
ウィングの悲痛な声を聞きながら、被弾を覚悟して。
「ゥオラァッ!!」
割り込んできたハヤテに、助けられた。
「伝令だ!ジークフリート王子がましろちゃんに付いた!」
「ッそれ、本当ですか!?」
「ああ!小鳥の涙程度だが、余裕が出来た!」
向かってきた攻撃をはじき返しながら、ハヤテはにやっと笑う。
「とはいえ、とっとと片付けるのが一番だ!!微力ながらお手伝いするぜ!!」
「ッはい!!」
◆ ◆ ◆
――――吸血鬼もとい、吸血人の能力の一つに。
『魅了』というものがある。
目を通して、相手に魔力を影響させて。
心を意のままに操るのだ。
かつては吸血行為はもちろんのこと、とても書けないような真っピンクなことにも使われたりもした。
では、人族と友好関係を築いた今は、使っていないのか?
答えは、『否』だ。
今も今で、野生生物を宥めたり、犯罪者の無力化したり。
使い道はいくらでもあるのだ。
人間世界における銃刀法の様に、扱いには厳しくなったものの。
現代においても、学校では『魅了』の使い方について学んだりする。
そもそもの話、狼が肉を食うのをやめられないように、花が枯れずにいられないように。
生まれ持った能力を消すことは不可能である。
――――さて、ここでソラのフィジカルについても触れよう。
聡明なる皆々様もご存じの通り、子どもの頃から厳しい鍛錬を続けて来たソラ。
気配を感じ取る第六感はそうだが、基本的な五感も優れている。
特に、敵の動向を探る為の目は。
プリキュア達の中でも抜きんでているといえるだろう。
――――つまり、何が起こるかと言えば。
「・・・・!」
ジークフリートが駆け抜ける。
もう一方では、プリズムも同じく疾走しているが。
ソラは、実力者であるジークフリートを優先して警戒しているようだ。
プリズムには最低限の視線しか寄こさず、彼の方をもっぱら注視している。
(そうだ、そのままこちらにかまけていろ!)
獰猛に笑ったジークフリートは、移動速度を上げた。
思惑通り、ますますプリズムを無視して注目し出したソラへ。
魔力の籠った、目を向けた。
「・・・・!」
瞬間。
ソラの体が硬直する。
「今だ!!」
「ッはい!!」
ジークフリートの合図に、プリズムは小さな光弾を放った。
これまでならあっけなく避けられていたそれが、直撃。
ソラの体がぐらついた。
「・・・・ッ!」
攻撃を加えて来たプリズムの方を見れば、割り込む様にジークフリートが現れて。
再び目を合わせてくる。
「・・・・ッ」
「おおおッ!!」
またしても硬直するソラ。
その隙をついて、ジークフリートの蹴りが突き刺さって。
派手に吹き飛ばされた。
――――ソラはフィジカルが優れている。
動体視力だって例外ではない。
常人では捉えきれぬ速さで動き回る物体も、追いかけることが出来る。
しかしそれは、言い方を変えれば。
どうあがいても、視線が合うということでもある・・・・!!
「そらッ!」
「・・・・っ」
加えて、ジークフリートは吸血人の王族だ。
500年の間に人とも交わって来たので、かつてに比べれば薄れているだろうが。
それでも、王国の中では随一の純血を保っている。
そんな彼の魅了の術を以ってすれば。
例え、すでに心を捕らわれている相手であっても。
ほんの数秒、動きを止めるくらいわけないのだ・・・・!!
「やああッ!!」
何度目かの硬直。
ほんの数秒でも、今は十分すぎるくらいの隙だ。
ジークフリートが作ってくれたチャンスを無駄にせず、プリズムはソラが止まる度に攻撃を加えた。
「・・・・ッ」
ソラを攻撃することに、何も思わないわけではない。
だが、アンダーグエナジーを注がれてしまっている以上。
今は技をぶつけて浄化するしかない。
(ごめんなさい、ソラさん・・・・!)
歯を食いしばりながら、それでも攻防にくらいつく。
「――――!」
とはいえ、やはりいつまでもやられているソラではない。
ぐらりと倒れかけた体を踏ん張って立て直すと、右手に力を込める。
顔の罅割れが、再び濃く深くなって。
剣から魔力が迸った。
「させるか!!」
魅了を発動させたままのジークフリートが、また硬直させようと近づくと。
それを待っていたとばかりに地面を攻撃したソラ。
さらに剣を振るい、砂利を飛ばして。
ジークフリートの目を潰してしまった。
「ぐあ・・・・!」
「ジークフリートさん!」
先ほどのお返しとばかりに蹴り飛ばされたジークフリート。
プリズムが彼を案じて、思わず気を取られてしまう。
「――――月牙」
その隙に、ソラは。
デインリアルの魔力を、存分に高まらせて。
「――――天衝」
ブラックアウト。
「――――っは」
なんとか、すぐに意識を取り戻せた。
変身も解除されてはいない。
だが、バタフライがくれた守りは引きはがされてしまっていた。
ソラは未だ健在。
だが、顔の罅割れは最初よりもひどくなっている。
これ以上魔剣の呪いが進行すれば。
例え、取り戻して、その後来るかもしれない処罰を何とか出来ても。
すぐに。
死んで、しまうかもしれない。
(何とかしなきゃ、何とかしなきゃ・・・・!)
痛む体にムチ打ち、立ち上がりながらプリズムは考える。
あの魔剣を、どうにかしないといけない。
しかし、どうする。
ジークフリートはやられてしまった、バタフライ達もまだランボーグの相手をしている。
シャララとクリームヒルトも、キルミラの相手で手いっぱい。
ツムジとアラシも、未だ目覚めない。
プリズム一人で、ソラと、魔剣を。
相手取らないといけなくなった。
(どうしよう・・・・!)
逃げるなんて論外だ。
今ここに立てているのは、今倒れている人達のお陰なのだから。
だが、ソラの強さは文字通り身をもって知ってしまった。
今更付け焼刃の戦術程度で上手く立ち回れるとも思えない。
必死に頭を回していた、その時だった。
「・・・・ッ」
相手の戦意を察知したのだろう。
突っ込んできたソラの一閃を、前髪に掠りながら避ける。
「ふっ・・・・!」
まずは自分の周りに光弾を設置してから。
プリズムは攻勢に転じた。
「っく・・・・!」
いつかの、UFO戦の足場にも使った光弾が。
ソラの斬撃を上手いこと往なしてくれているのを確認しながら。
プリズムは時々光弾の配置を変えて、攻撃を誘導しながら戦うが。
やはり魔剣には今一歩足りない。
(やっぱり、わたしじゃ勝てない・・・・!)
斬撃を捌き続けながら。
考えて、考えて、考えて、考えて。
「――――」
――――ひらめき、とは。
こういうことを言うのだろう。
(――――こんなこと、みんなはものすごく怒るだろうな)
はく、と浅く呼吸して。
プリズムは目を伏せる。
しかし、他に良い手も浮かばない。
(やらなきゃ)
生唾を呑み込んで、目を見開いた。
「・・・・ッ」
相変わらず、韋駄天のような速さで接近してくるソラ。
あまりの手数に、プリズムは対応が追い付かなくなってくる。
次第に掠る様になってきた魔剣の刃。
バタフライの守りが無い今、これだけでも致命傷になりかねない。
だが、これでいい。
(倒すだけなら、他のみんなにも出来るはず・・・・だから、わたしは・・・・!!)
本音を言うのなら、怖い。
痛いのは確実だ。
だけど、やらなければならない。
味方してくれた人達の為に、助けてくれた人達の為に。
成し遂げなければならない・・・・!!
「・・・・!」
さすがに光弾を煩わしく思ったのか、大振り一つですべてが斬り払われてしまった。
衝撃で吹っ飛ばされるプリズム。
受け身すら取れず、背中から地面に激突しそうになる。
当然、それを見逃すソラではない。
剣を振りかざし、ぎらつく切っ先が向けられる。
「――――ッ!」
防げない、避けられない。
良い点があるとするならば、この状況は狙い通りであるということだけだ。
「っく・・・・!」
奥歯を、噛み締めて。
怨念の刃を、受け入れた。
「――――ぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!」
胸の中央。
デインリアルが、突き立てられる。
「うううう・・・・!!」
轟かせた悲鳴を、必死に呑み込みながら。
両手をかざす。
(――――ぁ)
痛みに明滅する視界。
今にも泣き出しそうな顔の、ソラへ。
「 プ リ ズ ム シ ョ ッ ト ォ ッ ッ !! 」
渾身のプリズムショットを、放つ。
「――――ッ!!」
ソラの、手が。
デインリアルから離れた。
「ぁぁぁ・・・・ぅぅ・・・・!!」
デインリアル共々、地面を転がっていくプリズム。
焦点が合わなくなって来た瞳が、叫ぶ仲間達を捉えた。
「 バ タ フ ラ イ イ イ イ イ イ イ イ イ !!!!!! 」
信じていた。
きっと来てくれると、信じていたからこそ。
渾身の力を振り絞って、絶叫すれば。
ブラックアウト寸前の中で、ミックスパレットを構えて咆哮する姿が見えて。
(――――ぁぁ、よかった)
力なく、横たわりながら。
降り落ちる虹兒の中で、意識を手放す。