突然のくまモンにビビり散らかしています(笑)
『まっしろちゃーん!早く会いたいよー!真っ白でふわふわのー!ま!し!ろ!ちゃん!』
「もう、やめてよ恥ずかしい。子供じゃないんだから」
ある日、虹ヶ丘家。
ましろはリビングでタブレット端末を通じ、両親と話していた。
彼女の両親は海外に出ており、基本家にはいないのだ。
『元気でやってる?寂しくない?』
「うん、おばあちゃんもいるから大丈夫。それに、新しい友達も出来たんだよ!」
『そっか、じゃあ、今度帰ったら紹介してね』
「うん!」
それでも、こうやってちょくちょく連絡を取り、ラブコールをダイレクトに伝えてくれる。
寂しくないと言えば嘘になるが、愛されているのも本当のことだ。
「それじゃあ、また今度ね」
『まったねー!ましろちゃーん!』
『またね、おばあちゃんにもよろしく』
画面越しに手を振り合って、通話を切る。
「ふう・・・・ふふっ」
緊張したわけでもないのに、ため息が出て。
ましろは自分がおかしく思えて、笑ってしまった。
と、その時。
「――――ええーん!ええーん!!」
「エルちゃん?」
すっかり家に馴染んできた、エルの号泣が聞こえて。
ましろはタブレットを片付けて席を立つ。
「ソラさん、どうしたんですか?」
「ああ、ましろさん!よかった、ちょっと困ってしまって・・・・!」
「はい、それもうよく分かります・・・・」
熱いシャウトをかますエルを腕に抱えて、やや泣きそうなソラが助けを求めてきた。
「ミルクも、おむつも違うし、眠いってわけでもなさそうで・・・・!」
「ええ、じゃあ何だろう・・・・?エルちゃーん、どうしたのー?」
「えるー!えるるー!」
原因も思い当たらず、一緒になって覗き込むと。
なお泣き続けるエルは、ふと。
何かを探す様に両手をさ迷わせ始めた。
「・・・・もしかして、パパとママを探しているのかな」
「なるほど!それだ!・・・・って結局どうすれば!?」
エルの仕草を見たましろが、ひらめきを口に出せば。
ソラも納得して指を立てるが。
そもそもスカイランドとの行き来も出来ない以上、どうすりゃいいんだと頭を抱えた。
「ねえ、せめてご両親の顔だけでも、見せてあげられないかな」
「そうですね、でもどうしたものか・・・・」
普段の自分と照らし合わせて、またアイデアを出すましろだったが。
スカイランドに写真の概念はない。
顔だけでも分かれば似顔絵でなんとかなっただろうが、そもそもソラは知らない。
八方ふさがりな状況に、再び頭を悩ませ始めた時だった。
「――――出来るわよ」
「えっ?」
ましろと同じく、泣き声を聞きつけらしいヨヨが。
そう言いながら入室してきた。
「このミラーパッドを使えば、スカイランドと通信が出来るの」
「そうなんですか!?こっちの技術はそこまで・・・・!?」
「い、いやいやいやいや!そんなの出来ないよ!」
『おばあちゃん!』と、ましろはヨヨに詰め寄って。
「なんでそんなもの持ってるの?どうしてそんなこと知ってるの!?」
あばあば慌てながらも、しっかり要点を抑えた質問をすると。
ヨヨは、にこにこ笑って。
「だって私、スカイランド人だもの」
「ああ、そっかぁー、スカイランド人なんだぁ~ぁあああああ!?」
さらっと行われた暴露をスルーしかけて、だけどしっかり耳に届いていたましろは。
みるみる頭から湯気を出して、オーバーヒートしてしまった。
「・・・・へぇっ?はっ!?ええっ!?」
「あら、綺麗な三度見」
次に事態を呑み込んだソラも、素っ頓狂な声を上げて。
ヨヨとましろと、綺麗に三度視線を往復させる。
「スカイランドの博学者だった私は、この世界について調べていたんだけど。50年前に移住したの」
「それでスカイランドの話を聞いても驚かなかったんだねぇ」
「うふふ」
驚愕はまだ収まらないが、なんとか話を聞ける程度に抑え込んでから。
ヨヨの話に耳を傾けることにした。
「それで、ミラーパッド?で、エルちゃんのご両親と話せるかもしれないということですが」
「ええ、ただ、今のままではエネルギーが足りないわ」
「そうなんですか?」
ソラの問いかけに、一度頷いたヨヨは。
一冊の本を取り出して、青い結晶が書かれたページを開いた。
「なるほど、スカイジュエル」
「スカイジュエル?」
見慣れない文字を難なく読んだソラを見て、やはり異世界人なんだと実感しながら。
ましろは青い結晶について質問した。
「はい、スカイランドでは一般的なエネルギー源です。これで生活のあれこれを賄っているんですよ」
「そうなんだぁ」
こちらでいう電気に値するものかと納得しながら、ましろは感嘆の声を上げる。
「でも、この世界でスカイジュエルを探すのは至難の業では?」
「そっか、異世界のものなんだから、こっちにあるかどうか・・・・」
「いや、でもエルちゃんのためです!」
前途多難な状況にましろは肩を落とすも、ソラは拳を握って立ち上がる。
「ヨヨさん、そのお話をしたということは、少なくとも手掛かりはあるんですよね?教えてください!」
「ええ、もちろん」
熱意ある懇願に、大らかに頷いたヨヨは。
ある方角を指さして。
「うちの裏山にあるから、そこに取りに行って頂戴な」
「そ、そんなところに!?」
「意外と近かったー!!」
例え世界の果てまでも行く覚悟であったソラは、出鼻を挫かれたものの。
それはそうと、近場で調達できるのはありがたい。
「二人で行ってくると良いわ、エルちゃんも一緒にね」
「は、はい!」
何はともあれ。
こうやって、『みんなでプチ山登り』が決定したのである。
◆ ◆ ◆
はあー、びっくりした。
まさかヨヨさんがスカイランド人だったとは・・・・。
「びっくりです、まさかおばあちゃんがスカイランド人だなんて」
とはいえ、一番びっくりしているのはましろさんだろう。
よもや自分の身内が、ファンタジーな出身だなんて。
「となると、ましろさんも少しだけスカイランド人ということでしょうか」
「そうなりますねぇ」
今、私とましろさん。
それからエルちゃんの三人で、山道を登っている。
ヨヨさんによると、スカイジュエルは山の中の川原にあるということなので。
そこを目指して歩いているところだった。
「それにしても、ヨヨさんはとても器用ですね。だっこ紐まで作れるだなんて・・・・」
「はい!これで一緒に山登り出来るねぇ、エルちゃん?」
ヨヨさんのだっこ紐で、私がエルちゃんを抱えている。
ましろさんが、優しく語り掛けるけど。
「・・・・えーる」
エルちゃんはまだご機嫌ナナメだ。
さて、どうするか・・・・。
「うーん・・・・あ、そうだ」
一緒に悩んでいたましろさんが、道端に何かを見つけたようだ。
「ほら、エルちゃん。綿毛だよー」
「むー、えうえう!」
差し出したのは、たんぽぽの綿毛。
赤ちゃん故に、それが何か分からないらしいエルちゃんは、最初こそ不機嫌のままだったけど。
「じゃあ、これは?」
ましろさんは得意げに笑うと、綿毛を口元に近づけて。
「ふー!」
ふわっと、飛ばしてみせた。
やったやった!人類一度は経験したやつ!
「ほぁー!えるるー!!」
豊かな木々と、青空に飛んでいく綿毛たち。
綺麗な光景に、エルちゃんの顔が一気に明るくなった。
綿毛を掴もうと、ちいちゃな手をぱたぱたさせている。
かわいい(確信)
「・・・・あ」
私も何か・・・・と辺りを探していると、赤に青の斑点があるきのこを見つける。
あれ、確か傷薬の材料なんだよな。
そう思いながら、近づこうとすると。
ましろさんに手を引っ張られて。
「あ、それ毒キノコですから、気を付けてください!」
「そうなんですか!?」
あっ、そういえばここスカイランドじゃなかった!
うっかり!!
「すみません!あの模様のキノコ、スカイランドだと傷薬の材料になるので、つい!」
「そうなんですか!?」
「はい、とってもよく似ているんです」
いかんいかん、大変なことになるとこだった・・・・!!
「帰ったら、図鑑を貸しますよ」
「面目ない、ぜひお願いします・・・・」
ぐぬぬ、前世の記憶があろうとも、至らぬところが多いな・・・・。
精進せねば、押忍!!
「う"ぅん、えるぅ~!」
こっそり気合を入れなおしていると、エルちゃんがまたぐずりだした。
このぐずり具合は・・・・。
「ミルクですかね、先ほど飲みませんでしたから」
「じゃあ、ちょっと休憩にしませんか?こっちに、ちょうどいい広場があるんです!」
「行きましょう!」
ましろさんの先導で、山道を更に進んでいく。