ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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お待たせしました。
思ったよりも難産だった・・・・!


偽物、再会

「――――ましろん!」

「ましろさん!」

 

起き上がったましろに、あげはとツバサが一斉に駆け寄った。

やっと開かれたましろの両目からは、大粒の涙がはらはらと落ちていて。

仲間達は静かに慌てだす。

 

「体調はどうだ?何か痛むところとかは?」

 

二人に遅れて歩み寄ったベリィベリーが、落ち着いて問いかけると。

もう少しだけ黙して涙し続けたましろは、ぽつりと呟く。

 

「・・・・悔しい」

「・・・・何が悔しい?」

 

重ねられた問いに、しゃくりあげながら。

 

「助けなきゃ、いけなかったのに・・・・手が・・・・手がッ・・・・ッ届かなかったの・・・・!」

「ましろん・・・・」

 

――――まさか、気付いているのか。

己が何故、目覚めたのかを。

蝕んだ呪いが、何故消えたのかを。

 

「わたしばかり・・・・助けられて、ばかりッ・・・・!」

 

静かな嗚咽が、部屋に響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――『七試練』の刑が科せられることになった私の右腕には。

その証である刺青が彫られた。

『七支刀』みたいな線を本体に、枝分かれしたそれぞれの先と手の甲。

合わせて八か所に目玉が描かれている。

そんなだいぶ不気味な刺青が、肘の辺りまでがっつり同居することになったわけだ。

課題を一つクリアするごとに、一つずつ閉じて行って。

最終的に手の甲の目玉が閉じると、オールクリアという扱いになるらしい。

ちなみにこの目玉達、どこからでも目が合う(白目)

腕を左右に動かしても、ちゃんと瞳が動いて目を合わせてくる・・・・。

今はまだ課題を伝えられていないけれど、やることは山積みだ。

護衛隊や一般兵の皆さんを手伝いつつ、あっちへぱたぱた、こっちへぱたぱたしている。

・・・・どこにいても、鋭い視線が向けられるけれど。

完全な自業自得なので受け入れている。

今のところ、面と向かって糾弾されたり、物理的手段に来られたりとかもないしね。

民衆が、理性を以て秩序を保ってくれているのはありがたいことだと。

無機質な安堵をこっそり抱いている次第。

 

「――――うん、良し。こんなところね」

「はい、お疲れ様でした」

 

現在。

ツムジ先輩にお供して、クシザスへの支援物資の検品を終えたところだった。

 

「それにしても、『くく』だったかしら。向こうの掛け算って面白いのね」

「ええ、口にするのも楽しいです」

 

・・・・あの日。

洗脳されていたとはいえ、刃を向けてしまったわけだけども。

 

『――――きちんと更生できるか、見守るのも先輩の仕事よ』

『申し訳ないと思うなら、結果を出しなさいな』

 

と、寛大なお言葉を頂いている。

――――今回のキルミラの襲撃で、スカイランドも相応の被害を受けたけれど。

それでも、首都が壊滅したクシザスよりはまだマシだ。

破壊されてしまった街も、ランボーグを浄化したことで元に戻ったのだしね。

だから、出来るだけの人員と物資を派遣して、救える命を救おうとしていて。

その派遣部隊のメンバーに、私は志願していたのだったけど・・・・。

 

『――――正気か?』

『加害した直後にいくとか、舐めてると思われてもおかしくねぇぞ』

『いいから今は休んでいなさい、あとでいっぱい頑張ってもらうから』

 

上からハヤテ先輩、アラシ先輩、ツムジ先輩である。

ここまで言わなくても・・・・と思わないでもないけれど。

何か意見できる立場でもないので大人しく従っている次第。

まあ、七試練もある身だし、あんまり動き回らない方がいいんだろうけど・・・・。

それはそうと、何かやってないと落ち着かないのでも事実で・・・。

先輩方もそれを察してくれているのか、色々ご用命をくれるのでありがたい限りである。

不肖、ソラ・ハレワタール。

誠心誠意頑張ります。

 

「――――ソラさーん!!!」

 

気合を入れなおしているところに、私を呼ぶ声が聞こえた。

振り向くと、至近距離に茶色い毛並みが見えて。

 

「もぶっ!」

 

顔のど真ん中が、あっという間にもふもふに包まれた。

 

「お久しぶりパムー!!」

「会えて嬉しいコメー!」

「元気だったメンー!?」

 

空いた両サイドにも飛びつかれて。

もふもふと、ふかふかと、もちもちに。

顔がすっかり覆われてしまう。

幸せな肌触りに、思わず体が硬直してしまうけれど。

いつまでも堪能しているわけにもいかない。

 

「んー、むむー」

「・・・・あなた達、もしかして」

 

なので、声を出せないなりに『離れて―』と伝えようとすると。

 

「パムパム!」

「わわわ、ソラさん大丈夫!?息出来てるー!?」

「みんな、一度離れようか」

「ぷはっ」

 

覚えのある他の声もやって来て。

顔に張り付いていたもふもふ達が剥がされた。

明るくなった視界には、もう懐かしくなった顔ぶれ。

おいしーなタウンの、デリシャスパーティプリキュアのみなさんがいた。

 

「ごめんなさい、大丈夫でしたか?」

「あはは、はい。パムパムさんもお元気そうで何よりです」

「パム!」

 

ここねさんに確保されたパムパムさん。

飛びついてしまったのが照れくさいのか、『えへへ』とばかりに頭をかいていた。

 

「それにしても、ソラさん髪切ったんですね」

 

そんなパムパムさんを微笑ましく思いながら見ていると、ゆいさんがこちらを見ながら指摘してくる。

その通り、今の私はショートヘア。

見た目としては、いつもの髪型からサイドテールを失くした状態・・・・と言えばいいのか。

まあ、結構分かり易い変化だし、気付かない方が稀かもね。

 

「ああ、ちょっと色々ありまして・・・・・」

 

・・・・まさか。

操られていたと言えど、人死にが出るほど大暴れしたなんて。

こんなところでいう訳にはいくめぇよ・・・・。

いや、もしかしたら聞いてるかもしれないけれどもさ・・・・。

 

「他のみんなは、今どこに?」

「ツバサくんとベリィベリーさんはこちらですが、ましろさんとあげはさんは一度向こうに戻っています、学校やらなんやらありますからね」

 

連休を挟んだとはいえ、こちらでの戦いと療養で、もう一週間以上は休んでしまっている状態。

特にあげはさんは単位を取らなければならないので、やむなく戻っている。

終業式が終わり次第、またこっちに戻ってくれるという話だけど・・・・。

・・・・もう、私には関わりのないことだ。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

『クーッククック!シナモン達は無事到着したようですな!』

 

スカイランド城、謁見の間。

ヨヨ経由で要請を受けた、異世界『クッキングダム』の精鋭『クックファイター』達が整列していた。

やってきたのは総員300名ほどで、班長などの代表者のみがここに立っている。

 

『此度犠牲になった方達に、深い哀悼の意を表すると共に、スカイランドならびにクシザスの、一刻も早い復興を心よりお祈りいたす』

『我々も微力ながらお力添えを致しますわ』

「クッキング殿、ならびにクックイーン殿。此度の助力、誠に感謝いたす」

「我々クシザスも、夜の帳よりも深き慈悲に感謝します」

『うむ、そうお気になさるな』

『その通りです』

 

クックファイターであり、拓海の父でもある『品田門平』こと『シナモン』が。

『スペシャルデリシャストーン』を介して、クッキングダムとスカイランドの両国王を面会させていた。

頭を下げるスカイランド国王とジークフリートへ、『クッキング』と『クックイーン』は大らかに笑って。

 

『我々は既に、そちらのキュアスカイに、エナジー妖精とプリキュア達が大変お世話になっております』

『おいしーなタウンも、そこのシナモンとその家族が暮らしていることも有り、我らにとっても無関係ではない。それを命を懸けて守ってくれたのだ』

『協力は惜しみませんわ』

 

――――思い入れのある、大切なものを守ってもらった。

だから今度は自分達が助ける番なのだと、クッキングは語り掛ける。

その言葉へ、スカイランド国王とジークフリートが再び頭を下げたところで。

通信は終了したのだった。

 

「さて、改めて歓迎いたす。シナモン殿、ローズマリー殿」

「はっ!」

「誠心誠意、務めさせて頂きますわ」

 

シナモンとローズマリー。

それぞれが背筋を正して礼をすれば。

国王達は、頼もしそうに目を細めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んでくれ」「消えてくれ」「死ね」「死ね」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死んでくれ」「消えてくれ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」「死ね」「死んでくれ」「死ね」「死ね」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「返せ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死ね」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死ね」「消えろ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」「死ね」「死ね」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」「死ね」「死んでくれ」「死ね」「死ね」「死ね」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「返せ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死んでくれ」「消えてくれ」「死んでくれ」「消えてくれ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」「死ね」「死んでくれ」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死ね」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死ね」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「死ね」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「返せ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死んでくれ」「消えてくれ」「死んでくれ」「消えてくれ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」「死ね」「死んでくれ」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死ね」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死ね」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死ね」「消えろ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」「殺す」「死ね」「消えろ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」「死ね」「死ね」「返して」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「返せ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死ね」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死ね」「消えろ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰って来たぜ、スカイランド!」

 

――――ましろ達が戻って来たのは、その三日後だった。

ゲートを抜けてスカイランド城内に入れば、物々しい空気が出迎える。

それでも、キルミラが存命だった頃よりは遥かに軽いが。

やはり、非常事態は続いているのだと実感させられる。

 

「あ、あげはさん!ましろーん!」

「お久しぶりです」

「らんちゃん!ここねちゃん!」

 

兵士や護衛隊がせわしなく動き回る城内を少し歩くと、らんとここねが駆け寄って来た。

賑やかに駆け寄って来たらんは、あげはとひしと抱き合うと。

そのまま一回転して笑い合う。

 

「ましろさん、怪我はもう大丈夫?」

「はい、もうすっかり良くなりました!」

「よかった」

 

ましろもまた、ここねと落ち着いた会話を交わしていた。

 

「わあー!ましろちゃん、あげはさーん!」

「お久しぶりです」

 

ゆいとあまねもやって来て、一気に姦しくなる廊下。

あげはが、ミラーパッドをツバサに返却する為に離脱しても。

大人数である。

なので、さすがに近くの小規模なバルコニーに出ることにした。

 

「もう終業式は終わったの?」

「はい、今日から夏休みで」

「そっか、じゃあしばらく一緒だね」

「はい、よろしくお願いします!」

 

始めこそニコニコしていたましろだったが、段々と表情が陰ってしまう。

何かあったのだろうかとゆい達が首を傾げていると、『あの』とましろは声を上げて。

 

「みなさん、ソラさんには会いましたか?」

「ソラさん?」

「うん、会ったよ。コメコメ達がいきなりひっついちゃって、びっくりしちゃった」

「・・・・そう、ですか」

 

えへへと頭を掻くコメコメを、微笑まし気に見るゆいの返事に。

明らかにしょんぼりしてしまうましろ。

 

「どうしたんだ?何かあったのか?」

「・・・・実は」

 

たまらず代表してあまねが問いかけると、ましろはとつとつ語り出す。

曰く、『ソラに避けられている』。

キルミラと決着がついて以来、ソラは自分達と関わらなくなった。

忙しそうにしているだけでなく、意図的に、そして徹底的に避けている様だということだ。

 

「・・・・操られていたという話だし、罪悪感があるんじゃないか?」

 

――――ソラがキルミラに操られ、プリキュア達に刃を向けた話は。

ゆい達も聞いている。

もちろんソラがそんなことやるわけないことは分かり切っているし、信じているのだが。

それはそれとして、甚大な被害が発生したのもまた、覆しようのないことだ。

民間人の何人かが、ソラを睨んだり、石を投げようとする場面を何度も見た。

石を投げようとした人は、別の民間人に止められていたが。

それも時間の問題だろう。

 

「私も、少しだけ気持ちが分かるから・・・・」

「あまねちゃん・・・・」

 

かつて、洗脳を受けて『ジェントルー』と名乗り、プリキュアと敵対していた過去を持つあまね。

そんな彼女からすれば、今のソラの状況は自分と全く同じなのだろう。

ともすれば、この中で一番ソラの心情を理解出来ているかもしれない。

それを察しているゆい達は、あまねを心配そうに見つめていた。

 

「・・・・今のソラさんを一人にしてはいけない」

 

不安を振り切る様に、決意の籠った声を上げて。

あまねはましろの肩に手を置く。

 

「私達も、微力ながら力になる。だから、ましろも負けるな」

「うん、そうだね!」

「ここでソラさんを独りぼっちにしたら、それこそキルミラの思う壺だよ」

「手伝えることがあるなら、遠慮なく言ってね」

 

先輩プリキュア達の頼もしい言葉に。

一度だけ顔を俯かせたましろは、目元を拭ってから。

 

「・・・・はい!」

 

力強く、頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――美しいね、諦めない心というものは」

 

復興に向けて動き出した、スカイランドの人々を見下ろして。

バッタモンダーは一人呟く。

 

「ああ、だからこそ」

 

アラシと並んで、荷物を運んでいるソラをにらみながら。

 

「壊し甲斐があるというものだ・・・・!!」

 

その手の木刀を、握りしめた。

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