ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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『更新遅くて申し訳ない』と考えたけれど、思えばこれまでが速すぎたんだよな・・・・。
もうちょっとのんびりやってもいいのかもしれないと思う今日この頃です。


偽物、再来

――――クッキングダムからやってきた精鋭300名のうち。

既に200名がクシザスに向かっている。

指揮を執るのは、シナモンとローズマリーの二人である。

スカイランドに残りの100名と、デリシャスパーティチームを置いていく形になるが。

青の護衛隊やひろがるスカイ!チームもいるので、シナモンもローズマリーもそこまで心配していなかった。

 

「ありがとうございます、あまねさん」

「何、もともとこの為に来ているんだ。これくらいお安い御用さ」

 

スカイランド城の廊下。

それぞれ物資の入った箱を持って、ましろとあまねは並んで歩いていた。

ちなみに中身は工作道具や、材料だ。

あげはが専門学校で学んだ知識を生かして、被災した子どもの為に簡易的な保育所を作ることを提案。

『寺子屋』の様な施設を実際に営んでいる大人たちと組んで、あれこれ試行錯誤しているのである。

 

「・・・・そういえば」

 

そんな夢と希望が詰まった箱を抱えて、黙々と歩いていた二人だったが。

ふとあまねが口を開いて。

 

「ソラさんには、会えたか?」

 

問いかけに、ましろは一瞬だけ足を止めてから。

やがて、ゆっくり首を横に振る。

 

「・・・・そうか」

 

あまねもまた、シンプルに頷いた。

その残念そうな表情は、ましろの寂しさに寄り添ってくれている包容力があって。

ましろは少しだけ気持ちが楽になった。

――――昨日スカイランドに戻ったばかりだが、やはりソラには会えていない。

一度だけ、目が合いはしたが。

薄く微笑んで会釈された後、そそくさと距離を取られてしまった。

 

「長期戦になりそうだな」

「はい、でも、頑張ります」

「ああ、その意気だ」

 

ソラを独りにしたくない。

その願いを抱く背中を押してもらえて、ましろは笑顔を浮かべたのだった。

と、

 

「――――」

「・・・・?」

 

二人の目の前。

ふらりと人影が現れた。

格好からして、吸血人だ。

 

「どうしました?」

 

『迷子だろうか』と思いながら、ましろが話しかけると。

フードの下の目が、鋭く睨みつけてきたのが見えて。

 

(――――ぁ)

「――――お前がッッ!!」

 

突き刺さって来たのが、敵意だと思った瞬間。

ましろは、胸倉をつかまれていた。

 

「何を!?」

「お前達がしっかりしていれば!!どうして!!どうして!?」

 

もしかしなくても、先の災害の被害者だ。

大切なものを、理不尽に奪われてしまったのだろう。

何かに当たらないと、心を保てないのかもしれない。

ましろ達の世界でも、十分あり得る事態だ。

しかし同時に、ましろ達が暴力を振るわれる謂れもない。

 

「やめてください!彼女に手を上げないでください!」

「うるさいうるさいうるさい!!」

 

声も挙げられないましろを後ろに庇いながら、あまねは吸血人を宥めようとするが。

抱えた悲しみはあまりにも大きかったらしく、相手は頭を掻き毟りながら喚き散らす。

 

「お前もッ・・・・お前もッ!!奪われろおおおおおおおお!!!」

 

咆哮と共に、魔力の刃が展開される。

逃げる?無理だ。

避ける?無理だ。

変身?間に合わない。

 

(受けるしかないか・・・・!)

 

もう放たれた刃が、スローモーションの様に見える中。

覚悟を決めたあまねが、口元を噛み締めた。

その刹那。

 

「――――ッ」

 

飛び込む、青。

呆然と目を見開くましろの眼前で。

その人の、ソラの右肩が。

貫かれた。

 

「ぅぁ、ぐ・・・・!!」

 

崩れ落ちたソラの右腕から、だくだくと血が流れる。

 

「ッソラさん!!」

「ソラさん、しっかり!」

 

庇ってくれたおかげで、攻撃を受けることはなかったが。

ソラの傷の深さにそれどころではなくなった。

指先から滴る血が、あっという間に赤い水たまりを作っているのを見て。

ましろの顔が青ざめていく。

 

「――――お前!!!!!!!!」

 

そんなことなどお構いなしに。

吸血人はここ一番の大声を出した。

ともすれば、衝撃波が出ているのではという勢いに。

ましろもあまねも肩を跳ね上げた。

 

「お前お前お前お前お前お前お前お前!!!!!」

「ッやめて、落ち着いてください。この子は、この子達は、あなた達を守っているんですよ」

「どの面下げて!!!!!!!!!」

 

先ほどよりも大きな咆哮と、数が多い魔力の刃。

もはや、全員無傷では済まないと。

腹を括った三人だったが。

 

「ましろちゃん、どうした!?」

「ハレワタール!!」

 

ハヤテとアラシを始めとした。

青の護衛隊が駆けつけてくれた。

 

「何をしているんですか!?」

「離せ!!離せ!!殺してやる!!」

「ッこいつ殺しても、死んだ奴は戻らねぇよ!!」

 

如何に被害者と言えど、暴力沙汰を見逃されるわけがない。

あっという間に取り押さえられてしまった吸血人は、なおも暴れていたが。

 

「くそ・・・・ちくしょう・・・・かえせよ・・・・かえせ・・・・!!」

 

やがて不利を悟ると、大人しくなってしまった。

 

「怪我はないか?」

 

涙ながらに恨み言を吐く彼に、ましろとあまねがなんとも言えない思いを抱いているところへ。

ハヤテがやってきて、問いかけてくる。

 

「わ、わたしは全然!でも、ソラさんが・・・・!」

「いえ、私は――――」

「平気とか抜かしたらぶっ飛ばすぞ」

 

ドスの利いた声で釘を刺されて、思わず口をつぐんだソラ。

聞き分けのいい後輩に、顎をしゃくりながら満足そうに頷いたハヤテは。

にまっと安心させる笑みを浮かべて。

 

「悪いがましろちゃん、こいつを医務室まで連れてってくれないかい?」

「はい!」

「私も付き添います」

「ああ、頼むよ」

 

『えっ』と言いたげに目を見開くソラを置いてけぼりにして。

やる気満々のましろには微笑まし気に、頼もしいあまねには頼もし気に笑いかけて。

『じゃ、あとは頼まぁ』と、その場を後にしてしまった。

 

「・・・・とにかく行きましょう、ソラさん」

「そうですよ、血だっていっぱい出てる・・・・!早く手当てしないと!」

 

至極真っ当な意見で、移動を促してくる彼女達をしばし見上げたソラは。

 

「・・・・分かりました」

 

やがて、観念したように頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

咄嗟にましろさんとあまねさんを庇ったら、結局同行することに遭ってしまった・・・・不覚・・・・!

 

「怪我、診せて下さい」

「・・・・はい」

 

医務官は忙しそうにしていたけれど、治療の道具は貸し出してくれた。

手伝ってもらいながら服を脱いで、傷口をさらす。

うう、ぶっちゃけ痛ぇ・・・・。

全集中で血止めはしてるけど、痛いもんは痛い・・・・。

そんなん言う権利はないけれど・・・・。

 

「・・・・ソラさん、これ」

 

包帯を巻こうとした、ましろさんの手が止まる。

視線は私の胸元に固定されていた。

・・・・無理もないか。

自分が刺されたのと同じ位置に、赤黒い罅割れがあるんだから。

 

「・・・・大丈夫」

 

泣きそうな顔へ手を伸ばして、頭を撫でる。

 

「貴女が助かってよかった」

 

そう偽りのない本音を口にすると、ましろさんは目に見えて更に落ち込んでしまった。

・・・・しまった、間違えたか。

 

「・・・・ましろ、包帯」

「っあ、ご、ごめんなさい」

「いいえ、お気になさらず」

 

あまねさんに促されて、今度こそ包帯を巻いてくれるましろさん。

痛々しい傷口は、あっという間に真っ白な包帯に包まれた。

 

「ありがとうございます」

「・・・・はい、どういたしまして」

 

右腕は動かせなくなったけれど、何もしないよりは良くなった。

 

「さて、私はこれで」

「待って、どこに行くんですか?」

「今日はもう休んでいないと」

 

仕事に戻ろうとすると、案の定引き止められてしまう。

 

「すみません、でも、今は出来る事をやりたくて」

 

・・・・少しでも。

ほんの少しだけでも。

奪った分を取り返したくて。

というのもある。

もう少し、踏み込んだ本音を言うと。

――――ずっと、聞こえている。

だから今は、とにかく動いていたい。

でないと、

 

 

 

「死んでくれ」「消えてくれ」「死ね」「死ね」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「殺す」「死んでくれ」「消えてくれ」「なんでお前が」「どうしてあの人は」「なんで生まれて来たんだ」「死んでくれ」「死ね」「死んでくれ」「死ね」「死ね」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」「殺す」「返せ」「いなくなれ」「死んでくれ」「死ね」「返して」「返せ」「どうして」「消えろ」「いなくなれ」「死んでくれ」「殺してやる」

 

 

 

声に、圧し潰される。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉーっし、あとはこれをこうすれば・・・・」

 

城の広場の一画、仮設テントの下。

ネジを締めたらんが数歩後ろに引いて、満足そうに頷いて。

 

「かーんせーい!!」

「わぁー!」

「すごいすごーい!」

 

出来上がった遊具に、見守っていた子ども達が大歓声を上げたのだった。

滑り台はもちろん、昇り棒に運てい。

さらには本格的なおままごと用のキッチンまで。

多少はプリキュアの身体能力に頼ったと言えど、結構なクオリティだ。

ちなみにクシザスの避難民が帰る際、共に持って行って。

あちらの公園に設置される予定らしい。

 

「わっはー!いや、本当にすごいねらんちゃん!これ、おままごとも出来るじゃん!」

「んっふふー、あげはさんのアドバイスもマシマシに助かりました!」

 

目をキラキラさせるあげはに、得意げに胸を張るらん。

一緒に作業していたメンメンも、とっても誇らしそうにしている。

 

「うぉ、すげぇのが出来たな・・・・」

「わぁー!これ、らんちゃんが作ったのー!?」

「あげはさん監修だよー!」

 

そこへゆいと拓海がやってきて、遊具を見上げた。

 

「らんちゃんってすごいんだね。このクオリティをあっという間に作っちゃうんだもん」

「らんちゃん、発明するのも好きだから」

「なるほどー」

 

あげはが感心しているところへ。

 

「――――わ、すごい!」

「今朝作り始めたのに、もう出来たんですか?」

「少年!ここねちゃん!」

「あ、ここぴー!ツバサくん!」

 

ここねとツバサもやって来て、出来上がった遊具に感嘆の声を上げる。

 

「すごいわ、らん」

「すごいすごーい!」

「にっひひー!もっと褒めてくれていいよー?」

 

早速遊具に飛びついて遊びだした子ども達を見守って、嬉しそうに顔を綻ばせる一同。

・・・・数日前までは、暗い表情を見ることが多かったのだ。

それを笑顔にすることが出来て、らんもあげはも達成感を噛み締めていた。

 

「みんな、楽しそう!」

「うん!」

 

彼らの笑顔に、プリキュア達も、遠目から見ていた者達も。

これからの未来に、希望を見出していた。

 

「――――随分と楽しそうだね」

 

その時だった。

 

「僕も混ぜてよ」

「ッ、あんたは・・・・!」

 

覚えのある声に振り向けば、いやらしい笑みを浮かべるバッタモンダーが立っている。

 

「バッタモンダー!」

「お呼びじゃないんだけど!」

「おいおい、そう連れないことを言うなよ」

 

あげはとツバサの態度から、敵であることを察したゆい達も身構える中。

 

「せっかく楽しいショーを考えて来たのに」

 

笑みを崩さないバッタモンダーは、あるものを取り出す。

 

「それは・・・・!」

「ソラさんの、木刀・・・・!」

 

驚愕するあげは達へ、見せつける様に掲げて。

 

「カモン!アンダーグエナジー!」

 

アンダーグエナジーを、注ぎ込む。

 

「――――ランボォーッグ!!!」

 

予想通りランボーグが現れたが、普段と気配が全く異なっていた。

ソラやベリィベリーの様に鍛えていない面々でも、手に取る様に分かる異質さ。

 

「――――あのデブと同じってのは癪だけどさ」

 

一跳びで高いところへ移動したバッタモンダー。

彼が手を前に出すと、号令を受け取ったランボーグが剣を構える。

 

「有効な手はガンガン使うべきだと思わないかい!?」

「ッまさか!カバトンと同じ方法で、アンダーグエナジーを!?」

 

ツバサの脳裏に浮かんだのは、スカイと決闘した時のカバトンだ。

彼は三日かけて溜めに溜め込んだアンダーグエナジーで、自らを強化していた。

バッタモンダーは、同じ方法でため込んだそれでランボーグを生み出したのだ。

 

「きゃあああああ!!」

「逃げろー!」

「城内へ!!城内へーッ!!」

 

広場は一瞬で阿鼻叫喚となり、兵隊や青の護衛隊の誘導で我先にと逃げていく民衆。

それは、遊具で遊んでいた子ども達も例外ではない。

 

「わああん!」

「怖いよー!」

 

一瞬で笑顔を失い、泣きじゃくりながら走り去っていく子ども達。

彼らの悲鳴を、背中で聞いていたあげはは。

 

「すううう・・・・はあああ・・・・」

 

深く、一呼吸した。

――――保育士にとって、笑顔は必要不可欠な要素だ。

常に明るく、楽しく振る舞うことを心掛けて。

一緒にいるのが当たり前だった親御さんから離れて、不安で寂しい思いをしている子どもを。

『大丈夫だよ』『怖くないよ』と安心させる。

とてもとても、大切なことだ。

だからあげはも、普段から笑顔でいるようにしている。

特にプリキュアとなり、虹ヶ丘家に同居する様になって。

もちろん、両親から話されてしまったエルの為でもあるが。

プリキュアという過酷な役目を共に背負う。

ツバサやましろといった、年下の子達を支えられるように想いもあった。

 

「――――あんたみたいなヤツ」

 

だが。

これだけは。

こればかりは。

どうにも我慢できなかった。

 

「――――大っ嫌いッッッ!!!!!」

 

――――友達の。

もう十分に苦しい思いをしている友達の。

大切なものを、なおも踏み躙る蛮行に。

激怒を咆えた。




普段ニコニコしてる人が、ブチ切れる瞬間が大好物です()
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