ちなみに作者の脳内では、アップドラフト・シャイニングを梶浦アレンジしたやつを流してました。
――――懐かしい、祈りを聞いた。
かつて仰いだ理想を見た。
その日志した夢を思い出した。
(ああ、そうだ)
本当は、その夢の果てを見たかった。
本当は、その理想の行く先を見たかった。
(だけど、叶わなかった)
今でも覚えている。
キンキン響く笑い声。
踏みつけられた。
嘲笑された。
玩具にされた。
悲しくて、悔しくて、腹立たしくて。
(だから)
同じ痛みを背負った大勢と共に、この身を呪いと変えた。
担い手となるあの王の言葉を、信じて。
刃に触れたものは、徹底的に蝕んだ。
永い永い間。
ただそれだけを行ってきた。
・・・・だけど。
「――――ヒーローに、なりたい!!!」
――――もう一度だけ。
もう一度だけ。
同じ夢を見てもいいのなら。
蝕む手が、ほどけていく。
呪いが、祝福へ。
裏返る。
「ランボオオオォーグ!?」
蒼穹に切り裂かれて、ランボーグの巨体が傾いた。
踏ん張り切れず、土煙と轟音を上げて倒れる。
「――――」
呆然と、見上げるプリズムの視界に。
『青』が、はためいている。
「――――ぁぁ」
――――帰って来た。
ずっと、ずっと。
信じていた。
大好きなヒーローが。
キュアスカイが、帰って来た・・・・!!
「スカイ!」
「~~~!!」
「いよっ!待ってました!!」
ウィングは希望を以ってその名を呼び、エクリプスは感嘆に打ち震え。
バタフライは歌舞伎のような掛け声を出す。
「スカイ、よかった!」
「土壇場だな・・・・」
「はにゃー!しかもイメチェンしてる!」
「うん、かっこいい・・・・!」
デリシャスチームも、安堵と共にスカイの容姿をまじまじと観察した。
――――特に大きな変化が見られるのは、髪型とスカートだろうか。
髪型は、たわわに靡いていたツインテールから、首元までのすっきりしたポニーテールに。
スカートも、以前のようなふわっとしたものから、スリットの入ったスマートなものへ。
全体的に可愛さも見えていた以前と違い、『ヒーロー感』が強くなった印象を受けた。
大きな変化は、もう一つ。
手にした得物だ。
「あれ、剣でいいんだよね・・・・?」
「多分・・・・」
――――全体的に、白を基調とした色合い。
形としては日本刀に見えなくもないが。
『刀身』の部分は完全に刃がなく、かといって木刀というにはいささか薄すぎる。
刀の形をした一枚板と言うべきその風貌は、もはや『変わり種の警棒』と呼んでも過言ではないかもしれない。
本来柄や鍔がある部分は、バイクのアクセルの様な構造になっているようだった。
「な、な、な・・・・!!」
さて。
溜まったもんじゃないのは、バッタモンダーだ。
口をぱくぱくさせて、面白いくらいに目を白黒させている。
「ラァン・・・・!」
そんな主人を横に、起き上がったランボーグ。
生意気だとばかりに、剣を構えなおして。
「
叩きつけた。
しかし、プリズム諸共に潰したはずのスカイが見当たらない。
ランボーグがあちこち視線を巡らせている隙に、当の本人はバタフライの傍に着地していた。
「お願いします」
「任せて!」
言葉少なにプリズムを託すと、やっとこちらを認識したランボーグに突撃していく。
叩きつけられた斬撃を回避すると、壁や城壁も足場にして縦横無尽に駆け抜ける。
当然ランボーグは追いかけて攻撃を加えるが、ひらひらと避けられて影すら踏めない始末。
「っくそ!相変わらずちょこまかと・・・・!!」
「ふ・・・・!」
バッタモンダーが親指を噛んで苦い顔をする中。
全身のバネを使って高く跳びあがったスカイは、ランボーグの頭上を取る。
「――――全集中・雷の呼吸」
――――ところで。
言うまでもないことだが。
スカイ改めソラは、その剣術の多くを前世のアニメ、漫画、ゲームに肖っている。
それと同時に、常に最良をつかみ取ろうと努力するキャラクター達に見習って。
自分なりのアレンジも加えているのだ。
例えば、そう。
新しい技を生み出してしまうとか。
「――――
空中で上下反転したスカイは、ぐっと両足に力を込めると。
虚空を蹴って、急降下する。
「――――
「ランボーグッ!?」
落雷の様な音が轟いたと思ったら、ランボーグが悲鳴を上げていた。
「ッ何してんだ!!」
「
叱責を受けながら立ち上がったランボーグは、なお剣を構えて。
「
ぶわりと、周囲が霧に包まれる。
「ランボーグッ!!」
「・・・・ッ!」
後退しようとしたスカイの視界を、あっという間に奪うと。
徹底的に死角から仕掛けていく。
「あははは!いいぞ、やれば出来るじゃないか!!」
いつかの仕返しのような状況に、気分良く高笑いするバッタモンダー。
文字通り煙に巻かれたスカイを、優越感たっぷりのにやけ顔で見下ろしたが。
「いや、アホか」
――――月の呼吸、伍ノ型 月魄災禍!!
「ランボーッグ!?」
全方向へ満遍なく放たれた斬撃に、呆気なく破られてしまうのだった。
「ッチ!!」
思ったよりも戦えるスカイに、苛立ち紛れに舌を打った彼は。
これならどうだとばかりに、アンダーグエナジーを迸らせて。
ランボーグへ浴びせた。
「ゥウウウランボオオォーッグ!!!」
パワーアップを受けて、一回りも二回りも大きくなるランボーグ。
「でっか!!」
「いくらスカイでも、あんなの・・・・!」
バタフライとブラックペッパーの治療を受けていた他の面々は。
そんな戦況を目の当たりにして、スカイの身を案じる。
当のスカイも、やや苦い顔をしてランボーグを見上げていたが。
「・・・・?」
――――ふと、呼ばれた気がした。
視線を落とすと、握った『白い警棒』にはめ込まれたスカイジュエルが。
偶然か意図的か、とにかく光っている。
「・・・・分かった」
脳裏に浮かんだヴィジョンに従って、柄のバイクアクセルの様な部分を握りしめて。
「――――バースト、オンッ!!!!」
刹那。
『蒼』が燃え盛る。
「あれは・・・・!」
プレシャスやエクリプスなど、動けるようになったメンバーが固唾を呑んで見守る先。
佇むスカイの容姿が、変わっていた。
炎の様な、陽炎の様なオーラが。
全身から迸っている。
特に髪とマントは、まるで本当に燃えているかの様だった。
「――――全集中・日の呼吸」
青いオーラで、より刀らしくなった『警棒』を構えて。
スカイは呼吸を整える。
「――――拾参ノ型」
「ラ、ラン・・・・!」
ランボーグが動くよりも、速く。
「――――ヒノカミ神楽」
ごん、と。
火柱が立ち上った。
「ランボーグッ!?」
複数個所をほぼほぼ同時に斬りつけられて、ランボーグは悲鳴を上げながら崩れ落ちる。
「ヒィーロォーガァールゥー・・・・!!」
その大きな隙を、スカイは見逃さない。
ランボーグの背後で、『警棒』を振りかぶれば。
まとわりついた青い炎が、巨大な剣を作り上げて。
「スカイ、サンバアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」
天を衝かんばかりに大きくなった刀身を、力の限り重々しく叩きつけた。
「す、スミキッター・・・・!」
必死に防御しようとした剣ごと両断されたランボーグ。
いつもの台詞を残して、キラキラエナジーに戻っていくのだった。
「そんな、バカな・・・・!!」
奥の手の中の奥の手を覆されてしまい、がっくり膝をつくバッタモンダー。
「こっ、これで終わったと思うなよ!!キュアスカイ!!」
しかし、どうしても負けを認められない彼は、砕けんばかりに奥歯を噛み締めてから。
絞り出す様に叫ぶ。
「次はお前の故郷を襲ってやる!!ああ、そうだ。向こうの世界で盛大に暴れてやるのもいいな!!」
黙してこちらを見てくるスカイを睨みながら、彼は大声でまくし立てる。
「お前の大事な大事な仲間だって、まだ狙っているからな!!シャララ隊長の次は、そいつらをランボーグにしてやるぞ!!」
未だ相槌すら返さないスカイに苛立って、さらにがなり立てるバッタモンダーだったが。
やはり反応を示さない彼女に、一層青筋を浮かべた。
その時だった。
「――――別にいいですよ」
まるで、世間話をするようなトーンで。
スカイはあっけらかんと返事をした。
「へっ?」
「なんなら今やっても構いません」
「はっ?」
きょとんとするバッタモンダーを、真正面から見つめ返して。
スカイは断言する。
「何度来ようが、止めるだけです」
そこで、バッタモンダーはやっと気が付いた。
無表情に見えるスカイの両目は、しかして力強い光を宿していることに。
「な・・・・っぐ・・・・!!」
再び黙したスカイ。
特に威圧されたわけでもない、何かを怒鳴られたわけでもない。
だが、何をやっても敵わないという確信を得た。
得て、しまった。
「あ・・・ぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!」
頭をしっちゃかめっちゃかに掻き毟り、地団太を踏みながら大声を上げるバッタモンダーに。
スカイは初めて警戒を示して、身構えたが。
「くそっ!くそっ!チクショウッ!!!」
対する彼は、アンダーグエナジーのゲートを開いて退散していっただけだった。
「勝、た・・・・?」
「うん、勝った・・・・勝ったよ!」
「あと、スカイ復活!!!」
敵が撤退していったのを察するや否や、段々と顔を明るくしていくプリキュア達。
「スカイ!!」
「スカイー!!」
プレシャスやウィングが、歓喜に身を任せて駆け寄っていく中。
プリズムも続こうと立ち上がる。
「スカイ・・・・!」
青いオーラを収めたスカイは、こちらを振り向いて微笑みこそしてくれたが。
次の瞬間には、変身すら解けてばったり倒れてしまって。
「す、スカイ!?」
「ソラさん?ソラさん!!」
仰天したのは仲間達だ。
喜びから一転、驚愕と心配に声を荒げてしまいながら。
倒れ伏したソラを何度も揺り動かす。
一方、ソラも何とか意識を失わないように耐えていたが。
努力空しく。
(・・・・そういえば)
目蓋が完全に降りて、真っ暗になった世界で。
(いつものバッタモンモンとかって言わなかったな)
呑気にそんなことを考えながら、気を失ったのだった。
◆ ◆ ◆
「――――気が付いたら、知らない人が『わたし』になっていた」
「家族も、夢も、奪われて」
「訳が分からなかった」
「だけど、それはあなたも同じだった」
「突然降って湧いた、どうしようもない罪過を背負わされて」
「具合が悪くなるくらいに圧し潰されているのを見た」
「ロクに食事を取れないまま、何度も何度も吐いていたのは。本当に心配したんだよ?」
「――――それが変わったのは、ヒーロー手帳に気付いてくれてからだったね」
「文字を読み解いて、わたしの夢を繋げるって決めてくれた時は、嬉しかったな」
「素振りの時、祈ってくれていたでしょ?」
「もう幽霊だからかな、ちゃんと伝わっていたよ」
「ずっと、ずっと。『わたし』を想ってくれていたね」
「お父さんもお母さんも、誰も『わたし』が消えたことに気が付けない中で」
「『わたし』を、忘れないでいてくれた」
「それが、どれだけ嬉しかったか」
「どれだけ、救いになったか」
「――――だから」
「キルミラに滅茶苦茶にされたのは、本当に悔しかったし、悲しかった」
「何より、あなたがまた苦しむのが、辛かった」
「――――これからは、わたしも一緒に頑張るよ」
「『この中』で、傍にいるよ」
「もう、独りにさせないから」
「二人で、叶えようね」
「――――ヒーローに、なろうね」
「――――ッ」
――――意識を失っていたらしい。
目を開けると、真っ暗な部屋にいた。
一瞬だけ焦ったけど、月光が差し込んでいるのに気が付いて。
もうとっぷりと日が暮れているようだと知る。
「・・・・ぁ」
気怠い体を起こしてみると、ベッド脇にましろさんが眠っていた。
暗がりでも分かるくらいに、涙の跡が見える。
・・・・私の所為だな。
「・・・・ごめんなさい」
起こさないよう細心の注意を払いながら、ましろさんをベッドに寝かせて。
そっと、前髪を梳いてから。
起こさないように部屋を後にした。
廊下に出て、一番近い窓辺から外へ。
ベランダからは、綺麗な形の三日月が見えて。
思わず、ほっと息を吐いた。
「・・・・ふぅ」
壁に背中を預けて、座り込む。
ちょっと行儀悪いけど、誰も見てないからいいよね。
目を閉じれば、夜風が心地よくて。
静かに微睡んでいた。
と、屋内からバタバタと走る音が近付いてきて。
「・・・・ッあ、いた!ソラさん!」
泡食った様子のましろさんが、ベランダに飛び込んできたのだった。
「もうっ!!なんでいなくなるんですか!!」
「ご、ごめんなさい。寝ているのを起こすのは忍びなくて・・・・」
ものすごい剣幕で怒られてしまったので、立ち上がって平謝り。
いや、本当にごめんなさい・・・・。
頭を上げると、ましろさんが胸に飛び込んできて。
そのまま、全力でハグされてしまう。
「――――本当に」
甘んじて受け入れていると、ましろさんが鼻をすんすん鳴らすのが聞こえる。
「本当に、心配したんですよ」
「・・・・はい、すみませんでした」
棒立ちというわけにもいかないので、抱き締め返しつつ頭も撫でる。
・・・・あたたかいな。
心も、体も。
じんわり癒されていく。
ハグがストレスを緩和するって話があるけれど、あれって本当のことなんだな・・・・。
(それにしても・・・・)
まだ泣いているましろさんをホールドしたまま、静かに見下ろす。
・・・・細いな、ましろさん。
食べてないなんてことはないはずだから、素でこの細さということになる。
(そっか、こんなにか細かったんだ)
こんなに頼りない体で。
あんな強敵に、立ち向かって。
守ってくれたのか。
『好きです』
『わたしが出会った、あなたが好きです』
同時に、過ぎる。
戦いの中の言葉。
・・・・都合よく、考えていいのだろうか。
「・・・・私が、死ねば」
悩みに答えを出す前に、口が動いていた。
――――嗚呼、私は。
私が思っていた以上に。
とことん弱っていたらしい。
「私が、死ねば・・・・全部、元通りになると思っていました」
「ソラさん?わぷっ・・・・!?」
顔を見られたくなくて、強く抱きしめる。
「でも、貴女に抱きしめられて、優しい言葉をもらって」
動き出した口は、漏れ出した言葉は。
止まりそうにない。
「・・・・温かかったんです」
きっと、震えているのがバレている。
「死ぬのが、怖くなってしまうくらいに」
いくら顔を塞いでも、醜態をさらしているのがバレている。
「あまりにも、温かかったんです」
そうだ。
とても温かくて、そして嬉しかった。
『死にたい』という願いが、一瞬だけでも打ち消されるくらいに。
あの抱擁は、温かかったんだ。
「ソラさん・・・・」
しばらく、何も言えないまま。
ましろさんを抱きしめていた。
今、この子と目が遭うのが怖くて。
何かを言われるのが怖くて。
自分で捕らえておきながら、そんな恐怖を抱く浅ましさに自己嫌悪を募らせて。
「――――あの時」
心と頭が、ぐちゃぐちゃになり始めた頃に。
ましろさんが、静かに口を開いた。
「初めて出会ったあの時、あなたが駆けつけてくれたから、わたしは今、ここにいます」
顔を摺り寄せて、声を弾ませて。
ましろさんは続ける。
「ソラさんは、自分がいなければよかった、なんて思っているかもしれないけれど」
背中に回された指先が、愛おし気に撫でてくれるのが分かる。
「わたしと、エルちゃん。あなたがいなかったら、ここになかったものが、少なくとも二つあります」
いつの間にか、力を抜いていた様だ。
拘束から抜けたましろさんと、目が遭ってしまう。
「だから、『死ねばよかった』なんて、言わないでください」
私を見つめる瞳は、抱いた恐怖と裏腹に。
とてもとても、優しいものだった。
「独りに、ならないでください」
呆然と半開きになった唇に、キスが送られる。
一度で済まさず、二度、三度と啄まれて。
自然と、私も応えていた。
――――止められない応酬を、冷たい夜風の所為にしながら。
贈られる温もりを、静かに貪る。
新生キュアスカイ
デインリアルの呪いを祝福に変えて新生した姿。
首元までのポニーテールに、スリット入りのミニスカートなど。
かわいい系からかっこいい系にガラッとデザインが変わっている。
呪いが祝福に変わって、削られた命はいくばくか戻って来たけれど。
50を超えて生きられないのは確定してしまっている。
強化フォームや固有武装に関しては次回。