ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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3/30の日刊ランキングにて、総合では最高26位、二次創作では16位を頂きました!
日頃のご愛顧、誠にありがとうございます。

もうちょっとだけスカイランド編は続きます・・・・!


偽物、第一の試練

――――翌朝改めて目覚めた私は。

まずあげはさんに卍固めをがっちりキメられた後、すぐヨヨさんの前に正座させられた。

実はあれから二日も経っていたらしく、叩いても騒いでも起きる気配のなかった私は相当心配させてしまっていたのだ。

『身も心もボロボロの状態で、精も根も使い果たすからでしょう』と昏々と説教された私は。

ひたすら『ごめんなさい』と『すみませんでした』を繰り返してペコペコするしかなかった。

ちなみにお叱りの間は、『石抱き』ならぬ『エルちゃん抱き』の刑である。

頭と両肩には、パムパムさん、コメコメさん、メンメンさんの三人が乗ったおまけつき。

『ぜってぇ逃がさねぇ』の圧を感じた・・・・石の方がまだよかった・・・・。

 

 

気を取り直して。

 

 

そんなやり取りがあった日の午後のこと。

ついに七試練一つ目の課題が言い渡されたのである。

 

「本日はよろしくお願いしますね」

「はい。誠心誠意、務めさせて頂きます」

 

微笑むブリュンヒルデ姫に、深々と一礼。

一つ目の課題は、『クシザス王国の、レガリアの修復』。

正確には、ブリュンヒルデ姫が材料のスカイジュエルを持ち帰るので、その護衛を務めよ、という内容である。

向こうで一泊してから帰るので、最初らしい比較的簡単な課題だけど・・・・。

・・・・それだけで済ませたらいけないやつだよな、これ。

 

「ソラちゃん、もう行くの?」

「みなさん」

 

考えていると、あげはさんが歩み寄って来た。

ましろさんやベリィベリーさん、ツバサくんも一緒だ。

ツバサくんの腕には、エルちゃんも抱かれている。

・・・・なんだか、このメンバーが揃うのは久しぶりな気がするなぁ。

 

「はい、もう出発します」

「そっか、気を付けてね」

「無茶はしないでくださいね」

「ええ、もうお説教はこりごりです・・・・」

「あっはは!そーそー!何より・・・・!」

 

肩を落とすと、面白そうにケラケラ笑ったあげはさんが。

ましろさんの肩を抱いて。

 

「戻ったら、ましろんのホットケーキが待ってるんだから!」

「ぁ、あげはちゃん!」

 

恥ずかしそうにするましろさんに、どういうことだろうと首を傾げていると。

 

「お前に食べさせたいと、こちらの材料で作る練習をしていたんだ」

「なるほど」

 

ベリィベリーさんが補足してくれた。

そういえば、向こうの世界でそんな話をした気がする。

覚えてくれてたんだなぁ。

 

「貴女のお料理は、いつもおいしいですからね。楽しみにしています」

「うう、はい・・・・!」

 

耳まで真っ赤にしながらも頷いてくれるましろさん。

・・・・戻らなきゃいけない理由が、出来ちゃったな。

 

「ソラさん、そろそろ」

「ああ、大変失礼しました。行きましょう」

 

さて、もう出発しないといけない。

ブリュンヒルデ姫を一緒に、城を後にしようとした。

その時だった。

 

「・・・・そら、ばいばい?」

 

私が出かけるらしいということを、やっと呑み込んだエルちゃんが。

こてんと首を傾げる。

 

「そうだねぇ、ちょっとだけバイバイだねぇ」

「プリンセス、お見送りしてあげてください。きっとソラさんも喜びますよ」

 

ましろさんとツバサくんが、お手本の様に手を振ってから。

同じことをさせようと、エルちゃんの手を取ったけれど。

 

「・・・・や」

「プリンセス?」

「えるもいく」

「ええっ?」

 

ぺっ!と、握られた手を振り払ったエルちゃんは。

そんなことを言う。

 

「えるもいくの!」

「プリンセス、いい子ですからお留守番しましょう?」

「やーや!」

 

ベリィベリーさんが宥めようとしても、ちいさな首をぷんぷん横に振ったエルちゃんは。

次の瞬間、ツバサくんの腕から飛び出して。

 

「えるもいくのー!!」

 

私の胸に飛び込んできてしまったのだった。

 

「え、エルちゃん?私、遊びに行くんじゃないんですよ?」

「やーっ!!!!」

 

私の、護衛隊の制服をがっっっちり掴んで離さないエルちゃん。

ぬううううんんんん・・・・!!!

落っこちたら大変だから、回した腕を放すわけにもいかないし・・・・!!

 

「わぁ、アニメでみたひっつき方・・・・」

「こーれは簡単に離れないよぉ?ソラちゃん」

「なるほど、これがトト■の気持ち・・・・」

 

って、逃避してる場合じゃないって。

本当にどうしよう・・・・。

 

「んー・・・・」

 

内心で頭を抱えていると。

唸っていたあげはさんは、くすりと笑みを浮かべて。

 

「ね、ブリュンヒルデ様!七試練って、手伝うのもアリってヨヨさんに聞いたんですけど、本当?」

「ええ、特に指定が無い場合は問題ありませんよ」

 

・・・・あげはさん、まさか。

 

「だったら!一緒に行っちゃおー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、プリンセスが?」

 

「ふぅむ・・・・説得も無理そうか」

 

「聞くところに寄ると、目の前で攫われたということですし、怖がらせてしまったのやもしれませんね」

 

「此度の課題には、そこまでの危険は想定されておらん。そなた達がいるなら、安全面も問題ないであろう」

 

「あなた達と、ブリュンヒルデ様さえよければ、どうぞ連れて行ってやってくださいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルちゃんが全力でぐずったので、護衛も兼ねて私達ひろがるチームでいくことになってしまった・・・・。

ブリュンヒルデ姫が、『賑やかでいいですね』と好意的であるのが救いであろうか・・・・。

・・・・出来たら。

私一人で行きたかったんだけどなぁ・・・・。

ちなみに王国の守りは、シャララ隊長達青の護衛隊と、ゆいさん達デリシャスチームが引き続き請け負ってくれることになった。

特にゆいさん達には本当にお世話になりっぱなしなので、出発前には深々と頭を下げたけれど。

 

『何、そう気にしないでくれ』

『スカイランドのおいしいお料理、まだまだ興味あったからむしろ嬉しいよ!』

『こっちにしかいないレシピッピもいるから、楽しみがマシマシなんだー!』

『困ったときはお互い様だもの、気を付けてね』

 

との寛大なお言葉を頂いている。

誠に・・・・誠にありがとうございます・・・・!!(五体投地)

 

「ところで、今更だけど、『れがりあ』って何だっけ?」

 

現在遊覧鳥の上に乗って、クシザス王国がある空中岩山に向かっている最中。

雲海に感嘆の声を上げていたあげはさんは、ふと。

疑問を口にした。

そういえば、日本ではあまりなじみがない言葉だったな。

 

「簡単に言うと、『王様の証』です」

 

ツバサくんが解説を始めたので、私は口を閉じた。

 

「あげはさん達の国だと、『三種の神器』の名前で親しまれていると思うんですけど・・・・」

「ああ、それなら知ってる!テレビ、冷蔵庫、洗濯機!」

「それ絶対違うやつだよね!?」

「ああ、私もあちらで習った。俗称の方だな・・・・」

 

正確には『天叢雲の剣(あめむらくものつるぎ)』、『八咫鏡(やたのかがみ)』、『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』だったか。

色んな創作のモチーフにもなってるよね。

 

「我がクシザスのレガリアも、同じく三つです」

 

私達の話をニコニコしながら聞いていたブリュンヒルデ姫も、解説に加わってくれた。

 

「王冠の『レッドスター・クラウン』、王笏の『パールムーン・セプター』、そして王剣の『デュランファエル』・・・・」

「へぇー!剣はこっちと同じなんですね!」

 

王冠と王笏は、現王家に元から伝わっていたお宝。

王剣は、初代国王がクシザスを興した際に、スカイランドから友好の証として贈られたものだったか。

私も地元の『寺子屋』的な学校で習ったので、覚えている。

 

「大空を無尽に駆け巡る、風の加護を宿した聖剣・・・・それまで怪物扱いされていた吸血人達が、人権のある一種族として認められた大切なものなんです」

「そうなんだぁ」

 

そう、だからクシザスの歴代国王は、常にデュランファエルを帯剣している。

儀礼に使うのはもちろんだけど、実戦にも十分に使えるので・・・・。

当然、先代国王であるオーディン様も、それを振るって戦ったわけだ・・・・。

 

「でも、修復ってことは・・・・やっぱり、この前の・・・・?」

「はい、そうです。私が圧し折りました・・・・!」

「やってくれましたね?」

 

胃が・・・・痛い・・・・!

でも黙っておくわけにもいかんだろう・・・・!!

 

「他二つは幸い無事でしたが、デュランファエルは破損が著しく・・・・なので、修復に必要なスカイジュエルをこうして持ち帰っている次第です」

 

依然ニコニコしているブリュンヒルデ姫だけど、今は笑顔に圧を感じる。

いや、そうされて当然のことをやっているんだ。

痛みを堪えろ・・・・!

 

「もはや言葉や行動では償いきれぬと、骨身に染みて理解しております・・・・他にも勤めがある身故、確約は難しいところではありますが、咎人の手でも一助になれるならば、なんなりと・・・・!!」

「・・・・ふふ」

 

仲間達が心配してくれている中ひたすら頭を低くしていると、くすくすとした笑い声が聞こえて。

 

「貴女に償いの意志があることは、私の耳にも届いております。口だけではないこと、期待していますからね?」

「は、必ずや」

 

私が一礼すると、緊張した空気が霧散した。

抱えていたエルちゃんも、ほっとした様子でニコニコしている。

よかった・・・・。

 

「あ、なんか見えて来たよ!あれじゃない!?」

「うわぁ、おっきい!!」

 

安堵もつかの間。

あげはさんが指をさして、ましろさんが歓声を上げる。

私達の目の前には、大きな岩山が浮かんでいた。

 

「すごい、ブリュンヒルデ様。あれが?」

「はい」

 

ツバサくんの質問に、ブリュンヒルデ姫は誇らしげに頷く。

 

「クシザス王国、その首都圏たる空中岩山『アキラワ』ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

いくつかある入口のうち、首都に通じる洞窟を潜り抜けると。

強いネオンに照らされたような光がひろがった。

 

「ここが・・・・」

「はい、首都『スータロス』です・・・・現在は、一丸となって復興に向かっているところですわ」

 

ヨウコウゴケが照らし出す、惨劇の後。

建物の壊れ具合と焦げ具合から、どのように被害が広がっていったかが手に取る様に分かる。

 

「ぁぁ・・・・」

 

一体どれほどの命が散っていったことか。

想像に易い被害を前に、ましろを始めとした面々は。

自然と手を合わせ、あるいは指を組んで祈っていると。

 

「しょら?」

 

エルの不安げな声が聞こえて、振り向く。

見ると、腹を、正確には胃があるであろう部分を押さえて、苦しそうにしているソラの姿があった。

顔は苦痛に歪み、額には脂汗が浮かんでいる。

 

「ソラさん!?」

「ソラちゃん、大丈夫?」

「ッ無理もない、お前にとってもトラウマだろう」

「休んだ方がいいですよ、」

 

見ない方がいいのではと、気遣ってくれる仲間達へ。

ソラは静かに首を横に振って。

 

「これは、私が向き合わねばならないものです・・・・逃げるなんて、許されない・・・・!」

 

痛んで仕方がないだろう箇所を抑えた彼女は。

己が及ぼした、破壊の跡を。

焼き付ける様に見つめていた。

 

「・・・・そろそろ降下しますよ、殿下」

「ええ、お願いします」

 

遊覧鳥との会話が聞こえて、一同後ろ髪をひかれながら前を見ると。

岩壁を掘り抜いた寺院のような建物が見えてくる。

 

「すご・・・・!ブリュンヒルデ様、あれが?」

「はい、我がクシザスの王城『アニマオール城』です」

 

『はえー』と圧倒される一同を、ブリュンヒルデが微笑まし気に見つめている間に。

城の中庭、遊覧鳥用の離着陸スペースに無事着陸。

衛兵の案内を受けて、城内へ入っていく。

 

「――――よく戻った、ブリュンヒルデ」

「は、ただいま戻りました」

 

謁見の間。

玉座に着くのは、ジークフリートだ。

 

「例のものは?」

「ここに」

 

ブリュンヒルデの目くばせに、ソラが包みを持って前に出る。

厳かな手つきでかぶせてあった布を取ると。

デュランファエルの材料である、高純度のスカイジュエルが。

青い輝きを放った。

 

「あっ」

 

と、ソラの右腕が。

正確には、刻まれた刺青が淡く光り始める。

袖をまくると、目玉のうちの一つが。

今まさに閉じていくところで。

 

「うむ、確かに・・・・ソラも、此度の課題。よく達成してくれた」

「これは我が刑罰でもありますれば、『達成』以外は許されぬと心得ております」

「ははは、良い心がけだな」

 

気さくに話かけてくれるが、どこか緊張感が漂う声だ。

 

「今日はもう遅い、ゆっくりしていくといい」

「は、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

 

エルの抱っこを交代していたあげはが、明るく返事をすることで。

少しだけ場の空気が和らいだ。

 

 

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

夕食を終えて、あてがわれた部屋に宿泊することになった一行。

ソラ以外のメンバーは急遽決まったので、人数分用意するのは残念ながら不可能だったが。

それでも二部屋用意してもらえたのは、幸運と言うべきか。

 

「・・・・」

 

エルが寝入り、ましろも寝息を立て始めたのを確認して。

ソラは慎重に身を起こした。

・・・・昨夜、黙っていなくなったのを怒られたばかりだが。

今日ばかりはそうもいかない。

 

(書置きしておけばセーフかな)

 

ヒーロー手帳とは別の、仕事用のメモ帳から一枚破って。

『所用が出来たのでいってきます、すぐに戻ります』と、短く伝言を残してから。

そっと、部屋を出ると。

 

「――――やっほ」

「予想通りだな」

「あげはさん、ベリィベリーさん」

 

満面の笑みのあげはと、腕を組んだベリィベリーが待ち構えていたのだった。

 

「お届け物だけで終わらなさそうだなぁって思ってさ、ソラちゃんも何かしら勘付いてるようだったし、でも何も言ってくれないし・・・・」

「まあ、十中八九単独行動しそうだなと、あげは共々予想していたんだ」

「・・・・お見事です」

 

二人の推理に、ソラは降参とばかりに両手を上げる。

 

「で、どこにいくの・・・・っていうのは、聞くだけ野暮か」

 

ひとしきり上げてから下げられたソラの腕。

その片側に、黒い布が巻き付けられている。

 

「――――その」

 

自分が何をしようとしているか、理解してもらえているからこそ。

ソラは緊張した面持ちで、口を開いて。

 

「今回、一人で行きたいんですけど・・・・」

「「却下(だ)」」

「ですよねぇ・・・・」

 

提案をばっさり切り捨てられて、ソラは肩を落とす。

 

「今朝ヨヨさんにしこたま怒られたばかりでしょ?」

「お前のことだ、私達を想っての提案だろうが、呑むわけにはいかん」

「うう、そこまで見透かされてる・・・・」

「なぁんでバレないと思ったの」

 

ますます落ち込むソラを見て、しょうがないなと互いを見合ったあげはとベリィベリー。

 

「まあ、こちらの守りを手薄にしたくないというのも分かるがな」

「心配させたくないって言うなら、なおのこと一緒に行かせてよ。同じ大人じゃん」

「・・・・そう、ですね」

 

かぶりを振ってようやく観念したソラは、改めて二人と向き合ってから。

 

「よろしくお願いします」

「はーい!」

 

頭を下げたのだった。




新生スカイの強化フォーム云々は、また次回に回させてください・・・・!
今回本編内で触れる予定だったけど、入れられなかった・・・・!!(切腹)
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