今更かもしれませんが、公式で明言されていない部分は容赦なく独自設定にしていくので。
よろしくお願いします()
偽物、動物園へ行こうよ
ふんわり狐色に焼かれた生地に、ナイフを入れる。
閉じ込められた熱気が、甘く香ばしい香りと共に解き放たれて。
鼻に幸せいっぱいの空気を運んでくれた。
「んむ」
切り取った一画を、口いっぱいに頬張ると。
バニラ系の優しい甘みと、ふっかふかの歯ごたえが。
すでに香りで参っていた口の中に、追撃のボディブローを加えて来て。
「――――この為に生きてるって顔してるね」
「シャレにならないんですよ、この人の場合・・・・」
――――『幸せ』とばかりに、ホットケーキを頬張るソラ。
そんな彼女を見て感想を零したあげはを、ツバサは肘で小突いたのだった。
◆ ◆ ◆
右腕の刺青を隠すためのアームカバーを支給してもらったり、長い間復興に協力してくれたデリシャスパーティプリキュアの皆さんとお別れしたりして(クックファイターの皆さんはもうちょっといるみたい)。
そんなこんなで、スカイランドからソラシド市の虹ヶ丘邸に戻った数日後のこと。
「お弁当」
「ヨシ!」
「おやつ」
「ヨシ!」
「水筒」
「ヨーシ!」
世間的にも休日の今日は、みんなで動物園にお出かけである!
ベリィベリーさんと一緒に、持っていくものの確認中だ。
「あとはおむつと着替えだな」
「私、おむつ取ってきますね」
リストを基にチェックして、残るはお着替えとおむつだけである。
着替えはベリィベリーさんに任せて、私はおむつを用意しようと立ち上がると。
ましろさんが不安そうにダイニングを覗き込んでいた。
「どうしたんですか?」
「ソラさん・・・・」
気になって問いかけると、不安そうにこちらを見上げて。
「これでいいんでしょうか?」
「これでいい、とは?」
「だって、エルちゃんは運命の子なのに。普通のごはん食べさせちゃっていいんでしょうか?」
「ああ、そういうことですか」
――――確かに。
『スカイランドを救う運命の子』を託されたとあっては、色々と悩んで考えてしまうものかもしれない。
お空から降って来た不思議な女の子。
私達をプリキュアに覚醒させるほか、人や物を浮かばせちゃう力を持ってるんだし。
改めて思うと、本当になんなんだろうか。
・・・・いや、今更野暮か。
「気持ちは分かりますけど、大丈夫ですよ。ましろさんのごはんはいつでもおいしいですから」
「でもでも!もっと豪華なものを食べさせるべきじゃ!?」
「エルちゃんの好きなものはおにぎりとバナナですし、一度にたくさん出されても、食べきれないと思いますよ」
なんとか落ち着かせようとしてみるけど、それで焦っている様子のましろさん。
「ソラの言う通りだと思う」
近くにいるので、必然話が聞こえていたベリィベリーさんも。
一緒になってましろさんを励ましてくれる。
「それを言うのなら、今私達が用意しているプリンセスの着替えだって、ソラの弟や、私の親戚のおさがりだ」
言いながら、手元の小さな服を見下ろしたベリィベリーさん。
――――これからもエルちゃんのお世話をすることになったのを。
私は両親に、ベリィベリーさんは実家のお姉さんに伝えたところ。
それぞれがうちの弟だったり、ご親戚の子さんだったりのおさがりを送ってくれたのだった。
ありがとうございます・・・・!
「もっとプリンセスに相応しい、絢爛なドレスを着せるべきでは!?」
「今日は動物園だから、動きやすい服の方がいいと思うかなぁ・・・・」
とまあ、そんな感じのことを思い出していると。
ベリィベリーさんも困ったように目尻を下げていて。
・・・・落ち着かせる側だと思っていたけれど。
貴女もちょっと慌ててましたか・・・・。
「――――大丈夫」
気を取り直して。
ましろさんの肩に、そっと手を置く。
「確かに普通じゃない、特別な子でしょうが。急に態度を変えても不安にさせるだけでしょう」
第一エルちゃんは赤ちゃんなんだし、言ったところで理解できるかどうか・・・・。
それなら、『特別扱い』せず、いつも通りに接する方がいいだろう。
・・・・エルちゃんは赤ちゃん。
語呂がいいな。
ま、まあ!とにかく!
「私達はいつも通りでいいと思いますよ」
『ね?』と言い聞かせれば、一応は落ち着いて納得してくれた様だった。
「それでは、私は取りに行くものがあるので」
ひとまずこの場は大丈夫だと判断して、当初の目的であるおむつを取りに行く。
「――――なにそれ、流行ってるの?」
特筆することなくおむつをゲットして、みんなのところに戻ると。
エルちゃんの朝ごはんを終えたあげはさんが立っている。
「あげはさん、どうし――――」
困惑している彼女の視線をたどってみると。
アメフトのような装備に身を包んだ、ましろさん、ツバサくん、ベリィベリーさんがいて。
「――――んぐふっ」
――――唐突過ぎる光景に、崩れ落ちてしまった。
◆ ◆ ◆
「――――みんな色々考えすぎ!」
動物園に向かう車内。
三人がアメフトの装備を着ていた経緯を聞いて、あげはは快活に笑った。
「確かに、『運命の子』だなんて言われて緊張しちゃうけど。エルちゃん自身は今までと変わらないんだしさ」
『ソラちゃんの言う通りだよ』と、ハンドルを握ったあげはが言う。
「そうだよね・・・・」
「分かっているんだが・・・・」
チャイルドシートでニコニコするエルに目をやりながら、苦笑いをするましろ、ベリィベリー、ツバサ。
車の外、バイクで並走しているソラにも目をやったあげはが。
明るく不安がる三人を諫めていると。
前方に、『ソラシド自然公園』の文字が見えて来て。
「あ、ほら!見えて来たよ!ソラシド自然公園!」
――――駐車場に車とバイクを止めた一同は。
荷物を持って歩いていく。
『自然公園』を謳うだけあって、園内は緑にあふれている。
特に、木々が生み出す涼しそうな木陰は。
うだるような暑さがネックな季節に、とてもありがたいものだった。
「お!いたよ!」
ここに来るのが初めてだったり、改めて詳しく見渡していたりする面々の前に。
恐竜の大きなオブジェが現れた。
「ここのマスコットキャラクターの、『ソラシドサウルス』!」
(いや、ティラノまんま)
堂々たる佇まいに歓声が上がる中。
あげはに抱っこされたエルは不安そうに巨体を見上げて。
「がおー、こあいね・・・・」
子どもらしい感想を零していた。
「大丈夫だよ、エルちゃん。動物さんがいっぱいいて楽しいよ!」
「そうですよ。かっこいいのもかわいいのも、より取り見取りです!」
「えうー!」
そんなエルへ、あげはもソラも安心させるように動物園を指すと。
嬉しそうな声が上がったのだった。
「僕も、図鑑でしか見たことのない動物を見るのが楽しみです!」
「私もだ、ハシビロコウがどれほど不動なのか気になるんだ」
ツバサとベリィベリーは、パンフレットや図鑑を手にワクワクしている。
「みんなアガってきたね!それじゃあ、行こっか!」
――――おー!!
あげはの音頭に、全員が拳を突き上げた。
――――受付を終えて、入園する。
入ってまず目に入ったのは、カピバラの展示スぺースだ。
客も中に入れるらしく、間近で見ることが出来るらしい。
用意された水風呂で涼んだり、日向ぼっこをしたり。
思い思いに過ごしているカピバラ達。
「おみず!ちゃぷちゃぷ!」
「カピバラって、のほほんとしてるよねー」
なんて和んでいると。
ドタドタと走る音、続いて歓声が聞こえる。
何事かあったのかと振り向くと、二匹のカピバラがスペース内を爆走していた。
「いや、はやッ!?」
「追いかけっこでしょうか」
「走ると迫力があるな・・・・」
なにせ世界最大級のげっ歯類、名前を日本語に訳すと『草原の王者』である。
のんびりしている印象とは、また違った一面を見せてくれたカピバラに。
一同『ほぁー』と感嘆の声しか出せなかった。
幸い、疾走はすぐに終わったし、こちらに来る様子もなかったので。
何事もなくカピバラ見物を再開する。
と、一頭が地面を歩いていたエルの前に進み出て。
「ムー」
一声、鳴く。
何か気になるものがあるのだろうかと見守っていると。
エルもぽつんと呟いたのだ。
「かっぴぃら、ごはん?」
「え?」
「ああ、これかな?」
あげはが指さした先。
ワンコインで売っているカップの中には、にんじんやホウレン草の様な野菜が。
動物的にはおやつ程度であろう量が入っていた。
「私達が、ご飯をあげられるみたい」
「エルちゃん、やってみますか?」
「あーい!」
ソラの問いかけに元気よく返事したエルに、カップを一つ与えてやる。
エルは嬉しそうな声を上げて、野菜を一つ取ると。
カピバラに差し出した。
「どーじょ!」
「ムー!」
カピバラはエルに答える様にまた一鳴きすると、嬉しそうに野菜にかじりつく。
微笑ましい光景に癒される一方で、ましろが首を傾げる。
「エルちゃん、なんでカピバラがお腹空いてるって分かったんだろう?」
「確かに・・・・」
「まるで会話をしているようでしたね」
ソラとベリィベリーも一緒になって首を傾げたものの、上手い言葉が見つからなかった。
気を取り直して、カピバラに餌をあげて満足したエルを連れて。
他の動物を見に行く。
◆ ◆ ◆
カピバラコーナーから移動したのは、色んな動物が一緒くたに放牧(放牧でいいのか?)されているスペースだ。
アフリカのサバンナをコンセプトにしているというそのエリアは、謳い文句の通りシマウマやゾウなど。
動物園と言えばというメンバーがそろっている。
「スカイランドの動物とは全く違うな・・・・」
「そうですねぇ、青い動物が極端に少ないのも驚きです」
ベリィベリーさんと一緒に、口を半開きにしてしまいながら。
思い思いに過ごしている動物達を眺めていく。
「きりん、でしたか。スカイランドであんなに首が長かったら、ワシやタカに突かれ放題ですよ」
「ああ、生きてはいけないだろうな・・・・」
「そっちのワシとタカってそんなに凶暴なんですか?」
キリンを眺めながらベリィベリーさんと話していると、ましろさんが会話に加わってくる。
凶暴っていうか・・・・。
「なんかこう、生態?的なのはこちらと同じだと思うんですが」
「思うんですが?」
「単純にでっかいんですよね、羽を広げて敷布団レベルなやつが普通にいるんですよ」
「いや大きすぎないかな!?」
分かる(分かる)
ぎょっと慄くましろさんに、ベリィベリーさん共々深く深く頷いてしまう。
私も最初見た時ビビったなぁ。
でっけぇ毛布みたいなワシが、文字通り羊をわしづかみにして持ってくシーン見たもん・・・・。
ブチ切れた牧場主さんが、
ちなみに攫われかけた羊さん。
一命はとりとめたけど、落ちた時の当たりどころが悪かったらしく。
そのまま廃棄処分になってしまった。
牧場主さんは凹んでた・・・・。
「もちろんこちらと同じようなサイズのものもいるが・・・・そうだな、今思えば、『種類が豊富』と表現するのがあっているかもしれん」
「ですねぇ」
こちらと違って、陸地よりも大空が大半を占めている世界だ。
やっぱり、飛べるように進化した生き物が多いんだなと、改めて思う。
「やっぱり、こっちとそっちじゃだいぶ違うんだ?」
「はい、例えば、あそこにいる『シマウマ』なんですが」
首を傾げるあげはさんに、まずは一画にいるシマウマを指してみせる。
「スカイランドにも、『シマシマウマ』というよく似た生き物がいまして。そちらは青と白なんですよね」
「「青と白!?」」
ましろさんも一緒になって、ぎょっとした声を上げた。
そんな二人を見て、エルちゃんは面白そうにきゃっきゃしている。
かわいい(確信)
「スカイランドは、空が大半を占めている世界ですからね。風景に溶け込むには、青い色の方がいいんです」
「へー!」
「いつかスカイランドの動物も見てみたいね!」
周りに人がいないのを良いことに、キャッキャウフフと盛り上がっていると。
「おいで!おいでー!」
あげはさんの腕の中で、エルちゃんが無邪気に動物達に呼び掛けている。
あー、あるある。
子どもってこういうところあるよね。
・・・・なんて、思っていたら。
「ファオーン!!」
ゾウは鼻を上げて、
「ヒョウッ!ヒョウッ!ヒョウッ!」
シマウマ達は嘶き、
「――――!」
キリンは、長い頭を深く下げたのだった。
某獅子王かな?
――――じゃ!!!!!!なくて!!!!!!
「ど、動物達が集まって来たぞ!?」
「プリンセスの言葉が分かっているみたいだ・・・・!」
突然の事態に、仲間達も動揺しきりだ。
「こ、こちらの動物は人間の赤ちゃんが大好きなのか?」
「その可能性もなくはないけど、それでもこれはちょっと・・・・!」
某ネズミと愉快な仲間達の世界みたいな光景に狼狽えていると、ましろさんとベリィベリーさんの会話が聞こえる。
やっぱりエルちゃん、動物の言葉が分かっている・・・・!?
「あの!それなら僕、話してみたい動物がいるんです!」
考えに耽っていると、ツバサくんのそんな提案が聞こえたので。
ひとまず移動することになった。
やってきたのは、ライオンの展示エリア。
お客さんにも、そしてライオンにも気遣った、深い堀の向こう側に。
あのお馴染みな姿が見えたけれど・・・・。
「寝ちゃってますね・・・・」
「ええ、ぐっすりです」
ライオンって確か夜行性だったよな。
動物番組だと、昼に活動してる姿もよく見るけれど・・・・。
「しかし、距離があると言えど、これだけ人間に囲まれてあの堂々たる寝姿・・・・さすがは百獣の王と称されるだけはあるな」
「確かに・・・・結構視線を感じているはずなんですが」
なんて、会話をしていると。
中央で寝ていた雄ライオンの目が開いて、こちらを見止めた。
お、なんなんだろうかと見守り続ける中。
悠然と立ち上がって、
「ガオーッ!!!」
咆哮を轟かせたのだった。
「うひゃー!すごい迫力!」
「プリンセス、ライオンさんが何と言ったか分かりますか?」
迫力に気圧される横で、ツバサくんがエルちゃんに問いかける。
「らいおんしゃん、ぷんぷん!」
ぷんぷん・・・・やっぱり視線が鬱陶しいんだろうか。
「ねんね、しー」
あ、そっちか。
すみませんでした・・・・。
みんなで一緒に頭を下げると、ライオンがやれやれとばかりに二度寝に入るところだった。
・・・・・それにしても。
エルちゃん、やっぱり動物の言葉が分かっているよなぁ。
拙作のソラさんの故郷は、羊毛の一大産地。
大きな畜産農家が数件あって、その経営者家族と従業員で構成されているイメージ。
ハレワタール一家は従業員側の設定。
それから、拙作スカイランドにおける猛禽類は、現実の日本におけるクマみたいなポジション。
四六時中出会う訳じゃないけど、田舎では割とよく見かける。