「いっただっきまーす!」
「まーっしゅ!」
お出かけのイベントと言えば、外せないのがご飯だよね。
というわけで、園内のランチスペースでレジャーシートを広げて。
みんなでお弁当である!
いいお天気に、ちょうど落ち着いてきた気温。
そして心地よい風!!
飯が美味くなる要素しかない!!
「おにぎぃ!おいちぃ!」
エルちゃんもニッコニコでおにぎりを頬張っていた。
かわいい(確信)
「それにしても・・・・エルちゃん、本当の動物とお話が出来るみたいだよ」
けれど、一方でましろさんは何だか浮かない顔だ。
よく見ると、ツバサくんやベリィベリーさんも同じ様な表情になっている。
さきほどの、カピバラやライオンを始めとした、色んな動物と会話した光景。
やはりエルちゃん、ただ者じゃないな・・・・?
「これから、もっといろんなことが出来る様になるんでしょうね」
「有り得るかも!ただでさえ私達をプリキュアにしたり、不思議な力を持っているわけだし」
思わずエルちゃんの将来について零すと、あげはさんが同意してくれる。
そこから、みんなの色んな予想が始まった。
空を飛んだり、力持ちになったり・・・・。
・・・・目からビームはないと思いたいんだけども。
「そんなの、ハイパースゴスギ赤ちゃんだよ!!」
「やっぱり今からでも英才教育をするべきなんでしょうか!?」
「ご飯にももっとこだわるべきなのかも!お料理の勉強しなきゃだよ!」
あげはさんのボケに苦笑いしていると、ましろさんの声を皮切りに。
またツバサくんと一緒に焦り始める。
・・・・ベリィベリーさんは大丈夫そうかなと思ったけれど。
「・・・・拳法も、教えるべきか?」
拳を控えめに振りながら、真剣に熟考していた。
それはさすがに速いと思うよー・・・・。
「はいはい!みんな落ち着いて!また考えすぎモードになっちゃってるよ!」
あげはさんの手拍子と鶴の一声で、何とか治まったけれど。
やはり、不安はぬぐえていない様で。
「じゃあ、あげはちゃんはどうすればいいと思う?」
「んー・・・・」
代表してましろさんが問いかけを投げる。
見習いでも、保育の分野で一番頼れる人だから。
期待もひとしおといったところか。
エルちゃんのリクエストに応えて、バナナを『あーん』し合いながら見守っていると。
「・・・・分かんない!」
からっとした笑顔で、私からすれば予想通りの回答を述べたのだった。
「「「ええー!」」」
「だってそれ、プリンセスや運命の子じゃなくたって、パパさんママさん、みんな悩んでることだし」
拍子抜けした様子のみんなに、あげはさんは説明していく。
「絵本は何を読めばいい?ご飯は何を食べさせたらいい?習い事はさせる?させない?」
もきゅもきゅ食事を続けるエルちゃんを一緒に見守りながら、穏やかに話すあげはさん。
「子どものいいところを伸ばしたくて、素敵な大人になってほしくて、みんな悩みながら育ててるんだよ」
「そうですね」
キリのいいところで、私も口を開く。
「エルちゃんにも、素敵な大人になってほしい。それは、ご両親である王様達はもちろんですが、こうやってお世話している私達にとっても、切実な願いです」
だけども。
「『強すぎる風は風車を壊す』・・・・こちらだと『過ぎたるは及ばざるがごとし』、と言うのでしたか。大いに悩むのも結構ですが、悩み過ぎれば袋小路に迷い込んでしまいますよ」
改めてエルちゃんに目を向けると、立ち上がってましろさんに近づいているところで。
「いたいいたい、ちた?」
「ぁ、ううん!そうじゃないんだけど・・・・」
「たいの、たいの・・・・とんでけー!」
ぱっと両手を広げて、笑顔を咲かせるエルちゃん。
「ふふっ、ありがとうエルちゃん」
「痛いのは、空の上まで飛んで行きました!」
他でもない本人に勇気づけられたからだろう。
みんなの顔から、緊張が解けていくのが。
手に取る様に分かった。
「・・・・これ以上、プリンセスを心配させるわけにはいかないな」
「そうですね!」
「お弁当食べ終わったら、まだ見てない動物を見に行かなきゃだよ!」
明るくなった仲間達を見つめてから、もう一度エルちゃんに視線を落とした。
――――あげはさんに便乗して、偉そうなことを言ったけれど。
何も思わないわけじゃないんだ。
今でこそ、私達があれこれお世話させてもらっているけど。
エルちゃんが大きくなれば、エルちゃん自身の考えも持つようになるだろう。
結局、エルちゃんの人生は、エルちゃんのものなんだ。
私達がどれだけ悩もうとも、自分の
「しょら?」
「はい、ソラですよ」
「そぁ!あげる!」
「おや、またですか?」
――――願わくば。
私達と過ごした時間が、人生の選択の一助になれればと。
祈らざるを、得ないのだ。
「ぷ、プリンセス。僕も欲しいです!」
「ツバサくんも欲しいそうですよ?」
「そらのあとね!」
「はい!!」
私達が思うよりも、重いものを背負っているかもしれないこの子の未来を。
幸福で健やかな成長を。
「あーん!」
「あーん」
祈らざるを、得ないのだ。
◆ ◆ ◆
何処とも知れぬ、鬱蒼とした森に。
轟音が響く。
「9995、9996・・・・!」
巨大な丸太を豪快に素振りするのは、ミノトンだ。
「9997、9998・・・・!」
キュアスカイにつけられた傷跡は未だ痛々しく残っているが、元気に暴風を巻き起こしていた。
「9999・・・・!」
より一層、高く丸太を振り上げて。
「
仕上げとばかりに、叩きつけたのだった。
「よし、準備運動終わり!」
ぐりぐりと肩を回し、調子が戻ったのを確認したミノトンは。
獰猛な笑みを浮かべる。
「キュアスカイは、なかなかの戦士であった」
縫合の糸が残る傷跡に触れながら、想起したのは。
己の信念に基づき、刃無き剣を振るってきたスカイの姿。
彼女は自称した通り、確かに武人ではなかった。
しかし、あの強さはまさしく本物だった。
「――――ふふ」
嗚呼、堪えられない。
「ふははははは・・・・!」
この高ぶる衝動で、笑ってしまうのを。
「はははははははははははははははははっ!!!!!」
堪えられない!!
「この時を待ち望んでいたのだッ!!我が戦うにふさわしい相手が現れるッ!!この時を!!」
血肉を躍らせて、ミノトンは咆える。
「いざッ!!いざッ!!尋常にッ!!刃を交えようぞッ!!プリキュアァッ!!」
誰も踏み入らない森の奥。
闘争に飢えた猛獣が、今度は狂笑を轟かせた。
◆ ◆ ◆
ハシビロコウの前で長々立ち止まってしまったり、コツメカワウソの人懐っこさにキュンキュンしたり。
ヒグマの大きさに慄いたり、テナガザルのアクロバティックぶりに歓声を上げたり。
一通り動物を堪能した私達。
今何をしているのかと言うと。
「はゎゎ・・・・」
ふれあい広場にいるのだった。
ぃ、今・・・・私のお膝にモルモットが乗っていて。
はわわ・・・・かわ・・・・ぷいぷい言うてる・・・・。
かわぁ・・・・。
「ソラさん、融けてる・・・・」
「肩と背中にも乗ってますね」
「プリンセスとは別方向でなかなか・・・・」
ちいこい命達の温もりに癒されながら、無心で撫でまくる。
・・・・なんかの論文で、猫ちゃんにはストレスを軽減する効果が確認されてるって書かれてたと思うんだけど。
猫ちゃんに限らないよ・・・・動物みんなストレス吸収してくれてるよ・・・・。
はあ・・・・かわ・・・・。
「あーい、うさしゃん!」
エルちゃんも、あげはさん付き添いの下うさぎをもふもふしている。
ああ^~、あっちもあっちでかわいいんじゃあ^~。
世のパパママが何ゆえ頑張れるかが手に取る様に分かるよね・・・・。
まだまだ時間はあるし、私ももうちょっともふもふを堪能しようと。
なでなでに集中しかけた時だった。
「ギュッ!?」
「――――ッ!?」
何かに反応したモルモット達が、一目散に逃げだしてしまった。
もふもふが離れてしまったこととか、何か悪いことをしてしまったんだろうかという心配は。
「・・・・これは」
――――覚えのある気配に、掻き消される。
周囲を見れば、うさぎやヤギも同じようなリアクションを取っていた。
遠くからは、ライオンの雄叫びも聞こえる。
「ソラ!」
「ええ・・・・いますね」
この感覚、入園ゲートの方か。
「ソラさん!」
「ソラちゃん、何かいるんだね?」
「とにかく見に行ってみましょう、何が起こっているのか確認しないと」
ましろさんとあげはさんを始めとした、仲間達を見渡して。
頷き合った。
・・・・この気配は、多分あいつだな。
まためんどくせぇことにならないといいけど・・・・。
入園ゲートまで駆けつけると、案の定。
見覚えのある巨体が腕組して仁王立ちしていた。
「ミノトン!」
「・・・・久しぶりだな、キュアスカイ」
名前を呼べば、獰猛に笑うミノトン。
クッソ、楽しそうにしやがって・・・・。
この前の傷はまだ治ってないっぽい癖に、超元気じゃん・・・・!!
「そしてその赤子、プリンセス・エルと見受けた!」
「簡単に連れて行かせると思うなよ!!」
ベリィベリーさんが果敢に言い返す横で、ふとましろさんが小首をかしげてから。
「ミノトンってことは、カバトンのお兄さん?」
そんな素朴な疑問を口にした。
確かに名前似てるけど、と思った瞬間。
「あんな下品で下劣な愚か者と一緒にするでないッッ!!!!!」
「ひゃっ・・・・!」
過去一のでっけぇ声で怒鳴られてしまった。
「意地汚いわ、おならで戦うわ、武人の風上にもおけんわッッッ!!!!」
思わず後ろ手に庇ってしまう目の前で、出るわ出るわカバトンへの不満。
・・・・私達が知らないだけで。
カバトンのことは散々言われてきたのかもしれないな。
「カバトンは禁句みたい・・・・」
こしょっと囁いてきたあげはさんに、全員で頷いた。
あと、武人かどうかはおいといて、カバトンを風上に置きたくないって言うのは分かるかも。
なんか、臭いそう・・・・。
「我こそが真の武人!!いざ尋常に手合わせを!!・・・・と言いたいところだが、残念ながら我も本調子ではない」
「だったら帰ってもいいんですよ?」
「戯け!!強敵を前に背を向けるなど、言語道断!!!」
叫びながら振り上げた拳が、地面に叩きつけられて。
「出でよ!!アンダーグエナジー!!」
いつも通りのランボーグが召喚されたのだった。
素体にされたのは、マスコットのソラシドサウルスだ。
「今回は、我が最強のランボーグと手合わせ願おう!!」
「ああっ!ソラシドサウルスになんてことを!」
あげはさんの抗議もなんのその。
ミノトンの号令に合わせて、ランボーグが咆哮する。
「何にせよ、放置は出来ないな」
「ええ、エルちゃんは安全な所へ!」
「えぅ!」
エルちゃんがちゃんと離れたのを見届けてから、アイテムを構えた。
――――ひろがるチェンジ!!