ラビリン達はツバサくんくらいの大きさになっているし、『彼女達』も高校生になっている設定です。
「おお~!これが車かぁー!」
「思ったより早いペェ!」
あげはさんが運転する車内。
ニャトランさんとペギタンさんは、顔をキラキラさせて窓に張り付いている。
「もー、ニャトランもペギタンもはしゃぎすぎラビ!」
「あはは!いいんだよ!」
そんなお二人を見て、ラビリンさんは呆れていたけれども。
ハンドルを握っていたあげはさんは、快活に笑って。
「そんなに喜んでもらえるなんて、こっちも嬉しいな」
「そうだぜ!こんなに堂々と車に乗れるなんて滅多にないんだからよ!」
「だからって騒ぐのはよくないラビ!」
私の膝の上で、わちゃわちゃするヒーリングアニマルのお三方。
ちなみに。
運転席にはもちろんあげはさん、助手席にはベリィベリーさん。
後ろには私とましろさんとエルちゃんがいて。
ツバサくんはプニバードの姿でエルちゃんに抱っこされていた。
「そろそろ見えて来るよー」
あげはさんの声に、私も窓の外を見ると。
豊かな自然と、広大な海を臨んだ街並みが見えた。
「わぁ!あれが!?」
「ああ、オレ達のもう一つの故郷!『すこやか市』だニャ!!」
私達が足を向けたのは、『ついでにゆっくりしてきなさいな』という鶴の一声でヨヨさんが予約してくれた温泉旅館だ。
『沢泉』と言うらしいそこは、日帰り入浴のほか、ペットと入れる足湯も目玉の一つということだった。
「いやぁ、ヨヨさんもお目が高いよなぁ」
「知ってるところですか?」
「ああ、ペギタンがパートナーだった奴が・・・・おっと」
楽しそうに話してくれていたニャトランさんだったけれど。
建物に入った途端、ラビリンさん達と一緒に私のバッグの中に引っ込んでしまった。
何事だろうと首を傾げかけたけれど、ここの女将さんらしきご一行が見えたことで納得する。
「こんにちは!予約していた聖です!」
「六名でご予約の聖様ですね、ようこそ沢泉へ」
「よろしくお願いしまーす!」
挨拶もそこそこに、早速お部屋へ案内してもらう。
綺麗に手入れされた中庭や、年季の入った内装。
まさしく古き良き旅館と言った館内だ。
「いいね、こういうのもアガる!」
「はい、歴史と文化を感じられます」
「すごく落ち着いた雰囲気で、リフレッシュ出来そうですね!」
あげはさんやましろさんと、感想を言い合っていると。
「ありがとうございます」
案内してくれていたお二人の内、お姉さんらしき方がお礼を言ってきた。
ちなみに男の子はましろさんと同い年くらい・・・・ここの子どもだろうか。
「すみません、騒がしかったでしょうか」
「まさか!誉めて頂いて、嬉しい限りです!」
声が大きかっただろうかと謝ると、にっこり笑って頭を下げて来る。
「申し遅れました、ここの女将の孫の『ちゆ』と言います」
「弟の『とうじ』です!よろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします」
改めて、ちゆさんととうじくんの案内で部屋に行く。
ヨヨさんが予約してくれたのは二部屋。
「前と同じ部屋割りでいいんじゃない?」
「ですね、異論はありません」
他の皆さんも同じ意見だったので、クシザスの時と同じメンバーで別れることに。
「――――みなさん、もう大丈夫ですよ」
入ったそれぞれの部屋で、入浴時間や非常設備の案内を聞き終えたところで。
バッグに向かって、話しかけると。
「ぷはっ!」
「息苦しかったラビ・・・・」
「すみません、気遣いが足りませんでした」
「いやいや!ソラさんは悪くないって!」
『それよりも』と、ニャトランさんが近寄って来て。
「お前さんの刺青はどうだ?すこやか市に無事ついたわけだし、何かしらあるんじゃねぇか?」
「確かに・・・・」
任務内容は、お三方を無事に送り届ける事。
指定されていたすこやか市に入れたわけだし、何かしらあるかもしれないと。
アームカバーを外してみるけれど。
目玉が並ぶ刺青は、うんともすんとも言わない。
「うーん、やっぱオレ達がヒーリングガーデンに帰らないとかぁ」
「そう簡単な話じゃないラビね・・・・」
アームカバーを元に戻しながら、どうしたもんかと考えようとしたところ。
「まあ、帰ろうと思えば帰れるんだけどな」
「あ、そうなんですか?」
「ここすこやか市は、ヒーリングガーデンと繋がりやすいラビ」
「ソラシド市とスカイランドが繋がり易い様なものなのかな?」
なるほど、そんな感じか。
「・・・・あの」
納得していると、ペギタンさんが口を開いて。
「だったら、帰る前にやりたいことがあるペェ」
「「やりたいこと?」」
「える?」
首を傾げているところへ、あげはさん達が合流してきたので。
一度中断して、迎え入れる。
◆ ◆ ◆
(聖様、今はどうしてらっしゃるかしら)
旅館の娘である『沢泉ちゆ』は、つい先ほどチェックインしてきた一行を気にしていた。
友人同士の集まりらしい彼ら。
赤ん坊もいることだし、快適な時間を過ごしてもらうためにも気にかけておこうと思ったのだ。
館内を見回りながら、なんとなく部屋の近くを通りかかると。
「――――贈り物ですか」
「ペェ」
――――聞き覚えのある声に、呼吸を忘れた。
「ちゆは、ボクのパートナーだったペェ」
「そうなんですか?」
「ペェ・・・・でも、プリキュアの役目も終わった今、ヒーリングアニマルとして見習いじゃなくなって・・・・パートナー無しでお手当を頑張らなきゃいけなくなって・・・・」
そうだ。
ビョーゲンズとの戦いも終わって、パートナーである必要もなくなって。
ペギタンとも、離れ離れになった。
――――本来。
ヒーリングガーデンや、そこに住むヒーリングアニマル達のことは秘匿しなければならない。
ペギタン達が、ちゆ達三人と組んでプリキュアをやっていたのは。
ヒーリングガーデンが、機能不全に陥るほど危機的状況にあったからだ。
人間と積極的に関わるなんて、本来は御法度なのである。
(だから)
必要な別離であることは理解している、ずっと一緒にいられないのも理解している。
(だけど)
寂しくないわけない。
悲しくないわけない。
――――嗚呼。
今、この襖を開け放てたら。
どれほどいいだろうか。
――――だけど。
それは、やってはいけないことだ。
旅館に携わる者としても、ペギタンのパートナーだった者としても。
決して、やってはいけないことだ。
「――――だから、プレゼントをしたいペェ」
ペギタンの声に、我に返る。
「今も頑張ってるちゆに、応援の気持ちを届けたいんだペェ・・・・」
『我儘かもしれないけど』と、自信なさげに呟かれた言葉を。
「いいえ」
同行してくれている一人が、否定してくれる。
「とても素敵なことだと思います」
「うん!全然ありだよ!」
「そうなると、姿は見せずに、でもペギタンくんからって分かるものがいいよね」
他の面々も、優しく肯定してくれて。
ペギタンやラビリン、ニャトランが。
嬉しそうな声を上げているのが聞こえた。
「素敵なサプライズになるといいね!」
「ペェ!」
「ラビ!」
「ニャァ!」
――――微笑み一つ、綻ばせて。
音もなく、その場を後にする。
◆ ◆ ◆
ペギタンさんの提案で。
ヒーリングガーデンに帰る前に、それぞれの元パートナーにプレゼントを贈ることになった。
本来、お三方ヒーリングアニマルと人間が関わるのは、ご法度。
私達が一緒に行動出来ているのは。
彼らのかつてのパートナーと同じ、プリキュアであるところが大きい。
それでも、かつて共に過ごしたパートナーを想う気持ちを、無下に出来ないので。
前向きに協力している次第である。
――――それはさておき。
一緒に行動すると時間がかかってしまうので、三方に分かれることに。
グループ分けについては。
ニャトランさんは、あげはさんと。
ペギタンさんは、ツバサくんやベリィベリーさんと。
ラビリンさんは、私とエルちゃんとましろさんだ。
・・・・この頃の夢のこともあるから。
本当は、私があげはさんの様な一人枠になりたかったんだけど。
ましろさんに押し切られてしまった。
不覚・・・・。
「何を贈るんですか?」
「やっぱりお花ラビ!」
こっしょり一人反省会している横で、ラビリンさんの元気な声が聞こえる。
「のどかとラビリンは、お花のエレメントボトルで変身してたんだラビ!」
だから、摘んでも問題ない花で、花束を作りたいのだと。
ラビリンさんは話してくれた。
「わぁ!素敵だよ!」
「私も、いいと思います」
「おはな!」
さて、方針が決まったところで。
その『摘んでも問題ない花』をどうやって探すかという疑問があったのだが。
それはすぐに解決した。
「ふむふむ・・・・」
私達の目の前。
エレメントさんというらしい、小さな妖精が鳴らす鈴の様な音に。
ラビリンさんが何度も相槌を打っている。
本当なら専用の聴診器を使って聞くそうなのだが、花を取っていいかどうかの『YESorNO』的なやり取りなら必要ないということだった。
ちなみに。
立派な一人前なら、ボディランゲージだけで言いたいことを把握できるそうな。
「どうだった?」
ましろさんが問いかけると、ラビリンさんはにっこり笑って親指を立てる。
どうやら、目の前にあるこの花畑は大丈夫なようだ。
「のどかにあげるものラビ、色合いもこだわって作るラビ!」
「ふふ、頑張ろうね!」
「えるもとるー!」
赤い花に、黄色い花。
青い花やピンク色の花もある。
夏真っ盛りにもかかわらず、大輪を咲かせている花々を見て。
生命の力強さを感じていると。
「はっ・・・・はっ・・・・ほっ・・・・!」
「――――ラビリンさん、人が来ます!」
誰かが走ってくる気配。
声をかけると、ラビリンさんが敏捷な動きでエルちゃんのゆりかごへ入る。
そこから始まった、渾身のぬいぐるみのふりは。
もはやある種の威厳さえ感じた。
こ、これが・・・・!
先輩キュアと共に一年を駆け抜けた、妖精の貫録・・・・!
「あ、こんにちは!」
「こんにちはー!」
そうこうしている内に、女の子が走ってくる。
ランニング中らしい彼女は、爽やかに挨拶を交わして通りすがろうとしたけれど。
目線が、エルちゃんに。
――――いや、正確には。
ラビリンさんに向いて。
「――――ぁ」
ぎゅっと、急ブレーキをかけた。
「わぁっととととと!!」
「おっと」
あわや倒れそうになったその人の腕をつかんで、引き止める。
「ぁ、ありがとうございます!」
「お気になさらず」
ありきたりな言葉を交わしたけれど、それで終わるはずもなく。
「あの!その子!」
女の子は、驚愕を隠せないままに話しかけて来た。
「エルちゃん、ですか?」
「じゃ、なくて!その、ウサギの!」
「え?」
ましろさんとエルちゃんは、まさかラビリンさんについて指摘されると思わなかったのか。
きょとんとした顔をしている。
「この子が、どうしたんですか?」
「っあ、いえ、その・・・・昔、持っていたぬいぐるみに似ていて・・・・」
何も知らない風を装って問いかけてみると、しどろもどろになりながら気まずそうに答えるランニングの子。
ラビリンさんの気配も揺れている。
何より、ペギタンさんのパートナーだったというちゆさんと同い年に見える。
・・・・この子、もしや。
「ご、ごめんなさい。突然こんな・・・・」
乾いた笑みを浮かべた彼女は、誤魔化す様に明るい声を上げて。
「あ、初めまして!私、『花寺のどか』です!」
――――ラビリンさんの目が、かすかに見開かれたのが分かった。
ヒープリで好きな回は、気球回です。
ラストはともかく、馴染みのある話が出てくるのでテンションが上がります。
ラストはともかく。