ぁ、あれは嘘だ・・・・(命乞い)
(――――えっ、今ビンタされた?)
「――――ッどうして!!」
顔を張り飛ばされたことを呑み込めず、呆然とするスカイの胸倉が。
プリズムに思いっきり掴み上げられる。
「どうして!!頼ってくれないんですか!?」
大声にびっくりしたスカイは、ぼろぼろと零れるプリズムの涙を見て。
さらにびっくりする。
「ま、まし――――」
「そんなに信用ないですか!?そんなに頼りないですか!?私達、仲間じゃなかったんですか!?」
畳みかけられる問いに、言葉を紡げず口意をもごつかせるスカイ。
そもそも戦闘中、しかも致命的ダメージを与えられる寸前の。
神経が尖り切り高ぶっていたところに。
ビンタを叩き込まれ、泣き顔を見せられたのだ。
その心情、まさに拭き零れる寸前に水を入れられた鍋の如く。
勢いも削がれようというものである。
ちなみに他の仲間達は、ヒーリングっどチームと共にランビョーゲンの対処に当たり始めた。
早い話、ある種の『見捨て』である。
「どうして、また・・・・独りぼっちになろうとするんですか・・・・!?」
言いたいことをひとしきりぶちまけたプリズムは、しゃくりあげながら涙を流し続け。
スカイは手を伸ばそうとして、でも触れていいものかどうか躊躇しておろおろしていた。
「・・・・頼りない、とか、そういうんじゃないです」
やがて、バツの悪そうに俯いて。
スカイが口火を切った。
「ただ・・・・以前と違って、私は罪人です」
告解するように、声を絞り出して。
両手を握りしめる。
「私一人が破滅するなら、一向に構わないんです。それは当然のことで、然るべき報いです」
『でも』、と上がったスカイの顔。
プリズムに影響されてか、声と瞳に涙を滲ませて。
「そんな私の自業自得に、貴女が、みんなが巻き込まれる事だけは耐えられない・・・・!」
「――――ッ」
「何度も何度も、夢に見るんです。ましろさんも、エルちゃんも・・・・みんな、死んで・・・・私だけがのうのうと生き残る」
血を吐くような言葉に、今度はプリズムが呆然とする番だった。
「あまりにも悍ましくて・・・・醜悪な・・・・夢です」
「ソラさん・・・・」
杞憂かもしれない、取り越し苦労かもしれない。
だけど、今の自分の立場を考えたら。
十分にあり得る未来だ。
「許されることじゃない、ずっと背負い続けなければならない。全部承知の上です・・・・それでも・・・・!」
それでも。
「それでも・・・・関係のない貴女達まで巻き込まれるのだけは、どうしても受け入れられない・・・・!!」
大の大人なのに、みっともなくぼろぼろ涙を流して。
入れ替わる様にしゃくり上げるスカイ。
そんなスカイを、束の間見つめ続けたプリズムは。
躊躇したスカイとは対照的に、そっと手を握る。
「――――ッ」
「・・・・ッ」
跳ねのけられそうになるのを、ぐっとこらえると。
握った手ごと引き寄せて、スカイを抱きしめる。
「・・・・わたし、は」
呆然とするスカイの耳元。
そっと、囁く。
「『絶対に死なない』って約束出来るくらい、強くないです」
「・・・・ッ」
「でも、『死ぬまでこの手を放さない』のは、約束できます」
するりと、指を絡ませて。
スカイに見える様に、握りしめた手を掲げる。
「ソラさん独りに、背負わせません」
すっかり晴れた目元で、瞳がキラキラ輝いている。
「・・・・は・・・・はは・・・・!」
スカイは、暗闇で灯りを見つけた様な顔になると。
自らを嘲る笑みを零した。
「・・・・貴女には、救われてばかりですね」
「わたしだって、同じくらい助けてもらってますよ」
情けない気持ちで満ち満ちたスカイの言葉に、プリズムは明るい声で即答する。
「夢がないって悩んだ時も、絵本を作ろうって思った時も。いつも見守ってくれたんですから・・・・だから、同じだけ寄り添わせてください」
「ましろさん・・・・」
「大丈夫」
光に圧倒されているスカイは、無防備だ。
プリズムは、自らの額をこつんと当てて、重ねた。
「大切にされているのも、心配してくれているのも、伝わっています・・・・だから、わたしも同じくらい大切にしたいです」
その言葉に、スカイは内面に潜る様に目を閉じる。
◆ ◆ ◆
――――嗚呼。
忘れる所だった。
私はとっくにプリキュアたり得なくて、それでも続けようと思えたのは。
血に塗れた様を見ても、ヒーローと呼んでくれるこの子がいたからで。
そうだ、私は。
せめてこの光を守りたくて、面の皮を厚くして戻って来たんだ。
「――――一つだけ、いいでしょうか」
「はい、なんでしょう?」
「――――プリズム」
手を握り返しながら、口を開く。
「私にとっては、貴女もヒーローです」
「・・・・ふふっ、光栄です」
抱いた想いを伝えると、嬉しそうに笑うプリズム。
・・・・握った手が、温かい。
「・・・・ましろさん」
「はい」
「もう少しだけ、握っててくれますか?」
「・・・・もちろん」
――――纏った炎が。
手を介して、プリズムに伝わるのが見えた。
◆ ◆ ◆
「わわわわわわわ!!エグいエグいエグい!!エグいってええええええ!!!!」
「分かってるから!!攻撃の手を緩めないで!!」
「それこそ分かってるってえええええ!!」
ひぃん、と悲鳴を上げるのは、ひなたが変身した『キュアスパークル』。
そんな彼女へ、ちゆが変身した『キュアフォンテーヌ』が一喝入れる。
「ッエレメントさんの位置は分かっているのに・・・・!」
「ラビ・・・・!」
苦い顔をしたのは、のどか変身する『キュアグレース』だ。
ラビリンのプニシールドによる援護を受けながら、うねる大木をひらひらと避けていく。
「ハーッハッハッハッ!!新手が来たと身構えたが、取るに足らんな!!」
「うるさーい!!今から逆転するんだから見てなさーい!!」
「抜かせ!ランボーグ!!」
「ランビョーゲンッ!!!」
大笑いするミノトンは、スパークルの野次を笑い飛ばすと。
号令に応えたランビョーゲンが大木を操って、プリキュア達の四方八方を取り囲むのが見えた。
「囲まれた!!」
「・・・・ッ!!」
誰もが動揺する中、エクリプスは一人必殺技の構えを取る。
「こうなれば一点突破だ!!せめて全滅は避けるぞ!!」
「~~~ッ、そうする他ありませんか・・・・!!」
思惑に乗ったアースもまた、ハープを構えて必殺技の構え。
「さあ、ここをどう切り抜ける・・・・!?」
獰猛な笑みを崩さないまま、ミノトンが戦況を見据えていた。
その時だった。
「――――む」
どう、と高ぶった気を感じ取って。
思わずそちらに目をやる。
見えたのは、炎上するスカイとプリズムの姿。
元々バーストモードであったスカイはともかく、プリズムまで白銀の炎を纏っているのに目を疑ったが。
共に、地面に突き立てられたバーストカリバーを掴んでいることで。
その疑問は解決する。
「行きますよ、プリズム」
「はいっ!」
それぞれ、空いた手にスカイミラージュを握っていて。
「スカイブルー!バーストッ!!」
「プリズムホワイト!バーストッ!!」
その掛け声に、火柱が昇る。
蒼穹と白銀。
輝きが交わる中で、二人はバーストカリバーを引き抜いた。
「なんだ、それは・・・・!?」
愕然とするミノトンの目の前。
「「――――プリキュア!!」」
ならば見せてやろうとばかりに、剣が掲げられて。
「「――――アップドラフト・ライジング!!!」」
振り下ろした。
「ランビョーゲーンッ!?」
解き放たれた極光は大木を一掃し、ランビョーゲンへ肉薄。
どころか、その体に食い込んで両断する。
「ッ今ラビ!」
「プリキュア!ヒーリングフラワー!!」
各々が散開する中。
エレメントが解放されたのを見逃さなかったラビリンの声に、グレースがすかさず必殺技。
伸ばされた『花の手』は、見事捕らわれていたエレメントを受け止めた。
「ス、スミキッテ・・・・グッバーイ・・・・!!」
その身に帯びたアンダーグエナジーを、悉く焼き尽くされたランビョーゲンは。
溜まらずキラキラエナジーを発しながら、元の樹木に戻ったのであった。
「うむ、それでこそ我が好敵手。よくぞ此度の戦いを乗り切った」
「――――次は貴方です」
破壊された周囲が修復されていく中、素直に賞賛を口にしたミノトン。
彼の眼前に、アースが睨みを利かせながら立ちはだかる。
「ふん、貴様に用はない。ミノトントン」
「ッお待ちなさい!!」
そんな彼女を一瞥し、一笑に付したミノトンは。
いつもの文言を唱えて撤退。
アースはすかさず飛び掛かったが、間に合わず。
苦い顔を浮かべることとなった。
「そら!まちろ!」
「わん!わん!」
その表情も、すぐに心配に塗りつぶされる。
エルとラテの切羽詰まった声に振り向くと。
今まさに変身が解けながら倒れる、ソラとましろの姿。
咄嗟に庇われたので、ましろは問題なかったが。
その分ソラが強かに体を打ち付けてしまった。
「そ、ソラちゃん!?ましろん!!」
「二人ともしっかり!」
「あわわ、た、大変だ・・・・!」
まずは二人を介抱するべきだと判断したアースは。
ミノトンを取り逃がした口惜しさを切り替えて、仲間達の下に駆け寄った。
今後の課題:オリストをもうちょい手短に終わらせる。