ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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偽物、旅館でのひと時

「ううーん・・・・この子、ちょっと責任感が強すぎるねぇ」

 

「それがいいところなんだろうけども、強すぎる風は風車を壊す(過ぎたるは及ばざるがごとし)しなぁ」

 

「でしょ!?おじさん達もそう思うでしょ!?」

 

「お姉さん的にもそう思うわ」

 

「おばちゃんも一票入れる」

 

「ちょっと油断するとすーぐ自罰的になっちゃうんだから・・・・」

 

「君はこれと十年だろう?お疲れ様だ・・・・」

 

「あ!!!!言ってる傍からまたネガろうとしてる!!!!」

 

「耳ふさげ耳ふさげ!!」

 

「少しくらい自分を労わりなさい!真面目に贖罪してるの分かってるんだから!」

 

「うう、みんなありがとう・・・・!」

 

「いいのいいの!!」

 

「先輩ヒーローのお墨付きだ!!遠慮なく甘えなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ん」

 

目を覚ます。

見慣れない天井。

外は真っ暗で、日はとっぷり暮れているのが分かる。

体を起こすと、旅館の宿泊している部屋であることが分かった。

 

「ましろさん・・・・!?」

 

慌てて周囲を見渡すと、隣にましろさんが寝かされていた。

脈と呼吸を確認して、問題ないことにほっと一息。

安心してから、あれからどうなったんだろうと思っていると。

枕もとに書置きを見つける。

 

「あげはさんから・・・・?」

 

やたら可愛い書体に、エルちゃん作のイラストが添えられた手紙には。

 

あれから倒れた私達は、森林公園から近かったここに運び込まれたこと。

ラビリンさん達は、それぞれのパートナーのおうちに泊まることになったこと。

エルちゃんは、あげはさん達の部屋で預かっていること。

旅館側(というかちゆさん)のご厚意で、21時までなら軽食を用意してもらえること。

 

以上の四つが書かれていた。

時計を見ると、針は20時半過ぎを示していた。

 

「ぉっと」

 

時間を自覚すると、腹の虫が雄叫びを上げる。

・・・・これは、お言葉に甘えた方がよさそうだ。

ましろさんを起こさないように立ち上がって、部屋を出ると。

 

「あ、ソラさん」

「ちゆさん」

 

ちょうど、ちゆさんが通りかかったところだった。

 

「よかった、起きたんですね」

「すみません、ご心配をおかけしました」

「そんな、こちらこそ、ペギタンと再会する切欠をもらってしまって・・・・」

 

頭を下げると、寛大なお言葉をくれる。

 

「あげはさんから伝わっていると思いますが、お食事はいかがなさいますか?」

「遅くにすみませんが、お願いします。おにぎりなどの軽いものでいいので、ましろさんの分も一緒に」

「承知しました、厨房に伝えてきますね」

「ありがとうございます」

「いいえ、お気になさらず」

 

ウッウッウッ・・・・!(嗚咽)

さすが次期女将候補。

書置きにあった件といい、ホスピタリティに溢れてる・・・・。

いい子・・・・いい子・・・・!

 

「そうそう、当館の温泉は22時までとなっております。そちらも合わせてどうぞ」

「はい」

 

『それでは失礼します』と優雅に一礼して。

ちゆさんは足早に去っていった。

今教えてもらったことを加味して、少しだけ考えてから。

お風呂に入ろう・・・と思ったけれど。

私刺青あるから、室内のシャワーにするべきよね・・・・?

確か銭湯は許されたはずだけど、温泉はダメだったはず・・・・。

・・・・んー、ままま!

とにかく、お風呂を先に済ませちゃおう。

準備をするべく部屋に戻ると、ましろさんが起き上がっているのが見える。

 

「ソラさん」

「ましろさん、具合はどうですか?」

「はい、いっぱい休んだので」

 

書置きを読んでいたらしい彼女の傍にしゃがんで、具合のほどを聞いてみると。

にっこり笑顔が返って来た。

よかった・・・・。

 

「ソラさん、ご飯は食べました?」

「まだです。たった今、軽食をお願いしてきました」

 

問いかけに、首を横に振って返事。

書置きは読み終えているようなので、それを前提にして話を進める。

 

「少し時間がかかるでしょうから、先にお風呂に入るつもりです。ましろさんはどうしますか?」

「そうですね・・・・」

 

先ほどの私と同じく、少しだけ考えたましろさん。

やがて、結論が出たのか、こっくり頷いて。

 

「わたしもお風呂からにします」

「分かりました。では、いってらっしゃい」

「はい!・・・・いや、えっ?」

 

ちょっとしたいたずら心で手を振ると、思った通りの反応を返してくれた。

んふふ、かわいい。

 

「すみません、私は刺青(これ)ですから」

「あ、そっか・・・・」

 

右腕を見せると、納得と同時にしょんぼりしちゃうましろさん。

まあ、せっかくの温泉旅館なのにって気持ちはなくもないんだけどね・・・・。

決まりだからね・・・・。

 

「私にお構いなく、どうぞいってらっしゃい」

「・・・・はい、それじゃあ」

 

準備を終えて温泉に向かうましろさん。

私だけ入れないのを気にかけてくれていたけど。

それはそうと、いつの時代も広いお風呂というものは、日本人の心をくすぐるものらしく。

足取りは軽い様に見えた。

そんな彼女を見送って、私もシャワーを使うことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(カポーン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はシャワーだったので言わずもがな。

ましろさんもトラブルに巻き込まれることなく、無事に温泉を堪能できた頃には。

テーブルの上に、夕飯が用意されている状態だった。

というか、私がシャワーしてる間に終わっていた。

すげぇ、これがジャパニーズおもてなしクオリティ・・・・!!

お膳の内容は、頼んだおにぎりの他。

お味噌汁に煮魚、たくあんもついていた。

 

「おいしい・・・・!」

「味しみっしみ・・・・!」

 

うっま・・・・うんま・・・・!!

こんなに身が締まったお魚なんて、初めて食べたかもしれない・・・・!

お出汁はもちろん、生姜も利いてて、味もしみっしみで・・・・。

うまぁ・・・・!

 

「・・・・!」

 

対面のましろさんも、ものすごく幸せそうに頬張っている。

分かる、分かる・・・・。

マジで美味い(語彙力)

気が付けば、お膳はきれいさっぱり空になっていた。

 

「「ごちそうさまでした・・・・!」」

 

いや、本当においしかった・・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ・・・・」

 

少し遅めの夕食を終えて、腹が落ち着くまでの間のんびりすることにしたソラとましろ。

 

「どうしました?」

「あげはちゃんから、ほら」

 

隣部屋のあげはと、メッセージでやり取りしていたらしい彼女は。

ソラへ画面を見せる。

そこには、すやすやと眠っているエルの姿があった。

 

「ああ、ふふふ・・・・」

「あ、また」

 

続けて写真が送信されてきて、あげはとツバサ、ベリィベリーが。

揃いの浴衣姿でギャルピースを決めていた。

 

「エルちゃんのこと、あげはさん達に任せっぱなしになってしまいましたね」

「そうですね」

 

これは何かしら『労い(お礼)』をした方がいいのではないかと、ましろと話し合うソラ。

あげはは『気にするな』と言うであろうし、ツバサやベリィベリーもいるので。

思うよりも負担にはなっていないかもしれないが。

何もしないというのは、やはり性分的に落ち着かないのである。

 

「あ、それじゃあ」

 

ふと、ましろはソラの隣に移動し、スマホのカメラをインカメラにして。

 

「ハイ、チーズ!」

「ち、ちーず!」

 

にっこり笑って、自分達の浴衣姿をお返しに送信。

すると間もなく、あげはから『いいね!』とグーサインをする猫のスタンプが送られてきて。

どちらともなく、微笑みを零してしまった。

 

「ひとまずこれで、明日また考えましょう」

「ええ、そうしましょうか」

 

気付けば、短針は10を過ぎ、長針もだいぶ回ってしまっている。

そろそろ眠った方がいいだろう。

 

「――――あの」

 

布団に目を向けていたソラは、浴衣の裾を掴んできたましろに虚を突かれる。

 

「・・・・どうしました?」

 

好きにさせながらソラが問いかけると、ましろはばっと両手を広げたのだった。

 

「・・・・あの?」

「・・・・ど」

 

ただならぬ雰囲気に、ソラが首を傾げていると。

意を決した様子のましろは、腹を括ったとばかりに目をくわっと見開いて。

 

「どうぞ!!」

 

他の部屋に迷惑が掛からない程度の、とっても気合の入った顔と声で宣言したのだった。

 

「ま、ましろさん?」

「わたし、思ったんです」

 

困惑するソラへ、鼻をふすふす鳴らしながらましろが口を開く。

 

「ソラさんはいっぱい甘やかした方がいいし、甘やかされた方がいいんだって!!!」

「ええ・・・・」

 

どうしてそうなった、とばかりに怪訝な顔をするソラ。

とはいえこうされることに、心当りがないわけではない。

今日は散々心配をかけてしまったことを、自覚している。

何より、

 

「・・・・やっぱり、ダメですか」

 

しゅんとしてしまった彼女を目の当たりにして、何とも思わない人なんているだろうか。

いや、いるまいて。

 

「・・・・では、失礼します」

 

手を伸ばし返して、ましろをそっと腕に収めた。

 

「・・・・すみません、今回は心配かけました」

「本当ですよ、無茶ばっかりするんですから」

 

胸元に顔を埋めるましろを抱き返して、ふと、夜空を見た。

生憎月は見えないが、代わりに星空が瞬いている。

 

(――――人に頼ることを、覚えないといけないな)

 

しみじみ想いながら、目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何もなかったよ、当たり前でしょ?

――――ごほん。

 

「今回は本当にありがとうラビ!!」

「いえ、こちらこそ。すっかり助けられてしまいました」

 

ここはすこやか市の高台。

ハート型のオブジェがとってもキュートな、展望台の上だ。

そこに、私達プリキュアメンバーはそろっていた。

明るく笑うラビリンさんに、私達も頭を下げ返す。

 

「でも、ソラさん達のお陰で、私達もラビリン達に会えました」

「ラビ!」

 

肩にラビリンさんを乗せたのどかさんも、嬉しそうに笑っていた。

 

「・・・・本当は、もうちょっと一緒にいたいペェ」

「もう、ペギタン」

「わ、分かってるペェ!」

 

少しだけ寂しそうにつぶやいたのは、ペギタンさんだ。

半分は本音だろうけど、本気で言ってるわけじゃないらしい。

ちゆさんにたしなめられて、すぐに訂正していた。

 

「ニャトラン、向こうに行っても元気でね!」

「おうよ!ひなたも、遅刻に気を付けろよー?」

「言ったなー!?このこの!!」

 

ニャトランさんとひなたさんは、賑やかにお互いを気遣っていた。

・・・・ラビリンさんも、ペギタンさんも、ニャトランさんも。

それぞれにいいコンビだよなぁ。

 

「・・・・みなさん、そろそろ」

 

そんなヒーリングアニマル達を見守っていたアスミさんが、解散を口にした。

彼女もまた、どこか名残惜しそうである。

聞けば、アスミさんは一時期のどかさんのおうちで暮らしていたというし。

今回もまた、同じくそちらでお世話になっていたらしい。

集合した時の彼女は、とても満ち足りた顔をしていた。

 

「スカイランドのプリキュアの皆さん、この度は、我がヒーリングガーデンの住人達が大変お世話になりました」

「「「お世話になりました!」」」

 

気を取り直して。

ヒーリングアニマルのみなさんがアスミさんの下に集まる。

 

「主であるテアティーヌ様も、とても感謝しておられます」

「こちらこそ、危ないところを助けて頂いて、ありがとうございました」

「ましたー!」

 

アスミさん達に頭を下げると、エルちゃんが元気よく手を上げて。

場の空気が和やかになった。

 

「それでは皆様、ごきげんよう!」

 

アスミさんの頭上に、虹色のゲートが開く。

なるほど、こうやってヒーリングガーデンに帰るんだな。

 

「のどかー!元気でラビー!」

「ちゆー!また会いに行くペェー!」

「ひなたー!またなー!」

 

ふわりと浮かび上がったアスミさん達。

ラビリンさん達が、今まさにゲートに吸い込まれながら、それぞれのパートナーに手を振っている。

 

「ラビリンも元気でね!」

「いつでも歓迎するわ!ペギタン!」

「ニャトランも風邪ひくなよー!」

 

のどかさん達も、とても明るい声で手を振り返している。

・・・・泣くのはダメだというつもりはないけれど。

互いの良い幸先を願いながら、明るく別れることが出来るのもいいだろう。

言いたいことなんて、とっくに言い終えている様だしね。

何より。

彼女達の目元にうっすら滲んでいる涙にツッコミを入れるのは、無粋が過ぎるというものよ・・・・。

 

「元気でねー!」

「ばいばーい!」

「助けてくれて、ありがとうございました!」

「皆、息災でな!」

「ばばーい!」

 

ましろさん達も、元気に手を振っている。

 

「お世話になりました!皆さん、お元気で!!」

 

私も一緒になって手を振って、ラビリンさん達が見えなくなるまで見送った。

やがてゲートが閉じ切り、青空に静寂が戻る。

刺青の目が閉じていくのを確かめる間。

束の間、噛み締めるような沈黙が続いて。

 

「・・・・帰っちゃったね」

 

ふと、ひなたさんが口火を切った。

 

「ひなた、泣いてる?」

「そーゆーちゆちーも涙声だよぉ」

「あはは」

 

我慢できなくなったのだろう。

笑顔を浮かべながらも、ぽろぽろと涙を零した彼女達は。

しばらくの間、互いを泣き顔をからかいながら。

すんすんと鼻を鳴らしていたのだった。




お土産はすこやか饅頭でした。
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