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「いち、に、さん、し」
「ご、ろく、しち、はち」
夏も真っ盛りなある日。
世間的にも休日である今日は、一日をトレーニングに費やすることにした。
なので、ベリィベリーさんと一緒に日課の筋トレを行っている。
「そら!がんばえー!」
「はい!」
背中にエルちゃんとツバサくんを乗せての腕立て伏せ。
二人の体重がいい感じの負荷になって、実にちょうどいい。
ちなみにベリィベリーさんは、片足立ちでのスクワットをやっている。
それ、後で教えてもらお。
「まだまだ行きますよー!」
保育士試験の参考書を読むあげはさんに見守られながら、どんどん続けていると。
「――――ええーっ!?本当!?」
ご両親と話しているらしいましろさんの、嬉しそうな声が聞こえた。
それから、明らかに弾んでいると分かる話し声がする。
「何事だろうか」
「さあ?ただ、ビッグニュースなのは間違いなさそうだよ」
――――どちらにせよただ事ではなさそうなので。
トレーニングを切り上げて、ましろさんの通話が終わるのを待つことにした。
「ところでソラちゃん、芝生じゃないとこに手ついて、暑くなかったの?」
「はい!私は手がこれなので!」
「なるほど、物理・・・・」
果たして。
ましろさんのシャウトの原因は、やっぱり嬉しいニュースによるものだった。
「ご両親が帰ってこられるんですね」
「はい!」
ましろさんのご両親は、長く海外でお仕事をしていらっしゃるのだが。
この頃、やっと一山超えることが出来たらしく。
日本に帰って来られるだけの、まとまった休みを確保することが出来たらしい。
「おめでとうございます!」
「ああ、嬉しそうな声が外まで聞こえていたよ」
「うんうん!」
「きこえた!」
「そ、そっかぁ」
思わずパーティクラッカーを鳴らして祝福する中。
ましろさんは照れくさそうに頭を押さえている。
「ご両親は、いつお戻りに?」
「明後日です!ももぞら空港まで迎えに行こうと思っていて」
そんな彼女に問いかけると、弾んだままの声で返事が来た。
ももぞら空港・・・・それって確か。
「以前、靴を譲ってくれたご婦人をお送りしたところでしょうか?」
「はい!」
いやぁ、あれからもう数か月か。
意外と最近と見るか、結構前だと見るか・・・・。
「いやぁ、ソラちゃん・・・・試練の時だね?」
「はい?」
なんてことを考えていたら、あげはさんがからかうような笑みを向けて来た。
「だって、恋人のご両親にご挨拶イベントじゃん!!」
「・・・・アッ!?」
そうじゃん!!!!!!
悪意も害意も欠片もないと、自負はもちろん、ヨヨさんにもお墨付きを頂いているけれど。
未だ直接対面したことのないお二人から見たら、私。
未成年の娘さんをたぶらかした、悪い大人だ!!!!!!????
「っていうかましろんはおじさん達になんて言ってるの?」
「・・・・実は」
あげはさんに聞かれて、少しだけ口ごもったましろさんは。
やがて、意を決して唇を動かして。
「パパとママには、付き合ってること話してなくて」
「あれ、そうなの?」
「うん」
そんな、意外なことを打ち明けて来たのだった。
「スカイランドのこととか、上手く話せそうにないし・・・・おばあちゃんが知ってるから、それでいいかなって」
・・・・なんというか、意外というか。
虚を突かれたというか。
いや、ほっとしてないと言えば嘘になるんだけれども・・・・!!
ちゃうねん、やましい気持ちは・・・・隠し味程度にはあるけれど・・・・!!
でも、この子の未来を壊すようなことはしたくないし、させない。
恋人とか大人以前に、人として当たり前だろ!?
な!?なッ!?
「まあ、確かに」
なんてことを考えている間に、ベリィベリーさんが肯定の声を上げた。
「いくらヨヨ殿がいると言えど、異世界云々の話をして、果たして信じてもらえるかどうか・・・・」
「ああ~・・・・」
「そうなの、わたしもだいぶびっくりしたのに。長く海外にいたパパとママなら、もっとびっくりするんじゃないかって」
――――自分達が長く家を空けてる間に。
娘が『異世界出身です』なんて宣う不審者とデキてて、さらに母親も『実は同じ出身なの』なんて言い出したら・・・・。
うん、腰抜かしそう。
「では、ご両親が滞在する間は、友人として振る舞いますね」
「ごめんなさい、お願いします」
ましろさんと頭を下げ合って、この話はひとまずおしまい。
「空港かぁ、いつか行きたいと思っていた・・・・!」
気を取り直して。
かつてを思い出してしみじみする横で、ツバサくんも同じくしみじみしていて。
「飛行機が飛び立つ姿が見られる場所です!」
そっか。
航空力学を学んでいる彼からすれば、空港は十分憧れの場所なんだ。
飛行機が飛んだり降りたりするのは、確かに見ていて面白いもんね。
「それに、レストランスぺースには特別なヤーキターイ・・・・じゃなくて、たい焼きのお店があるとか?」
なるほど、そっちも楽しみか。
「うん!しかも飛行機の形のたい焼きなんだよ!」
「わあ!食べてみたいです!」
ましろさんは知っていたらしい。
話を聞いたツバサくんは、顔を綻ばせている。
・・・・タイの形をしていないものは、果たしてたい焼きと呼べるかどうか。
んにゃ、考えるだけ野暮か。
「じゃあ、私が車出すから、みんなで空港行っちゃう?」
なんて考えていると、あげはさんがそんな提案をしてきた。
「ましろんのパパやママへのサプライズになるし、どうかな?」
「うん!」
「はい!」
「いいと思う」
ましろさん、ツバサくん、ベリィベリーさんの三人はとっても乗り気。
なんなら私も賛成だ。
「くうこ!いくー!」
エルちゃんも手を上げたので。
満場一致で空港に行くことが決定した。
◆ ◆ ◆
「わあー!」
「ここが空港!」
三日後、ももぞら空港。
一階のチェックインロビーに、一行はそろっていた。
特にツバサは歓声を上げながら、あちこちをきょろきょろとしている。
そんな彼を微笑ましく見ている中、ふと、ベリィベリーはこちらに歩いてくる一団に気が付いた。
「あの人達は?何やらただ者ではなさそうだが・・・・」
制服の着こなしと、ピンと伸びた背筋からそう判断したのだろう。
問いかけに応えたのは、興奮しきりのツバサだ。
「飛行機を操縦するパイロットさんと、空の旅をエスコートしてくれるキャビンアテンダントさんです!」
「なるほど、彼らが」
「キリっと決まってますね、素敵です」
「はい!」
専門的な技術を持つ、尊敬すべき人々であると判断したベリィベリーは。
納得に何度も頷いていた。
ソラも、通りすがる最後まで綺麗な姿勢を保つ彼らを。
心なしかキラキラした目で見送った。
「ましろんのパパとママが到着まで時間あるし、あちこち回って楽しもっか?」
「うん!」
あげはの提案に頷いて、空港見物が始まる。
「これが噂のたい焼き・・・・!」
「なるほど、こうやって飛行機の形を再現してるんですね」
「挟んであるクリームは、雲を模しているのか。上手いな」
「おいしー!」
「ここはお土産屋さんの様ですね」
「あ、見て下さい!こっちに飛行機の模型が!」
「本当だ、よく出来ているな」
「国際空港だから、全国各地のお土産がより取り見取りだ!」
「何々?『大阪名物 納豆餃子アメ』・・・・えっ?アメ?」
「ジン〇スカ〇キャラメルみたいな、罰ゲーム枠だね」
「あげはさん、食べたことあるんですか?」
「コメントは控えるよ・・・・」
(おいしくなかったのか・・・・)
「これは、ここのマスコットでしょうか?」
「すごい、棚の上までびっしり・・・・」
「表情も相まって、一種の威圧感を感じるな・・・・」
「こっちは、その形のクッキーがいっぱいだよ」
「本当だ!かわいい!」
「かぁいいー!」
「えっ?」
(あ、そっか。ラベンだるまちゃんの類かこいつ!)
「あ、さっきのマスコットですよ!」
「着ぐるみになるとあんな感じかぁ」
「あ、こっちに来たよ」
「ほんとだ!」
「ぎゅーっ!」
「・・・・なんだか段々愛嬌がある様に見えて来た」
「私もです」
「「ぎゅーっ」」
「――――空港って、楽しいですね」
「ああ、用が無ければ来てはいけないと思い込んでいたが。見ているだけでもワクワクするな」
一通り見回って、満足げに感想を述べるソラとベリィベリー。
一応スカイランドでも、遊覧鳥の発着場がそれに当たるだろうが。
一つ屋根の下に、ここまでの規模はやはり稀であった。
「くうこ!しゅき!」
「プリンセスも気に入りましたか」
よちよち歩きながら、楽しそうにコメントするエルを。
微笑ましく見た一同。
自然と、次はどこに行こうという話になる。
するとあげはが、案内板を指さして。
「少年が、一番楽しみにしてる場所かなぁ?」
「それって・・・・!」
そんなところ、ツバサには一つしか心当たりがない。
「行きましょう!!」
「ツバサくん!?」
「待って速ーッ!?」
はやる気持ちをそのまま歩調に変えて、ずんずんエスカレーターを進んでいくツバサ。
そんな彼を先頭に、他の面々も続いていくのだった。
「――――よっぽど楽しみにしてたんですね、ツバサくん」
「見てるこっちも嬉しいよ、連れて来てよかった!」