ヒーローガールは異物入り   作:数多 命

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6月2日の日刊ランキングにお邪魔させていただきました。
日頃のご愛顧、誠にありがとうございます。




それから、ミラーパッドの話はスキップしました(切腹)
ソラさんは化粧の、ベリィベリーさんは料理の課題を出された設定です(介錯されながら)


偽物、一難去ってまた一難

――――お父様作の、『I♡MASHIRO』シャツは。

受け取るだけで手打ちにしてもらった。

人生最大の修羅場だった・・・・。

その後、改めてご挨拶して、寛大にも交際を認めてくれたましろさんのご両親は。

3泊4日の帰省を存分に満喫なさったあと、再び海外へと旅立っていった。

せっかく再会出来たご両親と、再び離れることになってしまって。

ましろさんは寂しがってやしないかと心配になったけれど。

『今はいってらっしゃいの気持ちが強い』と笑う顔は、とても晴れやかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、それから一週間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――エルちゃんによる、ミラーパッドへの『エキストリーム閉じ込め』があったのが昨日。

案内役のピンクットンに圧されて、あれよあれよと様々な難問を課せられた。

それぞれが慣れない分野での挑戦を強いられて、相応に苦戦したんだけれど。

なんだかんだ楽しかったのを覚えている。

花火を見ながら食べるフルーツポンチ(エルちゃんwithヨヨさん作)もおいしかったしネ!

で、今日。

 

「――――特訓、ですか」

「はい!」

 

鼻息荒く、気合十分なましろさんに。

そんなお願いをされているのだった。

 

「昨日、ミラーパッドの中で課題をやってて思ったんです。弱点を弱点のままにするのって、まずいんじゃないかって」

 

昨日ましろさんに課されたのは、フィジカルがものを言うやつだったか。

高い塔を登らされたとか、なんとか。

 

「わたしだけの強みがあるのは、ソラさん達のお陰でそれはもうよく分かっています。だからこれからは、それ以外にも目を向けた方がいいのかもしれないって思って!」

「それで、特訓したいと」

「はい!!」

 

・・・・確かに。

私も慣れない化粧を独りで経験して、自分の知識不足を痛感したものだ。

だから今、初心者向けコスメを特集してたファッション誌を読んでいるわけで・・・・。

ちなみにベリィベリーさんはお料理の課題を出されたらしい。

しかもSNS映えするような、めっちゃくちゃおしゃれなやつ。

私みたいに、食べ物から食べ物を作ることは出来るけど、飾り切りやソースまで手作りしないと合格を貰えなかったそうだ。

お疲れ様です・・・・!

 

「やっぱり、ダメでしょうか」

「ああ、いえ。そういうわけじゃなくってですね・・・・」

 

思案にふけって黙り込んでしまった私の態度が、否定的に見えてしまったらしい。

しょんぼりしてしまったましろさんへ、慌ててフォローを入れる。

うん、そうなんだよ。

特訓自体は悪くないんだ、悪くないんだけど・・・・。

 

「自分自身の特訓が、だいぶ度が過ぎているというか、『過ぎ過ぎて』て、デフォルトがどれくらいだったかと・・・・」

「ああ・・・・」

 

いや、本当にこれにつきるのよ・・・・。

私基準の『トンチキアホ修行~ドMの所業を添えて~』なんてやろうものなら、ましろさんの体が壊れちゃう・・・・。

 

「大人に随分近いと言えど、まだまだ成長期ですからね。あんまり体に負担をかけると、十分に発育できない場合もありますから」

「なるほど・・・・」

 

説明すると、納得はしてくれたようだった。

・・・・うーん、でも。

せっかくのやる気を削いじゃうのもなぁ・・・・。

なんて、考えていると。

 

「あら、ちょうどいいお話をしているわね」

「おばあちゃん?」

「ヨヨさん」

 

ひょっこり現れたヨヨさんっは、微笑ましそうに私達を見て。

ミラーパッドの鏡面を向けた。

そこに映っていたのは、

 

「「シャララ隊長?」」

『久しぶりだな、息災で何よりだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――クシザス、スカイランド両国が。

キルミラによる襲撃で、甚大な被害を被ったことを受けて。

青の護衛隊と、クシザス騎士団の合同で。

強化訓練をすることになったらしい。

それに、私達プリキュアも参加しないかということだった。

――――ちなみに。

その開催地はと言うと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――わっはー!どこもかしこも羊だらけー!!」

「スカイランドでは『プーシ』って言うのよ」

「へー!」

「ひっじしゃ、もこもこ!」

 

――――見渡す限りの原っぱに。

(プーシ)(プーシ)(プーシ)

顔を覆う程真っ白でもこもこの体毛は、雲に擬態するため。

雲が地面を這うことが珍しくないスカイランドならではの生存戦略だ。

いやはや、もはや懐かしきかな我が故郷。

イナカノゾーラ地方はキョーヘン村!!

ここで飼育されている(プーシ)は、この村の名前『キョーヘン』が付けられた品種。

スカイランドでも屈指の丈夫な羊毛は加工すれば、軽いのに防弾チョッキ張りの防御力を誇るフェルトになる。

最高級品質のものは、王国軍の鎧の下に着るインナーや、護衛隊の制服の裏地に使われているのだ!

 

「って、羊にはしゃいでる場合じゃなかった。合流場所はどこだっけ?」

「ええっと、確か・・・・」

 

そして、それ以外なーんにもない場所でもあるから。

こういった訓練や、遊覧鳥の研修に使われたりもするのである。

事前に渡されていた地図を開いて、場所を確認しようとすると。

 

「おおーい!!」

 

噂をすれば。

声の方を向くと、ハヤテ先輩が駆け寄ってきている。

でも、何だか様子が・・・・?

 

「ちょっと来てくれ!困ったことになってんだ!」

「困ったこと?」

「一体何事ですか?」

「見てもらった方が速い、こっちだ!」

 

とっても慌てている様子のハヤテ先輩に首を傾げながらも、ただ事じゃない雰囲気に私達もついていく。

 

「――――あ、隊長!ハヤテが戻ってきました!プリキュア達も一緒です!」

「来てくれたか」

 

辿り着いたのは、牧場の一画。

っていうか、ここ・・・・。

 

「ソラちゃん!」

「やっぱり、ラムカンさん!」

 

思った通り、知っている人だった。

 

「知り合い?」

「ええ、両親の雇い主です」

 

ラムカンさんは、数ある羊農家の一つを経営している牧場主。

あげはさんに説明した通り、うちの両親の雇い主だ。

ちなみに、羊を盗みかけたでっかいワシを、投石器(スリング)で撃ち落としたのもこの人である。

 

「来てくれてよかった!おーい!レッド君!!」

「レッド?」

 

聞き間違い、じゃないよな!?

レッド!?あの子何やった!?

 

「あの、弟に何かあったんですか!?」

「ああ、ちょっと困ったことになってな。こっちだ!」

 

とにかく『見れば分かる』と、連れていかれた先。

――――道具小屋の中にいたのは。

綺麗なグラスの様なキラキラした羽を持った、中型犬サイズの鳥と。

それに頬ずりされている。

 

「――――説明」

「は、はい・・・・」

 

――――自他ともに認めるいたずらボウズに対し、高圧的になってしまったのは。

仕方のないことだと思いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

『グラスイーグル』という猛禽類が、スカイランドには生息している。

名前の通り、ガラスの様な透明感のある美しい羽を持っており。

特に生まれたばかりのヒナは、まさしく水晶の様な輝きを纏っているので。

その昔、好事家に売るために乱獲され、絶滅も危ぶまれたことがある。

成体も成体で、シーグラスの様な味のある美しさを見出されて、同じく乱獲の対象となってしまったため。

スカイランドの天然記念物に指定されている。

 

「――――そんな貴重な鳥のヒナが、なんでこんなとこに?」

 

ヨヨの説明を受けて、あの煌びやかなヒナがなんなのかは分かった。

それはそれとして、ましろの疑問も最もである。

ぎろりと向けられたソラの視線を受けて、レッドはとつとつと語り出す。

――――姉が王都に向かってからも。

修行と称して、ヒーローを目指して腕白に遊んでいたレッド。

そんなある日、いつもの様に森を駆けまわっていると怪しい一団を発見。

物陰に隠れて聞き耳を立てると、どうやら密猟者の様だ。

一抱えもある大きな卵を、どこからか失敬してきたらしい彼らは。

これを売っ払った後で、どんな『遊び』をするか話し合っていたらしい。

すると、メンバーの一人が『ションベン』と卵から離れた。

他の面々も常に空を警戒し続けていて、卵をあまり注視していない。

――――かつて。

ギガノマンチュラの脅威から故郷を救った姉の様に、ヒーローになりたいと夢見ていたレッドは。

一瞬の隙をついて卵を強奪。

よく知っていた森の中であったことも幸いして、村まで逃げおおせたらしい。

しかし、一方で卵の問題が残っていた。

十中八九鳥の卵であるから、当然中には誕生を待つヒナがいる。

温めてくれる親から離されてしまった以上、このままでは死んでしまう。

幼い頭で必死に考えたレッドは、今は使う者がいない姉の毛布と、加工の際に余ったプーシの毛を使って温めることにした。

こうして卵は無事孵り、中のヒナは死を免れたわけだが。

 

「――――刷り込みでレッドを親と思い込んでしまっている、と」

 

『頭痛が痛ぇ』とばかりに、頭を抱えるソラ。

その隣では、駆けつけた彼女の両親が、同じ表情をしていた。

 

「問題はそれだけではないんでしょう?」

「ええ、そうなんです」

 

ヨヨの問いかけに、シャララがこっくり頷く。

 

「このヒナがいたと思われる巣は?」

「すでにツムジ達が見つけています・・・・親らしき成体の遺体が、あったそうです・・・・一体だけ」

「そうですか・・・・」

 

シャララの報告に、難しい顔をするヨヨ。

そこには、奪われた命を悼む感情もありはしたが、他の懸念もあるようだった。

 

「な、なにかあるの・・・・?」

「グラスイーグルが絶滅しかけた理由は、乱獲だけじゃないんです」

 

はてなを浮かべ続けるましろとあげはへ、ツバサが口を開く。

 

「彼らは一度番を決めると一生添い遂げる、スカイランドで一番愛情深い生き物だと言われている」

 

『添い遂げる』『愛情深い』というワードに一瞬だけ色めき立った二人だったが。

ベリィベリーとツバサの意味深な顔で、すぐに引っ込んだ。

 

「それはそれは、もう・・・・番を殺されたら、その仇を取りに行くほどには・・・・」

「・・・・えっ」

「ってことは・・・・」

 

事態を把握していったましろとあげはは、段々と目を見開いていく。

そう、卵やヒナの乱獲以外にも。

巣や番に手を出されて激怒した片親が、(当然のことだが)苛烈に抵抗してくるため。

死ぬわけにはいかない人間側も反撃して、結果的に成体も数を減らすこととなってしまったのだ。

 

「ああ、卵を取り返しに来るだろう盗賊以外に、番の仇を取ろうとするグラスバードも相手にしなければならない」

「わぁー・・・・!」

「た、大変だよぉ・・・・」

 

さらにこちらには、卵が孵ったヒナもいる。

番を手に掛けられ、怒り心頭なグラスイーグルの標的に、十分成り得るだろう。

 

「ど、どどどどうしよう!?」

「ヒナであれくらいってことは、大人はもっとでっかいよね!?」

「ええ、片方の翼だけでも、ひろがればトラック一台分よ」

 

とどめと言わんばかりのヨヨの解説に、『なんてこった』とばかりに頭を抱えてしまったましろとあげは。

 

「ソラ、すまないが訓練は緊急事態につき一旦中止。配置につけ!」

「は、はい!」

「ベリィベリーもだ!!こちらに来い!!」

「はいっ!!」

 

そんな二人へ、心配げに視線を送っていたソラは。

シャララに促されて、ひとまず配置につく。

 

「総員!厳戒態勢!賊とグラスイーグルの襲撃に備えろッッ!!!」

 

ダメ押しにシャララの声が響き渡って、空気が張りつめた。




牧場主さんのお名前は、ソラの故郷名の候補から。
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