御筆が乗りました故、投稿です。
「――――あの、隊長。これから何を?」
「ああ、そろそろ説明しようか」
山の一画。
連れて来られたベリィベリーが問いかけると、シャララは首元に手をやる。
「月十字・・・・!」
「ああ、ルティの魔力が込められている」
懐から引き出されたそれに、ベリィベリーが目を丸くすると。
刹那、その周囲に魔力の剣が生成される。
「あ・・・・!」
「知っての通り、私は吸血人達との付き合いも長くてな。こいつの扱いもよく心得ている」
自在に剣を操ってみせたシャララは、練習用の木剣を抜き放つと。
ぽかんとするベリィベリーに微笑みかける。
「この機会に、改めて徹底的に指導する。ついてこい」
もう少しだけ驚いていたベリィベリーだったが。
次の瞬間には、にかっと笑って。
「ええ、貴女とならどこまでも!」
構えを取る。
「隊長達も始めたみたいね」
遠くから聞こえる戦闘音に目を向けたツムジは、『やりすぎないでくださいよ』と独り言を口にしてから。
改めて、ましろ、ツバサ、あげはの三人を見た。
「さて、これは事実確認なのだけど・・・・あなた達三人は弱い」
「うっ・・・・」
「そりゃあ、ソラちゃんベリィベリーちゃんに比べたら・・・・」
「不甲斐ないのは理解していますけど・・・・」
「ごめん、そこまで凹むとは思わなかった」
予想以上に落ち込んだ三人。
ツムジは慌てて謝罪を述べた。
「あの子達は戦う為の訓練をしてきたんだから、『土台』がしっかりしていて当然よ」
フォローを入れて、仕切りなおす。
「けれど言い方を変えれば、戦う必要のなかったあなた達は、その『土台』が無い状態なの」
「確かに、基礎がしっかりしていないと、高い建物は出来ませんよね」
「そういうこと」
ツバサの言葉を肯定して、両手を打ち合わせるツムジ。
「これからあなた達には、その『土台』を作ってもらう。具体的に言うと、体力づくりがメインね」
「なるほどー!」
あげはを筆頭に、納得の声を上げる面々へ。
ツムジが微笑みながら、山の方を指し示した。
「まずは今どれくらいなのかを見たいから、あの山のふもとを一周してきて頂戴」
「おおー!なんか修行っぽい!」
「道は割かし整っているから、走り易いはずよ」
「はーい!」
何はともあれ、ツムジの言うことも最もだ。
まずは体力をつけるべく、三人は駆け出した。
◆ ◆ ◆
あ"あ"ー、重てぇ~・・・・!!
でも、何とか慣れて来た。
普段に比べたら遅々としているけれど、ちゃんと走れてる。
予想通り、一周分遅れてしまっているけども・・・・。
実際に走ってみて分かった。
これ以上遅れるのは、まずい。
遅れるだけならまだいいんだけども、ペナルティがネックだからなぁ・・・・。
この状態でスクワットを何百回もやったら、死ぬ(白目)
「ふ・・・・ふ・・・・ふ・・・・」
呼吸を乱さないように、意識を集中させながら走っていく。
「ハレワタール!」
「ッハヤテ先輩」
と、ハヤテ先輩が並んできてくれた。
「お前、また随分とすげぇのつけられたな」
「はい・・・・!」
「おっと、動くだけでいっぱいいっぱいか」
会話すらままならないのを察してくれたらしいハヤテ先輩は。
そのまま話し続けてくれる。
「昨日『お前を見極める』って言ってたらしいから、それなんだろうな・・・・とはいえ、度が過ぎる様なら遠慮なく言えよ?俺もびしっと言ってやるから」
「・・・・ッ!」
「ああ、無理して反応すんな。俺も悪かった」
気遣い続けてくれる先輩だけど、そのまえにこれだけは伝えたくて口を開く。
「あの、先に、行って・・・もらって、構わない、ので・・・・!」
「悪いがそれもお断りだ。こんな状態の後輩置いてくほど、クールじゃねぇよ」
「先輩・・・・!」
あ、ありがてぇ・・・・ありがてぇこって・・・・!
本当に、色んな人に支えられているんだなと。
改めて実感する。
そんな人達に報いるためにも、強くならなきゃ・・・・!
「やべーのがいんだけど?やべーのがいんだけど!?」
「これの二倍巻きを四つもつけて、立ち上がるどころかさらに動けるってどういうこと・・・・?」
「お前出来る?」
「ムリ」
「キルミラに狙われるだけはあるってことか・・・・」
「すげーんだな、お前らんとこの新人・・・・」
「そういう言われ方するとちょっと複雑・・・・」
「あいつも滅茶苦茶気にしてるから、言わんでくれよ・・・・?」
「一時期マジで見てらんなかった・・・・」
「洗脳されてた分ダメージもどでかいだろうしなぁ・・・・」
「おうよ、とりあえず訓練に集中するわ」
「ぶっはぁ!!!」
「お疲れー」
「頑張ったなぁ」
一周分だけで済んだとはいえ。
走り込みとペナルティだけで、午前中が終わってしまった・・・・。
やっぱこの錘クソ重てぇよ・・・・。
「全身真っ赤じゃん」
「水かけるぞー」
「ぉぶぶ・・・・!」
全身熱いと思っていたら、どうやら視覚的にも真っ赤になっていたらしい。
先輩の一人が、桶いっぱいの水をぶっかけてくれた。
あぶぶぶぶ・・・・昭和の運動部で観たやつだ・・・・!
「っぷは!・・・・ありがとうございます・・・・」
「いいってことよー」
ワンコみたいに余分な雫を振り払って、残りもタオルでふき取ってしまう。
「――――ソラちゃーん!」
「みなさん」
と、ここでプリキュアのみんなも合流してきた。
あげはさんの声が聞こえたので、そちらを振り向くと。
思ったよりも泥だらけなお三方が。
「うわ、ものすごく泥だらけ」
「『受け身の練習』って、ツムジさんにものすごい投げ飛ばされちゃって!」
「そうなんですか?」
「はい!すごかったんです!」
「どこから攻撃しても、すぐに投げ飛ばされちゃって!」
ぐい、と身を乗り出したましろさんとツバサくん。
その顔はものすごくキラキラしている。
「こっちが怪我しない程度に手加減してくれたし、ツムジさんやっぱりすごい人なんだね」
「ええ、うちの頼れる先輩です」
「――――みんな揃っていたか」
はしゃぐツバサくんとましろさんの横で、あげはさんと話していると。
今度はシャララ隊長の声が聞こえた。
「隊長」
「ベリィベリーちゃんは・・・・うわ」
二人を視界に収めると、片やボロボロ、片や汗一つかいていない涼し気な様子で歩いて来ている。
た、体力オバケ・・・・!!
「だ、大丈夫?」
「な、なんとか・・・・だが・・・・!」
倒れかけたところを、あげはさんが支えると同時に。
ベリィベリーさんの周囲に、拳型のエネルギーが現れた。
エーッッ!?なにそれ!!
カッコよ!!
「エエーッ!?なにこれ!?」
「朝から今まで、みっちり鍛えられてな。お陰でこの通りだ」
「今日一日、
「はい!」
『ほあー』と感嘆の声を上げるあげはさんと、達成感溢れるベリィベリーさんへ。
隊長は柔く笑いかけていたのだった。
「さて、昼食だ。村のみなさんが炊き出しを行ってくれているらしい」
「そういえばこの匂い・・・・チシューですね」
「スカイランドのシチューだっけ?おいしそー!」
気が付けば、馴染みのある匂いが辺りに漂っている。
「・・・・ん?」
ふと気が付くと、体が軽くなっている。
この錘、どうやら食事時にはオフになるようだった。
「食べましょう、午後もたくさん動きますから」
「はい!」
歩き出そうとした、その時。
「・・・・?」
視線を感じて、後ろを見る。
けれど、その先に人影はなく。
馴染みのある木立だけが、風にそよいでいる。
(人がいるかと思ったんだけど・・・・)
「ソラさーん!」
首を傾げつつも、みんなの下へ行く。
◆ ◆ ◆
――――握りしめた手が、ぎちぎちと音を立てる。
ずっと探していた仇から、視線を外すことが出来ない。
(見つけた、見つけた・・・・見つけた!!!!!)
――――あの日。
首都が襲撃された、あの夜。
塵でも払うように、鎧袖一触にされた。
自慢の姉だった。
若くして騎士団の小隊長に任命された。
「姉ちゃん・・・・!」
形見の短剣に、手を伸ばして。
柄を、握りしめる。
◆ ◆ ◆
訓練に夢中になっていると、すっかり夜になっていた。
キョーヘン村のお風呂は、各家庭にない代わりに公衆浴場だ。
スカイジュエルのお陰で、沸かす手間もそんなにかからない。
「――――たっはぁー!動いた暴れた運動したぁー!!」
ひろいお風呂に浸かり、あげはさんは楽しそうに体を伸ばした。
「上がったら、マッサージしておきましょう」
「だねぇ、筋肉痛は必至だぁ」
解ける様に顎まで沈んだあげはさんを見て、ましろさんがくすりと笑みを零していた。
「おふろ、ひろーい!」
「ふふ、ねぇー。広いですねぇ」
昼間はお母さん達が面倒を見てくれていたエルちゃんも、私達と一緒に居られて嬉しい様だ。
湯面に浮かべた、赤ちゃん用の風呂桶に浸かって。
とってもご機嫌である。
ちなみに。
ヨヨさんはグラスイーグルの事後処理の為に、地方の主要都市に出かけている。
お疲れ様です・・・・。
「あーあ、少年も一緒に入れたらよかったのに」
「さすがにやめてあげてください・・・・」
「あれだけ抵抗すればな・・・・・」
ツバサくんは、この後男性陣と一緒に入る予定だ。
・・・・お湯を顔にかけながら、夜空を見上げた。
宝石みたいな星々が瞬いてて、とっても綺麗だ。
「そろそろ上がりましょう、男子の入浴時間よ」
「はーい!」
ツムジ先輩に声をかけられる。
確かにそろそろいい時間だ。
「この後マッサージしたら、もう寝る?」
「みなさんはそうしてください」
着替えながらこの後について話し合う。
今日の課題はこなし終えたし、この後はもう寝るだけだけども・・・・。
「私はその前に、少し見回ります」
「そんな、ソラさん」
「大丈夫ですよ、キャンプ地を本当に回るだけなので。この辺は地元です」
案の定ましろさんには心配されたけれど。
でも、この辺り結構大型の生き物が多いからなぁ。
あのグラスイーグルが牧羊鳥に採用されたと言えど、まだ研修中だしね。
警戒するに越したことはないでしょ。
「すぐに戻りますから」
「・・・・それ、なら」
とはいえ、ましろさんも納得しきっていない様子。
早めに帰るに越したことはない。
・・・・ない、けど。
(それも難しそうだな)
――――予定通り、キャンプ地の周囲を歩く。
見落としやすい、暗がりなんかを重点的に見て回っていく。
「・・・・ッ」
背後から物音。
振り返ると。
腹に衝撃と、激痛が走る。