BlueArchive -Strive-   作:笹の船

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強襲!

 ミレニアムタワーの中をモモイ、ミドリ、飛鳥が走る。

 

「計画通り、生徒会のメンバーは隔離。メイド部も目下の脅威となり得る室笠(むろかさ)さんは陽動を受け持ってくれた小塗さん、豊見さんと共に隔離できたみたいだね。後は……」

 

 走る、というより地面を滑走している飛鳥が手元に展開したARディスプレイから顔を上げて、窓の外へ視線を送る。

 それから先頭を走るモモイに向かってスッと手を上げた。

 そんな飛鳥の行動にモモイとミドリが何をする気なのかと一瞬走る速度を緩めた、その時だった。

 硬質な何かが凄まじい運動エネルギーを持ってぶつかった破裂音とでもいうべき音が辺りに響き渡る。

 それと同時に、モモイのすぐ目の前に位置する窓に大きな風穴が開けられていた。

 

「そ、狙撃!? もうカリン先輩の射程範囲なんだ!」

 

 叫んで慌てて回避に入るミドリ達の傍を何発もの弾丸が空気を食い破りながら通り過ぎ、床や壁に穴をあけていく。

 

「先生ェ! さっきのバリア貼っといてよ!」

 

 必死にカリンからの狙撃をかわしながらモモイが飛鳥へ向かって叫んでくるが、それに対して飛鳥は首を横に振った。

 

「申し訳ないけど、あんまりアレは使えないんだ。フォルトレスディフェンスは燃費が悪いし、ズルだからね」

「ここまでエンジニア部とヴェリタスの皆とズルしまくってきて今更気にすること!? わぁっ!?」

「ズルのベクトルが違うんだモモイさん。あくまでどうしようもない時とか、緊急時だけにさせてほしい」

「うわわわ!? 今がその緊急時だと思うんです先生! お願いですからバリアお願いします!」

 

 転んだモモイとミドリからの懇願にどうしたものかと飛鳥が考え込み始めた直後、唐突に狙撃が止んだ。

 直後、外からかすかに爆発音が聞こえてくる。

 それを聞いてモモイ達が体を起こしながら顔を見合わせる。

 

「ウタハ先輩とヒビキちゃんだ! カリン先輩の相手をしてくれてる間に、急ごう!」

 

 ミドリの言葉にモモイが頷き、駆け出そうとしたそのタイミングで今度は小さくない揺れがミレニアムタワーを襲う。同時に、建物の中から爆発音も聞こえてきた。

 転びそうになるのをこらえながら、それでも足を止めるわけにはいかないとモモイ達は走り出す。

 

「地震……!?」

「というか、爆発みたいだったけど……まさか!?」

 

 事前の情報で、飛鳥達はC&Cのアカネが爆弾を多用するという情報を聞いていた。

 そして、今回の潜入作戦に置いて大量の爆薬、またはそれに類する武装を持っている生徒はアリスの光の剣しかない。

 つまり、そこから推理できるのはミレニアムの強化シャッターで隔離していたはずのアカネが持ち込んだ爆薬で強引にシャッターをこじ開けたのだろうということだ。

 

「急ごう。小塗さん達の陽動の効果がなくなった今、直接戦闘をしなくちゃいけない相手が増える可能性が大きく上がったわけだからね」

 

 飛鳥の言葉に、モモイとミドリが小さく頷いて走る速度を上げる。

 そうして走り続けていると、急にタワー内部の照明が落ちて辺りが暗闇に包まれた。

 しかし非常用の電源が稼働したのか、数秒後に非常灯だけが点灯する。

 

「今の停電、ウタハ先輩とヒビキの策が成功したってことだよね?」

「うん。そのはず。あ、先生足元暗いので気を付けてくださいね」

 

 ミドリの言葉に、飛鳥は返事をすることが出来なかった。

 

「……先生?」 

「待ちくたびれたぜ」

「お、やっと来たね!」

 

 前と後ろから同時に聞こえた声にモモイとミドリが同じタイミングでびくりと体を震わせる。

 飛鳥は走ってきた通路の方から視線を外すことなく、背後のモモイ達に声を掛ける。

 

「モモイさん、ミドリさん。すまないけど、しばらく何とか持ちこたえてほしい。僕は──」

 

 虚空から本を呼び出し戦闘態勢を取る。

 本を呼び出した時の光で廊下が一瞬照らされ、薄闇の中にいたその人物の姿がハッキリと見えた。

 

「あー! リーダー!! 珍しいね、私とおんなじ所に来るの!」

「え”!? り、リーダーって……」

 

 モモイの引きつった声に応えるように両手に提げたSMGを繋ぐ鎖の金属がこすれる音が辺りに響く。

 小柄な体躯に、赤い髪。着崩したメイド服の上からスカジャンを羽織った目つきの鋭い生徒──美甘ネルが狂暴な笑みを浮かべながら飛鳥を正面から見据えていた。

 

「よォ、シャーレの先生。初めまして、でいいか?」

「C&Cの美甘ネルさん、だね?」

 

 飛鳥に名前を呼ばれたネルは愉快そうに笑う。

 

「自己紹介は必要ねえみたいだな? なら、何でアタシがここにいるかも分かってるだろ?」

「おおよそはね。でも驚いたよ。僕達の情報では、君はここにいないはずだったんだけど」

 

 飛鳥の言葉にネルはどこかムッとした表情になって鼻を鳴らした。

 

「気に入らねえが……まあ便利な移動手段が確保できたんでな。おいアスナ! そっちの二人はお前に任せるぞ!」

「はーい!! じゃあゲーム開発部のちびっこちゃん達! 始めよっか!」

 

 アスナからの言葉に、ミドリがおずおずとした様子で問いかける。

 

「え……っと。念のために聞くんですけど、何を……?」

 

 きっと、ダメ元での問いかけだったのであろうことは飛鳥にも理解できた。

 が、ミドリの願いは通じなかったらしい。 

 

「戦闘を! 私、戦うのが大好きなの!」

 

 うげ、とモモイの心底嫌そうな声が聞こえてきたが飛鳥はそちらにばかり意識を割いてはいられない。

 

「上からはアンタを足止めしろ、と言われてるんだが……そういうの、アタシの性分じゃねえんだよな」

「それは残念だ。時間があればゆっくりと話でもしてみたいところなのだけど、今日はちょっと僕も忙しくてね」

「そうか? ま、ダラダラやんのはアタシも趣味じゃねえし。そこんところは気が合うかもな?」

 

 予想外の展開。それもかなり最悪に近しい部類のイレギュラーだ。

 だが、さらにそこに追い打ちをかけるようなことがその時起きた。

 飛鳥とネルだけを隔離するように、透明度のある光の壁ともいえるものが展開されたのだ。

 

「!? これは、結界!?」

「ま、そういうことだ。アタシはあのチビ共に手は出せねえが、それはアンタも同じさ」

 

 飛鳥は事態が自分の想像以上に、それも加速度的に悪化していることを悟った。

 この世界に魔法はない。この結界を構築できて、かつこの状況で飛鳥の不利になるような使い方をする人物はたった一人だけだ。

 

「君達は……彼と、ケイオスと組んでいるのか!?」

 

 飛鳥の表情が一気に険しくなるのを見て、ネルは嬉しそうに口角を上げる。

 

「いい表情(かお)するじゃねえか。ま、月並みで悪りィんだけどよ──答えてほしけりゃ、アタシを倒すんだな」

 

 ネルが銃口を飛鳥に真っすぐ向けて構えを取った。

 対する飛鳥も本を開く。

 

「……さて、問答はこの辺りにしようぜ。C&Cコールサイン・ダブルオー。美甘ネル」

 

 ネルの名乗り口上に呼応するかのように、飛鳥の背後でモモイ達と話していたらしいアスナも高らかに名乗りを上げる。

 

「C&Cコールサイン・ゼロワン、アスナ!」

「行くぜっ!」「行くよっ!」

 

 結界で遮られながら背中を合わせるような形で飛鳥とモモイ達が構えを取った彼らに、C&Cの二人が襲い掛かった。

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