BlueArchive -Strive-   作:笹の船

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アビドス対策委員会

 フレデリックがカタカタヘルメット団を追い返してから数十分ほど経った。

 申し訳程度に机が置かれている程度でスカスカだったアビドス高校の空き教室は、メンバー全員分の弾薬や銃器の整備用具が所狭しと並べられた武器庫と化していた。

 飛鳥がクラフトチェンバーの調整を終え、生成した資源を転送してきたのだ。

 

「すごい……! これだけあれば当分は困りません!」

 

 思わず声を弾ませるアヤネに、他の生徒達も同じように明るい表情で頷く。

 

「これで不良が襲ってきても怖くない」

「うへ~、こんなに物資が揃ったのを見たのは何時振りかなあ」

「早速整備しましょうか~。またいつヘルメット団が来るかもわかりませんし~」

「そうね。また来るようなら何度来たって無駄ってことを思い知らせてやるわ!」

 

 そんなやり取りをしながら生徒達は銃の整備やマガジンへの弾込めを始める。

 その様子を肩越しに見ながら、フレデリックは耳元で展開したままだった通信法術に指をあててマイク機能をONにする。

 

「飛鳥、悪りぃが法力を使った。そう何度もやるつもりはねえが、確実に俺の情報は広まる」

 

 あまり生徒達の耳に入らないように声をひそめたフレデリックに、通話相手だった飛鳥も同じように声をひそめてきた。

 

『今回は僕の対応が遅れたのが原因だ。フレデリックに責任はないよ。……とはいえ、確かに今回は目撃者が多い』

「ああ。まして相手は不良集団だ。情報が広まるのは早いだろうな」

『カバーストーリーはどうするんだい。流石に正直に魔法です、と言う訳にもいかないけれど』

 

 飛鳥の言葉にフレデリックは廊下の壁に立てかけたジャンクヤード・ドッグをちらりと見る。

 

「あくまでそういう機能を持った武器という扱いにする。ジャンクヤードはシーケンサーだ。ジルポッド*1を用意すれば誰にだって俺の技(タイランレイヴ)が使えると言えなくもない。そういう意味じゃコイツだって立派な銃火器だ。いや、ロケットランチャーか?」

『その理屈は大分無理がないかい……?』

「行き過ぎた科学は魔法と大差ない。そういうことだ」

『説明がめんどくさいだけじゃないか……』

 

 呆れたようにため息を吐く飛鳥にフレデリックは鼻を鳴らした。

 

「どうせ俺達自体がキヴォトスの外部から来たおかしな連中なんだ。そんな奴らがちょっとおかしな武器を使うくらい大したことでもねえだろ」

『…………とにかくやってしまったことは仕方がない。ただ、これからも出来る限り君が矢面に立って法力を使うようなことはないようにね』

「あー、前向きに検討はしておく。じゃあな」

 

 そう言ってフレデリックが通信を切ると、耳元の術式も消える。

 とりあえず降りかかる火の粉は払った。だが、火元を潰さなければいたちごっこだ。

 やることはまだまだあるな、と考えながらフレデリックが教室の方へと振り返ると、扉から顔だけを覗かせてこちらをじっと見つめるアビドスの生徒達と目が合った。

 

「……何してる」

「ん。……敵情視察?」

「大胆な敵情視察もあったもんだな。レポート何枚分にまとめられそうなんだ?」

 

 呆れたように眼鏡のブリッジを指で押し上げるフレデリックに、アビドスの生徒達は困ったように笑った。

 

「な~んにも分かんないですね。一枚書くのも苦労しそうです~」

「ていうか、どこをどう見るとその鈍器……? がロケットランチャーになるのよ!?」

「バッテリーがあれば爆発するエネルギーをぶっ放せるんだ。同じだろ」

「なんなのよその食べられれば全部一緒みたいな雑な理屈は!?」

「あはは……でも、確かにフレデリック先生がどういう方なのかは気になります」

「あ、それは私も気になりますね~」

「強かった。一緒に戦ってほしいくらい」

 

 生徒達からの質問攻めにフレデリックは一瞬めんどくさそうな顔をしたが、直後に聞こえてきたホシノの声でその場の空気が変わった。

 

「はいはい。先生のことが気になるのは分かるけど、その前に目の前のこと考える方が先じゃない?」

 

 ピタリと生徒達の動きが止まる。

 決してそこまで圧の込められた声色ではない。それどころか脱力気味の声だ。

 けれど、そこには確かに後輩達をたしなめるような響きがあった。

 アビドスの生徒達がホシノにまとめ上げられているというのがよくわかる瞬間だった。

 

「そうだな。まずは詳しい事情を教えてもらおうか」

 

 フレデリックが壁に背を預けながら腕を組んでアビドスの生徒達を見やる。

 それぞれがアイコンタクトをして、アヤネが一歩前に踏み出す。

 

「そうですよね、ご説明いたします。……私達はアビドス対策委員会です」

 

 そこからアヤネによるアビドスという街と対策委員会について語られた。

 対策委員会は、異常気象により荒廃の一途を辿るアビドスを蘇らせるためにアビドス高等学校の有志が集った部活であること。

 しかし、荒廃に歯止めがかからずほとんどの生徒が転校か退学し、住人達も街を出て行ったせいで蘇らせるどころか守ることにも苦労しているということだった。

 

「こんな消耗戦、いつまで続けなくちゃいけないんでしょうか……ヘルメット団以外にも問題はたくさんあるのに」

 

 うつむいてそう呟くアヤネからは、先の見えない現実に対する不安がにじみ出ていた。

 他の生徒達もアヤネの言葉にうつむいたり、険しい表情を浮かべる。

 教室がどんよりとした雰囲気に包まれ出したところで、ホシノが気の抜けたような声で提案をした。

 

「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」

「えっ!? ホシノ先輩が!?」

「うそっ……!?」

 

 一年生二人のあまりにもあんまりなリアクションに、ホシノがほんの少しだけ頬を引きつらせながら苦笑いをする。

 

「いやぁ~その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。……おじさんだって、たまにはちゃんとやるよ?」

「それで? どんな計画を立てたんだ?」

 

 フレデリックがそう問えば、ホシノはほんの少しだけ目つきを鋭くした。

 

「ヘルメット団はね、私達に撃退されたら数日後に襲撃してくるんだよ。少なくともここんところはずっとそう」

「……続けろ」

「と、言うことはだ。撃退されてから態勢を立て直すのに数日かかる。つまり奴らは今一番消耗してる。でも私達はたった今先生から支援を受けて万全の状態だよね」

「まさか……」

 

 ホシノの意図が伝わったのかシロコが僅かに目を見開く。

 そんなシロコを見てホシノは指を鳴らして笑った。

 

「そう! 今度はこっちから奴らの前哨基地をぶっ叩くのさ!」

「良いと思います。ヘルメット団の前哨基地を無力化してしまえば当分の間は襲撃もなくなるでしょうしー」

「基地はここから30kmくらい。行くなら今から行っちゃおうか」

 

 そんなとんとん拍子で話を進める上級生達にアヤネが困ったようにフレデリックの方を見た。

 

「先輩達の言う通りだとは思いますが……先生、いかがですか?」

「ガス漏れした時ってのは元栓を止めるのが一番確実だ。良いんじゃねえのか」

 

 どうやらフレデリックとホシノは似たようなことを考えていたらしい。

 それなら次にやることは単純で分かりやすい。

 そう思って不敵に笑えば、それを見たホシノはややのんびりした動きで腕を上に突き出した。

 

「よっしゃ。先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」

「善は急げ、ってことだね」

「はい~それでは、しゅっぱーつ!」

 

 ノノミのふんわりした声と共にフレデリックとアビドスの生徒達は出発した。

 目指すはカタカタヘルメット団の前哨基地となっているアジトだ。

*1
ジールという法力エネルギー体を詰め込んだ電池のようなもの。ジール自体は可燃性の液体で燃料や電池と言ったエネルギーリソースとしての用途が一般的だが、専用のジルポッドを用意すればシーケンサーとセットで誰でも魔法が行使できる




本作を書くにあたってGGSTの用語集を何度も見てるんですが、
ギルティギアは魔法の行使には基本的にスコアとシーケンサーが必要という世界観のようです。
つまり、用いるエネルギーとそれによって引き起こされる結果が既存の常識(物理法則)に則っていないだけであって、やっていること自体は科学技術で開発された道具と何ら変わらないのだと思います。
法力を電気に、発生する現象を砲弾に置き換えればフレデリックがジャンクヤード・ドッグ(またはその内部に組み込まれた封炎剣)を使って魔法を行使するというのは電子制御された大砲の電源を入れて、目標の座標を入力してから発射コマンドを実行するのと同じことなのです。多分
故にフレデリックがジャンクヤードをロケットランチャーみたいなもんだ、と言い張るのもおかしいことじゃない。よし!

ギルティギア、マジでビックリするぐらい細かく世界観設定されているので用語集読むだけでも面白いです。
ゲームにどころかストーリーにだってかすりもしないような一般人の移動手段とか教育レベルとかそういうのまでキッチリ入ってるんです。
つくづくそういうの考える人っていうのは凄いなとただただ感服するばかりですね。
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