エタるよりはマシなのは確かです。でもそれじゃ面白くないと他の色んな二次創作を読んで痛感しました。
これより原作の流れを原作レイプにならないように思いっきり壊していこうと思っています。
持ってくれよ、俺の想像力!
金田メトは途方に暮れていた。
シャーレで面倒を見てもらう生活をする傍ら、ようやく他校への転入の目途が立った時メトはトリニティ総合学園への転入を希望したのだ。
カタカタヘルメット団での生活が長かったから自分でも半ば忘れかけていたが、そうなる前のメトは読書が好きな普通の少女だった。
そして、トリニティ総合学園にはすさまじい量の蔵書があると聞いている。それこそ、中央図書館になれてない生徒が入ると迷ってしまうなんて噂があるほどに。
もちろん、勉強は大変だった。それでも遅れてた分は必死に追いつこうと机にかじりついて、飛鳥先生やジャック先生……後たまにフレデリック先生に教えてもらいながらなんとか転入試験当日を迎えることが出来た。
模試では十分合格を狙える点数をとれていた。だから、やれることをしっかりやれば問題ない。
そう言い聞かせながらトリニティの門をくぐったのだ。
テストは滞りなく行われた。手ごたえもあった。
だから、これからの新しい生活を想像して期待に胸を膨らませていた。
なのに。
「金田メトさん。残念ですが、今回の試験は不合格となります」
「えっ……」
「ギリギリ合格点に届かなかったのです。ほんの1問分ですが。しかし、合格ラインに届かなかったのは事実。……またもしご縁があれば、その時にもう一度お会いできることを楽しみにしています」
そこから先のことはあまりメト自身の記憶にはない。
試験会場となった教室を何とか出て、それからお化けの様にフラフラとした足取りで校舎を出たような気がする。
どうしよう。皆に、先生達に──ウヅキちゃんになんて言おう。
体が重い。足を前に出すのも億劫に感じる。でも、ここにいるわけにもいかない。
とにかく、帰らなきゃ。分かっているのに、体が思うように動かない。
不意に視界がにじんだ。それが涙のせいだと分かるのに、それほど時間は必要なかった。
そして気づいてしまえば、溢れてくる涙を止めることなんて出来なくて。
けれど、出先で……トリニティの敷地の中で人目を気にせず声をあげて泣くわけにもいかないと思ってしまった。
だから、あふれる涙を何度も何度もずっと着てきた制服の袖で拭った。垂れてきそうになる鼻水を必死にすすった。頭が痛くなるまで。
そんな時だった。
「か、金田さん! すみません、金田メトさん!!」
背後から自分を追いかける誰かの声。
一体何だと、ひと際強く目元をごしごしと袖で拭い、鼻をすする。
そうして振り返ると、肩で息をしたトリニティの生徒が膝に手をついていた。
「も、申し訳ございません! こちらの連絡に不備があり……実は、ティーパーティーのホストであるナギサ様から言伝を預かってまいりました」
「……ティーパーティ、って……生徒会の?」
「はい。ナギサ様は『現在、シャーレのジャック・オー先生が顧問をしている補習授業部に参加の上、そちらで行われる特別学力試験にて合格すれば転入を認める』……とおっしゃっています」
もし、この時メトがもう少し冷静だったなら。
こんな都合よく垂らされたクモの糸には毒が塗り込まれているかもしれない、と警戒することが出来たのかもしれない。
「ほ、本当ですか?」
「はい。後は、貴女がナギサ様の提案に乗るかどうかです」
「やります、やらせてください!」
最も、警戒できたとしてそれを拒めるかどうかは……また別の話だ。
「……やってくれたわね、ナギサ」
夕日の射しこむ教室で補習授業部の生徒達に自己紹介をしているメトを見ながら、ジャック・オーは彼女たちに聞こえないような声で苦々しく呟いた。
いや、予想できたことだったかもしれない。
メトがトリニティへの転入を希望しているのは知っていた。そして、ナギサはエデン条約締結のための不安要素である裏切り者候補を一か所へまとめる為に補習授業部を立ち上げている。
そんな補習授業部が活動している時に来た、外部からの転入希望者。それが、ナギサの目にどう映るか。想定できなかったのは自分の落ち度だ。
ヒフミの頑張りのおかげで一丸になりつつあった補習授業部へ放り込まれた
メトに罪はない。それでも、余所者の登場に人一倍他者への警戒心が強いのであろうコハル辺りは明確に固くなっていた。
心なしか、ハナコがメトに向ける視線も鋭いものになっているように見える。
メトもまた、そんな二人の態度にやりにくそうにしていた。
一方、アズサやアビドスの一件を知っているヒフミはそれほどメトに対して腰が引けていなさそうだった。
むしろメトの経歴について軽く聞いたアズサはどうやら彼女を肯定的に受け入れることにしたようだ。
「辛い環境でも諦めずに最善を尽くそうとしたメトは、すごいと思う。尊敬する」
「ううん、私が頑張れたのは先生たちのおかげだよ。先生が私たちを助けてくれて、皆と本音で話し合う機会をくれたから……皆と離れ離れになってもやりたいことを頑張ろうって思えたんだ」
「そうか……メトは仲間に恵まれたんだな」
「そうだね。それは胸を張ってうん、って言えるよ」
夕日に照らされながら窓の外を眺めるメトの表情は、とても穏やかなものだった。
メトの顔を照らす夕日が校舎の影に隠れると同時に、彼女の表情はスッと引き締まる。
そうして補習授業部の生徒達の顔を見回した。
「だから、私を応援して送り出してくれた皆に胸を張って帰る為にも私は頑張りたい。いきなり余所から来たから、何だコイツってなってるかもしれない。私にできることは頑張るから……だから、お願い。私を、補習授業部に入れてください」
そう言ってメトは腰を折って頭を下げた。
それがきっと、彼女に出来る誠意の見せ方だったのだろう。
そしてそれは、補習授業部の生徒たちの心に届いたようだった。
「まあ、そこまでいうなら……」
「そうですね~。そんなに真っすぐな顔で言われちゃったら断れません。よろしくお願いしますね、金田さん」
「え、あ、はい! よろしくお願いします!」
ホッとしたような、それでもまだ緊張が抜けていないのか堅い動きでお辞儀をするメトにハナコがクスクスと笑う。
「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。分からないことがあれば先生かヒフミちゃんに聞いてくれれば教えて貰えますし」
「ええっ!? ハナコちゃんも教える側ですからね!? 今は調子悪いだけで、1年生の時はすごかったじゃないですか!」
ヒフミの言葉に、ハナコの表情が一瞬強張る。ヒフミもそれに気づいたらしく、あたふたと慌てるように手を振りながら早口で弁明の言葉を口にした。
「あっ、えっと、模擬試験を作るときにたまたま見つけちゃったんです……ハナコちゃんの1年生の時の答案を……」
「あ、ああ~……そうだったんですね」
「は、はい! ですから、ハナコちゃんについては今の状態になってしまった原因をしっかり把握したうえで、私と先生と一緒に解決策を探していきましょう!」
「…………」
「と、とりあえず金田さんも新しく入ってきましたからここで1回模擬試験……というほどではないですけど軽めのテストでもやりませんか? 金田さんがどのくらいの理解度かもしっておきたいですし……」
ちょっと微妙な空気になったのを何とか変えようと、ヒフミがそんなことを口走るとコハルが抗議してきた。
「ええ!? 今日のお昼にやったでしょ! 今日はもういいじゃん模試は!!」
「うーん、確かに昼の模試の復習も決して十分とは言えない今やったところで、効果は薄い気がする」
「あ、あうう……せ、先生~」
コハルに続き、アズサからの抗議にどうしようと助けを求めるようにこちらへ視線を向けてきたヒフミへジャック・オーは苦笑いしながら頷いた。
「それなら、今日の昼にやった模試をメトだけ別の教室で受けてもらうわ。結果は後で皆にも共有する。メトもそれでいい?」
「は、はい。ちょっとまだ状況が呑み込めてませんけど、まあとりあえずテスト受ければいいんですね? 分かりました」
「それじゃあちょっと私たち席を外すから、それまでみんな自習しててもらえる? ヒフミ、ハナコ。コハルとアズサをよろしくね」
「はい。分かりました」
指示を出し、メトに小さく手招きをして二人で教室を出る。
自分の後を追いかけて教室を出てきたメトが、後ろ手で教室の扉を閉めるとほぼ同時にジャック・オーに話しかけてきた。
「あの、ジャック先生。すみません、こっちでもお世話になっちゃうみたいで……」
申し訳なさそうに肩を縮こめるメトに、ジャック・オーは優しく頭を撫でた。
「いいのよ。というより、今回の件はもしかしたら私のせいでこんなことになったかもしれないから、謝るのは私の方かも」
「え……? それってどういう……?」
話してあげたいところだが、今のメトにそれを話すわけにはいかない。それがジャック・オーの判断だった。
ただでさえ編入試験で不合格になりショックを受けているメトに、ナギサとのこれまでのいきさつまで語るのはかなり酷だろう。
もしかしたら本当に不合格だったのかもしれないが、正直な話ジャック・オーとしてはナギサが何らかの工作をしたのではないかと思っている。
生徒を疑うのはあまり良くない。分かってはいるが状況が状況だ。
ともかく、メトの実力は自分も知っておきたい。その結果次第で、今後どう立ち回るかの方針も多少変わるだろう。
「先生……?」
メトの声にハッとする。どうやら、少々考えこみすぎたようだ。
「なんでもないわ。ともかく、貴女の実力は私も知っておきたいからテストしましょう。大丈夫、どんな結果でも絶対に合格できるようにはするから肩の力抜いて受けて」
「は、はい!」
そうして、もう一度メトの頭を撫でる。
くすぐったそうに目を細めるメトに微笑みながら、ジャック・オーはすぐ傍の空き教室へと入った。
面倒を見る生徒が一人増えるだけの話だ。この位の変数なんて、イレギュラーのうちにも入らない。
ただ、生徒たちのメンタルケアだけはしっかりしないとな、と教卓に向かいながらジャック・オーは表情を引き締めるのだった。