やっぱ面白れぇよGGST……
マリーが帰った後、雑談もそこそこにヒフミたちは今日のテスト勉強を始めた。
驚いたのはメトが思った以上に教えるのが上手いことだ。
ハナコも十分に教えるのが上手かったけれど、飲み込みやすさで言えばメトの方が少し上だったように思う。
なんというか、頑張って勉強してきた人だからこその説明でヒフミには分かりやすかった。
ただ、コハルにとってはそうでもなかったらしい。メトが聞かれたことについて分かりやすく答えていたけれど、どうにも手ごたえがなかったように思える。
そこに助け舟を出したのはハナコだった。すると、コハルはすんなりとその説明を飲み込むことが出来たようだった。
まあ、こればっかりは相性とかもあるんだろう。万人に分かりやすい説明というのはきっと難しいのだ。
ヒフミがモモフレンズの魅力を説明しても、アズサくらいしか同感してくれなかった時の様に。
でも気になったのはそこじゃない。ハナコの説明する姿を見て、メトが何か……そう。ハナコに違和感を覚えた様な顔をしたのだ。
……いや、誤魔化さないで正直になろう。あの顔は、ハナコを疑っているように見えた。
そしてもっとマズいのは、ハナコ自身がそれに気づいたような素振りをしていたことだ。
「あら、金田さん? そんなに熱心に私の顔を見て、どうかしましたか?」
「あっ…………ううん。なんでもない。ちょっとボーっとしてて」
「うふふ。も・し・か・し・て、私のことがそんなに気になっているんですか? こんな白昼堂々と、とても情熱的で困ってしまいます♡」
「なっ!? ちょっと! 今は勉強中でしょ!? エッチなのはダメ! 死刑!!」
コハルには失礼だが、今だけはコハルの過敏な反応にヒフミは内心でホッと胸をなでおろしていた。
だって、メトもハナコも笑顔だったけれど……二人とも、目が笑っていなかったのだ。
もしあのままだったら、喧嘩とかしていたかもしれない。いや、それは流石にヒフミが心配しすぎているだけかもしれないけれど。
何にしても、このままじゃだめだ。テストの合格には、みんなが合格点をとる必要がある。
その為にはみんなで力を合わせなくちゃいけない。仲間割れなんてしている場合じゃないのだ。
それに、ヒフミのやりたいこととしてもこの状況は望ましくない。
勘違いでも何でも、楽しい思い出が欲しいように見えているハナコに少しでもそんな思い出を残してもらえるようにするには喧嘩なんてしてほしくないのだ。
物語はいつだってハッピーエンドであってほしい。だから、その為に今自分が出来ることを。やりたいことをやる。
例えそれがいばらの道だったとしてもだ。そう、ペロロ様のゲリラ公演の為なら学校のテストをすっぽかしてでも行くように。……まあ、あれは事故だと今でも思っているけれど。
そう考えたら、なんだかちょっと気持ちが軽くなった気がする。何だ、いつもと大して変わらないじゃないか。
「ヒフミ、どうかしたのか?」
考えていたことが顔にでも出ていたのだろうか。少しだけ心配そうな表情でこちらを覗き込むアズサに、ヒフミは笑顔を浮かべながら首を振る。
「いえ、大丈夫です。ちょっと、頑張ろうって気持ちになっただけですから!」
「……? そうか。私も同じ気持ちだ。またあの可愛いのが欲しいからな」
「はい! まだまだいっぱいありますし、足りなければお迎えしてきますから頑張りましょうねアズサちゃん!」
「合宿所を抜け出すのはナシよ、ヒフミ」
アズサが喜んでくれるのなら合宿所を抜け出してでも、と意気込もうと思ったところにジャック・オー先生が苦笑いをしながら釘を刺してきて思わず言葉に詰まる。
いや、ここは完全に先生が正しいのだから仕方がないのだけれど。
「どうしても欲しければ私に言って。私がなんとか手に入れて──」
「お迎えですよ先生! ペロロ様たちは私たちのところに来てくれるんですから、ちゃんとお迎えしてあげないと」
「えっ、あー……そうね! 迎えに行ってあげないとね」
「さすがです先生! 分かっていただけて嬉しいです!」
「クスクス。任せて。さあ、残り時間も頑張りましょう。私も問題集頑張って作るわ。でも、分からないところとかがあれば声かけてね」
「問題ない。先生の力を借りずとも、私たちで切り抜けて見せる」
先生のフォローに堂々とした態度でアズサが首を横に振るのを見て、先生はとても穏やかに微笑んだ。
「その意気よ。でも、無理はしないこと。OK?」
「ああ。でも、ヒフミもハナコもコハルもメトもいる。きっと大丈夫だ」
「アズサちゃん……」
アズサの言葉に、けれどハナコとメトが少しだけお互いを見て気まずそうな顔をした。それも一瞬のことだったけど。
うん、やっぱりあの二人が仲良くなれるようにここは自分が一肌脱ぐべきだろう。
幸い、勉強に関しては二人がいればなんとかなりそうだし。
「あの、ジャック・オー先生! 私、やりたいことがあるんです!」
声を上げたヒフミに、ジャック・オーが小さく首をかしげる。
「みなさんにも聞いてほしいんです。……パーティーをしませんか!?」
「パーティー……? なんのだ?」
アズサからの問いかけにヒフミは一瞬目が泳いでしまうのを自覚した。そう言えば、口実を考えてなかった。
まさか馬鹿正直にトリニティの裏切り者かもしれないハナコの為に楽しい思い出を残してあげたい……なんて言う訳にもいかない。
「え……っと。そう、金田さんの歓迎会兼、決起集会です! 今日、ティーパーティーの方からテストについてその……嬉しくないニュースが届いたと思います」
ヒフミのニュースという言葉に他の皆の表情が少し曇る。ヒフミにとっても、嬉しくないニュースだった。
でも、だからって胃が痛くなるような雰囲気で机にかじりつくなんてヒフミはごめんだ。
「でも、だからこそ私はパーティーをやりたいです! そんな余裕なんてないことだって分かってるつもりです。……けど、ジャック・オー先生は言ってくれました。みんなで満点合格しようって」
無茶な目標だ。ヒフミだってそう思う。現実的に考えたって不可能だ。
けれど、ヒフミはそれをみんなでやり遂げたいと思った。
だってそれが出来たら、大手を振ってみんなでトリニティにいられるのだ。誰にも文句なんて言わせず、これからみんなで楽しい毎日が過ごせる。
もしかしたらその後、ナギサ様とだってこれまでみたいにまた仲良くできるかもしれない。
それは、ヒフミが大好きなハッピーエンドだ。だったら、それを諦めるなんて出来っこない。
「私は、みんなと一緒に合格したいです! その為に、まずはもっと仲良くなれたらって……私は今思ってます」
「ヒフミちゃん……」
名前を呼んでくれたのは誰だろう。ハナコか、メトか。
どっちでも良かった。伝えたいことはまだあるのだから。
「それにハナコちゃんじゃないですけど、皆でこんな一か所に集まって合宿して……それで勉強以外の思い出がないなんてもったいないと思います! 私たち、花の女子高生なんですから!」
「ヒフミちゃん……?」
今のはハナコだった。ちょっと申し訳ないとは思ったけど許してほしい。とびっきりの思い出作りには協力するから。
「うん、私は賛成だ。いいと思う。無茶かもしれないけど、でも私もそのパーティーはやってみたい」
「はい! やりましょうアズサちゃん!」
「ちょっと待ってよ!? そんな暇なんてないじゃん!」
待ったをかけたのはコハルだった。どこか怒ったような、泣きそうな顔にも見える。
「ただでさえ大変だったのに、テスト範囲も広くなって合格点だって上がってる! なのにパーティーなんて……それでテストに落ちたらどうするの!?」
教室中に響くような声でそう言いながらヒフミを睨むコハルは、けれど不安に体を震わせているようにも見えた。
でも、その目から逃げるわけにはいかない。彼女の言っていることは正しいのだから。メトが来た日、彼女にも全く同じことを言われたのを思い出す。
「はい。コハルちゃんの言う通りだと思います。私たちには時間がありません。……だから、これは私のワガママです。それでも私は、この場にいるみんなでパーティーがしたいです!」
「なら、パーティーをやっても大丈夫だって示してもらわないとね」
後ろから割り込んできたのはジャック・オー先生だった。
「先生……?」
「私は賛成よ、パーティーをやるの。でもね、コハルが言うことにも一理あるわ。それに、皆は補習授業部。あくまで足りていない学力を補うためにここに集められているわ。だから、一番大切なのはテストに合格することよ。もしやるのなら、明後日の模試でみんなが90点以上取るのを条件にするわ」
「明後日までに90点!?」
ジャック・オーの条件にヒフミは思わず声を上げてしまった。だってそれは無理難題と言って良いくらい厳しい条件だったから。
「やる以上は厳しくいくわ。テストは確かに3回ある。でも、パーティーをやるから2回目は捨てるなんて半端なことをさせるつもりはないわ。そして、次のテストまであと4日もない。そうなると、届かなかった時のリカバリー期間も考えればこれがギリギリのスケジュールよ」
先生からの言葉にヒフミは思わずうつむいてしまった。分かっていたつもりだった。それでも、こうして改めて先生からも言葉にされると胸が苦しい。
やっぱり、ワガママで独りよがりな願いだっただろうか。そんな弱音が湧いてきそうになる。
「逆を言えば、パーティーをやっても大丈夫だって結果を出せればいいってことですよね」
そんなジャック・オーに言い返したのは、メトだった。
メトの言葉に、ヒフミは思わず顔を上げて彼女の方を見る。メトには反対されると思っていたのに。
けれど、そんなヒフミに対してメトは軽くウィンクをしてくれた。
「ええ、メトの言う通りよ。さっきも言ったけど、私はパーティーに賛成だもの。ちゃんと結果が出せるなら、私もやりたいわ。何やる? ケーキとか買ってきた方がいいかしら。あ、そうだ。マリーとアズサが助けたって子も呼ぶ? 材料いっぱい買いこまないと。私、これでも料理にはそこそこ自信があるのよ?」
「せ、先生?」
思った以上にノリノリな先生の態度に、ヒフミは困惑を隠せなかった。無茶を言ってる自覚があったから、やんわりと止めるように諭されることすら考えていたのに。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、先生はそっと肩に手を置きながらあの穏やかな笑顔を浮かべる。
「約束したでしょう? 貴方がやりたいと思ったことは全力でフォローするって」
「はい……でも……」
「それなら、マリーちゃんへの連絡は私が取りますね」
横から差し込まれたのは、ハナコのそんな言葉だった。
「ハナコちゃん……」
「正直……ヒフミちゃんが何を考えているかはちょっと分かりません。でも、私も……やってみたいです。パーティー」
「ハナコまで!? アンタたち、ホントに状況分かってるわけ!?」
なおも食い下がって来るコハルの手をハナコが両手でそっと包んだ。
「ひゃっ……!? ちょ、ハナコ何して──」
「コハルちゃん。騙されたと思って、一緒に頑張りませんか? お願いします」
ハナコにしては珍しく、傍から見ても分かるほどに真摯なお願いだった。
それはコハルにも伝わったのだろう。少しの間目を泳がせていたけれど、やがて大きくため息を吐いてからそっぽを向いた。
「そんなに言うなら……まあ、付き合ってやらないこともないけど」
「はい♡ ありがとうございますコハルちゃん♪」
「そうと決まればまずは勉強の続きからね。細かいことは、夜に決めましょう?」
ジャック・オーの音頭にヒフミも、みんなも小さく頷いて席に戻りペンをとる。
やりたいことは伝えたし、みんなもOKを出してくれた。だったら、それを実現する為にも自分が勉強でつまづくわけにはいかない。
かならず望む結果を手にしよう。そして、もっといっぱいみんなで思い出を作ろう。
そんな決意と共に、ヒフミは目の前の問題集へと意識を集中させた。
話が前に進まぬぇ。しかもこの作者、またオリキャラちゃん生やす気満々である
エデン2章の終盤、やりたいことあるのでそこまで頑張りたいです。
早く書きてェー