午前中いっぱいをヘルメット団から回収した物品の解析に費やしていたフレデリックだったが、分かったことはさほど多くなかった。
武器は洗浄済みのブラックマーケット産で、スマホからは数日前にいつもの奴が物資補給と資金の調達に訪れるから準備をしておけという旨の連絡と特に役に立ちそうもないやりとりだけがモモトークに残されているだけだった。
ある程度予想をしていたとはいえ、やはり末端にまでは情報が回らぬよう手を回されていたらしい。
徒労、とまでは行かないものの収穫の少なさにフレデリックが小さくため息を吐いた時、ちょうど部室の扉が開かれた。
「お、先生~。まだいたんだね」
声のした方を向けば、後ろにノノミとアヤネ、シロコを引き連れたホシノがゆらゆらと小さく手を振っていた。
「お仕事お疲れ様。今から皆でご飯食べに行こうかと思うんだけど、どう?」
ホシノの言葉に腕時計へと目をやれば、確かに時刻は正午を過ぎた辺りだった。
腹もいい感じに空いてきていたし、断る理由も特にない。
「ま、腹ごしらえは大事だからな」
「うんうん! じゃあ早速しゅっぱーつ!」
そうして何かを楽しみにしているかのようなホシノに連れてこられたのは【紫関ラーメン】という看板のかかった店だった。
対策委員会一行が
「いらっしゃいませ! 紫関ラーメンで……」
途中まで元気のよかった挨拶が、フレデリックより先に入った生徒達を見てみるみるしぼんでいく。
「あの~☆五人なんですけど~!」
しぼんだ声の代わりか、ノノミが楽しそうに店の制服に身を包んだセリカに手を上げて人数を告げた。
それに続くようにアヤネ、シロコがセリカにねぎらいの言葉をかける。
一方のセリカは、どうして自分のバイト先がバレたのか混乱している様子だった。
「うへ~、やっぱここだと思った」
明らかにこうなることを見越していたのであろうホシノの言葉に、フレデリックは無言で肩をすくめる。
「げ、先生まで……!」
「おい、客に向かって随分な挨拶だな……」
露骨に顔を引きつらせるセリカにフレデリックの眉間に深い皺が刻まれる。
「セリカちゃん。流石にお客さん相手に失礼だよ。ほら、おしゃべりもそこそこに注文受けてくれな」
「うう……はい大将。で、ではこちらの広いお席へどうぞ……」
何とも気まずそうに唇をキュッと結んで先導するセリカを見て、アヤネを除く委員会の生徒達は楽しそうにその後をついて行った。
生徒達が順番に奥から詰めて座っていき、フレデリックの番がくる。
六人掛けの席で、座っているのは四人の生徒。
フレデリックのいる通路側に座っていたノノミが自分の隣の空いているスペースを手でポンポンと叩いた。
「はい、先生はこちらへ! 私の隣、空いてます!」
そんなノノミになぜか対抗しようとしたのか、ノノミの正面に座ったシロコが同じように空いているスペースを手でポンポンと叩く。
「……ん、私の隣も空いてる」
正直どっちに座っても面倒なことが起きそうな予感があった。主にセリカが喚き散らしそうな予感である。
故に、フレデリックはその直感に従うことにした。
「めんどくせえ、俺はカウンター席で――」
「すいませーん! 一人なんですけどー!」
言い切る前に店内に響いた若い女性の声。
その声はとても聞き馴染みのある声だった。けれど、ここで聞こえるはずのない声。
思わず動きが止まり、そちらへ視線が向かう。
腰よりも下まで伸ばした深紅の髪が特徴的なパンツスタイルのスーツに身を包んだ美女がそこに居た。
それが誰かはフレデリックにはすぐわかった。
「あ、フレデリック! 奇遇じゃない!」
「ジャック・オー、お前何でこんな所に居やがる」
キヴォトスでもめったに見かけない超が付くほどの美人と顔見知り、ということに生徒達の視線がフレデリックとジャック・オーの間を行き来する。
そんな生徒達の視線に気づいたジャック・オーが軽くウィンクをしてからフレデリックの前まで軽やかな足取りで近づいてきた。
「やっぱり貴方が帰ってくるまで待つの我慢できないから、様子見ついでにアビドスってどんなところなのかなーって観光しに来たのよ。まさかたまたま入ったお店で一緒になるとは思ってなかったけどね」
「飛鳥はどうした? アイツ一人で大丈夫なのか?」
「飛鳥君なら大丈夫。むしろ、気分転換に行ってきたらどうかって送り出されたわ」
「あ、あの……お客様は先生……のお知合いですか?」
雑談をする二人の傍に寄ってきたセリカがおずおずとジャック・オーに問いかけた。
「あ、ごめんなさいね。彼、私の旦那さんなの。……この子達がアビドスの生徒? せっかくだから一緒に食べましょうか! ちょっと失礼!」
言ってジャック・オーはノノミの隣に当然のように座ってしまった。
一連の流れにため息を吐きながら、フレデリックもジャック・オーの正面に座る。
「あ、フレデリックメニュー取って」
「おい、少しは遠慮しろ。生徒達の前だぞ」
フレデリックが眼鏡のブリッジを指で押し上げながら言って、そこで初めてジャック・オーは固まってしまっている委員会の生徒達に気が付いた。
「ああ、自己紹介が遅れたわね。私はジャック・オー=バルサラ。私もシャーレの先生やってるわ。よろしくね!」
そう明るく自己紹介をして、ジャック・オーは悪戯っぽく笑いながらウィンクを決めた。
最近の悩みはフレデリックや飛鳥のスペックをフルに使ってしまうと、原作のアビドス編で張られた便利屋や風紀委員、ヒフミとの繋がりを造るフラグを全部へし折って最短でカイザーぶっ潰しルートに行きかねないと気づいたことです。
原作の先生は正直アビドス編に置いてヒナにカイザーの駐屯地を教えてもらうまでは戦闘指揮以外マジでただのお飾りな感じするレベルで存在感がないのですが、フレデリックや飛鳥がいてそんなことにはまあならないよなと。
かといって彼らが爆速で真相にたどり着いてしまうと、アビドス編で立つはずだったフラグがまあまあへし折れるんですよね。
しかもこのフラグ、ほぼ全てが建てないとエデン条約偏で割と詰むレベルの重要フラグ。
マジでどうしよう