BlueArchive -Strive-   作:笹の船

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書きたいことを書いていると、全く話が前に進みません!!
でも書いてて楽しいのでこのままいきます。


紫関ラーメンでのひと時

 

「お、お待たせしました、柴崎ラーメンです」

「わあ~! 美味しそうじゃない!」

 

 運ばれてきたラーメンを前にジャック・オーが声を弾ませる。

 早速と言わんばかりにラーメンを食べようとしたところで、彼女は動きを止めた。

 

「……? ジャック先生、どうしたんですか?」

 

 動きを止めてしまったジャック・オーを見て隣に座ったノノミが不思議そうに首を傾げる。

 それに対し、ジャック・オーはどこか気まずそうに目をそらした。

 

「あー、えっとね……その……」

「おい、セリカ。フォークを頼む」

「えっ? あ、ハイただいまお持ちします!」

「ちょっとフレデリック!」

 

 フォークの注文をしたフレデリックに抗議するようにジャック・オーが睨みつけるが、彼はこれっぽっちも気にせずに器用に箸を使ってラーメンを口に運ぶ。

 

「あれ、ジャック先生はお箸使えないんだ」

 

 ホシノの問いかけにジャック・オーは自分に言い聞かせるように答える。

 

「わ、私は箸を使う文化の無い所から来たから……」

「練習を始めたのも最近だな。ま、これから使う機会が増えるんだ。練習すればいいだろ」

「フレデリック!! そういうことは言わなくていいの!」

「フレデリック先生はお箸使えるんだね?」

 

 口の中のものを飲み込み、紙ナプキンで口元を綺麗にしたシロコがそう問いかければフレデリックは小さく肩をすくめた。

 

「仕事柄世界の旅したことがあったからな」

「世界を旅した、ですか……どんなお仕事されてたんですか?」

「あ、知りたい?」

「おい、ジャック・オー」

 

 アヤネが興味を滲ませると、ジャック・オーが悪戯っぽく笑いながら少しだけ身を乗り出す。

 それを遮るようにフレデリックがジャック・オーの名前を呼ぶものの、彼女はチラリとそちらを見た後に悪戯っぽく笑ってそのまま話を続けた。

 

「彼、賞金稼ぎだったのよ。私と出会ってからも結構な数の賞金首をやっつけてるのよ?」

「おい、まだ飯の――」

「賞金稼ぎ……!」

 

 飯の最中になんて血生臭い話をするつもりだ、とフレデリックがジャック・オーを咎めるよりも早くシロコの目が途端にキラキラと輝き始めた。

 

「ね、フレデリック先生は賞金首とか捕まえる時ってどういう風に動いてるの?」

「お、おい……なんだ急に」

「お願い。一人でそう言うことする時の動き方の参考にしたい」

 

 ズイっと顔を近づけてくるシロコの圧に思わずフレデリックがのけぞる。

 誰か説明をしろと言う念を込めながら辺りを見回せば、苦笑いをしているアヤネと目が合った。

 フレデリックの念が通じたのか、アヤネが箸をおいて姿勢を正して説明を始めてくれた。

 

「私達、借金返済のための資金は指名手配犯の捕縛、苦情の解決、ボランティアと言った手段で得ているんです。シロコ先輩は荒事が得意ですから、よく指名手配犯を捕まえに行ってくれてて」

「悪さをする奴らには事欠かないから。でも、一人での立ち回りはやっぱり難しい」

「そもそもそんな仕事を一人で受けるな」

「それは……でも、毎回全員で出撃できるわけじゃない。だから先生、是非とも教えて欲しい」

 

 そう言ってフレデリックを見上げるシロコの目は真剣そのものだった。

 しかし、そんな視線にさらされたフレデリックは困ったように目をそらす。

 その様子を見たジャック・オーがクスクスと笑って、フレデリックの代わりに口を開いた。

 

「シロコちゃん……だっけ? 残念だけど、彼のやり方はあんまり参考にならないと思うわ」

「どうして……?」

「彼、作戦とかそういうの嫌いだから。正面から何もかも無理やり突破してばっかりだったのよ?」

 

 ジャック・オーの言葉にその場にいた生徒達がああ、と声を上げる。

 誰も口にはしなかったが、全員がジャンクヤード・ドッグから放たれた爆炎でヘルメット団を吹き飛ばしたあの瞬間を思い浮かべているのは明らかだった。

 

「先生、細かいことめんどくさがりそうだもんね。気持ちは分かるよー」

「ワイルドで良いと思います☆」

「アハハ……なんというか、凄いですね……」

「チッ……」

 

 誤魔化すように舌打ちをして、フレデリックは丼に残ったラーメンを口に運ぶ。

 

「貴方、都合悪くなるとすぐそうやって違うことして誤魔化すわよね」

「喋ってねえでお前も早く食え。麺が伸びるぞ」

「おっと! それもそうね。じゃ、いただきまーす」

 

 生徒達と話している間にセリカが届けてくれていたフォークを手に取り、パスタでそうするようにレンゲを受け皿の様にしながら麺をフォークに巻き付けていく。

 そして一口で食べられる状態にしてからレンゲを僅かに沈ませて麺をスープに浸し、汁が飛ばないようにサッと口の中へ運んだ。

 

「……うん! 美味しいわね!」

 

 そうしてラーメンの味に舌鼓を打つジャック・オーの姿に、生徒達……いや、店内の他の客も目を奪われていた。

 顔の前に垂れそうになる髪を耳にかけながら、フォークに麺を巻き付けて口に運ぶ。ただそれだけの動作をしているはずなのに、妙に色気があるのだ。

 サラサラの赤い髪に、瑞々しい唇。熱いラーメンを食べる時に漏れる吐息。

 キヴォトスには見目麗しい少女達が大勢いる。だが、こんなにも色気にあふれた女性はいただろうか。

 店内の誰もがそんな風に考えだした頃、突然コップが机に置かれる硬い音が響き渡った。

 フレデリックだった。別にコップを机に叩きつけたわけではない。ほんの少しだけ勢いをつけて置いた。それだけだ。

 けれど、その音はジャック・オーに目を奪われていた生徒達を含む他の客を我に返らせるには十分な圧を秘めていた。

 それを分かっているのかいないのか、静まり返った店内でフレデリックは空になった自分とジャック・オーのコップに水を注ぐ。

 

「あら、ありがとう。助かるわ」

「おかわりはいるか?」

「んー、行けなくもないけど太っちゃいそうなのよね」

「どうせ仕事で消費するだろ」

「貴方と違って私は平和に仕事をしてるのよ? そんなにしょっちゅう暴れてるわけじゃないわ」

「おい待て。俺が好き好んで暴れまわってるみたいな言い方はよせ」

 

 フレデリックの言葉に対策委員会の生徒達が揃って首を傾げた。

 元賞金稼ぎで、いつも正面から強引に解決していたという話を聞いた後なのだ。

 流石に素直に彼の言葉を信じられるかと言ったらそんなことはない。

 

「……なんだお前達。言いたいことがあるなら言っていいんだぞ」

 

 そんな生徒達の視線に気づいたフレデリックが彼女達を軽く睨みつければ、皆揃って首をぶんぶんと横に振った。

 

「ちょっとフレデリック。パワハラは良くないわよ」

「俺は言いたいことがあれば言え、と言っただけだ。発言の機会も与えられない環境は不健全だとは思わないか?」

「口を開いた瞬間有罪判決を下すなら、どっちにしても不健全じゃない?」

「陪審員席が空の裁判にどれ程の価値があるんだ。そんなインチキ裁判を始めた覚えはねえな」

 

 フレデリックとジャック・オーのやり取りを目の当たりにして、ホシノが腹のあたりをさする。

 

「うへー……ジャック先生がフレデリック先生の奥さんってのはホントなんだねぇ。おじさんもうお腹いっぱいだあ」

「お二人ともとっても仲がよろしいんですね~」

「仲が良いのは、とってもいいこと」

……いいなあ

 

 ニコニコと笑うノノミに、穏やかに微笑むシロコ、頬を少しだけ赤く染めて憧れるように二人を眺めるアヤネ。

 フロアスタッフとして動き回るセリカは、なんとも言えない微妙そうな表情でテーブル席の皆を横目で見ていた。

 

 

 その後、フレデリックが全員分のお代を払って紫関ラーメンを後にした。

 セリカが皆を追い払うように叫んでいたのを背に受けながら、委員会の生徒達と共にフレデリックとジャック・オーはアビドス高校への帰路に就く。

 ラーメンがおいしかった、また行こうなどと和やかに会話する生徒達の背を見ながら、フレデリックが声を低くしてジャック・オーを声をかける。

 

「ジャック・オー。今日はこの後どうする?」

「私? そうねー、ちょっとアビドス高校にお邪魔してからシャーレに帰るつもりよ」

 

 考えるように人差し指を頬に当ててから、ジャック・オーがそう答えるとフレデリックは懐から一つの鍵を取り出した。

 

「昨日、ノノミに手伝ってもらって借りたマンションの鍵だ。悪いが帰り際にお前と飛鳥の分の合鍵作ってくれ。鍵屋は紫関ラーメンの近所にあったはずだ。その後は部屋でくつろぐなり、ノノミの部屋のポストに鍵を入れてシャーレに帰っていい。アイツには俺から伝えておく」

「それって……」

 

 からかう様に笑みを浮かべてジャック・オーが見上げれば、そこには至って真面目な表情をしたフレデリックがいた。

 

「……それは勘?」

「まあな。何事もなけりゃそれでいい」

「非論理的だけど……まあ、そういうことなら分かったわ」

「悪いな」

「ふふ。案外先生が板についてるみたいで安心したわ」

「せめて科学の担任をしたいところなんだがな。今のところマナーブックが手放せなくて困ってる」

「いいじゃない。教えがいがありそうで」

「ったく、他人事みたいに言いやがって」

 

 そう言いながらも、先を行く生徒達を見るフレデリックの目はわずかに穏やかなものだった。

 

「シン達も元気にしてるといいが」

「あの子のことだもの。きっと大丈夫よ」

「ふっ……そうだな。次に会った時は九九をマスターしてるか試してやるか」

 

 今は遠く離れた家族同然の少年に思いをはせながら、フレデリック達はゆっくりと並んでアビドス高校への道を歩いて行った。

 

 

 




ジャック・オーは箸は使えないと思いました。
彼女が現世に降り立った時からキヴォトスに来るまでの間、恐らく欧米圏からは出ていないと思われるためです。
知識として箸を使う文化がアジア圏にあることも知っているでしょうし、また和食や中華料理だって食べたことはあると思います。
ですが、和食も中華も箸がないと食べられないものではありません。
ならば、スプーンやフォークで代用して食べている方が自然だと思いました。
アジア圏やジャパニーズコロニー、中華街などに住んでたり頻繁に訪れるのならまだしも、そうでもない限りは積極的に箸を使う必要はないでしょう。だから使えないことは別段不思議なことではないと思いました。
あとその方がちょっと可愛いかなって。
一方、フレデリックはソル時代にギアの駆逐をしながら世界中を旅してたっぽいのでアジア圏に立ち寄ったこともあるでしょうし、中華街を通りがかることも少なくなかったんじゃないかなと思います。
ていうか100年以上生きてたら覚えるタイミングもあったでしょう。
GGST本編後はフレデリックの方が家事が出来て、ジャック・オーは興味のあることから少しずつ教わっているということなので、フレデリックから端の使い方を少しずつ教わり始めたということにしました。
ガチムチのぶっきらぼうなイケメンが線の細い美女に箸の使い方を教えるっていう絵面もなかなか面白そうですしね。

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