BlueArchive -Strive-   作:笹の船

28 / 148
割と難産だったので短め


アビドスを狙う者たち

「ふむ……確かに全て破壊されているようだな。流石は便利屋、噂にたがわぬ実力だ。迅速な対応に感謝する。報酬は指定された口座に振り込んでおこう」

 

 キヴォトスのとあるビルの一室。大柄な男――男というには顔や手は完全に機械のそれであるが――がゆっくりと受話器を戻す。

 が、その姿はどこか腑に落ちないものであった。

 

「おや、どうか致しましたか? 理事」

 

 そんな彼に声をかけたのはパリッと(のり)のきいたスーツに身を包んだ異形の男だった。

 かろうじて人の形をしているがその頭部は真っ黒に墨で塗りつぶされたような色をしており、右目にあたる部分にぽっかりと空いた穴、それと口元の笑っているようにも見える形のヒビからほのかに青白い光が漏れている。

 そんな存在に比べれば、理事と呼ばれた機械人間の男の方がはるかに”人間”と呼べるだろう。

 だが、その異形を前にして理事は特に怯みも驚きもしなかった。

 

「貴様が紹介したあの便利屋、確かに良い仕事をした。……だが、我々があのチンピラに施した戦車の最終位置情報はアビドス高校の前だった」

「ふむ。それは確かに妙ですね。確か……あの有象無象が貴方を裏切ったから便利屋を差し向けたんでしたね?」

 

 異形の言葉に理事は頷く。

 

「そうだ。私が奴らに施したのは我がカイザーPMCの主力戦車だ。そこらの学生が持つオモチャとは比べ物にならん。それにいくらチンピラとはいえ30人少々はいたはずだ。そこにアビドスの連中が加われば、流石の便利屋でも苦戦をすると思ったのだが……」

「依頼をして一日での完遂。……便利屋68と名乗る生徒達の戦力とアビドスの戦力は同等です。仮にあの有象無象がアビドスについていた場合、ここまでスムーズに事が運ぶのは少々違和感がありますね?」

 

 異形の言葉に理事は考え込むように顎に手を当てた。

 その時、部屋の電話が急に鳴り響いた。

 考え込んでいた理事は、流れるような動きで受話器を取り耳に当てる。

 

「私だ」

『理事、ご報告です。先日装備を譲渡したカタカタヘルメット団がアビドスを離れました』 

 

 電話から告げられたどうでもよい情報に、理事は思わずため息を吐く。

 

「だから何だというのかね? そんなくだらない報告の為に私の貴重な時間を奪ったのか?」

『も、申し訳ありません! し、しかしひとつ気になるところがありまして』

「チンピラがどこへ行こうとどうでも良いではないか」

 

 露骨にいら立った声を上げる理事に、電話相手の部下は萎縮するがそれでも報告をつづけた。

 

『奴ら、大人に引率をされてD.U方面の電車に乗りまして……』

「何……?」

 

 この報告に初めて理事の表情が変わった。

 チンピラがどうなろうと知ったことではない、というのは理事の偽りなき本音だ。

 だがそれは、あくまでただ寄り集まったチンピラ達の場合である。

 そんな有象無象のチンピラを率いた大人がいる。学生ではない。()()だ。

 このキヴォトスにおいて自分達と同じ、利益を得ることを至上とする存在だ。

 そうではない一般市民も多く存在するが、少なくともそんな凡百の存在がチンピラを率いるなんて大胆な真似は出来ない。

 と、なればだ。カタカタヘルメット団を率いた大人が何かを企んでいるのは確実だ。

 ましてや、明らかに他の大人の力を借りたであろう直後の生徒を率いるのであれば、こちらに協力的な存在ではないのは間違いない。

 

「分かった。確かにそれは調査に値する情報だ。そちらについては私の方で調べる。ご苦労だった」

『はっ! 恐縮です!』

 

 受話器を戻し、理事は異形の男に声をかける。

 

「カタカタヘルメット団が大人に引率され、D.U方面へ向かったらしい」

「ほう……面白いですね。今時そんなことをする人間がいるとは」

 

 小さく肩を震わせて異形が小さく笑い声を漏らす。その顔面と相まって、非常に不気味な光景であった。

 そんな異形を余所に、理事はハッと息を呑んで立ち上がった。

 

「そうか……あのチンピラ共が裏切ったこと、装備がアビドス高校前に集まっていたのにアビドスと戦闘らしい戦闘が起きなかったこと……全てその大人が原因か!」

 

 それならばつじつまが合うのだ。

 あれだけの強大な力を与えられたチンピラが、その力に酔いしれて暴れるどころかこちらを裏切り、あまつさえ装備の破壊工作に対して抵抗もしなかった。

 アビドス高校の前に装備を集めていた以上奴らがアビドスを訪れていたのは確実であり、にもかかわらずチンピラはアビドスに撃退もされずD.Uへ逃げ出した。

 それらが全て、自分の感知していない大人が裏で手を引いていたとしたら。

 

「黒服。キヴォトスでもトップのシェアを誇る軍事企業からの主力装備を渡された生徒に対し、それ以上のメリットを提示できるような存在を知っているか?」

「さあ。興味がありませんでしたから思いつきませんね。それこそ便利屋に調査を依頼してみては?」

「なるほど。それも一理ある」

 

 黒服と呼んだ異形からの提案に、それもそうだと理事は納得し今度は自分から受話器を取ってダイアルを押した。

 

「便利屋68かね? 追加でやってもらいたいことがある」




本作を書いていて、ギルティ勢の能力を考慮して原作のイベントを改変したりスキップした方が良いんじゃないかと思ってあれこれ考えるんですが、改めてブルアカ原作シナリオを見返すとアビドス編から最終編まで余すところなくちゃんとビッチリ伏線が張られていて変に改変するとどっかで致命的な矛盾というかフラグブレイクが発生するってことに気が付きました。
やべえどうしようって感じです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。