BlueArchive -Strive-   作:笹の船

34 / 148
感想、お気に入りありがとうございます。
感想はちょっと返せてないですが、ちゃんと読んでます。助かってます。


対策委員会の奇妙な一日

 覆面とコスプレ用セーラー服を脱いだ対策委員会とヒフミ、フレデリックは対策委員会の部室で神妙な面持ちで闇銀行から奪取した書類を見ていた。

 

「……間違いない。私達から借金を回収した記録のすぐ後にカタカタヘルメット団に対して『任務補助金500万円提供』って記録がある」

 

 シロコの言葉にセリカがあからさまに顔を歪ませた。

 

「やっぱり私達のお金を受け取った後でヘルメット団に任務補助金を渡してたってことだよね!! ふざけんじゃないわよ!」

 

 余程頭に来たのか、セリカは勢いよく拳を机に振り下ろす。

 その衝撃で机の上の筆記用具やらが何個か地面に落ちたものの、それを咎める生徒はいなかった。

 そんな彼女達の様子を見ながら、フレデリックは考えこむように腕を組みながら口を開いた。

 

「……奴らにとって借金が回収出来るかどうかは重要じゃねえってことか」

「ど、どういうことですか? 意味が分かりません。貸付先の私達が破産したら、困るのはカイザーローンなんじゃ……」

 

 フレデリックの言葉にノノミが戸惑う。

 ノノミの言葉は最もだ。銀行の収益構造は金を貸して金利を得ること。その貸付先の返済能力を奪うのは、普通に考えれば自分の首を絞めているのと変わらない。

 だが、そもそも返済能力を失わせることそのものが目的だとしたら。

 フレデリックは対策委員会達から聞いた情報を頭の中で整理する。

 度重なる災害の復興のために莫大な資金が必要になり、けれどアビドスと言う何の経済効果も期待できない僻地(へきち)へ融資してくれる真っ当な銀行はいなかった。

 だが、何もしないわけにもいかず当時の生徒会は悪徳銀行と分かっていてなお融資を受けることにしたという。

 にもかかわらず、事態は好転するどころか人は離れて街はゴーストタウンまで秒読みで、アビドス高校には莫大な借金だけが残された。

 そして今は対策委員会のメンバーが個々に行うアルバイトや賞金稼ぎの報酬で何とか廃校手続きを先延ばしにしているだけ。

 そんな瀕死の学校の生徒をチンピラを雇ってでも追い出したいとなれば、そこには必ず相応の理由があるはずだ。

 例えば、土地そのものとか。

 

「ホシノ、ノノミ。アビドスと言う街の収入源ってなんだ」

 

 フレデリックの問いかけに二人は渋い顔をした。

 

「昔はアビドス砂祭り、なんてのがあったんだ。その頃は今みたいな砂に埋もれた街じゃなくて、湖みたいなオアシスもあった。それを使った観光業はあったけど……」

「今は……アビドスと言う街自体に経済効果は期待できないと思います。この学校だって、私達の収入で何とか廃校を免れているだけで……」

 

 ホシノとノノミの言葉にフレデリックはやはりな、と呟き自分の考えが当たっていることを確信した。

 

「やはり、ってどういうことよ!?」

 

 フレデリックの呟きに怒りの収まらないセリカが噛みつく。

 今日一日散々色々なことに叫んでツッコんでいたのに、よくもまあ体力が持つものである。

 なんて失礼なことを考えながらフレデリックはセリカを見下ろしながら答えた。

 

「カイザーローンはお前らに借金を返済してもらうことなんざハナから期待してねぇってことだ。奴らの狙いはこの学校、あるいはこの学校に付随する何かだろう」

 

 フレデリックの言葉にその場の全員が衝撃を受けたように息を呑み、固まってしまう。

 そんな彼女達の様子にフレデリックは僅かに眉間に皺を寄せた。年端も行かない子供達の数少ない居場所を大人らしい回りくどいセコい手で奪おうとしている奴が気に入らないからだ。

 だが、今は見えない敵に苛立ったところで仕方がない。

 それに、奴らが不正をした証拠は手に入れたのだ。

 これを馬鹿正直に連邦生徒会に出したところで、カイザーはいくらでもリスク回避の手段を講じることくらいは容易に想像がつくから、これ自体が切り札にはならない。

 それでも、飛鳥やジャック・オーに情報共有をして今後の方針を練ることくらいはできる。

 とにかく一歩前進だ。のんびりはしていられない状況だが、焦るには早い。

 

「とりあえず、今日は解散だ。あとは休むなり勉強するなりしておけ。ヒフミはちゃんとトリニティにまっすぐ帰れよ」

「んー、そうだね。皆も今日は疲れただろうし、続きは明日にしよっかー」

 

 フレデリックの解散指示にホシノが同意して、部室の空気が緩む。

 その途端にセリカは椅子に座り込み、シロコは大きく伸びを、ノノミはホッと一息ついて、アヤネも肩の力を抜くように深呼吸をした。

 いくら荒事に巻き込まれることが多い対策委員会達と言えど、ずっと緊張状態だったのだから疲れたのだろう。

 シロコだけは銀行強盗が出来た満足感からか他の生徒に比べて妙に目がらんらんと輝いていたが。

 

「じゃあ、私はそろそろ失礼しますね」

「あ、それじゃあ校門まで送りますね~」

 

 ヒフミがペコリとお辞儀をしたのを見てノノミが声を上げて、アヤネが部室の扉を開いてヒフミが通れるようにする。

 ありがとうございます、と笑いながら部室を後にするヒフミに対策委員会とフレデリックも続く。

 それから校門につくまでの短い間、他愛もない会話で生徒達は穏やかに笑い合っていた。

 こうしている分にはただの年頃のティーンエイジャーだ。学校だとか街の存続の為に日夜走り回らなければならない立場の存在ではない。

 例えここがネバーランドだったとしたら、これほど悪趣味なネバーランドもないだろう。

 子供の為の世界のはずなのに、現実は子供を食い物にしようとする大人達が幅を利かせている。

 普通のレールから外れてしまった子供達を導くセーフティネットもなく、そう言った存在は皆違法なことに手を染めるチンピラへと身をやつしている。

 そうならないように導くはずの大人はこれまでおらず、下手をすればフレデリック達が初めてだ。

 そもそも、都市の行政を少女達だけでやらなければならないという仕組み自体がイカレていると言っていい。

 確かにキヴォトスの生徒達はフレデリックの知る子供に比べてはるかに強く、聡い。

 

「戻ったら、この事実をティーパーティーに報告します!」

 

 フレデリックが考え込んでいる間に、ヒフミは今日のカイザーローン、ひいてはその大元のカイザーコーポレーションの不正とアビドスの危機をトリニティの生徒会へ報告すると告げていた。

 しかし、そんなヒフミに対してホシノが首を横に振った。

 

「んー、もう知ってると思うけどねー」

「は、はいっ!?」

「あれほどの規模を持つ学園の首脳部なら、それぐらいはもうとっくに把握してると思うんだよー。みんな、遊んでばかりじゃないだろうしさ」

 

 ホシノの言葉に、フレデリックはうすら寒いものを感じた。

 それではまるで大規模な学園にはそれこそ国家中枢にいる諜報部や情報部のようなものが設置されているという風に聞こえる。

 学校とは生徒達が世界について学び成長する場所のはずだ。少なくともフレデリックはそういう認識だった。

 しかし、もしホシノの言葉が本当ならキヴォトスの学校というのは想像以上に異常な場所なのかもしれない。

 

「そ、そんな……知っているのに、みなさんのことを……」

「うん、ヒフミちゃんは純真で良い子だねー。でも世の中、そんなに甘くないからさ」

 

 彼女達だってハイスクールの生徒だ。それなりに分別が付くのだから、世の中が甘くないなんて言葉が出てくるくらい別に不思議ではない。

 けれど、ホシノの言葉にはそんな年頃の子供とは思えないほどの諦観の響きが含まれていた。

 

「ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど、そっちに知らせたところでこれと言った打開策が出るわけじゃないしかえって私たちがパニくることになりそうな気がするんだよねー」

「そ、そうですか……?」

 

 ホシノの言葉にヒフミは首を傾げる。

 そんな彼女にホシノは肩をすくめた。

 

「ほら、今のアビドスって廃校寸前じゃん? トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよー。言ってる意味、分かるよね?」

 

 ホシノの言葉にヒフミは何かに気づいたようにハッと息を呑み、そして苦虫を噛んだような表情をした。

 

「……サポートするという名目で悪さをされても、それを阻止できない……ってことですよね。……そうですね、その可能性もなくはありません」

 

 政治って難しいとこぼすヒフミに、ノノミが助け船を出した。

 

「でも……ホシノ先輩、悲観的に考えすぎなのではないでしょうか? 本当に助けてくれるかもしれませんし」

 

 けれど、ホシノは笑いながらもそれを否定した。

 

「うへ~、私は他人の行為を素直に受け取れない、汚れたおじさんになっちゃってねー。『万が一』ってことをスルーしたから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよー」

 

 ホシノの言葉にフレデリックはずっと昔のことを思い出す。

 まだギアプロジェクト*1のメンバーとして研究をしていた頃、ギア細胞の驚異的な能力から万が一軍事利用されたら、ということも議題に上がっていた。

 その対策をしてあると飛鳥に語られ、当時のフレデリックはそれを鵜呑みにしてしまった。()()()飛鳥が欲に目がくらんだり、どうしようもない理由で飛鳥の対策が効果を発揮しなかったらということから目をそらしたのだ。

 結果としてフレデリックは飛鳥に裏切られ、ギアのプロトタイプへと、恋人のアリアに至ってはギアの完成体第一号ジャスティスへ改造させられたのだ。

 真相を知った今では他の手段などなかっただろうと納得をしているが、それでもあの時万が一を想定してフレデリックなりに動いていたら百年以上も親友の飛鳥を憎み続ける必要はなかったのかもしれないと時折思うのだ。

 そんな風に親友のことを思ったフレデリックははたとあることに気が付いた。

 交友関係というのは大事なものだ。今日、ヒフミと対策委員会の生徒達が出会えたのも何かの縁だろう。

 今日のところは一時的な協力関係、という側面が強かったがそれでもこの短い時間で彼女達はそれなりに打ち解け合っている。

 ならば、今後も交友関係を深めていけばいい。子供は子供らしく、下らないことで騒げる時間を持つべきなのだ。

 それこそ、シンやラムレザル、エルフェルトの様にやりたいことを笑って出来るのが一番だから。……エルフェルトはちょっとおかしな方向(デスメタルバンド結成)に進んでいて頭が痛い部分もあるのだが。

 

「まあ、ヒフミは余りアビドスの事情については気にしなくていい。それよりも、またこいつらと遊んでやってくれ。それが何よりの協力だからな」

「えっ、あ、はい! 私でよければぜひ!」

「なんか、フレデリック先生が保護者みたいなこと言ってる……」

 

 セリカのあんまりな呟きにフレデリックはガシガシと頭をかいた。

 

「みたいなじゃなくて保護者なんだよ今のところは」

「でも、今日は楽しかった。ヒフミ、また遊ぼう」

「いや、楽しかったのはシロコ先輩だけでしょ……しかもそれ、絶対銀行強盗したからだよね?」

「そ、そんなことは……」

「あ、あははは……でも、私も楽しかったですよ! ……銀行強盗は、ちょっと遠慮したいですケド」

 

 ヒフミの言葉にホシノがおちゃらけたように笑う。

 

「いやぁー、ファウストちゃん、お世話になったね」

「そ、その呼び方はやめてください!」

「よっ、覆面水着団のリーダーさん!」

「皆さん、ヒフミさんが困ってますから……」

 

 そんな他愛もないやり取りで、生徒達が笑い合う。

 こんな光景が毎日続くようにする、なんて言葉が脳裏に浮かんで、そういう青臭いことを考えるのは柄じゃないとフレデリックは一人苦笑いした。

 いつの間にかカイの青臭さが感染(うつ)ってしまったらしい。

 それでも、そんなに悪い気分でもないなとフレデリックは年相応に楽しそうに騒ぐ目の前の生徒達を見て笑った。

 

*1
フレデリック、アリア、飛鳥の三人がかつて同じ師の元で立ち上げたギア細胞の研究計画を基とした、人類の生体強化を目的としたプロジェクト。




GGST、エルフェルトが実装されましたね。
早速昨日触ってみましたがめっちゃ楽しいし可愛いしテーマソングはいい曲だしで真面目にサブキャラ運用を考えてます。(メインはソルです
Xrdまでのエルはそんなでもって感じだったんですが今作のキャラデザマジで好みでヤバい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。