すみません許してください。新大陸でハンターに復職してたら暖かい仲間がいっぱい待っててくれたもんで、ずっと狩りをしてました。
やっぱ、持つべきものは一緒に遊んでくれる友達なんやなって……
今年の目標はエデン条約編突入です。
よろしくお願いいたします。
ヘルメット団……ウヅキ達を離れたところから見守っていた飛鳥は息をするのも忘れて彼女達の和解する瞬間に見入っていた。
自分とフレデリックの時とは違う形の和解の仕方に、感じ入るものがあった。
それを言語化するのなら、そう。きっと感動していたのだ。
自分には出来なかった、きっと今でも極めて困難であろう相手の心に届く言葉で他人と心を通じ合わせるその瞬間は、飛鳥の心を震わせて仕方なかった。
「良かったわね、皆お互いの気持ちを伝えられて」
不意に、隣で一緒に見守っていたジャック・オーが穏やかな声色で呟いた。
「ああ……うん。良かったよ」
ジャック・オーの言葉にどこか曖昧な返事を飛鳥が返すと、彼女はクスクスと小さく笑った。
何かおかしかったのだろうか、と飛鳥が彼女の方を見る。
「……あの子達が羨ましい?」
「羨ましい? 僕が、あの子達のことを?」
ジャック・オーの唐突な言葉に飛鳥は混乱した。
確かに感動こそしたが、そんな感情を持ち合わせたつもりはない。
けれど、ジャック・オーは飛鳥が彼女達を羨んでいるという確信を持った顔で続けた。
「だって今のあの子達、貴方が夢見た世界そのものじゃない」
「それは……」
ジャック・オーに指摘されてようやく飛鳥は気が付いた。
飛鳥がキヴォトスに来る前、彼は思想も価値も何も介在しない数字――飛鳥はそれを透明な数字と呼んでいる――をラジオで世界にひたすら流し続けていた。
今日、世界で何人の子供が生まれたのか。
今日、世界で何人の人間が死んだのか。
今日、世界で何人の人間が命を救われたのか。
飛鳥がラジオで流したのはそんなただの事実だけ。その数字を見て、どうしたらいいとかどう思ったとか、そう言ったことは一切言葉にしない。
ただただ、飛鳥の持つ”始まりの書”*1が示す数字をラジオとして流し続けることで、人々に正しい知識を教えようとした。
そうすることで、その知識を基にした人々の善意の行動が積み重なっていけばと。
いつか積み重なったそれが、平和な世界を実現できるのではないか。そういう仮定に基づいたラジオ放送だ。
世界平和の実現。それが魔王と呼ばれた飛鳥=R=クロイツの最後の実験だ。
言葉にするととてつもないことを目標にしているように聞こえる。
けれど、結局のところ飛鳥が実現したいのはまさに今、自分の目の前で起きているような光景がどこに行っても見られる世界だ。
自分の思いを相手に正直に伝えあって、相手と心を通わせるということ。
それを年若い彼女達が成し遂げた。
とても喜ばしいことだ。
でも、もしも自分があんな風に人と心を通わせることが出来たのなら。
もっと世界は――いや、フレデリックと長い間
そう思っている自分がいることに、飛鳥は何とも言えない気持ちになった。
そんな飛鳥の内心を見抜いているかのように、ジャック・オーが微笑む。
「いいじゃない。他人を羨むのも人間らしい感情の一つよ? 貴方が魔王じゃなく、ただの人だってことの証明になるわ」
「……はは。全く、君には昔から敵わないね」
「気の利く友人に恵まれて良かったじゃない。お礼の品は期待してもいいかしら?」
「……ふふ、アメでいいかな?」
「あ、ひどーい! 私のことまだアメが必要な女だと思ってるのね! そもそも、そうなったのは飛鳥君の調整が間に合わなかったせいでしょ!」
「そ、それを言われると……」
冗談に
「いいじゃない。ローマは一日にして成らず、でしょ? 道は遠くても一歩ずつ進むことが大事なんだし。今は私達に出来ることを少しずつやっていきましょうよ」
「……うん、そうだね」
ジャック・オーの言葉に穏やかに微笑んで飛鳥が頷いたその時、彼の耳元に小さな法陣が展開された。
決して大きくはない、けれど聞く者にどこか危機感を抱かせる音色のコール音は飛鳥がフレデリック達と連絡する上で設定した緊急連絡の着信を知らせる音だ。
2回目のコール音が鳴り終わる前に飛鳥は呼び出しに応じる。
『飛鳥、手を貸してほしい』
通話が繋がってすぐ、フレデリックの僅かに硬く低い声が飛鳥に飛び込んできた。
飛鳥とジャック・オーがヘルメット団が本音をぶつけ合ったのを見届けるほんの少し前。
フレデリックは全速力でバイクを飛ばしていた。
アビドス高校の対策委員会の部室で対策委員会の生徒達とポツポツと雑談をしながら、これまでの情報を整理していた時だった。
突如市街地で大規模な爆発が起こったことをアヤネが検知。
臨戦態勢を整えた生徒達を先に現場へと急行させた一方で、フレデリックは唯一部室におらず連絡もつかなかったホシノを探すためにバイクでアビドスの市街地へ飛び出したのだった。
だが、今日に限って対策委員会の生徒達からホシノがいそうな場所を巡っても彼女を見つけることが出来ない。オルガンを起動しながら各エリアを走り抜けるも反応もない。
そうこうしている内に対策委員会が現場へ到着し、アヤネが中継してくれる通信内容がフレデリックの耳にも入る。
どうやら、便利屋68が紫関ラーメンを跡形もなく吹き飛ばしたらしい。
怒りに打ち震えるセリカを中心に、全員が戦闘態勢へと入ろうとしているが一方でフレデリックは険しい表情をしていた。
対策委員会と便利屋68の実力は互角だ。だが、それはあくまで双方が万全な状態であればの話だ。
今の対策委員会にはホシノがいない。戦闘力、精神的支柱、とっさの判断力。その全てにおいて対策委員会を支える彼女がいない今、アビドスは極めて不利と言える。
フレデリックが直接指揮をとれれば話は別だが、ここに来て別行動をとったのが裏目に出た。
ただの喧嘩であればまだいい。しかし、便利屋たちの口ぶりからどうも依頼を受けての破壊活動のようだ。
カイザーコーポレーションと言う明確にアビドスを狙う敵がいる今、下手にアビドスの生徒達が戦闘不能になってしまえば最悪強引な手段で廃校に追い込まれかねない。
アビドスが便利屋と接敵した時点でフレデリックもホシノの捜索を切り上げて全速力で現場へと急行しているが、学校からかなり離れた場所にまで足を延ばしていたことも良くなかった。ここからでは現場に到着するまで時間がかかる。
故に、フレデリックは今持ちうる中で最も確実な手札を切ることにした。
そして時間は現在へと戻る。
猛スピードでアビドスの街を駆け抜けながら、フレデリックは事情を飛鳥に説明した。
「無茶は承知だ。だが、今はお前の力を借りたい」
『うん、事情は分かった。ちょっとズルいけど、本の力を使おう』
「悪ぃな。アロナ経由でアビドスの連中の座標を送る。前にやってた白昼夢*2でも使ってなんとかしてくれ」
『君ね、あれは結構繊細な術式なんだよ?』
ほんの少し呆れたような飛鳥の声に、フレデリックは思わず口角を上げた。
「魔法使いの頂点が随分と弱気じゃねえか。アメリカンドリームを目前に魔王へ鞍替えさせられてビビっちまったか?」
魔法使い、という点で見れば飛鳥はフレデリックですら足元にも及ばない程の傑物だ。
自分とほとんど同じバックアップを造ってしまい、やたらとリアリティのある白昼夢を相手に見せられるほどの力を持った彼であればこの程度何とでもなるだろう。
それが嘘偽りないフレデリックの飛鳥への評価だった。
だからこそ、あえて挑発するようなことを口にする。普段の飛鳥ならこんな安い挑発になんて絶対に乗らない。
けれど、今の飛鳥なら乗ってくるという確信がフレデリックにはあった。
『……確かに、そんな挑発をされたら魔王としては答えないわけにはいかないよね』
はたして、フレデリックの思った通りに飛鳥は彼の挑発に乗ってきた。
「今回はアロナもいるんだ。アイツの力も借りれば行けるだろ」
『は、はい! 何をするつもりか分かりませんが、アロナは精一杯先生の力になりますよ!』
『ありがとうアロナ。それじゃあ、アヤネさんとの通信を遡って皆のいる位置を共有してくれるかな』
『お任せください!』
「頼むぞ」
通話越しに聞こえる頼もしいやり取りを聞きながら、フレデリックはバイクのアクセルを吹かす。
エンジンが唸りを上げて、フレデリックを乗せたバイクが一陣の風となってアビドスの市街地を駆け抜けていった。
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自己ベスト更新です。本当にありがとうございます。
感想とかもありがとうございます。返せてませんが、ちゃんと読んでます。
ちょっとしばらくはハンター業優先しちゃうかもですが、今年もちゃんと更新していきたいと思うのでよろしくお願いします。