今後もよろしくお願いいたします。
シャーレを後にしたフレデリックとジャック・オーはひとまず周辺地域を見て回ることに決め、バイクで移動をしていた。
長いボディに武骨なデザインが特徴的な紅いバイクにフレデリックが乗り、ジャック・オーはそのバイクに備え付けられたサイドカーでのんびりとしていた。
「実際、どう思う? この世界」
風にたなびく深紅の髪を押さえながらジャック・オーはフレデリックに問いかけた。
ほんの一瞬ジャック・オーを見やってからフレデリックは視線を前に戻す。
「俺達の知らない世界、としか言えねえな。法力技術はどこにもなく、旧時代の完全機械制御による技術が発展してる」
「バックヤードが発見されなかったIFの世界……なのかしら」
「どうかな。アロナの話じゃ、ここの生徒は例外なくヘイローってもんを頭に浮かべてる。意識がある間は常に浮かんでいて、普通の人間じゃ考えられねえほどの耐久力と身体能力が得られるってことだ」
「そんな存在は私達の世界じゃほとんどギアくらいしかいなかったわね。でも、アロナちゃんはヘイローを得る手段として特に改造手術が必要ってことは言わなかったし……。そもそも、世界の成り立ちからして違う?」
ジャック・オーの言葉にフレデリックは小さく頷く。
「そう考えた方が都合が合う。それに、ヘイローを持つのは学園の生徒だけだ。大人にも同じ法則が適用されているのなら、都市一つの行政を生徒が行うなんて異常事態はあり得ない。同じ力を持っているなら、子供が大人の代わりなんて務めねえし、大人側もそれを良しとしねえだろ」
人知を超越した力。それは人を狂わせるに十分すぎるものだ。
事実、フレデリックのいた世界では法力とその技術を応用した生体兵器ギアという最強の存在に一部の人間達の目がくらんだ。
その結果、ギアは暴走し人類とギアによる百年もの戦争が勃発。人類は滅びかけることになった。
フレデリックもまた、その戦争が始まる直前に人間という枠を超えた存在にさせられた。他ならぬ飛鳥の手によって。
その頃のことを思い出すようにフレデリックは遠くを見つめる。
「それに、ヘイローが何らかの技術由来のものならそもそも学園の生徒だけにその技術を与えるなんてこと有り得ねえ。暴走の心配のない純粋な強化人間なんて技術、あるならまずは大人の軍人に使われるのが先だ。だが現実にはそんな奴らは存在してねえ。少なくとも今俺達が見える範囲にはな」
「そうね。それなら、やっぱり説明の出来ない理由で学園の生徒だけがヘイローを得られるってルールの世界ってことなのかしら。大人のいない、子供達の楽園……まるでキヴォトスはネバーランドみたいね」
「は。言い得て妙だな。大人になったら契約違反で放り出されるってわけか。じゃあピーターパン役は誰が務めてるんだ?」
「さあね。……でもそれなら、私達はフック船長役として呼ばれたのかしら」
「……案外そうかもしれねえな」
フレデリックがバイクを減速させ、車道の真ん中で停止させる。
何故、とジャック・オーは問わなかった。
彼らの正面には道をふさぐように仁王立ちをした不良達が数人ほどいたからだ。
「貴方、やっぱりトラブルも恋人なんじゃない?」
「じゃじゃ馬はお前だけで十分だ。……とりあえず会話はしてみるか」
早々にトラブルに巻き込まれたことに大きなため息を吐きながら、フレデリックはバイクから降りることにした。