BlueArchive -Strive-   作:笹の船

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今回でアビドス最終決戦といったな。
アレは嘘だ。

ちょっとキリが良い所でいったん切って前後編にして小出しにします。


私達の世界(1)

 ファウストからの支援砲撃で混乱したカイザーPMC兵たちをなぎ倒し、対策委員会とフレデリックはアビドス砂漠を走り抜ける。

 

「この辺りに、ホシノ先輩が閉じ込められているはずです! この周囲のどこかに、きっと……!」

 

 アヤネのオペレートと同時に見えてきたのは、見覚えのある建築様式の建物が砂に埋もれた光景だった。

 それは学校の校舎だ。それも、今対策委員会が通っているアビドス高校によく似た形の。

 

「ここは……」

「……ここ、学校? この痕跡……多分学校、だよね?」

「砂漠の真ん中に学校……もしかして」

 

 何かに気づいたシロコが眉を潜めたその時、対策委員会達の前方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「ああ。ここは、本来のアビドス高等学校本館だ」

 

 幾つもの足音と共に姿を現したのはカイザー理事だった。

 対策委員会全員が即座に銃を構え、理事に狙いをつける。

 しかし、銃で狙われているにもかかわらずカイザー理事はその尊大な態度を崩すことはなかった。

 

「よくぞここまで来たものだ、アビドス対策委員会」

 

 その自信を裏付けるように、次々と理事の背後へとPMC兵が、車両が集まっていく。

 

「て、敵の増援多数……! この数……恐らく敵側の動ける全兵力が……相手はここで総力戦に持ち込むつもりです」

 

 アヤネの言葉に対策委員会達の緊張が増していく。

 そんなこちらのことなどお構いなしに、理事はなおも話し続けていた。

 

「砂漠化が進行し、捨て去られたアビドスの廃墟……ここが、元々はアビドスの中心だった。……かつてキヴォトスで一番大きく、そして強大だった学校の残骸が、この砂の下に埋もれている。ゲマトリアは、ここに実験室を立てることを要求した」

 

 フレデリックはこめかみを一瞬ひくつかせて、何も言わずに手元にジャンクヤード・ドッグを転送する。

 

「そんなことよりも、ホシノ先輩はどこですか!」

 

 そんなフレデリックを他所にノノミが銃を構えながら鋭い声で理事を問い詰めれば、余裕の表れか理事はホシノがいるらしい方向へ向かって指をさした。

 

「あの副生徒会長なら、向こうの建物にいる。もしかしたら、既に実験が始まっているかもしれないが……」

「ッ……!」

 

 シロコが奥歯を噛みしめる音が小さく響き、その整った顔を歪ませる。

 それを愉快に思ったのか、理事は手を広げて演説でもするかのように続けた。

 

「彼女のもとに行きたいのであれば、私達のことを振り切って行けば良い。君達にそれが出来──」

 

 理事が話し終わるその前に、彼はその言葉打ち切ることになった。

 フレデリックが生徒達の傍をすり抜けて一番前まで歩いて出て来たからだ。

 

「フレデリック=バルサラ……夫人にお会いしたよ。しかし、夫人にアビドスを任せて一体どこへ逃げていたのかね? 今更のこのこ貴様が出て来たところで──」

「ごちゃごちゃうるせえな。どけ」

 

 その声は決して大きな声ではなかった。

 なのに、聞いたものを震え上がらせるような威圧感に満ち溢れており、フレデリックの後ろに立っていた対策委員会の生徒達でさえ息を呑んで後ずさるほどだ。

 それ程の威圧感を真正面からぶつけられて、流石の理事も平気ではいられずに思わず二、三歩後ずさる。

 体勢を崩しかけて尻もちをつきそうになったのをこらえながらたたらを踏むその様は、いっそ滑稽ですらあった。

 

「ホシノは返してもらう。選べ。道を開けるか、クタバるか」

 

 威圧を通り越してもはや殺気の領域にまで押し上げられたソレを受け、理事はそれでも強気な態度を崩さなかった。

 

「貴様……この兵力を前にしてまだそんな減らず口を叩くつもりかッ! それにだ! 貴様らは何か忘れてはいないか?」

「あァ?」

 

 理事の問いにフレデリックが不機嫌そうな声を上げる。

 そんな彼に理事は若干震える声で、けれど相手を(あざけ)るように笑った。

 

「これまでアビドスの街の守護者を気取っていたのは誰だった!? つい先日我々の()()()()を武力で妨害したのは誰だったっ!?」

「…………」

 

 フレデリックが目を細め、対策委員会の生徒達が理事の言わんとしていることが分からず怪訝そうな顔をする。

 そんな彼らに、理事は唾を吐き出す位の勢いでがなり立てた。

 

「そうだ! 今、アビドスを守るものはいない! 今のアビドス高等学校の校舎を守るものもな!」

「ッ!? ま、まさか! あなたは!?」

 

 理事の真意に気が付いたアヤネが口元を抑えて声を上げると、理事は愉快そうに肩を揺らして笑った。

 

「そうだッ! 我が社の部隊を貴様らの学校に向かわせた! 街を整理し、学校に着いたらリフォームをするように命令を下してなッ!」

「ッ!? この、卑怯者……!」

「アンタッ!! どこまで私達の居場所を奪えば気が済むのよッ!!」

「そこまでして……なぜあなたはアビドスを求めるのですかッ!?」

 

 生徒達からの非難の声に理事はこみあげるものを抑えられなかったのか、高笑いを始める。

 

「ハハハ、ハァーハッハッハッハ!! そうだ!! 貴様らがヒーローを気取って小鳥遊ホシノを奪いにここに来た時点で、私の勝利は100%確実なものになっていたのだよ!! さあ、アビドス対策委員会!! 今すぐ投降するがいい。そうすれば、貴様らの大事な学び舎を壊さずにとっておいてやってもいいぞ」

 

 理事の言葉に生徒達の戦意が揺らぎ始める。

 せっかくここまで来たのに、今度こそもう打つ手はないのか。

 ホシノを取り返したとして、学校が皆の帰る場所が無くなってしまったのでは意味がない。

 諦めたくないという気持ちと、ここで戦って学校が無くなってしまったらという恐怖で生徒達の銃口が揺らぎ始めたその時だった。

 

「何勝ち誇ってやがる」

 

 フレデリックの心底呆れたような声が辺りに響いた。

 

「何……?」

「先生……?」

 

 理事とシロコがフレデリックを見やる。

 フレデリックはジャンクヤード・ドッグをもっていない方の手を腰に当てながら肩をすくめていた。

 そんなフレデリックの様子が気に入らないのか、理事は指をフレデリックに突き付ける。

 

「貴様、状況が理解できていないのか!? お前達に勝ち目など欠片もないのだ! 私の勝ちなのだ!! これは100%揺らぐことはないのだぞ!!!」

「0%だ、ボケが!」

「なんだと……?」

 

 フレデリックの切り返しに、理事の勢いが鳴りを潜める。

 そんな理事に言い聞かせるように、フレデリックは腰に当てていた手の親指を立てて自分がやってきた方向を指し示した。

 

「俺が何の備えも無しにここにいると思うか? こいつらを引き連れてここまでやってきたと思うか?」

「何を──」

 

 理事がフレデリックに聞き返そうとしたその時だ。

 慌てた様子で理事に一人の兵士が駆け寄ってきた。

 

「ほ、報告します! 北方の対デカグラマトン大隊、アビドス高等学校に向かわせた西部の残存兵力が……全滅しました!!」

「なんだとォ!? どういうことだっ!? 大隊はゲヘナの風紀委員長とシャーレの先生のたった四人も抜けなかったのか!?」

「は、はい……」

「しかし、それならアビドス市街地に向かわせた戦力は誰に……」

 

 理事の問いかけに部下は言いずらそうに視線を逸らした後、おずおずと報告をした。

 

「それが……カタカタヘルメット団に……やられたとのことです」

「なっ……!? 馬鹿な、あの役立たずのチンピラごときにかっ!?」

 

 余りにも予想外な報告に、理事は動揺を隠すこともできない。

 そんな理事を、フレデリック嗤った。

 

「テメェみてえな小物が考えそうなことなんざ、お見通しなんだよ」

「きっ、貴様……ええい! 忌々しい若造がァ……! だが、いくら貴様と対策委員会とは言え、この戦力を相手に戦い抜けるか!? 全軍、目標へ攻撃を開始せ──」

 

 フレデリックに嗤われ、怒りが頂点に達した理事が攻撃指示を出そうとする。

 それを聞いて対策委員会がそれぞれ銃を構えた瞬間だった。

 突如理事の後方から爆発音が鳴り響き、PMC兵が宙を舞う。

 

「今度はなんだッ!?」

 

 理事のそんな怒声に応えるように、舞い上がった煙と砂埃の中から人影が四つ現れる。

 

「じゃーん! やっほー☆」

「お、お邪魔します!」

 

 その姿はもはや対策委員会にとってなじみのある物だった。

 

「べ、便利屋の皆さん……!?」

「やーっと追いついた! けどなんかこれ皆集まってるし、もしかして大事なシーンに割り込んじゃった感じ?」

「いいえ、ムツキ。そんなことはないわ。そうよね、ソ……フレデリック先生?」

 

 ニヒルな笑みを浮かべたアルの問いかけに、フレデリックもまた同じようにニヤリと笑って答える。

 

「ああ、完璧なタイミングだ。良い仕事だな便利屋68」

 

 フレデリックからの賞賛の言葉に、アルは嬉しそうに胸をそらせる。

 

「ありがとう先生。でも、私達の実力はこんなもんじゃないわ!」

「社長、ちょっと待って。まずは状況を──」

 

 アルが明らかに勢いづいてしまっていることに気づいたカヨコが額に冷や汗を浮かべながら、アルを制止しようとする。

 しかし、完全に盛り上がってしまっているアルはその前に堂々と大声で宣言をしてしまった。

 

「さあ対策委員会、フレデリック先生! ここは私達に任せて、先に行きなさい!!」

 

 アルの宣言に対策委員会達の目が見開かせ、そして頼もしい見方が来てくれた喜びに笑みがこぼれる。

 一方、向こう見ずで明らかにノリだけでそんな大役を申し出てしまったアルにムツキが驚きに目を見開き、それから期待していたものを見れた子供のように笑う。

 カヨコはアルの暴走を止められなかったことに大きなため息を吐きながら、自分の銃の薬室に弾が入っていることを確認した。

 ハルカは、困難を前にそれでも自信に満ち溢れたアルの背中に感激して目を潤ませていた。

 

「ふ。上等だ、陸八魔アル。後で一杯おごってやる。行くぞ、お前等」

 

 フレデリックがそう指示を出して走り出すのに合わせて、対策委員会達も駆け出す。

 

「べ、別にお礼は言わないわよ! でも、全部終わったらラーメンでも一緒に食べに行くわよ便利屋!」

「このご恩は必ず!」

「ん、ありがと」

「便利屋の皆さん、ありがとうございます!」

 

 便利屋の強襲によってこじ開けられた道を対策委員会達が駆け抜けていく。

 それに気づいた理事が、行かせまいと指示を出した。

 

「や、奴らを行かせるな! ここで食い止め──ガッ!?」

「理事ッ!? 理事を後方にお連れしろ!」

「ハァ……こうなったら仕方ないね。社長、プランは?」

 

 カイザー理事の頭を正確に撃ち抜きながら、カヨコが肩越しに背後のアルへ問いかける。

 そんなカヨコにアルは堂々とした態度のまま高らかに宣言した。

 

「当然、正面から全員ねじ伏せるわ! 私達は便利屋68。キヴォトスいちのアウトロー集団よ! アイツらの相手が一体誰か、思い知らせてやるわッ!!!」

「あっはははは! いいね、いいよアルちゃん! すっごいカッコイイじゃん! 惚れなおしちゃいそう!!」

「はい! アル様は一番のアウトローです! 私も、少しでもアル様のお役に立てるように頑張ります!!」

「やれやれ……ま、確かにたまにはこういう社長も悪くないね」

「じゃっ、始めようかッッ!!!」

 

 ムツキが吠えて、銃の引き金を引く。

 静かだったアビドス砂漠に、再び銃声の多重奏が奏でられた。

 




すいません、この後のシーン結構難産になりそうなので、投稿まで期間が空くかもしれません。

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