BlueArchive -Strive-   作:笹の船

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アビドス編開始です。
今回出張するのはintroでもあったようにフレデリックになります。
各章で出張するメンバーは変えていく予定。


対策委員会編 ~熊からパンダは生まれるか~
アビドスからの手紙


 連邦生徒会長が設立した謎多き部活「シャーレ」に新任の先生が3人着任したという噂はその日の内にキヴォトス中を駆け巡った。

 複数の学園の生徒からなる即席部隊を効率的に運用し、ワカモを撃退せしめた優し気な男の先生の噂。

 銃を向けた生徒を相手に近接戦闘で、しかも無傷で複数人を無力化した人相の悪い怖い男の先生の噂。

 生徒が困っているのを見かけて優しく力になってくれたとても綺麗な女の先生の噂

 誰かが先生の話をする度、自分の知ってる噂と違う! となって混乱も発生したこともあったがそれも数日の内に先生は三人いるのだという情報が出回ることで落ち着いた。

 

『おはようございます先生! 今日も一日頑張っていきましょう!』

「うん。今日もよろしくアロナ」

「よろしくねアロナちゃん」

「で? 今日はどうするんだ?」

 

 やや眠そうに頭をポリポリとかくフレデリック。

 黒のスラックスに白いシャツ、ワインレッドのネクタイというフォーマルな服装の彼は、しかしシャツの第二ボタンまで開けてネクタイを緩めているせいでだらしないという印象を与える格好だった。

 

「フレデリック……いくら夜通しで色々やってたからってだらしないわよ?」

「そういうお前こそどうなんだ。シャツのボタン位閉めろ」

 

 呆れた声を上げるジャック・オーにフレデリックは鼻を鳴らしてジャック・オーの胸元を指さす。

 彼女もフレデリック同様レディースのパンツスーツに白いブラウスというフォーマルな服装ではあったが、やはり第二ボタンまで開けているせいで白く艶のある谷間と下着が見えそうになっていた。

 

「あら、えっち。朝からお盛んね?」

 

 フレデリックの指摘に誘うよう仕草で笑うジャック・オーに飛鳥は露骨に目をそらし、フレデリックはため息を吐いてジャック・オーの額にデコピンをする。

 

「あたっ!?」

「馬鹿なこと言ってんじゃねえ。仕事の時間だ切り替えろ。大体それを言うなら夜の間ずっと盛り上がってたろ」

「二人共……いくら徹夜明けだからって朝からやめないかい……? いや、二人のおかげでシッテムの箱本体と二人に持たせる端末のリンクは確立できたのは本当に助かったんだけど」

 

 思春期の少女達が見れば誤解すること間違いなしなやり取りに、飛鳥はこめかみに手を当てて二人を諫める。

 ちなみに夜通し飛鳥達三人がやっていたのはシッテムの箱の解析である。

 始めこそ飛鳥に任せると言っていたフレデリックだったが、昨晩仕事を終えて帰る前に飛鳥に進捗を聞いたのが良くなかった。

 飛鳥から出てくる興味深い要素や検証結果の数々に、段々興が乗ってきてしまい議論が白熱し始めたのだ。

 そして残念なことにジャック・オーも元はフレデリックと飛鳥と同じ研究者である。そんな面白い話を聞いて二人を止めるわけがなかった。むしろ自分も混ぜろと乗ってくる始末である。

 さらに三人はシャーレオフィスのある建物で寝泊まりしている上に、この建物にいる大人は飛鳥達三人だけ。

 セキュリティはアロナが対応してくれることもあって、宿直の警備員などに退勤を促されることもないとあれば三人が止まる理由もない。

 結果、夜通しあーだこーだと議論を重ね、検証を重ね続けた結果無事シッテムの箱本体にいるアロナと子機となる端末のリンク、子機のセキュリティ、子機を介したアロナによる遠隔サポートの実証までこぎつけることに成功したのだった。

 その頃には空が白み始めており、流石にまずいとなった三人は宿舎に帰ることもなくシャーレオフィスの手ごろな場所で仮眠をとったのだった。

 

『でも、先生は凄いですね! まさか本当にシッテムの箱と他の端末を繋いで私が遠隔で色々できる様にしちゃうなんて』

「アロナにもだいぶ助けてもらったよ。ありがとう」

 

 飛鳥が優しい声色でアロナに感謝すると、アロナは照れ臭そうに笑った。

 けれど、すぐに我に返ったように目を見開く。

 

『にへへへ~……って、そうだ! 先生たちにお伝えしないといけないことがあったんでした!』

「伝えなければいけないこと?」

 

 飛鳥が首を傾けると、シッテムの箱から出て来たホログラムのアロナがグッと両手を胸の前に持ってきて真面目な表情で続ける。

 

『はい! この数日で先生方の噂はどんどん広まっていて、生徒さん達からの手紙も複数来るようになったんですが……その中にちょっと不穏なものがあってこれは見せた方がいいなっていうのあるんです』

「手紙?」

『アビドス高等学校の生徒さんから来た奴です! 郵便箱の中にまだ入ってると思います!』

 

 アロナの言葉を聞いてフレデリックがオフィス入り口横に備え付けられた郵便箱を開けた。

 何通か入っている封筒の中から、それらしきものを見つけたフレデリックが隣に来ていたジャック・オーへとそれを手渡した。

 封筒を受け取ったジャック・オーが封筒を開けて、中の便せんを取り出す。

 

「なになに~? 連邦捜査部の先生方へ……」

 

 そこに書かれていたのは地域の暴力組織によってアビドスの生徒達が追い詰められていること。

 敵の狙いは自分達が通う学校の校舎で、抵抗を続けているが物資が底をつきかけていること。

 故に力になってほしいということが綺麗な字で(つづ)られていた。

 

『アビドスは昔は大きな自治区ですけど、気候の変化で町が厳しい状況になっていると聞きました。大きさは街の真ん中で人が遭難するとか……ホントですかね?』

「それはともかくとして、この手紙からするともう余裕がなさそうだね。すぐにでも行くべきじゃないかな」

「じゃあまた私とフレデリックで……」

「いや……今回は俺だけでいいだろ」

 

 フレデリックの言葉にジャック・オーが眉をひそめる。

 

「どうして? 危険だからっていうなら、私も貴方も今は大差ないはずよ?」

「そうじゃねえ。暴力組織をぶっ潰すだけなら一日二日で終わる。そこに二人で行っても戦力過剰だ。逆にそれ以上期間がかかるなら、今度はこのオフィスに来る依頼を飛鳥一人で対応しなきゃならなくなる。どっちに転んでも二人でアビドスに行くのは効率悪いだろ」

「なんか私を危険から遠ざけるための屁理屈に聞こえるけど……まあいいわ。それなら私は私でいろんな学園の子達と仲良くなっておこうかな」

「そうしてくれ。俺じゃどうにも避けられちまうからな」

「それは貴方が乱暴ばかりするからじゃない」

「火遊びが過ぎる連中が多すぎるんだよ。大体、お前だって何人か蹴っ飛ばしてたじゃねえか」

「アレは自己防衛の為ですー!」

 

 他愛のない言い争いを始めたフレデリック達を見ながら、飛鳥はシッテムの箱に視線を向ける。

 

「アロナ、今の内にアビドスの子達の名簿って手に入れられるかな。物資を届けるにしても、そこが分からないと規模も内容も決められない」

『はい! 任せてください!』

 

 アロナの元気のいい返事を聞きながら、飛鳥はシッテムの箱の中にあるアプリでクラフトチェンバーにリモートアクセスした。

 ここ数日、シッテムの箱と並行して行っていた解析作業でクラフトチェンバーがおおよそ飛鳥達の世界で言うシーケンサー*1であることは分かっていた。

 問題は物質の生成という魔法を成立させる為に必要なスコア*2をこちらで指定できず、クラフトチェンバーを起動した際にリストにランダム表示される物の中から選ぶしかないということだった。

 スコアの種類やその精度までがランダムの為、使い勝手が悪いところだがそれでも法力の使用を抑えたい飛鳥達にとってありがたい設備であることに変わりはない。

 とはいえ、その使い勝手を向上させる為の法術はがっつり使っていた三人だったので今は創りたいものがほぼ完全に指定できるようになるまであとわずかというところだった。

 後は、その調整をすればいい段階である。

 そんなことを考えているところで、シッテムの箱の液晶にポップアップが表示された。

 

『先生! アビドスの生徒さん達の名簿データですよ!』

「ああ、ありがとう。……五人、か。少ないね」 

 

 ポップアップをタッチすると、今アビドス高校に所属している生徒達の名簿一覧が表示された。

 スクロールの必要すらない五人という数の少なさに飛鳥は目を細める。この人数で物資が底をつきかけている、という話であれば本当に余裕はないのだろう。

 急いだほうがいいと判断した飛鳥は後ろを振り向き、いつの間にか学術的な方面の議論へ発展しているフレデリック達へと声をかけた。

 

「フレデリック! 子機にアビドスの子達の名簿を転送する。詳細はあとで確認して欲しいけど、急いだほうがよさそうだ」

「分かった。ジャック・オー、続きは今度だ」

「はーい。お仕事頑張ってねフレデリック。あ、でも出かける前にシャワー浴びた方がいいかも」

「んなことは分かってる。飛鳥、支度をしたらすぐに出る。アビドス高校までの道のりも調べといてくれ」

「了解」

『先生、よろしくお願いします! アビドスの皆さんを助けましょう!』

 

 そうしてアロナの元気な声を受けながら、それぞれが自分のなすべきことに向けて動き出した。

*1
魔法の行使に必要なレシピを読み取り、その効果を実現する為の機械。あるいは魔法使いそのもの

*2
特定の効果を持つ魔法が書き込まれた媒体。シーケンサーに読み取らせるレシピそのもの




この話では郵便箱からアビドスからの手紙をフレデリックが取り出していますが、その理由はアロナが手紙の内容を把握していることへの理由付けの為です。
本作を書くにあたってブルアカのメインストーリー動画を見返したりしてますが、アビドス編第一話にてアロナちゃん明らかに電子ではない物理媒体の手紙の内容を把握してるんですよね。
シッテムの箱の中にしかいないはずのアロナが、封も切られていない(先生が内容を把握していないということはどう考えてもそう)手紙の中身をどうやって把握できるんだ?って疑問に思いました。
これが電子メールであればわかります。シャーレのサーバなりなんなりにアロナがアクセスしてメールを検閲すればいいだけですから。
でもアビドス編1話の地の文を読むに、どう考えてもアヤネちゃんからの手紙は物理媒体です。(2枚目を読む、とか出てるし)
シッテムの箱は何話か前のフレデリック達が考察しましたが、液晶とカメラ機能が同居しているかもしれないという超技術だったとして、封の切られてない手紙の中身までシッテムの箱越しにアロナがそこまで把握できるのか……?となりました。
そこで郵便箱です。日々爆発物やら銃弾やらが飛び交うキヴォトスに置いて、当然郵便物に対するセキュリティというのも考慮されているでしょう。
で、あるならば郵便箱に郵便物をスキャンする機能があってもおかしくはないと思いました。
ヴェリタスあたりに制作を依頼すれば、中身に危険物があるかだけでなくそれこそ封筒の中の書類の内容まで分かってしまっても不思議ではないでしょう。
そのスキャン結果を電子データのログとして保存していれば、後はアロナがそれを検閲すれば電子メール同様アロナでも手紙の中身を把握可能です。
と、言うわけで郵便箱はこうして設置されました。
という作者の自慰設定の垂れ流しでした。
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