突然の公式からの発表に背中からガンフレイムが迫ってきている心地です。
キービジュからしてほぼ確実にGGSTストモ完結後の時系列なので、マジで公式から背中を刺されそうになっていてとても楽しみであり怖くもあります。
本日初報だったことを考えれば、恐らく秋か冬に来ると予想されます。
なのでそれまでにちょっとでもこっちの作品を進めてダメコンしたい……!
ということでちょっと短いですが投稿します。
「あら、飛鳥先生。おはようございます」
飛鳥がミレニアムの敷地内を歩いている時、不意に後ろから声をかけられた。
「ああ、おはよう。生塩さん」
飛鳥が振り返ると、そこにはいつものように柔和な笑みを浮かべたノアが小さく手をあげながら歩いてくるところだった。
「最近よくミレニアムに来て頂いて、生徒達に色々助言や意見交換をして頂いてるそうですね。セミナーにも飛鳥先生の評判は届いてますよ」
「それは良かった。科学者の端くれとして貴重な意見や知識を得られる機会だからね。Win-Winの関係でいられているのなら嬉しいよ」
「あら、嬉しい言葉ですね。シャーレの飛鳥先生にそう言って頂けると、科学に特化した学校の生徒として誇らしい気分です」
そう言ってノアは顔をほころばせる。元々穏やかな笑みを絶やさない生徒ではあったけれど、今は純粋に大人に褒められて喜ぶ子供の笑顔であった。
そんなノアの姿に飛鳥もつられて口角を上げた時だった。
ふと、ノアが何かを思い出したかのように動きを止めてそれから悪戯っぽい笑みを浮かべだした。
「そう言えば。聞きましたよ。飛鳥先生、うちの生徒達と交流する傍らゲーム開発部の廃部を食い止めるお手伝いをしているんだとか」
「はは……まあもう君達セミナーの耳には届いてても仕方ないよね」
ほんの少しだけ困ったように笑う飛鳥に対し、ノアは鈴を転がすように笑う。
「クスクス……ユウカちゃんが驚いていました。まさか飛鳥先生がそこまでモモイ達に肩入れするとは思わなかった、って」
「あー……早瀬さんにはちょっと悪いことをしてしまったかな。結局あの日、あの後ずっとゲーム開発部にいて案内してもらえなかったし……」
「そうですね。あの日はユウカちゃんもちょっとおへそを曲げていましたが、でも最近は結構ご機嫌ですよ」
ノアからの予想外な言葉に、飛鳥はほんの少しだけ目を見開く。
飛鳥から見て早瀬ユウカという女子生徒は、理知に富みながらも比較的直情径行な生徒という認識だった。
元々、飛鳥がゲーム開発部に連れていかれた日はユウカにミレニアムの各所を案内してもらう予定の日だったのだ。それを飛鳥のワガママでご破算にしてしまったのだから、てっきり飛鳥は確実にユウカに良くない印象を植え付けてしまったはずだと思っていた。
しかし、ノアの口から出たのはそのユウカが最近は機嫌がいいという言葉だった。
何故だろう。それが飛鳥の正直な感想だった。飛鳥の知識や経験で言えば、こういう時は大抵嫌われるか、そこまで行かないにしても白い目で見られてもおかしくないはずなのだが。
そんな疑問に思わず首を傾げた飛鳥を見て、何かがおかしかったのかノアは再びクスクスと笑った。
「先生。ゲーム開発部の子達の手助けも良いですが、時々セミナーの部室にも来てくださいね? そうしたら、きっとその疑問の答えも分かるかもしれませんから」
「え……? ああ、うん。そうだね。近い内にまたお邪魔させてもらうよ」
「はい。お待ちしています。ところで、そのゲーム開発部の子達の様子はどうですか?」
ノアの問いかけに飛鳥は思わず表情を曇らせる。それが何よりの答えだった。
「……その様子は、余り順調ではないようですね?」
「まあ、ね。部員集めも楽じゃないよ。時々レトロゲームに興味のありそうな子に声をかけては見てるんだけど、断られることばかりでね……」
「そうなると、成果を出すという方向も考えた方が良さそうな感じでしょうか」
「そこは部員集めと並行してやっているところだね。今はモモイさんとミドリさんに少しずつ進めてもらってるよ。一応、今日その進捗を聞きに行くところなんだ」
「そうでしたか。では、早く行ってあげないと、ですね。引き留めてすみませんでした」
「いや、僕も生塩さんと話せて良かった。近い内にセミナーの方にも顔を出させてもらうよ。それじゃあ」
爽やかな笑みを浮かべてそう言った後、ノアに背を向ける飛鳥に彼女は僅かに呆気にとられたような表情をする。
それからほんの少しだけ唇を尖らせて小さくなっていく背中を少しだけ睨む。
「ユウカちゃんがお熱になる理由が少しだけわかった気がします」
悪戯をされてしまった子供のようなノアの呟きは、けれど誰に届くでもなく風に消えていった。
その後ゲーム開発部にたどり着いた飛鳥を待っていたのは、想像の斜め下を行く報告だった。
「ま、全く進んで……ない、だって?」
絞り出すように出した飛鳥の声がむなしく部室に響く……ことすらなく霧散していく。
そんな飛鳥にモモイが目に涙をいっぱいにためて縋り付いた。
「ちがう、ちがうんだよせんせぇ~! 私達頑張ったんだけど、なぁ~んにもアイデアが思い付かなくてぇ~」
「な、何も? 一つもかい?」
戸惑いながら問いかける飛鳥に、ミドリが気まずそうにもじもじしながら答える。
「いえ、その。案は出たんです。いくつか。でもその……私とお姉ちゃん、それからユズの間で方向性がバラバラのまま、まとまらなくて」
「うぅ……すみません……」
モモイ、ミドリからさらに部屋の奥の方で膝を抱えて小さくなってか細い声で謝罪を口にしたのはゲーム開発部の部長、花岡ユズだった。
飛鳥がモモイによってこの部室に連れてこられた日、帰りがけに部室のロッカーをきしませて中から出てきたのが彼女との初めての出会いだった。
流石の飛鳥もほんの少し驚いたものの、そう言えばGEARプロジェクトの時も人づきあいが苦手な研究員もどうしてそんなところに、という場所にこもっていたこともあったなと思いだしてそういうものだと納得していた。
それもあってか、レトロゲームに夢中になっていた飛鳥に対して仲間が増えたのは嬉しいとたどたどしい口調でユズが自己紹介をしてくれたのはまだ記憶に新しい。
そうしてゲーム部の廃部の危機を乗り越えるパーティが結成されたのだが……まさかあれから半月経って何の成果も得られないとは。
部員の勧誘を成功させられなかった飛鳥もあまりモモイ達にとやかく言える立場ではないのだが、それはそれとしてこの状況はかなりマズい。
「期限まであと1か月……何か、何か策を考えないと……」
深刻な表情でぶつぶつとああでもない、こうでもないと飛鳥が呟いていると、その手をモモイが力強く握った。
「も、モモイさん?」
「先生、こうなったらもうアレしかないよ!」
「アレ!? お姉ちゃん、本気!?」
モモイの言葉にミドリが信じられないといったふうに目を見開いて声を上げる。
なんだかあんまりいい方法じゃなさそうだな、と飛鳥が身構えているとモモイは腰に手を当ててソレを口にした。
「本気だよ! こうなったらもう、G.Bibleを見つけて最高のゲームを作ってミレニアムプライスに出品するしかないって!」
モモイの言葉は正直飛鳥にはほとんどわからなかった。分かったのはG.Bibleというものを見つけて成果を出すということだけだ。
だが、ミドリとユズはモモイの言葉をちゃんと理解していたらしい。
「お姉ちゃん正気!? G.Bibleなんてそもそも都市伝説だし、ミレニアムプライスの出品締め切りまであと1か月ないんだよ!? いくら何でも無茶だよ!」
「そ、そうだよ。そもそも、本当にG.Bibleがあるとしてもどこにあるかなんて誰も知らないし……」
モモイを引き留めようとする二人の言葉に、モモイは力強く横に首を振った。
「だいじょーぶ! G.Bibleは実在する! これは間違いないよ! だから先生、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「な、何かな……」
なんだか背筋にうすら寒いものを感じながら飛鳥はモモイに問いかけてみる。
そんな飛鳥にモモイは目を輝かせて満面の笑みを浮かべた。
「ちょっととある場所に忍び込むの、手伝って!」