BlueArchive -Strive-   作:笹の船

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仕事がつらい


いざ、アビドスへ

『アビドス高等学校の生徒達は全部で五人だ。連邦生徒会に保管されていた生徒の名簿から、各生徒のプライマリウェポンも分かった』

「なら、後はクラフトチェンバーで対応する規格の弾薬を創ればいいんだな?」

『そうだね。ただ、クラフトチェンバーの調整はまだ済んでないからすぐには創れない』

「早めに頼む。お前が間に合わなかったらその時は俺がやることになるんだからな」

 

 身支度を整えて愛車のファイアーホイールMk2でシャーレを飛び出した後、運転しながらフレデリックは法力通信で飛鳥からアビドスについての情報を聞いていた。

 今日は街も比較的平和なようで、今のところ銃声や爆発音がフレデリックの耳に届くようなことはない。

 つい数日前まで当たり前だと思っていたこの静けさが、キヴォトスではとても貴重なのだという現実に思わずため息がこぼれる。

 これから行くアビドスでは確実に戦闘音が聞こえてくるのだろうと考えて、フレデリックは一人苦々しい表情になった。

 

「……他にめぼしい情報はあるか?」

 

 これからの面倒事についてはなるべく考えないようにして、通信相手の飛鳥に追加の情報がないかを問う。

 

『シャーレからアビドスまでは結構距離がある。くれぐれもトラブルを起こして野宿したりするようなことがないようにね』

「それは俺じゃなく問題を起こすガキ共に言え」

『ガキ、じゃなくて生徒でしょフレデリック!』

 

 通信に割って入ってきたジャック・オーの言葉にフレデリックはほんの少し唇をへの字に歪めた。

 

「ガキはガキだ。ルールを守って平和に過ごすってんなら生徒と呼んでやってもいいがな」

『そうなるように導くのが今の私達の仕事でしょ?』

「全く……気の遠くなる話だ。ジジイになっちまう前に後任を探して隠居でもするか」

 

 そんな軽口をたたきながら、フレデリックはバイクのアクセルを吹かして加速する。

 アビドスへ向かう幹線道路は今のところ混雑もなく、対向車も障害物もない。

 ギアを上げて法定速度ギリギリまで速度を上げながらフレデリックは街を駆け抜けていった。

 

 

 

「……ここか」

 

 数時間後、フレデリックは砂に飲まれかけつつある街の中でバイクを止めた。

 目の前には他の建物に比べて比較的綺麗な状態で保たれている学校がある。

 ある程度綺麗に保たれているということは、管理している存在がいるという証拠である。無人ということはないだろうが、本当にここに生徒がいるのかと(いぶ)しみながらもバイクを押して開け放たれた校門を通り抜ける。

 校門を入ってすぐの駐車場で一番出口に近い駐車スペースにバイクを止めて、フレデリックは肩や足元を手で払った。

 確かにシャーレからは遠かった。それについては分かった上でやってきたのだから文句はない。

 だが、まさか途中で砂嵐に見舞われるとは思わなかったのだ。飛鳥のナビゲーションがなければアロナの言った通り街中で遭難した上に野宿を強いられるなんて情けない姿をさらすところだった。

 

「気象の変化で廃れたとは聞いていたが……確かにひどいもんだ」

 

 はるか昔に映像で見た日本の学校によく似た建築様式の校舎に向かって歩きながら、誰に言うでもなく独り言ちる。

 独り言ちてから、口の中にも僅かに砂が混じっていることに気が付いてフレデリックは顔をしかめた。

 猛烈に口をゆすぎたい気分だった。贅沢を言うならシャワーも浴びたい。きっと髪もどこも砂まみれだ。

 しかしまるで人の気配がしない。今日は休校とも自由登校日とも聞いていないから、誰かしら生徒はいるはずなのだが。

 

「おい、誰かいないのか?」

 

 校舎の前で声を上げる。しかし、待ってみても返事は返ってこなかった。

 

「ったく……めんどくせえな」 

 

 眼鏡のブリッジを指先で押し上げながら、フレデリックはアビドス高校の校舎の中へと――入ろうとして動きを止めた。

 昇降口の奥から廊下の電灯の光を僅かに反射するものが四つ。それは銃口だった。

 いつの間に飛んできていたのか、頭上にはドローンが一機滞空している。ドローンに据え付けられたカメラがフレデリックの視線と合った。

 

「さて。オジサン、何の用かな?」

 

 フレデリックに向けられた銃口のうち一つがゆっくりと近寄って来る。

 直射日光に比べ薄暗い電灯の光受けながら、徐々に近寄ってきたのはローティーンらしき背格好の少女だ。

 その小さな体に不釣り合いなショットガンを構えた桃色のロングヘアに橙と青色のオッドアイが特徴的だったが、何よりもフレデリックの目を引いたのはその目だった。

 随分と見覚えのある目だった。独りであることに努める者の目。そんな目がフレデリックを射抜かんばかりに睨んでいる。

 もしかしたら、あの頃の自分はこんなふうに見えていたのか。そんな何とも言えない気持ちにさせられて、眉間に皺を寄せながらフレデリックはため息を吐きながら目の前の少女を見下ろした。

 

「……ガキの癖に随分とうざってえ目だ」

「何の用、って聞いてるんだけど」

 

 そんなフレデリックの態度が気にくわなかったのか、元から険しい表情さらに険しくさせながら目の前の少女は銃口をフレデリックに突き付けなおす。

 警戒されているのは明らかで、平和的解決をするには慎重に言葉を選ぶ必要があった。

 あまりにも面倒な状況に大きくため息を吐きたいフレデリックだったが、すんでのところで堪えることに成功した。

 何故なら、今のフレデリックには伝家の宝刀とでもいうべきアイテムがあることを思い出したからだ。

 バイクに乗る間に首にかけていると風にあおられて邪魔だから、とポケットにしまっていた身分証を取り出す。

 

「俺はお前等から支援要請を受けてシャーレから来た。これが身分証だ」

 

 そう言って両手を上に上げてホールドアップの体勢を取る。身分証の入ったケースがストラップからぶら下がったのを見て、頭上にいたドローンがそれを確認するべく近寄る。

 

『……確かに連邦捜査部シャーレのものみたいです』

 

 ドローンから少女の声が響くと、昇降口の奥で銃を構えていた生徒達は銃を下ろす。

 それを横目で確認したオッドアイの少女は数瞬考えるように目を伏せてから、小さく息を吐いて銃を下ろした。

 

「いやぁ~、ごめんねーオジサン。ここに大人が来るってこと滅多に無くてさ。見ての通りこれしか生徒もいないし、変なこと考えた大人かなって思って」

 

 先ほどまでの相手を射抜かんばかりの鋭い視線と態度はどこへやら。

 全身を弛緩させたような態度にフレデリックは一瞬眉を潜めたが、そこまで気にすることでもないだろうと思いなおした。

 

「それで? 随分な歓迎パーティーだったが、次のイベントはなんだ?」

 

 軽く笑いながら軽口を叩いてみれば返ってきたのは沈黙だった。ノリが悪いなと心の中でぼやきながら昇降口の奥へ進めば、そこにはバツが悪そうに視線を逸らしたり口を尖らせる生徒が三人。

 これは思ったよりも面倒かもしれない。今になってジャック・オーに変わってもらえば……いや、飛鳥に来させれば良かったかと後悔し始めるフレデリックだった。




本作を書くにあたって、ブルアカ本編とGGXrdのストモを見返してるんですがXrdのストモやっぱ面白いっすね……
GGSTのストモも好きですが、Xrdの方が分かりやすいなとは思いました。
GGST、面白いんだけど皆オサレな言い回し使うせいで分かりにくいところがちょくちょくあるんですよね……特にソル、お前だぞ!
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