BlueArchive -Strive-   作:笹の船

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インスピレーション200%!

 目を灼くような閃光に目をつぶりながら、モモイはアリスが放った渾身の一撃でフレデリックが倒れることを心の底から願った。

 今までいろんな人とドンパチやったけれど、今日の戦いが今までで一番怖かったし大変だったと、きっと10年先でも武勇伝として語れるのは間違いない。

 だから、いい加減降参して欲しいという気持ちが何よりも強かった。もうこれ以上あの滅茶苦茶な大人を相手に戦うのなんてごめんだ。

 祈る手は銃でふさがっているから、まぶたをギュッと閉じることでその代わりにしながら自分に襲い掛かって来るだろう衝撃に備える。

 けれど、いつまで経っても来ると思っていたものすごい衝撃は来ない。

 何かがおかしいと思ってきつく閉じていたまぶたをゆっくりと開ける。

 

「ぐえぇ……」

 

 乙女にあるまじきだらしない声が出てしまうのは正直許してほしいと思った。

 だってあれだけの攻撃を食らったはずなのに、そこには傷一つないフレデリック先生(魔王)が何事もなかったかのように立っていたからだ。

 もう限界だった。これ以上は戦えない。というか戦いたくない。

 そう思ったと同時にモモイは尻もちをつきながらそのまま後ろに倒れ込み、床に大の字になって寝転んだ。

 

「そ、そんなあ……」

「あ、アリスの必殺技が……」

 

 ミドリもアリスも同じようで、首だけ巡らせて二人の方を見やれば二人ともその場にへにゃりと座り込んでいる。ホンそれ、とモモイは心の中で呟いた。

 結局、魔王は倒せなかった。光の剣も持っていけないのか、と大きなため息を吐こうとしてけれどグッとそれを飲み込む。

 一番ため息を吐きたいのは、ガッカリしているのはアリスだろうから。自分が最初にそれを表に出すのは、きっとカッコ悪いことだとモモイは奥歯を噛みしめる。

 それでも、やっぱりめいっぱいやって届かなかったのは悔しい。今まで色んな失敗をしたけれど、今日の失敗はそのどれよりもショックかもしれなかった。

 それこそ、これに並ぶのはテイルズサガクロニクルをクソゲーだと皆から言われた時くらいだろう。

 やり場のない気持ちに悶々とし始めたその時だった。

 

「おい飛鳥。もういいだろ」

 

 声を上げたのは魔王だった。その目つきから、戦っている時のような怖さは感じない。

 一体、何がもういいのだろうか。勝負はついたからさっさとアリスから光の剣を没収しろとでもいうつもりか。

 そんな薄暗い気持ちが沸き上がって来て、おもわず奥歯をきつく噛んだ。

 ぎりり、という音が口の中から聞こえて来て、けれどもモヤモヤした気持ちはちっとも晴れない。

 ていうか、飛鳥先生も飛鳥先生だ。こんな化け物を相手にさせるなんて、優しい顔をしてなんて鬼畜な!

 八つ当たりだと分かっていても、一度燃え上がったその気持ちを抑えることは難しくて。

 寝転がってから1分も経ってないのに、駄々っ子みたいにじたばたしたいのを我慢することすら限界を迎えようとしていた。

 

「そうだね。テストは合格、としていいと思うよ」

 

 そんなモモイのささくれだった気持ちをずっこけさせたのは、飛鳥の穏やかな声だった。

 

「はぇ……?」

 

 気の抜けた声が思わず口から漏れる。聞こえてきた単語があんまりにも予想外だったから聞き逃したような気もするけれど、ミドリとアリスも同じような声を出していたような気がする。

 そんなモモイ達の方を見下ろしながら、飛鳥はほんの少しだけ笑いながら口を開いた。

 

「フレデリックは光の剣を持っていくなら自分を倒せと言ったけど、別に本気で言ってたわけじゃないよ。僕としても光の剣の威力とか、それを使う君達の姿とかを見ておきたかったっていうだけだからね」

「……えっと、つまり?」

 

 飛鳥の言葉をうまく呑み込めなかったモモイは、つまりどういうことなのかとそのまま飛鳥に聞き返した。

 いや、本当はその先の言葉の予想は付いていた。それでも、ぬか喜びになるなんてことは嫌だったのだ。

 だから、分からないフリをした。

 

「光の剣はアリス、君の物だ。……それでいいかな、エンジニア部の皆」

「そうだね。私としても、アリスに使われるなら特に問題ないと思うよ」

「悔しいですが、これが結果ですからね!」

「まあ、使われてこその道具だからね。その点、アリスなら十分だと思う」

 

 飛鳥の問いかけに、エンジニア部の三人がそれぞれ頷く。

 未だに目の前で言われたことが呑み込めないモモイは、思わずアリスとミドリの方へ振り返った。

 二人とも、きょとんとしたなんとも間抜けな顔をしていた。きっと、それは自分もそうなんだろう。

 三人で何度も目配せをしあって、それから改めて飛鳥先生達の方へ振り返る。

 そんな自分達に、飛鳥先生は夢じゃないんだと教えてくれるように微笑みながら頷いた。

 

「や、やったあああああああああ! やったねアリス!」

「よかったねアリスちゃん! これで光の剣持ってって良いんだって!」

「はい、はい……! アリス達の勝利です! ぱんぱかぱーーーん!! です!!」

 

 喜びを爆発させて三人で抱き合ってどのくらい経っただろうか。

 ようやく(たか)ぶった気持ちも落ち着いてきたところで、ヒビキが光の剣に取っ手をつけてあげるとアリスを呼んだ。

 呼ばれて足取り軽やかにヒビキについていくアリスを見送りながら、モモイは隣に立つミドリに声を掛けた。

 

「いやー、今回は大変だったね」

「ホント……ただ銃を貰うだけだと思ってたのに、取材するときよりもずっと疲れたよ」

「でも、なんか結構インスピレーション湧いてこない?」

「お姉ちゃんも? 実は私も今なら結構良いアイデア出そうな気がするんだよね」

 

 ミドリの方へ顔を向ければ、ミドリはどこか楽し気な笑顔をうっすらと浮かべていた。

 きっと、いや間違いなく。今の自分も同じ顔をしているに違いない。

 

「「えへへ!」」

 

 そして、どちらともなく笑い合う。

 

「ねえミドリ」

「なあにお姉ちゃん」

「廃部を避ける為にアリスを入れてさ。私これで大丈夫だって思ってたんだ。……でも、やっぱりゲームの方も頑張ろうかなって思う」

「良かった。これでお姉ちゃんが『これで安泰だししばらくは遊べるねー』なんて言い出したらひっぱたくところだったよ」

「ちょっと!! 姉に向かってなんてこと言うのさ!」

「私は締め切りを守らないだらしないシナリオライターに物申してるだけですー」

「へー? いつもデバイスのせいにして絵を描き上げるのギリギリになるくせにー」

「いい作品はいい道具から。常識だよ?」

 

 そうやってお互いを煽りながら小突き合って、けれど最後は結局二人ともこらえきれずに噴き出して大きな声で笑った。

 それはアリスが帰って来るまで続いたのだった。 




S4始まってちゃんとソルを練習するようになりました。
おかげで全然執筆は進みませんでしたが……
天上階はまだまだ遠いけれど、前よりちゃんとソルを使えるようになった気がします。
目指せ、天上階。
あ、年内にはエデン突入手前くらいまでは頑張ります。
頑張りたい。
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