BlueArchive -Strive-   作:笹の船

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誰にだって意地はある!

 飛鳥達はミレニアムサイエンススクールのグラウンドに来ていた。

 ミドリ達の飛鳥とフレデリックの戦っているところが見たいという願いをかなえようと、ダメ元でユウカの元にいき場所を貸してくれないかと頼んでみれば余りにもあっさりと許可が出てしまったからである。

 絶対に渋られると思っていたものだから、許可をしてくれたユウカに思わず三回ほど本当に大丈夫か聞き返して怒られてしまったほどだ。

 

「まったく……良く許可が取れたな」

「僕も驚いてるよ。……どうする? 正直、彼女達が僕達の力を見誤ってると思ってるんだけど」

 

 場所を使わせてくれているユウカや、物見遊山気分で見に来ている大勢の生徒──どこからか話が漏れたらしくグラウンドの外周沿いにかなりの人数の生徒がいた──に対してかなり失礼な物言いをする飛鳥だが、フレデリックはそれを咎めることなく肩をすくめた。

 

「まあ、念のためにジャック・オーも呼んだ。ちょっとくらい派手にやっても結界は何とか持つだろ」

『何かと思えば結界の維持をしてくれなんて。こっちに来てまで喧嘩するとは思わなかったわ。二人共、後でちゃんとご馳走してもらうんだからね』

 

 まるで狙いすましていたかのようなタイミングで法力通信を繋いできたジャック・オーに飛鳥とフレデリックは揃って苦笑いをした。戦闘力という意味では二人共彼女よりも強いが、どうにも頭が上がらないのはずっと()()()変わらない。

 けれど、そんな苦笑いもすぐに引っ込む。そして互いに真剣な表情で自分の得物を呼び出した。

 飛鳥が軽く手を振れば、その手に追随するように本のページが何枚も虚空から現れた。それらを手で包み込むような姿勢をとればページたちはその手の中に集まって一冊の本となる。

 フレデリックが軽く正面に手を伸ばせば、その手の中にもはや鈍器と言っていい大きさの剣が虚空から現れた。

 今回の戦いは、もう前とは違う。

 何のしがらみも、因縁も、使命もないただの戦いだ。

 フレデリックに飛鳥を憎む気持ちもなければ、飛鳥がフレデリックに対して負い目を感じるようなこともない。

 ただ互いに持てる力を持って闘いに臨み、勝つか負けるか(HEVEN OR HELL)。それだけだ。

 二人の雰囲気が変わったことに生徒達も気づいたらしく、さっきまであんなに騒がしかったはずグラウンドが嘘みたいに静まり返っていた。

 静まり返った世界の中、飛鳥が本を開きながらポツリと呟きを漏らす。

 

「手短に済まそう。長引くと僕が死んでしまう」

 

 だが、そんな呟きはフレデリックに聞こえてしまったらしい。

 

「上等だ。テメェの運動不足は、そろそろ解消するべきだと思ってた頃合いだしな」

「え。いや、フレデリックそれは──」

 

 こちらを睨みつけながら僅かに腰を落としたフレデリックを見て飛鳥は心の底から震え上がった。こういう時の彼は本気でそれを実現すると、飛鳥は誰よりも知っているから。

 そうして売り言葉に買い言葉のような形で真剣勝負が始まった(DUEL LET'S ROCK!!)

 地面を僅かにえぐりながらフレデリックがこちらに向かって飛び出してきたのを見て、飛鳥は慌てて魔法を発動させる。

 

「満たせ」

「オラァ!」

 

 カイザー理事の乗るゴリアテを押し止めた水を多分に含んだ立方体を射出するも、フレデリックはそれを大きく前に踏み込みながらジャンクヤードで斬り払う。

 おおよそ水を斬るような音と思えないような重い衝撃音と、赤熱したジャンクヤードの刀身で水が蒸発する音が響き二人の間に水蒸気が満ちる。

 互いの姿は見えなくなったが、それでも飛鳥は慌てることなくその場に屈みながら地面を撫でるように右腕を後ろから前へと流しつつ魔法を詠唱した。

 

小波(さざなみ)よ」

 

 飛鳥の言葉と共に、指先から地面をめくりあげるような勢いの水流が地面を駆け抜けていく。

 

「ふん」

 

 水流は鉄の塊同士がぶつかったような硬い衝撃音を立てて何かに防がれたが、飛鳥は慌てることなく屈んだ体勢のまま右腕で正面を払った。

 

「刻め」

 

 その手のひらの先に追従した開かれた本から鋭い刃が飛び出し、飛鳥の腕よりさらに前方を薙ぎ払う。

 刃は、やはりジャンクヤードに防がれたらしい。辺りに金属同士がぶつかり合うかん高い音が響き渡った。

 けれど、飛鳥は攻撃の手を緩めない。

 

(つるぎ)よ!」

 

 屈んだ体勢から立ち上がって交差させた腕を広げるように腕を払えば、今度はそれに追随する二冊に増えた本から人の体など真っ二つに出来そうな刃がフレデリックの左右から襲い掛かる。

 だが、フレデリックはそれを後ろに飛んで上に回避した。

 飛鳥の視線よりも上に飛び上がったフレデリックは、フロートを練成して宙を蹴る。

 

「光れ」

 

 空中を蹴り素早く距離を詰めてくるフレデリックを見ながら、飛鳥は冷静に魔法を詠唱して迎撃する。

 今度は帯電した立方体が本から射出され、それに気づいたフレデリックは舌打ちを一つして防御魔法(フォルトレスディフェンス)を展開した。

 バチバチ、と激しい音を立てながら飛鳥の魔法はフレデリックの防御魔法にかき消されるも、その衝撃によって後ろに弾かれ二人の距離は再び離れた。

 その隙に飛鳥は本に即時展開できる魔法(スコア)をテストケースにブックマークしなおす。

 それを見たフレデリックは逆手に持ったジャンクヤードの切っ先で地面を払った。

 

「ガンフレイム!」

「唸れ」

 

 ガンフレイムに対抗し、飛鳥はショートカットに残っていた風の法力による立方体を三発撃ち出す。

 正面に飛んでいく立方体と追うように上と下に別れて撃ちだされた立方体の内、正面の物がガンフレイムと衝突してかき消された。

 ショートカットに残っている魔法に射出できるタイプの魔法はない。だが、今しがた撃った魔法でフレデリックの動きを少しは止められるだろう。

 魔法を詠唱する為のリソースも六割ほど残っている。まだ慌てるような状況ではないはずだ。

 

「ヴォル──」

「なっ……!?」

 

 それが油断だったのだろう。

 いつの間にかかき消されていた下段方向の立方体と入れ替わるように、フレデリックが地面を這うような低い姿勢で突撃してくる。

 慌てて迎撃しよう本を構えようとした飛鳥だったが、到底間に合う訳もなく。

 

「テックス!!」

 

 顎に凄まじい衝撃を受け、痛みと衝撃で意識が飛びそうになるのを必死でこらえながら飛鳥は為す術もなく宙に跳ね上げられる。

 だが、それだけで終わるフレデリックではない。

 重力に従って落ちてくる飛鳥の背中にショートアッパーを撃ち込み、飛鳥を再び僅かに浮かせてきた。

 余りの痛みに心が折れそうになる飛鳥だが、それでも全霊でフレデリックの次の動きに意識を集中させる。

 地面に何かを無理やり突き刺すような音がした。

 その瞬間、飛鳥は次に何が来るか分かってしまった。

 それが今度こそ飛鳥の意識を確実に刈り取れるだけの威力(クリーンヒットヴォルカニックヴァイパー)を持つ技であることは明白だ。

 ……これはあくまでミドリ達に魔法使い同士の戦いがどういうものかを見せる為の模擬戦だ。これ以上飛鳥が粘れば、もっと派手なことになる。

 そうすれば、ミレニアムのグラウンドはめちゃくちゃになってしまうだろう。ユウカ達だって怒るに違いない。

 だから、もうこの辺りで諦めたっていいんじゃないだろうか。

 そんな後ろ向きな気持ちが飛鳥の中に湧き上がってくる。その時だった。

 

「「飛鳥先生ぇー!!」」

 

 モモイ達の声だった。どんな感情を乗せた声なのか、そこまでは飛鳥には分からなかった。

 ただ、それが飛鳥の体を無理やり動かすには十分なものだったのは確かだ。

 目を見開きながら、飛鳥は全身から法力を衝撃波に変換して放出(青色サイクバースト)する。

 

「ッ!! 僕にも意地がある!!」

「ぐっ……」

 

 攻撃態勢だったフレデリックは回避も防御もすることが出来ず、大きく後方へ弾き飛ばされた。

 それを視認するよりも前に、飛鳥は全身のマナをかき集めながら本を頭上に掲げる。

 

「ハーモニクスブーストッ!」

 

 テストケースを一番から二番に切り替え、凄まじい勢いでブックマーク内の魔法が切り替わっていくのを見ながら、飛鳥は望む魔法が登録されるのを見逃さず術式を終了させる。

 その時には再びフレデリックが凄まじい勢いでこちらに向かって走って拳を振りかぶってきていたが、飛鳥は鋭い視線で彼をしっかりと見据えながら魔法を詠唱した。

 

「ファフ──」

「唸れ」

 

 それと同時に地面が割れて隆起する。今度はフレデリックが宙に舞い上げられる番だった。

 だが、飛鳥はそれに対し追撃をしなかった。否、出来なかった。

 

「足りない……!」

 

 魔法を詠唱する為の、そして身を守る為の防御魔法を維持するためのリソースが枯渇しかけていたからだ。

 昂ぶった気持ちが急速に冷めていく感覚(K版マナ回復)と共に、マナが全身に満ちていくのを感じる。

 体に充実したマナを再び消費しながら、飛鳥は更なる魔法を詠唱する。

 

「拡げる」

 

 今度は炎をまとった立方体が五つ、体勢を立て直したフレデリックに殺到する。

 時間差や高さ、左右軸も少しずつズレたそれらをかき消すことはできないと判断したのか、フレデリックは再び防御魔法を展開しそれらを耐え忍ぶ。

 その間に飛鳥は再び空き枠になったブックマークに魔法を補充し、次いで風の立方体を再び射出した。

 それから意識を集中し、詠唱で消耗したマナを回復させる。

 さらにそこから先程まで射出してた立方体よりも二回りほど大きく、ゆっくりと進む立方体を撃ちだす。

 飛鳥の姿すら覆い隠すほどの大きさの立方体を追いかけるようにして、飛鳥はフレデリックとの距離を縮めた。

 フレデリックと違って、飛鳥は近接戦闘は不得手だ。出来ないわけではないが、フレデリックに懐に潜り込まれてしまった場合はどう考えても彼に軍配が上がる。

 故に、この行動は通常であれ場自殺行為に他ならない。

 だが、飛鳥はフレデリックという男をこの世の誰よりも理解しているつもりだ。

 面倒くさがりで、無愛想で、不器用な男だ。

 彼にとって今、飛鳥の魔法の波状攻撃にさらされている状況は非常に不愉快で面倒なものであると確信を持って言える。

 そして、飛鳥の魔法は決してかき消すこと自体は難しいものではない。

 同等以上の衝撃か法力をまとった攻撃で簡単に消えるものだ。それは、この闘いの最初に証明されている。

 だから、次にフレデリックがとる行動は──

 

「バンディット──」

 

 飛鳥の魔法をかき消しながらの強引な突進だ。

 飛鳥の身を隠していた立方体をとび膝蹴りでかき消しながら、フレデリックが飛鳥の眼前に飛び出してくる。

 

「光れッ」

 

 フレデリックの行動を完全に読み切っていた飛鳥は、冷静に両手を前に突き出して魔法を詠唱する。

 その瞬間、飛鳥の目の前が爆発した。爆発の炎がフレデリックを飲み込み、悲鳴を上げることも出来ず彼は再び後方へと吹き飛ばされていく。

 それを見ながら、飛鳥は再度魔法とマナを補充した。

 完全にパターンに入った、と飛鳥は確信した。

 飛鳥の強みは圧倒的なその制圧力だ。こうして次から次へ魔法を放ち、相手に思うように動かさずに勝利する。

 

「ヴィンス逆位層」

 

 本が中心に備え付けられた杖を召喚。さらに追加で炎の法力で生み出した立方体を再び射出。

 これまで真っすぐと飛んでいた立方体は、杖の力に寄ってボールのように地面を跳ねながらフレデリックに襲い掛かる。

 その不規則な動きに、けれどフレデリックは冷静だった。

 自分に向かって跳ねてくる魔法を前に、恐れることなく駆け出して空高く飛ぶ。その高さおよそ三メートルほどの高さだ。

 だが飛鳥とてそれを読んでいなかったわけではない。フレデリックに合わせて飛鳥も前に跳びあがっていた。

 

(つるぎ)──」

 

 だが、飛鳥の攻撃がフレデリックに届くその瞬間だった。

 フレデリックがかなり強引に体をひねりながら、ジャンクヤードを勢い良く振り上げる。

 

「墜ちろ!」

「ぐあっ!?」

 

 飛鳥の攻撃はフレデリックの脇腹を僅かにかすめるだけにとどまり、一方でフレデリックの攻撃は飛鳥の体に直撃をした。

 マズい、と飛鳥の背中に冷たい汗が伝う。

 緊急防御用の法力の為のリソース(バーストゲージ)はまだ溜まり切っていない。そして、恐らく地面への着地はフレデリックの方が先だ。

 このままでは着地時の隙で距離を詰められてしまう。

 いくら種を抜いたとはいえ、至近距離でのフレデリックの戦闘力は以前として脅威だ。

 だが何とかして耐え抜かねばならない。

 飛鳥が歯を食いしばると同時に背中に衝撃を感じ、後方に飛ばされている勢いを活かして後転して素早く体勢を立て直す。

 その時には既にフレデリックの拳が眼前へと迫っていた。

 それを本から出る防御術式で何とか防ぐが、フレデリックの猛攻は止まることを知らない。

 ショートアッパー、ボディブロー、それからジャンクヤードによる殴打。

 

「ファフニール!」

 

 果ては炎をまとった拳での突撃まで。凄まじい威力の攻撃が飛鳥の全身をきしませる。

 だが、それでも耐えきった。フレデリックはファフニールを撃った態勢で僅かに硬直している。こちらも防いだ時の硬直で動けないが、先に動けるとしたら恐らくそれは飛鳥だ。

 そんな計算を脳内で瞬時に行い、飛鳥は即座に羽織の裾を握ってフレデリックの足元を払う。

 舌打ちをしながらフレデリックが屈んでそれを防ぐのを見て、飛鳥はさらに再び足元を払うようにかがんだ姿勢で腕を払う。

 足元を薙ぎ払う刃をジャンクヤードで受け止めたフレデリックが、忌々し気に鼻を鳴らすのを見ながら飛鳥はさらに魔法を詠唱した。

 

「唸れ」

「ちぃっ!?」

 

 飛鳥の詠唱と共にフレデリックの頭上から球体が凄まじい勢いで降ってきたのに、彼は反応できなかった。

 球体に押しつぶされるようにダメージを食らったフレデリックの体は地面にたたきつけられたが、そこでは終わらずバウンドして宙に浮く。

 そこへ飛鳥はブックマークに残った魔法を全て詠唱した。

 魔法で即座に詠唱二回分相当のマナを回復し、稲妻をまとった立方体を撃ちだしフレデリックに追撃をする。

 彼が再び吹き飛ばされている間に、テストケースを三番に変えて魔法を二つ補充した。

 その時にはフレデリックも体勢を立て直していたが、そこで飛鳥は新たな魔法を発動する。

 視界が一瞬ぶれ、次の瞬間にはフレデリックの背が見えていた。

 すぐに振り向いてこちらを見たのは流石フレデリックと言ったところだろう。だが、それでも先に動いてるのは飛鳥の方だ。

 本のページを千切って腕を振り上げれば、何枚かのページがその後を追随する。それらはとっさに身を守ったフレデリックのジャンクヤードに辺り重たい衝撃音を響かせる。

 その衝撃の押され、わずかに距離の離れたフレデリックに飛鳥は追撃として本から大きな刃を繰り出した。

 だが、それがよくなかった。

 飛鳥の繰り出した刃に対し、少しだけジャンクヤードを傾けて刃を滑らせながらフレデリックが距離を詰めてきたのだ。

 マズいと思った時には遅かった。胸倉をつかまれ、その直後に額に衝撃と痛みが走る。

 想像以上の衝撃に飛鳥の体は後ろに転がり、それでも何とか体勢を立て直した時には目の前にフレデリックはいなかった。

 ほとんど反射だった。本を上に掲げ、そこから飛び出す機械腕で防御の態勢を取る。

 そこに、フレデリックが振り下ろしたジャンクヤードが突き刺さった。

 本を通じて衝撃が飛鳥の腕に伝わる。その痛みと重さに顔をしかめながら、飛鳥は無理やり魔法を詠唱した。

 

「開……け!」

「っ!」

 

 飛鳥の背後の空間が裂け、そこからいくつもの立方体が飛び出してくる。その気配を察していたのか、フレデリックはバックステップを踏んでから右方向へと猛然と駆け出した。

 額に脂汗をにじませながら、飛鳥は立方体の跳ぶ方向をフレデリックの方へと操作する。

 かなり強引な発動だったせいで、魔法が破綻しかけていた。コントロールを失い暴走をすれば最低でもミレニアムが宇宙空間に呑み込まれて消滅する。

 何とかそれだけは避けねばならないと、設定されていただけの数の立方体が射出され終わったタイミングで飛鳥は何とか術式を終了させる。

 

「っ……ハァッ……ハァッ……!」

 

 攻撃は当たったのか、フレデリックはどうなったのか。それを確認するよりも早く飛鳥はその場に膝を付いて肩で息をする。

 疲労と痛みでがっくりと項垂れそうになる頭を必死で支えながら、飛鳥は何とか視線を巡らせて辺りを確認する。

 どうやら、最終的にフレデリックにはそれなりのダメージを与えられたらしい。

 フレデリックもまた、膝を付いて肩で息をしていた。

 互いの息が整う頃、どちらが何を言うでもなく同時に立ち上がる。

 腕にかかって邪魔くさいと感じた羽織を、飛鳥が腕を払って除けた。

 首元に手をやり、辺りに響くほどの大きい音でフレデリックが首を鳴らす。

 静寂がグラウンド全体を支配し、凄まじい緊張感で満たされていた。

 

「あっ」

 

 誰かが何かを落としたのか、声を上げた。

 その瞬間、飛鳥とフレデリックが同時に動き出す。

 

「軌跡を描け!」

「御託はいらねぇ!」

 

 飛鳥が杖を本から取り出し、その先端を機械腕の手に包ませる。

 フレデリックが逆手に持ったジャンクヤードの柄を両手で握り、まるで銃を構えるかのような姿勢を取る。

 

「ディフュージョン!!」

「タイランレイヴ!!」

 

 飛鳥とフレデリック。二人の得物からそれぞれ凄まじいエネルギーを内包した弾丸……いや、砲弾が射出される。

 それらは二人の間でぶつかり合うと、轟音を立てて互いを喰いあった。

 そして、そこにあったことが嘘みたいに二つの弾はかき消える。

 だがそこで終わる飛鳥達ではなかった。むしろ、その後の行動を読み合ってすらいた。

 互いに撃ち出した弾を追いかけるように、相手との距離を詰めるべく前に駆け出していたのだ。

 お互いの攻撃が届く距離まで、あと数メートルもない。そんな時だった。

 二頭身くらいの丸っこいフォルムをした生き物がどこからか放り込まれ、二人の間に立ちはだかった。

 だが、それで止まれるわけもなく。

 

「剣よ!」

「潰れろ!」

 

 飛鳥とフレデリックはそれぞれ攻撃を繰り出す。

 

「守って!!」

 

 けれど、それがお互いに届くことはなかった。

 それどころか、互いの攻撃が何かに弾かれてしまう。その余りの衝撃に、二人そろってもんどりうって倒れてしまった。

 

「あなた達!! ヒートアップし過ぎよ!!」

 

 そこに目を吊り上げてジャック・オーが歩いてくる。

 そんな彼女の姿を見て、飛鳥もフレデリックも何とか体を起こそうとしたのを諦めて気まずいそうな表情のまま地面に大の字になるのだった。

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