ホロライブ×結婚生活 作:主義
別にトワを誰かを縛り付けない。トワはキミを縛らないし望まない。こういうことを言って欲しいとか望んじゃうと最終的に苦しむのは自分だから。
でも今日だけはちょっと望んじゃった。だって今日は特別な日だから。この日ぐらいは…。今日は結婚記念日。結婚して1年が過ぎた。お互いに仕事が忙しいこともあってどこかに出かけたりすることは出来ないけど。それでもトワにとってキミと一緒に居られるってのは嬉しいことだった。
結果的に言ってくれなかった。
「トワのことはどうでもいいの?」
「そんなことないよ」
「じゃあトワのこと好きじゃないの?」
「いや好きだよ」
「トワより大切な人ができたの?」
「できていないよ」
キミが冷静過ぎてトワの方がおかしいのかなと思っちゃう。結婚記念日にお祝いしたいとか愛の言葉とかを囁いて欲しいとか思っちゃうのは望み過ぎなのかな。トワはキミへのプレゼントは用意したけど今、渡したら…キミは迷惑かもしれない。
「そっかぁ。ごめんね。ちょっとトワがおかしかったみたい」
これ以上、言っても気付いてくれない。彼にとって今日はそこまでの日じゃない。ただトワが意識し過ぎていただけ。それにここで無理矢理言わせてもトワは嬉しくない。旦那さんの口から旦那さんが本気で思っている時に言ってくれた言葉じゃないと意味がない。
それからはなるべく変化を気取られないようにした。キミは悪くないし。これはただトワが期待しちゃっただけ。そう、期待し過ぎて、ただトワが勝手に失望しちゃっただけ。
お風呂に入ってすぐに寝室に閉じ籠った。今、キミに会っちゃったら何を言っちゃうか分からない。なるべく自分を落ち着かせるために『トワを愛してくれてる』『浮気はしていない』『今でもトワが一番』と静かな声で呟く。こうしているとさっきまで少し高ぶっていた心臓も落ち着きを取り戻す。
するとドアをノックする音が聞こえてきて「入って大丈夫?」とキミの声がする。さっきよりも落ち着けてはいるし、しっかりとキミと話せそうだから「うん。大丈夫」ということにした。
ドアが開いて、キミはトワの近くに座ってくれた。
「ごめん、トワさんに嫌な想いをさせちゃったのなら謝るよ」
「なんで謝るの。ただ仕事で色々あっただけだよ。キミの所為じゃないよ」
「それぐらい分かるよ。僕はトワの夫だから。トワさんの全てを理解しているとは言えませんが」
「…本当に大丈夫。トワの所為だから」
「僕たちは夫婦なんだし。トワさんの問題は僕の問題でもあるよ」
さすがに真っすぐ見つめられてそんなことを言われたら何も言えなかった。
「…じゃあ、今日って何の日か分かる?」
「結婚記念日だよ」
「し、しってたの!?」
「もちろん知ってたよ。結婚記念日なんて絶対に忘れるわけないですよ」
「…だったらやっぱりトワのこと好きじゃないの?」
「好きですよ」
「そうだったら…お祝いとかしてもよかったんじゃないかなぁ…って」
トワの言葉にキミは目を見開いて驚いているようだった。
「え…やっぱりお祝いとかした方が良かったですか?」
「う、うん」
「少し前にトワさんに聞いた時、お祝いをしなくてもいいと言っていたので」
「え、まじ?」
「はい。でも今考えればあの時のトワさんはとても眠そうであんまり思考が働いていなかったかもしれませんね」
「…トワ、そんなこと言ってたの!?」
「でも…眠そうだったので。もっとちゃんと聞けばよかったですね。一応プレゼントも用意していたんですけど」
「え、用意してたの?」
「あ、はい。結婚記念日ですし。用意しない人なんていないですよ。でもじゃあ…ちょっと待っていてくださいね」
キミはトワに待っているように行ってどこかに行ってしまった。
「そっかぁ…トワが言っちゃってたんだ」
少しでもキミのことを疑ってしまった……自分がいやだ。もしかしたら、トワのことをもう愛していないんじゃないかとか。そんなことないのにダメな方にばっかり思考がいっちゃってる…。
それから少しすると
「これをトワさんに」
キミはラッピングされた袋をトワに手渡してくれた。ちょっと今にも泣いちゃいそうなのを必死に抑える。
「あ、ありがとう…っ…」
「喜んでくれるのかは分かりませんが…」
「開けていい?」
「いいですよ」
そして慎重にラッピングを開けていくとその中に入っていたのは。
「『ハーバリウム』」
「ちょっと前にハマっているみたいな話を言っていたからね。他にもぬいぐるみとかもっと実用的なものの方がいいかなぁとか迷ったんだけど最終的にハーバリウムにしたんです」
うれしい。
どんなプレゼントでもキミがトワのために用意してくれたものだったら。
でも特にトワが欲しいものとかだったらもっと嬉しい。
「…う、うれしい」
「トワさんが喜んでくれるならよかった」
「嬉しい。キミが手作りしてくれたハ~バリウムだもん。嬉しくないわけないよ」
キミがくれるというだけでも嬉しいのに…。ちゃんとトワのことを考えてくれてプレゼントをくれた。これだけでもキミがトワのことを愛してくれているのが伝わって来る。
愛されると分かっただけで今まで張りつめていた糸が全て解けた感じがして、トワはその場に座り込んじゃった。キミはすぐに心配そうな顔でトワの元に駆け寄ってくれる。
「トワさん、大丈夫ですか?」
「だいじょうぶ。ちょっと安心しちゃって」
「安心?」
「うん。キミがトワのことを想ってくれていると知れたから」
「僕はいつでもトワさんのことを愛していますよ。それにそれは結婚する時に誓いましたから」
「そ、そうだけど。キミってあんまり愛を囁いてくれたりとか言ってくれないじゃん。だからやっぱり心配になっちゃうの。トワって本当にキミのことを愛されているのかって」
トワが好きなだけでキミの愛がもう冷めているかもしれないと思っちゃうと心配で眠れなくなることもあった。一方通行だったら悲しいか。
「大丈夫です。僕はいつもトワさんのことを愛しているので」
「…ほんとうに?」
「本当ですよ」
「しんじていい?」
「信じて大丈夫ですよ。どんな時でもトワさんのことを想っていますから心配しないでください」
「じゃあこれからもずっとトワと一緒にいるよって言って」
「これからもずっとトワさんと一緒にいますよ」
「…絶対だからね」
「はい、絶対です」
最後にキミはトワのことを抱きしめてくれた。キミはとっても温かくて抱きしめられている間はずっと心地が良かった。
それからトワとキミはより一層幸せに過ごしたのだった。