最近、仲間の目つきが怖い件について 作:きのここみっくす
頭空っぽにして読んでね。
俺の名前はエイト・アルハイト。
よく間違えられるがアルバイトじゃない、アル『ハ』イトだ。
こんな名前をしているが実は元日本人だったりする。
つっても、前世の話だが。
前世、親が太かったことや、ちょっと人間不信に陥ったりして、ニート生活を満喫していた。
その日も新刊のラノベを買い、ウキウキで家に帰っていたところに、頭上からタライが降って来たのだ。
本当に意味不明なのだが、マジで降ってきたのだから、そこは理解してほしい
まぁ、そこまではよかった……よくはないけど。
ともかく俺はタライが頭にぶつかり、脳に響いて倒れてしまった。
で、横になったところにもういっちょと言わんばかりに何かが落ちて来て、頭にドンッ……でお陀仏ってわけだ。
それで何の因果か、転生しちまったわけだ。
それもファンタジー全開の異世界に。
幸運なことにガタイに恵まれ、顔にも恵まれた。
が、前世でも性格ってのは治らないもので、結局モテることはなかった。
それで俺は今、冒険者という職業についている。
仲間と世界中を回って、湧いて出た
だがさっきも言った通り、ガタイに恵まれた俺は何とか前衛職で頑張っている。
いる……のだが。
最近、仲間の目つきがすごく怖い。
冒険者と言うのは一人でやる仕事ではない。
パーティと言って、複数人で集まって行動する仕事なのだ。
基本的には決まった仲間たちとともに、自由に冒険して要請や依頼に応じて魔物を討伐。
そうすることで金をもらう仕事。
なのだが……その同じパーティの仲間の目つきがすごく怖い。
なんならもはやアレ、殺気感じるレベルだもん。
最近だと死ぬんじゃねぇかな、と思いながら冒険してる。
今もそうだ。
次の街に向かうべく森を抜けようと進んでいるのだが、仲間たちの目線は前ではなく、俺の方を向いている。
顔は確かに前に向いているのに、長い戦いで鍛えられた感覚が刺さる視線を確かに感じている。
長い戦闘の経験がこんなところで生きているのだ。
「エイト……」
「うわぁっ!? ……な、なんだよ、アルーラか……」
「ん……」
突然後ろから声をかけられ、俺は驚いて振り返る。
そこには身長の低いフードを深くかぶった少女が一人、笑えない目つきでこっちを見ていた。
片手にはナイフが握られている。
彼女の癖というか、何というか。
人の背後を取ってナイフを突きつけてくるのが癖だとか言う変な奴。
彼女の名前はアルーラ・エステラルダ。
フードの下から見え隠れする、肩ぐらいまでの長さの銀髪が特徴的な少女だ。
主に先行しての偵察などを務めている。
……だからこそ。
俺の後ろにいるはずが、ないのに。
「……なにしてんだ?」
「……虫退治?」
「虫? そんなのいるのか……? いたとしても
「……ん」
その、ん、はなんなんだ……?
俺を虫と言ってるわけじゃないよな……。
と言うか、ナイフ持ちながら言わないでほしい。
怖えよ……。
とか思っていると、前の方を歩いている水色の髪の少女が口を開く。
「あら、虫ならいるわよ? 貴方の後ろに」
「えっ!? どこだ!?」
虫……俺たちの間で虫とは、小さいアレのことではない。
大きく簡単に人を食らってしまうよな魔物のことを指す。
だから、冗談で言うようなものではない……はずなんだけどな。
「……い、いないが?」
「あははっ!! 小さい虫よ!!」
「……ん、虫は……前にいる……」
「どこだよ……」
アルーラに言われるがままに前を向くが、虫はどこにもいない。
笑った水色の髪と少女……ルイナがいるだけだ。
目は笑ってないけど。
彼女は主に前衛を務める剣士だ。
基本的に俺と彼女が前衛で戦うことになる。
バスタードソードと言う大きくて、細身の剣をで強大な一撃を叩き込む頼りになる剣士……なのだが。
ちょっと暴力的過ぎる。
何でもかんでも暴力で解決しようとするのだ。
一回、依頼の報酬で揉めた時、相手をぶん殴って金品全部取ろうとしてたからな、こいつ。
流石に全力で止めたから問題なく終わりはしたけどさ。
「ったく、虫なんて一々気にする必要ないでしょ。それとも、ボクが撃ち落とそうか?」
「あら。どうするつもりかしら?」
「魔法か、矢、どっちがいい?」
そう言って後ろの方で弓を構える少女が一人。
金色の髪に尖った耳、名をエリー。
一般的にエルフと呼ばれる種族の少女だ。
年齢は……まぁ、追求しない方向で。
彼女は主に魔法と弓を用いた遠距離攻撃要員。
活躍の幅広く、魔法が使えなくなったとしても、弓での攻撃で援護をして、いつも大活躍だ。
実力的にも引く手数多なのに、なぜ付いてきてくれるのか、わからない奴でもある。
……確かに問題はあるけどさ。
彼女、森の中で生まれ育ったからか、薬学の知識が半端ない。
それこそ専門家にも引けを取らないほどで、いざという時、その知識が役に立つことは多い。
だが、この前見てしまったのだ。
俺の飲もうとしていた水筒に、何か葉っぱをすり潰したようなものを入れていたのを。
当然、怖くて飲めないからさ、誰にも見られていないところで捨てたさ。
で、そのあと、そわそわしてチラチラとこっち見てるの。
いやー、あの反応は毒盛った反応だよね。
「どちらにしろ叩っ斬ってやるわ」
「はッ。ならその脳天貫いてやる」
「なんでやり合う話になってんの……?」
殺気すごくね。
やっぱヤベーよな、この殺気。
普段から多少の殺気はあるけど、今日は特段酷い。
なんなら殺気で殺されそうだし。
「虫などと……恐ろしい話ですね……」
「恐ろしい? 虫が? ……そんな怖いのか?」
突然そんなことを呟いた、隣で歩く清楚な少女に俺は疑いの目を向ける。
この世界では珍しい真っ黒な髪を持つ少女。
名前をゼノア。
一時期、聖女だの魔女だのと大話題になっていた少女だ。
仲間入りしてからは、その手の話は聞かないが。
このパーティでの主な役割は回復。
魔法を用いた回復と呪術によるデバフ。
そして聖術と言う、一部の神官にしか使えない特殊な魔法によるバフ要員だ。
彼女も彼女で……色々と問題がある。
「ええ。矮小な生命、聖罰の対象すらならないか弱き存在。ああ、どう滅せばいいのか……」
多分この中で一番危ないのがこいつだ。
生まれ育った環境のせいか、ちょっと思考が過激過ぎる。
大抵の行動にまず『滅する』ことが付いて回る。
邪魔だから『滅する』、いらないから『滅する』。
そして酷い時は普通の人間は浄化して廃人化させかけたことがあった。
……まぁ、あれは無理なナンパを仕掛けた、向こうも悪かったんだけどさ。
悟り開きかけてた顔してたもん。
「そうだ。呪い落としましょう! 暗き焔にて燃やし尽くせば……」
「山火事になるぞ!? ……この場合、森火事か?」
と、まぁ過激派。
ルイナとの相性は最高地点に達しているが、最近は何かで喧嘩している様子を見る。
一緒にいる以上、仲良くして欲しいところだ。
……以上が、俺の仲間、パーティだ。
パッと見、ハーレムでしかないんだが、どうにもあっちこっちから殺気がダダ漏れな訳で。
その視線の先は俺がいるわけで。
要するに最近、仲間の目つきが怖い件についてどうにかしたいわけで。
……どうにもならないかなぁ。
そんな風に諦めかけている俺だった。