ついに夏が到来した。世間では実家への帰省、海でバーベキュー山でのキャンプなどなど様々なレジャーに人が集まり混雑している。それはシャンフロも同じで夏休みに入り新規で始めた学生らによって始まりの街周辺はごった返していた。
そんな彼らと同様に僕と永遠も一日中ログインしている...などということは無く、むしろログインする時間は減っていた。いくら世間が休みだろうとタレント業であるモデルの永遠はテレビの出演や撮影などで忙しい。むしろ多くの人が暇となった夏休みに入ってからの方が忙しいだろう。
そういうことで中々シャンフロにログイン出来ず世間の人たちが羨ましいなぁと思っている所だ。
永遠が仕事をしている間少なくない時間暇になることがある。そんな時はいつもシャンフロ関連の掲示板や情報サイトを見ている。暇になった今も掲示板を見ている。
すると気になる情報を見つけた。
「ヴォーパルバニーを連れた半裸のプレイヤー、サンラクの目撃情報」
どうやら僕たちがログインしていない間にサンラクがシャンフロを始めたらしい。
しかももうエムルを連れているという、これは永遠にサンラク探しの為にこき使われるな...遠くない未来を想像し少し楽しみになる。
「どうしたの、望くん。なんかにやけてるけど」
「いや、このサイトを見てこれから楽しくなるだろうなって」
そう言って永遠に今まで自分の見ていたサンラクの情報を見せる。すると彼女も笑う。いや嗤うの方が正しいか、滅茶苦茶悪人フェイスだし...
「望くん、今日からの予定どれくらい変更できそう?」
「永遠が撮影を速攻で終わらせれるなら毎日6時には帰れるようにして見せる」
「上等」
どうやらやる気が出て来たらしい。なんか雰囲気が変わった気がする。
なんかなぁ...サンラクが出てきて雰囲気が変わるってサンラクに負けた気分になる。
これが僕の方が先に...てヤツか。今まで理解できなかったけど少し理解できた気がする。
そんな事を考えてたら永遠がにやけながら僕の顔を覗き込む。
「安心しなよ、別にサンラクくんはそういうのじゃないし望くんの方が大切だから」
「」
はぁ???
カッコ良すぎる...完全に心をつかまれた。あんなん反則でしょ。
どうやら僕の心の声は漏れていたらしい。なんか凄い恥ずかしいし凄い嬉しい。
この言葉を貰えモチベーションが凄い事になった僕は残りの仕事を爆速で終わらせた。
「永遠、サンラクくんがサードレマ付近にいたらしい多分いるならそこ」
「了解、ログインしたら速攻で行く」
情報伝達をしっかり行いシャンフロを僕の家からログインする。
目を開けるとそこは兎御殿、最後にログアウトした場所である。
「あっ‼お兄ちゃんお帰りなさい、久しぶりだね」
「ただいまゼッタ、いきなりで悪いんだけどエムルのとこに行こうと思うんだけど行ける?」
「もちろん‼でも最近、エムルお姉ちゃんは開拓者の人と一緒に居るからここにはいないよ?」
「うん、だからサードレマに行こう。多分だけどそこにいる。」
「分かったのお兄ちゃん‼」
そういって門を開いてもらいサードレマの路地裏に転移する。
路地裏から出ると大通りで何やら半裸の男と女の子が言い争い?をしていた。
「あ、アレはおねえちゃんなの‼」
「あれが...」
僕たちは人混みに隠れながら言い争いの行く末を見守る。
一応ゼッタにはフードの中に入ってもらおう、ここでバレたら面倒だし。
「どうやって!ヴォーパルバニーを!テイムしたの!?」
言い争いをしている女の子の方は見知った人であったので当たりだと思い注視する。
遠いから断定はできないけどアレは頭のおかしい動物園のリーダーである園長、そして隣の半裸の男がサンラク。
「いやぁどうやって、と聞かれましても俺自身よくわかって...」
「そうだよねぇ、こういうのは皆で共有するべきだよねぇ革命騎士サンラク君?」
サンラクが頑張ってしらを切っていたところに我らが女王様が現れる。そうアーサー・ペンシルゴンその人である。サンラクは驚いたのも束の間すぐさま逃げれるように体制を整える。
「出たな、鉛筆騎士‼」
「こらこら、ここじゃアーサー・ペンシルゴンだよサンラク君」
どうやら二人で白熱しているっぽい、なので僕はその様子を見ている野次馬たちの群れの中を
通り抜けサンラクを捕まえやすそうな場所に移動する。
「来ると思ったわバーカ!」
どうやら二人の戦闘が始まったらしい。良く鉛筆の攻撃を避けられるなサンラク、まだレベルが低いだろうにこれが主人公の風格ってやつか...
「エムル!戻ってつかまれ‼」
「はいっ!?」
「じゃぁな鉛筆‼」
どうやらサンラクは逃げようとしてるっぽい。そろそろ出番かな...
ペンシルゴンの方を見ると向こうもこっちの場所を把握しているのか目線をくれる。
サンラクがペンシルゴンと園長の反対方向、つまり僕の方に走ってくる。
「まぁ、私には忠実な騎士が待機してくれてるんでね」
「久しぶりサンラクくん、女王様の命令だから取り合えず捕まってくれ」
「あの鉛筆が真に部下だと認めている男...ランスロットか‼」
僕はサンラクに対して完全に意識されていない状態からナイフで切りかかる。
しかしサンラクは視認してからの一瞬でその攻撃に短剣で対応し受け止めつつ、攻撃の衝撃を使い戦線から離脱する。なんで受け止めれるんだよ...
「このゲームでも鉛筆の犬かよ蛮族」
「いや、人生ずっと彼女の部下だよ」
その言葉を聞き多分苦笑いしているサンラク。鳥頭だから正確には表情が分かんないんだよね...
少し間を開けて再び襲い掛かる。次はデスさせるつもりで攻撃を加えていく。
攻撃を数回避けられた後僕とサンラク君の間に魔法が飛んでくる。
「ちょっと!ヴォーパルバニーちゃんがダメージを負っちゃうじゃない」
邪魔してきたのは園長。どうやらエムルが傷つくかもしれない事に怒ったらしい。
彼女はこんなんでもトッププレイヤー、こんな短剣でサンラクを狙いながら受け流せるほど優しくはない。ペンシルゴンの方を見るとヤレヤレみたいな感じにしてるから許可は下りた。
「正直、動物ばっか追ってんの気に食わなかったし一回殺しとくか」
「舐めないでよ、これでも上位勢なんだから」
個人的にムカつくことが数回あったので一回サンラクの事は置いといてストレス発散しようと思う。こいつら自分の事優先させてこの前にレイドを失敗させやがった。あの時は尻ぬぐいが大変だった...許せん
園長は高位の呪術使い、なので近距離戦闘はそんなに強くない。なので手にしている短剣を用いて近接戦闘を仕掛けたい。
僕は地面を蹴り上げて園長に接近しようとする。
園長もそれを容易に許すはずもなく呪術を用いて座標固定をし足を潰そうとしてくる。
結構発動までにラグがあるな...余裕をもって避けれそうではある。
「避けてばかりで攻撃できないのかしら?」
「あんまデカい顔すんな」
しばらく回避に専念し相手の出方を伺っていると軽く煽られる。
僕は冷静じゃ無かったらしい、煽りに乗って僕は攻撃に転じる。
捕縛系の呪術を縦横無尽に動き回避しながら接近する。
「魔法職だからって近接格闘が出来ないわけじゃない‼」
そう言いながら園長は杖を器用に使い僕を牽制する。ふむ、中々上手いな...
僕は装備していた予備のナイフで園長の杖との打ち合いをしつつ元から持っていたナイフを投げる。
園長はいきなり投げられたナイフに驚き反応することが出来ず、そのままナイフが足に刺さる。
やっぱりこれが普通だよ、サンラクがおかしかったんだ...
「中々やるじゃないあなた」
「それはどうも、まぁもう僕の勝ちなんだけど...」
「何を言っt...!?」
園長は言葉を言い切る前に足から崩れ地にひれ伏してしまう。
僕の使った短剣には元阿修羅会の高レベル毒使いが作った毒が塗られている。
なのでいくら上位プレイヤーでも耐性系スキルを取っていないとこの通り効果は抜群である。
僕は地面に倒れ顔を顰めている園長の顔を覗き込む。
「ねぇ、今どんな気持ち?」
ニヤリと笑い聞いてみる。一度使ってみたいセリフTOP10を使えた‼地味に嬉しい。
悔しそうな顔をしてこちらを睨みつけている園長、これが普段ペンシルゴンの感じてる気持ちか、なんかいい気分だな...彼女があんなのなる理由も分かる気がする。
「まぁ、これからは自重して生きなよ」
そう言って止めを刺す。あぁーいいストレス発散になった。
殺しきった所でペンシルゴンに話しかけられる。
「ランスロット、君凄い悪い顔してるけど気づいてる?」
「お兄ちゃん今凄い顔してるの...」
「ねぇー」
「マジか...」
「そんな顔してると悪人に間違えられるから気を付けな」
「お前が言うな」
サンラクは取り逃がしてしまったがまぁどうとでもなるだろう。
園長をキルして得たドロップアイテムをペンシルゴンに渡しサンラクを追うことにした。
ランスロットも上位プレイヤーなのにどうして園長に気づかれなかったのか
ランスロットは顔にウェザエモンの呪いが掛けられており目立つため仮面をしている。仮面は「化かしの狐面」という認識阻害のアクセサリー。認識阻害と言ってもPNを表示しないだけ。なので元より面識のある人じゃないと誰かは分からない。
また、メインウェポンの斧を使っていなかったのも理由の一つ。
一応ランスロットの二つ名的な奴は「蛮族騎士」、「忠犬の蛮族」。
シャンフロではペンシルゴンの騎士として名が知られている。