墓守のウェザエモンに挑戦しそれなりの時間が経過した。
ペンシルゴンの補助があるもののサンラクと僕でウェザエモンを大分抑え込みいい感じでここまで来れている。カッツォは見れていないけどきっと頑張っているのだろう。
あとどのくらいでクリアなのだろうかそう考えているとウェザエモンがガシャンと音をたて膝から崩れ落ちる。倒した訳では無いので警戒は解かない。
「倒した...というわけじゃ無さそうだな」
初めてみるサンラクは少し困惑しているようだ。
てかカッツォお前なんて体勢してんだよ、麒麟の首に縄で自分ごと縛るとかウェザエモンが目の前に居なかったら爆笑してたわ。もう少しまともな方法があっただろうに...
少し近づいてきたペンシルゴンが警戒しつつサンラクたちに告げる。
「来るよ二人とも...ここからがヤバい。昔メンバーがマシだった頃の阿修羅会がここまで来たけど一度っきり。便宜上第三形態と呼ぶけど...ランスロット含めてね」
「コイツでも無理だったのか...」
「おい僕をなんだと思ってるんだ鳥頭」
一度本気で僕をなんだと思っているのかを問い詰めた方がよさそうだ...
兎も角かつて僕たちが戦った時、一瞬でHPを全損させた衝撃波。今回はしっかり対策を立てているのであの攻撃を食らうことはない。でも今なら避けられるのだろうか少し興味がある...
「ここから先は未知の領域、覚悟を決めてね」
「初見攻略はゲームの基本だ、覚悟なら最初から決まってる」
カッコいいなぁ主人公。僕は時が経ち正確に思い出せないとはいえ原作知識がある以上初見攻略とは言い難い。絶対にあんな事は言えないなぁ。
「あ、もしダメだったら自力で何とかしてね?」
「おい!」
サンラクの抗議の声を挙げると同時にウェザエモンの鎧に亀裂が生じる。
その瞬間ペンシルゴンが瓶をウェザエモンに投げつける。
瓶が割れ液体を浴びるウェザエモン。ヤツの咆哮モーションはキャンセルされる。
「よっしゃビンゴォ!」
「何したんだ!?」
ペンシルゴンの行動を全く理解出来ずに困惑するサンラク。
予想が的中しテンションの上がっているペンシルゴンがサンラクに解説する。
「このゲームさ、世界観とか設定が攻略の糸口になるとおもって私はずっとウェザエモンの事を「神代の技術で体を機械化したサイボーグ」だと思ってたわけよ。だけどさ、サンラク君の言ってた「死にぞこない」って単語から考えて思考の過程は省略するけどアイツ、「アンデッドモンスター」なんだよ」
そう、ウェザエモンはあんなSFチックな鎧を着たサムライマシンなのにアンデッドモンスターの分類になる初見や情報なしでは気づけない設定なのだ。僕も初めて漫画でその姿を見た時ロボットにしか見えなかった、
「だからさ、シャンフロのアイドル聖女ちゃんが丹精込めて作った「聖女ちゃんの聖水」...裏ルートで大枚叩いてゲットした対アンデッド最強クラスのポーション流石の威力だね」
聖女ちゃんの聖水...何度聞いても意味深にしか聞こえない。が別に普通の聖水である。
これは頭が汚れ切ってるんだろうな...
これを初めて聞いた時ビックリしてちょっと反応し過ぎてしまった。その結果隣にいたペンシルゴンに思いっきり足を踏まれた。いやお前もそう思っただろうに、理不尽である。
兎に角、聖女ちゃんの聖水を浴びたウェザエモンは先ほどの姿とは異なりサイバー的な機械の姿からまるで幽霊のようなフォルムとなっていた。
ペンシルゴンとサンラクはもう戦う気満々でウェザエモンを見ている。けどさぁ...
「二人ともやる気満々の時に悪いけどさぁカッツォを助けてやろうよ...」
二人とも忘れてた、という顔をしカッツォの方を見る。
そこには頭と胴の無い中途半端な姿に変貌した戦術機馬【麒麟】、その前で困惑しながらファイティングポーズっを取るカッツォ。なんかシュールな光景である。
「流石にアレとウェザエモンを合体させたら無理だろうからペンシルゴンはカッツォのフォローで問題ない?」
「はぁ仕方ないか、じゃぁ二人ともそっちを任せるよ」
「「任せろ」」
別に勝算が無い訳ではない。むしろいける気しかない。こっちにはサンラクがいる。それが勝てると思う理由。取り合えずペンシルゴンと別れてサンラクと共にウェザエモンの前に立つ。
「俺が先に行く、初見でクリアしてやる...」
「死んだら交代ね」
と言ってサンラクがウェザエモンに肉弾戦を仕掛ける。
どうやらサンラクはウェザエモンを倒す気でいるようだ。あ、頭でパリィした。実際見てみるとガチで意味が分からん。頭を下に向けるからタイミングも取りずらいだろうし凄いな...
そのままサンラクは両手に持った双剣でウェザエモンに攻撃を加える。
右へ左へ空中へ...ウェザエモンの周りを縦横無尽に駆けながら距離を離さずに戦闘を行う。
「ふはははははは!」
盛大に笑ってやがるテンションマックスだなアレ。
そのまま時間は経過していきその時は訪れる。
「そ、の、断片...アリス、は...紡が、れた、か」
ここまで話すことの無かったウェザエモンが声を発する。
その事にサンラクは驚愕するも僕はとうとう来たかと身構える。
この後の攻撃からはサンラクが必ず受けきれるとは思わない方がいいそういう類の攻撃だ。
「行くぞ...「二号計画」の、申し子よ...そして我が、呪いを、受け、し者よ。我が、誓いを...踏みにじる...であれ、ば...我が、「晴天大征」にて...潰えよ」
次の瞬間ウェザエモンによる攻撃が開始された。
「断風」
「つぉお!?」
「雷鐘」
「そぉぉ!?」
「大時化」
「だあぁぁ!」
超速の居合から雷の雨そしてイカレた投げ技...よく避けれんなコレ。
僕は自分の番が来るまでひたすら脳内でイメージを作り攻撃を避けれるか試す。
サンラクはそのまま初見技である火砕龍や灰吹雪を避ける。
今日何回目かの、なんで初見で避けれんだよタイム。やはりアイツは人外である。
「晴天大征、流転と手向けを以て終局と為す」
「速っ!」
サンラクは避けれない事を確信したのかアイテムを天に投げる。
「晴天転じて我が窮地の一太刀。我、龍をも断つ...【天晴】」
回避を試みたサンラクだったが回避をキャンセルされ無慈悲にウェザエモンの一太刀を受ける。
そのままデスしたかと思われたがサンラクは復活する。
「土壇場で成功!究極奥義セルフ蘇生ィィ‼」
「いや駄目だからね、スイッチ」
「なあぁ!」
このまま放置すると継続しそうなのでしっかり咎め僕が前に出る。
サンラクに最後の美味しいところを持って行かせたくはない。サンラクには悪いが偶にはこういうヤバいやつを倒してみたいんだ。
今までやってこなかった圧倒的格上との戦闘。こんな呪いとかいう大層なものを貰ったんだやるしかない。
「しからば、我が窮極を超えぬ限りこの身は斃るることあらず...晴天大征」
そして始まる第一フェーズからのウェザエモン総復習。
ごめんけど一発で終わらせるつもりだ。こんなとこで躓いてられない。
「断風」
超高速の居合。首元に殺気を感じる。けれどこれは今までに何度も見て来た攻撃なので余裕をもって最小限の動きで見切ることが出来る。
「火砕龍、灰吹雪」
火砕龍はサンラクの戦っている姿をみてイメージした通り簡単に避ける事が出来る。問題は次の灰吹雪。持っている身体能力すべてを使い危険だと感じる場所から何とか逃れる。
やべぇ、避けた時の体勢が良くない。次の攻撃、避けれるか?
「大時化」
良かった大時化だ...殺気の感じた腕と胴を有する能力を精一杯用いて無理やり体を捩じる。
ウェザエモンの手が迫る中紙一重で避けきることに成功する。
危なかった...これが雷鐘だったら死んでたな。
「雷鐘」
そして最後の雷鐘。最後だと油断せずひたすらに避ける事だけを考える。
そして5秒が経過し雷鐘が終わる。案外集中をすれば避けれるらしい。
そして最後の攻撃が訪れる...
「晴天転じて我が窮地の一太刀。我、龍をも断つ...【天晴】」
振り下ろされる即死の斬撃。
僕はこの墓守のウェザエモンを倒すと決心してからこの技から生き残る方法を必死に考えていた。
回避はシステム上行うことが出来ない。また武器破壊も今となっては叶わないだろう。ならばどうするか、武器を弾く他あるまい。サンラクのようにクリティカルで、とまでは行かなくても筋力で攻撃をそらす事は出来よう。
振り下ろされる斬撃の到達地点を感じ取り剣の軌道を予測する。
そして僕もそれに合わせて持っている中で最も硬いラブリュスで肉断斬骨を発動させる。消費するHPは全体の9割9分9厘、要するに99.9%どうせ即死なら全部このスキルに乗せても問題あるまい。
「弾けろ‼」
ウェザエモンの剣に僕のラブリュスが側面から衝突する。
僕の持っているすべてをぶつけた一撃はウェザエモンの【天晴】を大きく弾く。
即死の一撃は大きくそらされ不発に終わる。
「ウェザエモン、僕の勝ちだ...」
「...見事だ」
ウェザエモンはこちらを捉え佇んでいる。
「晴天転じて我が窮極の【天晴】、言葉は移りて祝いに転ず...天晴である、よくぞ我が窮地を見切った」
「どうも...」
「重ねて、天晴である...我が呪いを受けし者、「拓く者」の、末裔よ...」
ウェザエモンはもうそろそろ役目を終えて朽ち果ててしまうようだ。
脚が崩れてしまいそうになっている。だがウェザエモンは僕の頭に手をのせる。
「我が、呪いを、受けし者、よ。そなた、の覚悟を認め...祝い、を授けヨウ...」
そう言って何かを僕に施す。そうすると最後の力を使い切ってしまったのかまず足が崩れ落ち次に胴体と、崩れていく。
「我が、身...朽ち果、テ...眠、る...嗚呼、セツ、ナ...今、ソコ、へ...」
最後にそう言い残し、ウェザエモンの頭部が崩れ落ちてしまった。
「おい!よくも俺の獲物を‼」
「倒し切っちゃたよ...」
「ランスロット、君ホントに凄いよ‼」
大興奮でこっちに走ってくる3人。そしてふと冷静になる。
「ていうか終わったのか?」
「ここから連戦だったら俺泣くよ?」
「流石にそれはないでしょ...」
ユニークシナリオが終了したというアナウンスが無いため3人は不安になる。
僕はそんな3人を無視して勝利の余韻に浸る。コレ最高にいい気分だなぁ...
「アーサー、ランスロットそれにサンラクとカッツォも本当にありがとう。私の...いや遠い過去に「セツナ」が抱いた願いは果たされました」
「セっちゃん...というかセツナってあなたのことじゃないの?」
「いいえアーサー。私は彼女の残した思いの残滓のようなもの。役目を終えれば消える存在」
「あぁ、だから「遠き日の」セツナなのか...」
「セっちゃん...」
僕は知っていたのでペンシルゴンたちのように衝撃は無いが一応驚いているふりをしておく。ペンシルゴンは割と僕の事を見ているのでやらないと後でしっかり問われるだろう。
そうしてセツナの話を無言で聞く。
「最後に、アーサーこれは「セツナ」としてではなく「私」自身があなたに贈る言葉」
「へ?」
「いつも「私」に会いに来てくれてありがとう。大好きよアーサー」
「え、あ...こちらこそ」
「まぁランスロットには負けてしまうかもだけれど...」
「今なんて言った!?」
唐突な僕を刺しに来たセツナの言葉を問い詰めたが彼女はただ笑みを浮かべるだけで何も言わない。
「じゃぁ二人で幸せにね」
そうセツナが言うと完全に消滅してしまう。
「なぁペンシルゴン」
「ぐす...泣いてないよ」
「サンラク君流石に聞いちゃダメじゃない?」
ノンデリなサンラクを責めるとカッツォはうんうんとうなずいてくれる。
多分サンラクを責めれるから乗ってるだけだが今はいいや...
そうしてサンラクを1対2で攻撃し続けていると、ペンシルゴンが顔を手でゴシゴシふく。
「まぁ俺もペンシルゴンに涙を流す機能があったとは驚きだけどな」
「やはりお前もそう思うかカッツォ」
「コノキモチ...コレガ、ココロ?」
「やはり前回のでは効き目が薄かったか...再教育だなこれは...」
「待て!話し合えばまだ分かり合える」
「ここに来てPKは流石に食らいたくない‼」
ワイワイというにはおかしいだろうが男子3人で騒いでいる内にペンシルゴンの気持ちの整理は出来たようだ。こちらを向いて口を開く。
「3人とも私の我儘を聞いてくれてありがとう。お陰でシナリオクリアできた。」
ペンシルゴンはそう言い切るとニヤリと笑う。
「さぁ報酬確認と洒落込もう」
『墓守のウェザエモンは永い眠りをついた』
『セツナの残滓は遠き日の願いを終えた』
『ユニークシナリオEX『此岸より彼岸へ愛を込めて』をクリアしました』
ランスロットは簡単そうにやっているけど周りから見たら変態