鉛筆騎士の腹心   作:姉小路

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カモって美味しいよね

我が主の手によって動物狂いの変態たちの巣へと放り込まれてから一週間ほどが経過し「黒狼」との談合の日がやってきた。

「SF-Zoo」との交渉は意外にも争いなくスムーズに進んだ。

理由は簡単、皆の妹ことゼッタを連れて行ったからに他ならない。

奴らは「夜襲のリュカオーン」についてはパターンを見つけ出したらしいがまだヴォーパルバニーたちに関しての情報はそうたくさん得ている訳ではない。

そのため僕はゼッタを連れて行き情報をチラつかせまくった。

以前サンラクにバラされてからずっと隠していた情報だ、奴らが無視できる筈もない。

結果、見事にあのアホ共は喰い付き目の色を変えて情報を要求してくる。

そうとなれば話は早い、曖昧な情報をそれっぽく言いこちらの要求を飲んでもらう。ただそれだけの事である。

話している途中こっちが何言っても上の空だったから大体の内容は頷かせることが出来た。

まぁこんな感じで園長を乗り気にさせて談合のための交渉を終えた。

 

 

「やっぱ交渉するときはペンシルゴン風のやり方が一番だよね」

 

「なんかすごく人聞きが悪くない?」

 

「あのやり方は人の汚い所を上手く突いてる」

 

「やっぱり悪く言ってるよね?」

 

「いや?そんなつもりは無いけど。心当たりでも?」

 

「別にないですけど?」

 

「まぁ実際性格悪いのは事実だからな、心当たりでもあるんだろ」

 

「まぁ僕は別に悪い意味では言ってないからね?カッツォ」

 

「いやいや、絶対良い意味なんて無いでしょ」

 

僕たちは「黒狼」との談合が始まる前にいつもの様に集合していた。

と言っても僕を含めて四人だけだけれども。

集合場所にまだサンラクは来ていない。なので僕たちは待っている間各々自由に時間を潰していた。

そこで今回の交渉の流れを説明するついでにペンシルゴンと話していた。

僕はペンシルゴンの狂信者ではあるが彼女の性格が悪いとはいつも思っているから一応確信犯である。

 

「それで?サンラクはまだ来ない訳?」

 

「んー、流石にリアルで事情があるなら連絡するだろうしねぇ...」

 

「となるとどっかで遊んでるか、それとも寝ているのか...」

 

「「どちらにしても処す」」

 

集合時間になってから早くも五分が過ぎたころ未だにサンラクが現れない。

その事をペンシルゴンとカッツォは冷静に分析してどうやって罰を与えるかについてを考えている。

二人とも止めなさいあまりに自然な流れに京極ちゃんがドン引きしてるでしょうが。

その後暫くしても全く来る気配が無かったので僕たち四人だけで「黒狼」の巣穴である「黒狼館」に入って行く。

僕たちが入ると数人がこちらを睨みつけている。いや、正確には京極ちゃんの事を睨みつけている。あぁコイツらが装備をPKで奪われた哀れな奴らか...

 

「見てよランスロット、あの哀れな奴ら。ああいうの見るとPKしてて良かったって思うよ」

 

「お前、終わってるよ...」

 

やっぱり当の本人はこんな感じなのが彼らの哀れさを際立てている。

睨んでも意味ないからやめなよ君たち。レベル上げした方が有意義だぞ。その結果が良いものとは限らないけど。

獣の耳をピコピコ動かしている京極ちゃんを横目で見ながら周りを観察する。

「黒狼」側はやはり昔の「阿修羅会」と同様にプレイヤー層が分かれている。

一つ目は京極ちゃんにぶち殺されたやつら。もう一つはゲームマナーに沿っている人達である。正直今回の件は後者の人達には可哀想な話である。

そんな中我らが女王ペンシルゴンはどうだろうかと思い隣をチラッと見るとそこにあるのはニッコニコな笑顔である。大変可愛らしくはあるのだが鉛筆の笑顔というだけでどこか恐ろしさが存在する。

 

「随分楽しそうだなペンシルゴン...」

 

「んふふ...そう見えちゃうかな、サイガ-100ちゃん?その節はお世話になったね」

 

「どうやらそちらは一人足りないみたいだが」

 

「うちの鉄砲玉は今も新しいユニークを見つけてるかもね」

 

「どうやらそちらも手綱は握れてないらしいな」

 

「ふふ、そりゃ鉄砲玉だからね」

 

そういって今回の話し相手「黒狼」のリーダーであるサイガ-100と言葉を交わすペンシルゴン。

実際サンラクの手綱は握れてないので図星である。

図星であるにも関わらず表情一つ変えずに華麗に流すのは流石である。

そんな中僕を除いた三人が席に座り僕がペンシルゴンの斜め後ろに立つ。

今から会議が始まる!という雰囲気の中、一人の女?が突入してくる。

 

「だらっしゃー!?」

 

入って来たのはただの痴女であった。

女は自分の事をサンラクだと語った上でどうして女になったのかを説明した。その過程でカッツォを煽り、それが飛び火して「黒狼」のメンバーを煽っていた。

その時謝罪の言葉で

 

「ごめーんね☆」

 

とあざとく言ってペンシルゴンに殴られた。自業自得ではある。

因みに「黒狼」の面々の中にはサンラクのこの謝罪に頬を赤らめるものが数人いてお前ら...ってなったのは別の話。

一通り説明した後に予定していた談合が始まる。

 

「さて、今回は同盟の内容について再度確認する予定だったが先に確認しておく事案がある」

 

その言葉がサイガ-100から発せられるとこの場にいる殆んどの人間の視線が京極ちゃんに注がれる。

特に装備を奪われた人たちの視線が殺意とかが籠ってる。本人は飄々としてるけどね。

 

「まぁそこからか、じゃあ単刀直入に言うけど八割、いや六割で良いよ」

 

「...黒狼全員で対処する可能性を考えろ、二割だ」

 

「全員で来ても別にいいよ?こっちには頼れる腹心もいるし、地の果てまで追いかけてくれるから」

 

「...」

 

「サイガ-100の顔に免じて最大限譲歩しても五割が限界だね」

 

圧倒的に強気なペンシルゴンの交渉と引くことが出来ないサイガ-100の交渉。

内容を知ってる人からするとペンシルゴンのヤバさとサイガ-100の頑張りを見て涙を流すことが出来るのだが、リーダーの奮闘も虚しくカモられた被害者たちはこの内容について全く理解できていない。

 

「一体なんの話をしてるんだよ。。」

 

「分からないのかい?君らのリーダーは僕の装備をいくらで買い取るのかを値下げ交渉しているのさ」

 

哀れな被害者に加害者が笑顔で説明をしてあげている。かなり畜生な光景である。

因みにペンシルゴンの強気はあんま虚勢ではないのかもしれないと勝手に思っている。

いくら黒狼の人数が多かろうと下っ端は京極ちゃん一人に負ける弱い奴らばっかだし、「最大火力」たるサイガ-0もサンラクがいる限り敵対はしないだろう。それにこっちには規格外戦術機もある。これらを加味して分の悪い賭けではないとは思う。

まぁ実際にペンシルゴンがどう思ってるか何て僕には分からないけどね。

そんな事を考えていると被害者くんは京極ちゃんの言っている言葉の意味がやっと理解できたらしく甲高い声を挙げる。

 

「なんで俺の装備に金を払わないといけないんだよ!普通に返せ!」

 

「なんでって...今の所有権は僕にあるんだからタダで渡すわけないだろうって」

 

「元々俺のだろうが‼」

 

見てる分には面白いけど正直サイガ-100の立場に立って考えると笑えない。

ほらサイガ-100は頭を抱えてる。それに比べてうちのペンシルゴンは満面の笑みだ。

流石、ラスボスより外道だと言われているだけはある。きっと人の不幸が嬉しいんだろう。

そんな中あくどい笑みを浮かべて嬉々として説明を始める。

 

「いいかいボク?このゲームではPKは違法行為じゃない。つまり別に悪い事をしている訳じゃないんだよ?わかりゅ?」

 

そう、別に京極ちゃんは悪いことなど一つもしていないのだ。

なんなら本来返却されることの無いアイテムを本人たちに帰してあげるだけ優しい方。

「鯖癌」や「幕末」を始めとした終わってるゲームをやって来た僕が言うんだ間違いない。

その後も幾度なく言葉を交わらせて値段交渉を続ける。

 

「分かった、そちらの提示してきた金額を飲もう」

 

「一括じゃなくても良いからね」

 

最終的に四割増しの金額で交渉が成立して京極ちゃんのPKで手に入れたアイテムは元の持ち主に返還されることになった。良かったなカモたち。

 

「さて次の議題に移ろうか」

 

ペンシルゴンがそう言い話の内容を変える。

そう、まだまだこの談合は始まったばかりである。

 

 

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